朱川湊人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
初出 2016〜17年「オール讀物」の連続6話
作者らしいこの世の者ならぬ不思議系のものは登場せず、乱歩へのリスペクトたっぷりの下町人情系ミステリー。
推理小説作家の息子黒葛原涼(つづらはらすずむ、スズメがあだ名)は勤務先が倒産し、父親が自宅を処分してサ高住に移るために、膨大な蔵書の預け先荒川区町良の喫茶店のあるビルの二階に居着くが、都電が走る昭和のにおいたっぷりの町で鉄仮面目撃情報があり、ネットを駆使して真相を明らかにしたために、父親のファンであるビルのオーナーは彼を「探偵」と認め、口コミで事件を集めてくる。
購入した一人掛けソファーの縁で美しい才女が無給の助手として書庫兼事務所に来る -
Posted by ブクログ
表紙絵で分かるように『少年探偵団』を彷彿とさせるような、ユーモア作品。
父親が作家だった黒葛原涼(つづはらすずむ)が父の蔵書の書庫として借りた一室が、周囲の人々に圧されるうちに探偵事務所と化していく。
朱川さんらしいノスタルジックな舞台設定。時代に取り残された昭和の雰囲気、入り組んだ路地、濃密な人間関係という下町で起きた事件。
涼が最終的に真相に辿り着くものの、決して名探偵というキャラクターではなく、押しかけ助手や雑居ビルの大家や周囲の住民たちからのヒントだったり、偶然の出会いや発見で辿り着くというのが、何とも素人探偵臭くて良い。
狭いコミュニティならではの事件であったり、人情があったり(行 -
Posted by ブクログ
すべての人間に与えられた、どんな願いがいくつでもかなうサービスデー。ただし、その日は人生に1日だけ、普通は気づかぬままに終わるのだが、悪魔の囁きで自分のサービスデーを知ってしまったら、いったい何を願うのか。表題作ほかほか短編4つ。
鶴ヶ崎の善人、小市民ぶりに和む。自分であればもっとうまく使って、あれをして、これをして、と思ったりもするが、結局は善人が得をするという花咲仕様。「東京しあわせクラブ」はうすら寒いく、正直下衆い。「あおぞら怪談」はいい話だが、皮肉が効いているし、よく考えると日下部さんはかなりきている。「気合入門」は掌編だが、幼い頃の経験って大きくなって意外と大きな影響があるんだよなと