朱川湊人のレビュー一覧

  • あした咲く蕾

    Posted by ブクログ

    全編ハズレ無しの短編集。読後感はとても良く優しい気持ちにさせてくれる。同じ時代背景では無く大阪万博の頃やバブル期等バラバラではあるが特に違和感は無い。『わくらば日記』の様なちょっと不思議な能力を持った人や不幸な生い立ちを持った子、グレて道を外しかけた子、魂持ったフライパンを煽る中華屋のおばちゃん等出てくるキャラもそれぞれ立っていて面白い。別れがテーマなのだが無償の愛情を分けてくれる人と出会う事により再生への1歩を踏み出せる。どれもラストはホロリとくる秀逸な作品ばかり。これはオススメだ。

    0
    2016年04月20日
  • なごり歌

    Posted by ブクログ

    昭和40年代後半から50年代にかけて、マンモス団地を舞台にした7編からなる連作短編集です。
    全て優しさと哀しさ、ちょっぴりの不思議感に満ちた、まさにこれぞ朱川湊人ワールド。個人的には「ゆうらり飛行機」が好きですね。

    1
    2016年04月11日
  • 水銀虫

    Posted by ブクログ

    この後味の悪さは最高だ。本作は夕日の三丁目的な世界観は更々無い。人の執着心や憎しみ等、醜さや汚さで埋め尽くされたオールブラック朱川湊人なのだ。タブーを犯す時にモゾモゾと体中に蠢き回る水銀虫。この作品のテーマでもある、してはいけない事、つまり罪を犯した人間にとりつく恐怖と後悔が上手く描かれ、狂気と化した人間のおぞましさは読んでいてもゾクゾクし嫌悪感は拭えない。人が誰しも持つ闇。何かの切っ掛けで、「ほら、お前の体内からも水銀虫がいつ動き出すか分からないぞ!」と問われている気がしてならない。悪夢はいつ起こるか分からない…。

    0
    2016年04月10日
  • なごり歌

    Posted by ブクログ

    色々な運命を背負い、色々な生き方をしてきた人達が寄り集まっていた"アノ頃"の団地を舞台に切なくホロ苦い話が取りまとめられた連作短編。本作で恐らく著者が言いたいのは、『人生生き急ぐのでは無く、時には息を抜き空を見上げ、過程そのものの美しさや素晴らしさを感じるのも大事だよ』ではないだろうか。♪人生は〜紙飛行機〜と某朝ドラの主題歌を僕が口ずさんでしまった様に、作中にもラジオから流れたり、口ずさんだりして出てくる当時の流行歌がノスタルジックに拍車を掛ける。絶妙なシンミリ感と優しさの本作。やっぱり朱川湊人はいい。

    1
    2016年03月14日
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    朱川さんらしい不思議なお話。
    雪華と風波、どちらも魅力的。
    雪華の謎が、少しは明かされるのかと思ったけど、彼はあいかわらず謎のまま(笑)
    夢路のような実在の人物が登場することで、なんだかこの不思議な現実と確かに地続きのような感じがする。
    登場人物を、どんどん検索してみたりしちゃった(笑)
    西塔は、とんでもなくヤな奴だ~。
    三郎は、その後、どうなるんだろ。
    シリーズの続きがとっても気になる。
    風波は、あんなことがあって実家に戻ってしまったけれど、、、
    あの、「最期の言葉」は、雪華の言葉と勘違いしてしまったのは、私だけかな~。

    0
    2016年03月04日
  • わくらば日記

    Posted by ブクログ

    昭和30年代東京下町が舞台。活発少女の主人公、礼儀に厳しい母、不思議な能力を持つ姉、姉妹の様な茜ちゃん、交番のおまわり秦野さん、爬虫類顔の神楽刑事、全てのキャラが魅力的で心が温まる。今現在の主人公が過去の"アノ頃"を語り口調で振り返る連作短編だが、既に姉は若くして亡くなっているという設定により終始懐かしさと寂しさが付き纏う。この何とも言えない哀しい気持ちが肝なのだ。貧しい中でも精一杯前向きに生きる姿に心打たれ、川原で母が茜ちゃんを戒めるシーンは涙を誘う。『辛いからこそ優しくなれる』。筆者の優しい文体がそれを見事に表現している。

    0
    2016年02月29日
  • あした咲く蕾

    Posted by ブクログ

    「ツカサもチィちゃんも、よう覚えときや。この世にはな、死ぬほどのことは何もあらへん。辛いのも苦しいのも、時間がたったら忘れられるもんやで。だから何があっても、自分で命を捨てるようなことをしたらアカンのや。」

    「弘美ちゃん・・・正しいと思ったことをする時は、変にためらっちゃダメだよ。人の命に関わるような時は、なおさらね」

    きっと世の中には、自ら進んでのら犬になった犬はいない。ほんのわずかでも、愛されていること-自分が誰かに必要とされていることが実感できれば、踏み外しかけた道を戻ることもできるのではないかと思う。

    0
    2016年02月24日
  • 鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様

    Posted by ブクログ

    続編の刊行に合わせての再読。

    不思議な力を持つ雪華。
    画家志望の友人風波。
    不思議で、ちょっと怖いけれど、切ないお話。
    みれーじゃの存在の悲しさ、痛ましさ。
    死の間際、特にそれが突然であれば、果たせなかったことに執着してしまうことだってある。
    悲しいことだけど。
    それを利用する蒐集家とは、どういう存在なのか。
    それも気になるのだけど、雪華たちが魅力的だし、彼らの掛け合いも楽しいので、その後を知ることができるのが楽しみ。

    0
    2016年02月21日
  • わくらば日記

    Posted by ブクログ

    最近僕の中で重要になりつつある朱川湊人さん。昭和レトロを愛する者としては捨てては置けない作家です。今回もやはり昭和、30年代なので僕は生まれていませんが、この空気感はとても落ち着きます。

    人の記憶が映像として見える美貌で病弱な優しい姉。活発で姉を慕う愛嬌のある妹。10代の多感な時期を共に過ごし、姉は27歳で他界してしまいます。優しい姉を思い出しながら妹は姉がその能力で関わった事件を語り始めるのでした。
    続編も有るようなので入手します。

    0
    2016年02月16日
  • なごり歌

    Posted by ブクログ

    巨大団地を舞台にした懐かしさ一杯の、連作短編集なのだけれど、読み出して最初の話「遠くの友達」に出てくる「雷獣」に驚いた。
    ついさっきまで読んでいた山本周五郎の短編集「人情裏長屋」で仲の良い籠かきの喧嘩の原因になったのものひとつが「雷獣」だったのです。
    二つの作品に関係がある訳ではないのですが面白い巡り合わせでした。

    0
    2016年02月08日
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様

    Posted by ブクログ

    連作短編6編
    「みれいじゃ」という哀しい存在になりたいという破天荒な画家惣多を見つけてしまう風波.なんとも言えない気持ちになった.1話1話話が進むうちに,時が過ぎ事情も変わり,いつまでも青春をしていられなくなる.
    雪華の過去が少しわかりかけてきたので,次巻が出ると信じてます.

    0
    2016年01月30日
  • 赤々煉恋

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    朱川湊人がノスタルジー色を抑えて、ホラーと幻想を押しだしたら、こういう短編を書くのだなぁ、とある意味感心した1冊。古き良き郷愁を存分に味わいたい人にとっては、この本は外れなんだろうな。実際評価も割れているようである。

    俺は、これはこれでアリだと思う。こういうのが読みたくない気分の日もあるんだけど、そうじゃない日は妖艶に耽溺したいタイミングもある。(俺的に)ちょっと歪んだ性癖を、リアル体験する趣味はないし勇気もないが、怖いもの見たさって野次馬根性はある。その欲求を程度の低い媒体で満たそうとすると悪酔いしてしまいがち。気分が悪くなる程度なら自業自得と納得もできるが、酔いが行動に出そうになると…非

    0
    2016年01月16日
  • なごり歌

    Posted by ブクログ

    巨大団地が未来と希望の象徴だった昭和の時代。今を生きる人と過去の人、そして不思議な生き物『雷獣』。必然と偶然の交流がさわやかな感動をよぶ連作短編集。
    お気に入りは「ゆうらり飛行機」。速さや高さを求めることなく、ゆっくりゆっくり、全部ゆっくりとその道を進もうと、主人公を諭す老人の言葉から奇跡が起こる。子を持つ親なら感涙です。
    そして、「今は寂しい道」の『今は寂しい道ーこの道を歩き通せば、きっと、また会える』って言葉が美しい。全編通して優しい昭和ノスタルジーに浸れる作品。

    1
    2016年01月03日
  • 本日、サービスデー

    Posted by ブクログ

    朱川湊人さんの本、先日、2015.6発行の「今日からは、愛の人」を読みました。猫の家を営むデリヘル嬢のところに男5人がやっかいになってる話で、セクシーな女性の魔女とちょっととぼけた男性天使が登場したりで、奇想天外な物語でした。読後、この本が2009.1刊行、2011.11文庫化の「本日、サービスデー」の続編と知りました。「本日、サービスデー」、この作品は、テンポも良く、キレもあって、なかなか面白かったです(^-^)

    0
    2015年12月30日
  • 水銀虫

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ホラー短編集。
    枯葉の日:全体的に暗いトーン(季節の描写含む)、確かに内容も暗いものだったけどわたし的には最後に救いがあったように思えたかな。きっと彼は彼女を殺してあげた。殺すことが大事なのではなく、その願いに気づき叶えてあげたこと。彼女はこれでやっと解放される、その自由にわたしは共感できたんだと思う。

    しぐれの日:読み進めるにしたがって、ぞわぞわした気分になる話(作者の意図にまんまと乗ってる感が・・)。どんどん救われなくなる感じがね。自業自得なことではあるんだけど、幸せっていうのは簡単に手に入らないね。そのとばっちりが子供にくるなんて。

    虎落ちの日:これも気持ち悪い・・。祖母の孫を思う気

    0
    2015年12月29日
  • 都市伝説セピア

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「昨日公園」の映像化から。

    短編集で他作品が結構ダークなので ん?と思ったが「昨日公園」もラストは原作だとこうなのか。。
    ナルホド。。。
    「フクロウ男」が文章ならではの技法と、作中でも触れているが江戸川乱歩っぽくて好きだった。

    「いっぺんさん」のようなほのぼの系の作風だと思っていたので驚いたが、他の作品も読んでみたい。

    解説の石田衣良氏が男性だと初めて知った。。。

    0
    2015年12月24日
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様

    Posted by ブクログ

    薄紅雪華紋様シリーズ2作目。
    朝でも昼でも夜でも、まるで逢魔時のような妖しさ。
    前作に比べて衝撃は少ないけれど、ピタっと吸い付くような何とも言えない落ち着き、なれ合った感じが良い。

    0
    2015年12月09日
  • 黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様

    Posted by ブクログ

    大正時代の東京。画家を志す槇島風波は裕福な家を出て、風変わりな友人・穂村江雪華と同じ下宿に暮らしていた。
    天才的な画力を持つ雪華は、さまよう魂を絵で成仏させる不思議な力の持ち主でもある。巷では、何者かが一人歩きの婦女子を縄で縛り上げ、金品を奪う「鬼蜘蛛事件」が起きていた。
    妹の友達の護衛を引き受けた風波は、雪華とともに事件に巻き込まれ……(「鬼蜘蛛の讃美歌」)。
    「黒のコスモス団」と名乗る不良少女団に呼び出された風波。兵役忌避で故郷を飛び出した女ボスの幼馴染が、雪華に瓜二つだというのだが……(「黒のコスモス少女団」)。
    画業で結果を残さなければ家に戻ると、父親と約束してしまった風波。友人である

    0
    2015年11月24日
  • 都市伝説セピア

    Posted by ブクログ

    「世にも奇妙な物語」の傑作復活編で「昨日公園」をみたので再読。やはり「昨日公園」以外も傑作ぞろいの短編集。怖いのに哀しくて美しい「フクロウ男」。エキスポシティオープンのニュースを聞きながら「月の石」を読んで感慨深かった。

    0
    2015年11月22日
  • 満月ケチャップライス

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    公園の遊具から落ちてケガをした妹…
    母は呟いた…「運の悪い子」

    ある日突然、家に現れた、怪しいけれどなんだかユーモラス、そして家事に堪能な謎の男“チキさん”
    彼の一生こそが、まさに「運の悪い子」なんじゃないか?

    中学生だった「僕」の一人称で語られているから、ほんわかした雰囲気で、チキさんの作る美味しい料理や、次第にチキさんに心を開いて仲良しになっていく母子家庭の兄妹が描かれていくけれど、実際には恐ろしい事件を引き起こしたカルト集団の話などと絡んで、平和な日常を一瞬にして失いかねない社会の話でもあるのだ。

    『やっぱり幸せな家っていうのは、いつもきれいなタオルと、新しい卵がある家のことを言う

    0
    2016年05月17日