朱川湊人のレビュー一覧
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飛行機事故が原因で理解不可能な不思議な村に入ることになった主人公の話。大半はコメディタッチで進み、シモネタも含んだギャグも満載のエンターテイメント小説である。
作者は私の同級生であり、作中に散りばめられる小ネタ的なギャグもいちいち分かってしまうところが面白い。最後になって明かされる秘密は夢オチでなくてよかったが、奇想天外で無理もある。
主人公がいわゆる引きこもり型のオタクであり、没社会性の持ち主であることが、話の展開に欠かせない要素になっているのも面白い。
ただ、家族の死があっさりと語られるなど、作品世界の軽さが際立っていて少々気になった。
2010年に上梓され、2012年に文庫化し -
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朱川湊人を初期作品からおいかけて読んでみようと思い手に取った本。
表題作は角川ホラー大賞短編賞を受賞している作品。
うん、上手い。荒削りではあるものの(特に主人公の正体やそれが暴かれる描写あたりはかなりザツいと個人的感想)文章は美しくてやるせなくて、澄んでいるかと思えば淀み、血の匂いがするかと思えば涙に変わり…
読ませ方が実にうまいのだけど、物語の展開が気になってドキドキとページを繰るような感覚とは違う。物語の世界にスワーッと沈み込んでいくような感覚。それこそ気がつけば白い部屋で月の啼き声を聞いていてもおかしくないような。
ラストの1文がちょっと作為的に悲しいが、それも味だと思わせる世界 -
Posted by ブクログ
ネタバレQ:口裂け女に出会って「私きれい?」って聞かれたらどう答える?
A1:「きれいです」→これでもかぁとマスクを外したら、裂けた口が見えてその口で頸動脈食いちぎられて殺される
A2:「不細工です」→鎌で口を割かれた後、殺される
で、どうせ死ぬなら「そんなに殺したいか、かかってこんかい」とタイマン張る。という結論に達した小学校6年生。修学旅行帰り新幹線の中のバカな俺たちでした。
というような青春時代を過ごした俺たちには、怖さよりも懐かしさがたまらない、タイトル通りのセピア色した短編幻想ホラー小説集。怖さに偏らず、切なさに偏らず、懐かしさというおもりでバランスとっているやじろべえみたいな作風が面白 -
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朱川作品二作目でした。私は平成生まれでこの昭和三十年代のことは実際に体験したことがあるはずない。それなのにこの懐かしさは何なのだろうと『かたみ歌』に引き続き思いました。
清廉潔白で心優しい鈴音と少しおてんばだけどまた心優しいわっこちゃん。怖い見た目とは裏腹に百合丸なんていう可愛い名前の神楽さん。とにかく自由奔放で強い茜ちゃん。ひとりひとりのキャラクターがとても愛おしかった。
ものごとにはいろんな背景があって、自分から見える側面だけが真実ではない。普通の人は自分の側面からしか見えなくて、真実はあやふやになる。それを飛び越える力を持った鈴音。でも、見えることは本当に幸せなことなのか。すごく考えさせ -
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ネタバレ【本の内容】
ジュンは霊能力者シシィのもとで除霊のアシスタントをしている。
仕事は霊魂を体内に受け入れること。
彼にとっては霊たちが自分の内側の白い部屋に入ってくるように見えているのだ。
ある日、殺傷沙汰のショックで生きながら霊魂が抜けてしまった少女・エリカを救うことに成功する。
だが、白い部屋でエリカと語ったジュンはその面影に恋をしてしまったのだった…。
斬新な設定を意外なラストまで導き、ヴィジョン豊かな美しい文体で読ませる新感覚ホラーの登場。
第十回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。
[ 目次 ]
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二作とも愛をテーマにしたホラー小説である。
「白い部屋で月 -
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「カンカン軒怪異譚」という話が、一番心に響いた。
ハラ減ると、ロクなこと考えない。
おばちゃんの考え方に、確かにその通りだなと思った。
どんなにやりたいことや、諦めたくないことがあっても、お腹が空いたままだと、なんだかどうでもよくなってしまうというような、経験をしたことがある人は、結構いるんじゃないだろうか・・・。
でも、お腹がいっぱいになってみると、もう少し頑張ろう。生きてて良かったと思うのだから、不思議なものだ。
肉や魚だけじゃなく、野菜、山菜、貝・・・。
どんな食べ物にも命があって、その命をもらうことで、生かされている。
どんな悩みも抱えている時は、深刻に考えてしまうものだけ -
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ネタバレ今は図らずも遠く離ればなれになった友人に向かって語りかけるようにつづられた35年以上も前の少年時代の思い出。
小学校3年の2学期の始業式の日に主人公モッチたちが通う小学校に転校してきた不思議な雰囲気を持つ少年リンダ。彼が小学4年の2月始め、つまり1年足らずで突然転校してしまうまでの間に起きた出来事を綴った物語です。
それは、自分たち子供にはどうすることもできず味わう無力感だったり、人生経験に乏しい(それは子供であるが故に当たり前のことなのですが)ことによる無知・未熟さ、世の間の理不尽さにやり場のない憤りを感じながら、少しずつ大人になっていくことなのだと。
昭和のあの時代に生まれ、少年時代