グーテンベルク21作品一覧
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-青年貴族フェリックスはモルソーフ夫人と知りあい、激しい恋のとりことなる。だが、年も倍の男に慈悲心から嫁ぎ、結婚後は性格破綻者の夫と病気がちの子供たちを育てあげることに精一杯の夫人は、プラトニックな愛しかフェリックスに許そうとしなかった…バルザックの「人間喜劇」の田園生活情景に属する代表作。
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-好色漢ユロ男爵、貞淑のかがみのその夫人アドリーヌ、強欲な商人あがりのクルヴェル、淫蕩多情で強欲なマルネフ夫人、そして醜女であるために誰からも愛されず、男爵夫人におさまった美人のアドリーヌを妬み、いつか没落させてやろうと密かに執念を燃やす従妹ベット。これら主要人物に多くの登場人物をからませて、パリを舞台に描きあげられた人間くさい物語。バルザックの「人間喜劇」の代表作のひとつ。
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-宝石と切手のコレクターで出版社の経営者でもあるドナルド・カークは、ニューヨークの中心街に事務所をもっていた。ある日の夕刻、中年太りのさえない小男がたずねてくる。カークは留守だったので、秘書のオズボーンはカークの事務室で待つように案内する。用件を聞いても、男は「内密の用件」としか答えない。約一時間後、カークはたまたま階下で出会ったエラリーを連れて帰ってくる。秘書の話を聞いて二人が事務室に行くと、男は脳天を割られて死んでいた。そして部屋にあるあらゆる物が動かされて「あべこべ」になっていた。中国福州で発行された「エラー切手」にからむ密室殺人!
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3.0ニューヨークの薄気味の悪い館にすむ元シェイクスピア俳優ドルリー・レーンを探偵役にすえた、クイーンの「悲劇シリーズ」4部作の第一編。株式仲買人がすし詰めの路面電車のなかで、ポケットに忍び込まされた高純度ニコチンを塗った針先に刺されて即死する。そんな芸当は、いったい誰に可能だったのか? 動機は? しらみつぶしの警察の調べによって、共同経営者が浮かび上がるが……緻密な構成、全体の進行を劇の上演に見立てた凝ったつくりで、遊び心も忘れない本格ミステリーの代表作。1932年、バーナビー・ロスという無名の新人名義で発表され、ミステリー界にセンセーションをまきおこした作品としても有名。
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-モーパッサンは人間の欲望の織りなす日々の暮らしの機微を、さまざまな側面から切り取って鮮やかに示してくれる多くの短編小説を書いた。この集には表題作のほか、「聖水授与者」「月光」「宝石」「温室」「オトー父子」など20編を収めた。
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-中国元朝のフビライ・ハーンの時代、ヨーロッパから中国におもむいて長年フビライに仕え、26年ぶりに故郷ヴェネチアに帰国した商人マルコ・ポーロ(1254~1324)の大旅行記・博物誌。たまたまマルコが帰国した時期はヴェネチアがジェノアと争っていたため、軍艦に乗っていたマルコはジェノアの捕虜となって、その後の講和で釈放されるまでの約1年間ジェノアの獄にあった。その獄中で知り合ったのがピサ出身のルスティケロという物語作者で、「東方見聞録」はこのルスティケロの手によって初めてまとめられた。マルコはフビライの使者として、または商売で長期間、中国各地を旅行したので、モンゴルの歴史や風習、中国や中央アジアに関して、きわめて幅広い知識をヨーロッパに初めてもたらすことになり、そのアジア観に深い影響をあたえた。
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5.0
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-抜け目のないやり口で財産家、事業家、地主としての地歩を固めたグランデ老人は、家庭においてもワンマンで、砂糖ひとかけら、ろうそく一本にいたるまで倹約し、金を貯めることに生き甲斐を見いだしていた。そんななか、おとなしい母に育てられて二十三になった一人娘ウジェーヌは、その持参金目当ての有力な二つの家族の争いに巻き込まれそうになる。そこにパリ育ちのかっこいい従兄弟シャルルがあらわれる。ウジェーヌは初めて恋心をおぼえる。……骨太なリアリスト、バルザックの代表作で「純愛」の訳名もある。
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-自分の足を食いちぎったまぼろしの鯨を追って、怨念(おんねん)を晴らそうとする船長エイハブ。エイハブが乗組員たちをまきこんで大海原を舞台に死に物狂いでモービー・ディックを追う物語は、乗組員のひとりの力強い語りで進行していく……。海と船、一頭のマッコウ鯨をめぐって展開される壮大な人間ドラマ。鯨を語るにも必読。
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-セイヤーズの作風を知る好個の短編2つ。「疑惑」は、妻に毒を盛られているのではないかという夫の疑惑をテーマにした鮮やかなクライム・ストーリーの傑作。「アリババの呪文」はピーター・ウィムジー卿ものの短編。卿が盗賊一味にくわわり、一杯食わせるという趣向のもので、「開け、ゴマ!」の呪文に声紋判定の設定がみられるのが面白い。
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-セイヤーズの処女長編。若い建築家の住むアパートの浴室で、ある朝、男の全裸死体が見つかる。身につけていたのは鼻眼鏡と金鎖だけ。たまたま前夜、金融界の大御所が謎の失踪をしていたが、関係があるのか? 死体はその男というわけでもなさそうだ…貴族探偵ピーター・ウィムジー卿はふとした機縁から、この事件を手がけることに。執事バンターとの息のあったやり取りはユーモラスで、余裕を感じさせるが、はたして首尾は?
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-架空の四つの国を訪れることになるガリバーを待っていたものは? 17世紀の英国に材料を採りながら、人間と社会にむけて痛烈な風刺の矢をはなった諷刺文学の最高傑作。ファンタジーの古典。全体は四部からなり、小人国(リリパット)、巨人国(ブロブディンナグ)、飛び島(ラピュタ)その他、馬の国(フウイヌム)を、ガリバーが次々と訪れての体験談になっている。宮崎駿の宙に浮かぶ「ラピュタの城」はむろん第三部の「飛び島」からきている。
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-ホームズが宿敵モリアーティ教授もろともライヘンバッハの滝壷の底に消えて3年。失意の日々を送るワトスン医師のもとへ一人の老人が訪れた。その老人の正体は、なんと死んだはずのホームズであった! 喜びの再会と同時に、2人の新たな冒険が始まる。ホームズ物傑作短編第3集「シャーロック・ホームズの生還」から「空家の怪事」「ノーウッドの土建屋」「ひとり自転車を走らせる女」「プライアリ学院」「踊り人形」「ブラック・ピーター殺し」「奸賊ミルヴァートン」「六個のナポレオン」「三人の学生」「金縁(きんぶち)の鼻眼鏡」「スリー・クォーターの失踪」「アビ農場の屋敷」「第二のしみ」13編を収録。
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-悠々自適の隠居生活をおくっていたシュヴァルツじいさんは、原子核研究所で行なわれた実験によるふとした偶然で、数万年後の銀河世界へタイム・スリップしてしまった。地球は核戦争のために表面のほぼ全域が放射能に汚染され、辺境星域に浮かぶちっぽけな小石にすぎなくなっていた。食糧難に瀕する地球の住民は、ナショナリズムにこりかたまった結社に支配されており、党の一味は銀河帝国を構成する諸世界を相手に、恐るべき陰謀をめぐらしていた。その渦中に巻き込まれた一人の老人の勇気ある行動は、全宇宙を救えるのか。
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-とらえたかと思った瞬間に逃げ去る幻影《ヴィジョン》。『燈台へ』の作中人物は、それを追いつづける。それは悲劇であり、哀歌でもあるが、にもかかわらず、明るさと救いが与えられる。「生は、意識をもったその最初から終局に至るまで、われわれをとり巻いている半透明な《かさ》…この定まらぬ、未知の、とらえがたい《スピリット》を書きあらわすことが、小説家の仕事ではないだろうか?」ウルフはこう書いた。
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5.0ダーウィンが進化論の仮説を深めるきっかけになった「ビーグル号」による南半球の航海は有名。本書はこの航海にちなむ宇宙航海アドベンチャーで、銀河系のかなたを旅する超光速宇宙船「ビーグル号」の「未知の生き物」との遭遇を描く4編からなる。次元を超越する不気味で不可思議な存在と必死に戦うグローヴナーら科学者たち。
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4.0女芸人カーロッタ・アダムズの人まね演技は完璧で、たまたま舞台を観たポワロは有名人の模写に感銘をうけた。ポワロはその晩、真似をされた当人のひとりで、有名な女優ジーン・ウィルキンソンから、離婚話に応じない夫を説得してもらいたいという依頼を受ける。だが、その夫エッジウェア卿は自宅で、何者かによって鋭利な刃物で殺害され、つづいてカーロッタも変死をとげる。難解な謎に挑むポワロ。
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2.5壮烈な核戦争の結果、絶滅にひんした地球も千年後には緑をとりもどし、人類は銀河系に進出していた。だが、そこに展開されていたのは、ティラン大汗国の専制に抗する諸惑星の姿だった。ティランに反旗をひるがえすバイロン・ファリルの行く手には、限りない策謀と落とし穴が…アシモフならではの卓越したプロットとスリルで一気に読ませるスペース・オペラの代表作。
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-イブン・バットゥータはマルコ・ポーロより50年ほどおくれて生まれ、これと並び称せられているイスラム世界の大旅行家である。生地もマルコのふるさとヴェネチアからそれほど遠くない、地中海の入口モロッコのタンジャ(タンジール)であった。彼は青春時代から中年に至るまで、実に29年を旅にすごし、晩年にその思い出を口述して本書を完成した。イブン・バットゥータの見たのはイスラムの世界が中心であった。アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)がイスラム世界を夢幻的に表現したものとすれば、この旅行記は、実世界をありのままに描き、まさにマルコと同時代のイスラム世界の『東方見聞録』となった。
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-ヒンズー的伝統に支えられたインドの「愛の教典」。魅力的な自分を作る方法、素晴らしい伴侶を手に入れる方法、初夜で妻を喜ばせるテクニックなど、若い男女が夫婦生活にはいるにあたって必要な性知識を提供しようという意図で作られた「愛の教典」。性の知識は、幸せな人生を送るに当たって必要不可欠と考えた「人間行動の教科書」。
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5.0エルキュール・ポワロ、ミス・マープル、トミーとタペンス、ハーリー・クィン、パーカー・パイン……「ミステリーの女王」クリスティが創造した6つの脳髄(探偵役)が、それぞれの待ち味を生かして活躍する軽い短編集。車内で、カフェで、アームチェアで読むのに好適の作品集。
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-日中戦争の時代から太平洋戦争の終結まで報道カメラマンとして多くの戦線を目撃してきた著者が、なんとしても正しい記録を残しておきたいという一念から書き上げた迫真のミッドウェー海戦記。淵田美津雄・奥宮正武氏の『ミッドウェー』が大局的な観点からの忠実な戦史であるとすれば、これは個の視点から見すえた「ナマの戦史」である。
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-著者は太平洋戦争開始時には駆逐艦「天津風(あまつかぜ)」艦長としてミンダナオ島(フィリピン)のダバオ攻略作戦に参加、以来多くの駆逐艦の司令として激闘百数十回をかぞえ、最後は巡洋艦「矢矧(やはぎ)」艦長として戦艦大和らとともに沖縄特攻作戦に参加し、その目で帝国海軍の最後をみた。苛烈な実戦の貴重な記録。
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-旗艦の空母「赤城」の飛行隊長になり、真珠湾攻撃飛行機隊総指揮官としてみずから機上の人となり「真珠湾奇襲」を成功に導いた現場指揮官の手になる緊迫感あふれる迫真のドキュメント。太平洋戦争を知るための必読の一冊。著者淵田美津雄は戦後キリスト教に入信し、日米で伝道活動に従事したことでも知られる。
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-著者は戦艦武蔵に一兵曹として乗り組み、奇蹟的に生還した。「秘密のうちに生まれ、秘密のうちにシブヤン海に沈んだこの巨大戦艦は、500機の敵機来襲に、魚雷26発、直撃弾15発、至近弾20発以上を受け(これらは大和をはるかに凌駕する)、満身創痍となりながら、なお沈むまで数時間を生き延びた。その死闘を、そしてそれを戦った《兵の心》を知ってもらいたかった」…この著者の言葉がすべてを語る迫真の戦史!
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-「少女レベッカ」の続編と言ってもよく、「少女レベッカ」の場合とおなじように、女性としての自覚にめざめてゆく一人の少女の心理過程が現実的なさまざまなエピソードとともに語られていく。ただ前作とちがい、それらの出来事は、レベッカ自身の手記や回想という形で描かれ、記述がいっそう内面的になっている。後半には、青春期を迎えた十八歳のレベッカが登場して、繊細な感受性をたたえた、静けさと内省を愛する一人の女性に生長していく。作者は、米国フィラデルフィアで生まれの作家で、英米の若い世代から熱狂的に迎えられ、やがてその名はひろく世界に知られるようになった。
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-原題は「サニーブルック農園のレベッカ」…ほこりだらけの田舎道を、旧式な馬車が、がたごと揺れながら走っている。馬車の窓から黒い髪の少女が乗っているのが見える…そういう情景がバックとなって、空想家で、たいへんな情熱家でもあるレベッカの、少女時代から、しだいに女としてめざめてゆく過程を描いた物語だ。発表されるとすぐ評判となり、『若草物語』とならんでアメリカ家庭小説の古典として、いまなお愛読されている。女史は米国フィラデルフィア生まれの作家で多くの児童文学を書いたが、幼児教育にも力を注いだ。
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-これは、対をなす2編の物語である。鋭い感受性を持てあます女子学生フラニーは、折角の週末のデートも、相手のレーンとのエゴの衝突だけに終ってしまう。傷心の妹に、俳優で五つ年上の兄ズーイーは、思いの限りをつくして、生きることの意味を悟らせ、周囲と融和させようと懸命に説得する。寡作と孤高で知られる人気作家が、現代の若者の心理を鋭くとらえた一対の名作!
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-1910年から20年代のニューヨークの地下鉄を舞台に、あわてんぼうで純情のスリの名人サムと、サムをつけまわす刑事クラドックの対決! クラドックは、サムを現行犯で捕えて「河上の別荘」へ送り込もうとつけねらっているが、いつも巧みに逃げられ、さんざんな目に合わされる。ところがこの二人は奇妙な友情で結ばれ、毎日顔をつきあわせて憎まれ口を叩かないと、お互いに何か物足りない気分に襲われるほどになっているのだ。他に退役強盗の下宿屋のオヤジ「鼻のムーア」や、女たらしの「めかし屋ノエル」、「高架線のエルマ」や「ノッポ」に「チビ」など、一癖も二癖もある連中がからみあってかもし出す、微笑、哄笑、爆笑をよぶユーモア探偵小説集。
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-18世紀末から19世紀初めにかけて、欧州全土に戦争と革命の嵐が烈しく吹きすさんだ時代、シェリーは英国貴族の長男として生まれ、オックスフォードに学ぶが無神論を説いて放校される。ロンドンへ、そして大陸へ、さらにイタリアへと暮らしを移すが、突然の海の事故で死亡、30歳であった。この間、詩作を続け、多くの抒情詩や詩劇を書いて世に問うた。訳者佐藤清氏は詩人で「訳業の目的は、新しいリズムの創造によって、自国詩への貢献をはかるにある」という意気込みをもって本書を編み、訳した。
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-ワーズワースはよく自然詩人と呼ばれるが、単に客観的な自然を写す詩人ではなく、外界の自然が彼の心の働き――想像力――によって浄められ、たかめられた姿をうたった詩人であった。自然には五感を通じて人間の魂に働きかけ、それを浄化する力がある。しかし人間の魂も、この自然からの働きかけに感応するとともに、みずからも自然に働きかけて、これらを変容する力をもつ。このような背景をもつワーズワースの短詩は、素朴単純な言葉づかいのうちにつきせぬ味わいと無量の意味をこめた名品が多い。
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-ヴェルレーヌは、マラルメ・ランボーらとともにフランス象徴主義の代表的詩人だ。終生飲酒・遊蕩の悪癖に悩まされ、貧窮のうちに施療病院で死んだ。妻を捨ててのランボーとの同性愛事件は有名で、ピストルでランボーを傷つけ2年間の獄中生活を送った。その詩は日本でも古くから紹介され、上田敏の「海潮音」をはじめ、永井荷風や鈴木信太郎らの訳詩によって親しまれた。
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-地下室にある木賃宿(きちんやど)を舞台にした住人たちの物語。そこには、死がある、恋がある、殺人がある、縊死(いし)がある、温情、かっとう、排斥、嫉妬、奸策等、あらゆる人生の要素がある。そこに現出するのは、万人に共通した、くめどもつきぬ人生の味わいだ。ゴーリキーの不朽の名作戯曲。
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-冬のロンドンのボウ地区で、ある朝、下宿屋を営むドラブダンプ夫人は戦慄の光景を目にした。喉を切られた下宿人の遺体が見つかったのだ。殺人かも知れず、有力容疑者を前に、ロンドン警視庁の敏腕刑事と元刑事が事件の解明に奔走する。本書は「密室ミステリの父」の手になる傑作中の傑作。ディクスン・カーも江戸川乱歩も「一大トリックを十分に書きこなしている古典」として絶賛している。
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-18世紀末から19世紀初頭にかけてのヨーロッパの激動期、不世出の詩人と仰がれて活躍したイングランドの貴族出身のバイロン。長編物語詩「チャイルド・ハロルドの遍歴」などを発表してロマン派の旗手となったが、オスマン帝国からの独立をめざしたギリシア独立戦争に加わり、病に倒れた。「最初の近代人」といってもよいバイロンの詩は、今日のわれわれにも共感できる。
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-「黒死荘」と呼ばれるまがまがしい因縁つきの邸宅を舞台にしての心霊実験…その主催者が密室のなかで惨殺死体となって発見される。扉にはかんぬきがかかり、窓には鉄格子がはめられ、雨夜のため、外には足跡も残されていなかった。唯一残されていたのは博物館から盗まれた短剣だ。怪奇・陰惨な犯罪に挑むヘンリー・メルヴェール卿を初めて登場させ、一躍「密室もの」で名を売ったカーター・ディクスンの代表作。
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-ライン川の川底にひそかに眠る黄金。これから指環を作れば、その持主は絶大な権力を握るといわれる。それを守る乙女たちをだまし、こびと族のアルベリッヒは黄金を奪う。一方ワルハラ城を神々のために建造した巨人族二人は、主神ヴォータンに謝礼を迫り、黄金を要求する。ヴォータンは地下の国を訪ね、アルベリッヒから黄金と指環を奪い、これを二人に与える…だが、指環には呪いが。二人の巨人ファーゾルトとファーフナーは争い、指環は後者の手に移る。「たった一つの指環をめぐってくりひろげられる数奇な物語は、非現実の陶酔にさそいこんでくれる。ページを繰って耳をすますと、壮厳にして官能的なワーグナーの楽劇がきこえてくることだろう」これは寺山修司の言葉だ。
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-昏倒のショックを受けて、タウンゼンドは記憶喪失症から回復した。だが、三年の歳月が完全に頭の中から消えていた。この三年間なにをしてきたのか、自分にはわからない。教えてくれるものもいない。しかし瑪瑙(めのう)のような冷たい目をした謎の男が、自分をつけ狙っているように思われる。強迫観念にとらわれた男の孤独と寂寥を描いて、ならぶ者のない境地を切り開いたサスペンスの巨匠アイリッシュのブラック・シリーズものの1点。
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-神話や伝説をもとにしたワーグナーの他の楽劇と異なり、本作は「史実」をとりあげて題材としている。主人公ハンス・ザックスは16世紀に実在した「マイスタージンガー」の一人であり、靴屋の親方だ。本作で、ザックスは、部外者ヴァルターの歌の革新性を認め、芸術における伝統と革新のみごとな媒介に成功する。第三幕の「歌合戦」に向けて壮大なドラマが展開され、「伝統」を讃えるザックスとザックスを讃える人びとの明るい歌で幕となる。
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-中世ヨーロッパの「聖盃」伝説に材をとったワーグナー最後の楽劇。「聖盃」は処刑されたキリストの身体から流れ出る血を受けた盃であり、「聖槍」はキリストの横腹を突いた槍だった。スペインの聖杯城はこの二つの宝を保持するために建てられた。だが王は魔術師の奸計によって傷つけられ、槍を奪われる。これを取り戻し「正式な儀式」をおこなわなければ城はなくなる。この難儀を救うのは「清らかな愚かもの」だけだ、神はこう告げ、そこにパルジファルが現われる。パルジファルは数々の奇蹟をみせて槍を奪還し「救済」を実現する。
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-アイルランドの王女イゾルデは、コーンウォールのマルケ王に嫁ぐため、王の甥であり忠臣であるトリスタンに護衛されて航海している。トリスタンはかつて戦場でイゾルデの婚約者を討ち、深手を負ったが、イゾルデに介抱してもらったことがあった。イゾルデは、そのことに気づいたが、すでにトリスタンに恋心を抱いていた。愛と憎しみにとらわれたイゾルデはともに毒薬を飲むことで解決をはかる。だが、毒薬の用意をもとめられた侍女は、毒薬のかわりに「愛の秘薬」を用意する。愛に殉じる二人の前途は決まっていた!
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-ドイツ西部のブラバント公爵領では、先代の公爵が、娘エルザと息子ゴットフリートを残して死んでまもなく騒動が。エルザと散歩に出たゴットフリートが森の中で行方不明になる。これは魔法使いオルトルートが彼を白鳥に変えてしまったためである。が、オルトルートの夫で、公爵領を手に入れる野望を抱いていたフリードリヒ伯爵は、これを好機とばかり、エルザを訴える。エルザが弟を殺して領主の地位を手に入れ、秘密の恋人を宮廷に引き入れようとたくらんだのだ、というのである。たまたま来訪したドイツ国王ハインリヒが決闘でその決着をつけることになった。フリードリヒの相手はエルザの祈りに白鳥に曳かれた小舟に乗って現われた騎士「ローエングリン」だった……。
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-吟遊詩人の騎士タンホイザーは、地下の洞窟で、異教の女神ヴェーヌスの官能にとらわれつつ、地上への脱出を渇望していた。願いは突然とどく。タンホイザーは元の領主ゆかりの友人ヴォルフラムに出会い、領主の姪エリーザベトが寄せる思いを聞かされヴァルトブルクに戻る。だが、「歌合戦」での失敗から追放となり、法皇から罪の赦しを受けるよう命じられる。半年後、ローマから戻った巡礼のなかに彼の姿はなく、エリーザベトはみずからの命を捧げる決心をする。
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-自分の航海術の腕前をほこるあまり、大胆な言葉を吐いたオランダ人船長は、悪魔にそれを聞かれ、自分の言葉のとおり、この世の終りまで、世界の海を走り回らざるを得ない呪いを受ける。7年に一度だけ許される上陸で「永遠の愛」を誓う女性に巡りあえれば呪いは解ける。白夜のノルウェーの港に赤い帆の船をつけた船長は、果たして……。ワーグナーのロマン派オペラの傑作。
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-どこからともなく集まってきた貧乏芸術家やボヘミアンたちがたむろする町モンパルナス。極貧と絶望の中で創作に没頭する画家モジリアニはジャンヌを得て、生きる力を与えられる。だが、ついには病とのたたかいに敗れる。画家本人とも実際に交際のあった作者はその壮絶ともいえる生涯を、彼の生きた時代と場所とともに丹念に描きあげる。かつてジェラール・フィリップ、アヌク・エーメ主演で公開された同名の映画の原作であるが、原題は「1919年のモンパルナス」であった。
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-原題はYou Know ME ALで、「アルよ、君はおれのこと、よく知ってるよな」という意味。アルは友達の名だ。この作品は投手としては抜群だが田舎者でウヌボレ屋でケチなジャック・キーフという青年が、アルに書き送る手紙でできている。1910年代の小説だが、実在のチーム、選手、監督を織り交ぜて描いて大好評を博し、ユーモア小説、野球小説の古典的名作となった。作者ラードナーは野球物のあとで中流層の市民たちを描いたユーモアと諷刺のきいた諸作品によっても高く評価された。アメリカン・ユーモア小説はマーク・トウェイン→ラードナー→デイモン・ラニアンと受け継がれていく。
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