小説・文芸の高評価レビュー
-
Posted by ブクログ
僕は1人娘の父親で、あかりと同じ家族構成だ。直近で「母子」の関係を観察していて思うのは、やはり父子との関係とは何癖も違う、煩わしさも、愛情も、親密さも、何もかも不便で且つ深くも歪だったり真っ直ぐだったり、シンプルとは真逆の縺れた関係だなと思っています。一歩間違えただけで、高崎親子の様になっても不思議ではないなと読み終わった今ひしひしと感じていますが、これまた不思議とそれに対する恐怖がないのは、2人を僕が支えていくという覚悟があるからです。
母子2人の問題であるが、家族という括りで言うとそこから逃げてしまった父も勿論、罪の意識をあかりと同様に、多分それ以上に感じているからこそ、大ごとになって、ようやく自分の存在について気がつき、罪滅ぼしとしてあかりに対する献身的な行動をしている事が読み取れます。
母が、あかりが、父が、どうすべきだったかという当事者にしかわからない事を、一読者では想像しても及ぶわけがないので、そういう発言は控えますが、
罪を償った後、新しい人生をお2人でしっかり築いてほしいなと思います。
本の感想としては、事実が淡々と事細かく書かれていて、読みやすく人物像もしっかり浮き彫りになっていて最後まで引き込まれていました。前半は兎に角怖かった。読むのが億劫になるくらい、事実が赤裸々に描かれていて怖すぎました。読み進めていくと、恐怖よりも自分事の様に事件の全容を理解したくなり、この本の文章を一生懸命追っていました。間違いなく星5の作品でした。とても面白かった。 -
Posted by ブクログ
「幸田文 木」この字面だけでもう、手に取らずにはいられませんでした。
幸田文さんの名前は知っていても、著書を読んだことはありませんでした。ある時ふとこの本を見かけ、この潔いタイトルだけで引き込まれてしまったのです。
「幸田文 木」。なんとも気持ちがいいこの字面。シンプルで強くはあるけれど、どこかあっけらかんとした軽妙さもある。これが「高橋和巳 石」とかだったらもう、たとえ文庫本でも函入のハードカバー本のような重厚さがあるでしょう(何を言っているんだ?)
様々な木との触れ合いを書き、木のあるがままの尊さや、木のある暮らしへの感動を書いたエッセイです。著者の、木への人並みならない想いが伝わります。
綺麗な文章なのにえらぶったところがなく、読んでいて気持ちのいい文体です。着物の襟はピシッとして乱れはないけれど、けして肩がこるほど締め付けてはないといったような、芯のある優しさが文章から感じられます。
なにしろ文章が丁寧なんです。いやに丁寧すぎて細かいことをちまちま長たらしく書くのでなくて、そこに無理のない丁寧さ。些細なことを誇張して膨らませたような無理な力や、てらいがありません。
「屋久杉を見に行った」はまだエッセイの題材として見せ所が沢山ありそうですが、「古紙回収に古新聞を出した」というだけのことでここまで丁寧かつ豊かな文を書けるのは、著者の感受性の豊かさによるところでしょう。自らの心の動きを丹念にすくい取り、言葉を紡いで、文章を編んでいます。読後の満足度はとても高くて、「いい本を読んだな」と素直に思えます。
とりわけ好きなエピソードは、著者が幼い娘と植木市に行った時の話です。
著者の父、小説家の幸田露伴が財布を著者に託して、露伴の孫、つまり著者の娘にこれで好きな木や花を買ってあげなさいと言うのですが、高級な藤の鉢植えをほしがる娘をごまかし、二番目に欲しがった安い山椒の木を著者は買い与える。それを知った露伴が著者を叱りつける場面が描かれているのだけど、もう全文を引用したいくらいに、味わい深いワンシーンなのです。
さすがは文豪・幸田露伴、言葉巧みに理屈ぽく娘を問いつめます。淡々とした口調が活字だと余計に短調に感じられて、露伴の恐ろしさが際立っています。要は、金銭的な卑しさによって子どもの感性の芽を摘んでしまった浅はかな行為を厳しく咎めているのですが、その厳しさの裏に、おさな子の感性を育てることをここまで重要視しているのかという、孫への思いが見えるのです。なぜか読んでいる自分が露伴の孫になったような気分になり、露伴じいちゃんに可愛がられて嬉しいような、くすぐったいような気持ちになりました。
老木となったポプラの木が、立木としてのキャリアを終えてマッチ棒になっていく様を工場に見に行った話も印象的でした。工場に響く機械音のリズムと、コンベアの上を整列して流れていく軸木を見て、阿波踊りを連想し愉快な気持ちになる著者の可愛らしいこと。高い感受性は自分の人生を楽しくする技能だと教えられたような気持ちです。 -
Posted by ブクログ
家族というのは、一番落ち着く関係のようで、実は一番緊張する関係でもあると思います。遠慮会釈がない分、揉めると激しい争いになったりします(と思います)。
本作でも、姉妹・姉弟の喧嘩など、相当激しいです。母息子・孫祖父もしかり。読み続けるのがいたたまれなくなるほどです。
でも、喧嘩・争いでマイナス方向に針が振り切れるほどダイナミックレンジが広い分、いたわり思いやる時のプラス方向の温かさは本当にぬくぬくホカホカで、それこそ他人が入り込む隙がないほどです。家族って良いなぁ、と思う瞬間でしょうか。
下記〔作品紹介〕(文庫版)の末尾で「家族を描く、心温まる全7編。」とありますが、そこに辿り着くには紆余曲折、先の見えない長い道のりがあるのです。
わたしのウチは人数も少なく淡白な関係だったので、本作の揉める家族にはあまり実感が湧きませんでした。なので本書の中では、「タイムカプセルの八年」が一番読みやすかったです。
今どきは家族も更に多様化が進んでいるでしょうから、今、家族の諸相を小説に書くとなると、生成AIに指示を仰いだ結果、即刻警察が家に来て、父親が逮捕されてしまうような家族も描かなければならないかもしれません。
みなさまは、本書の家族たちのお話をどのような気持ちで読まれるでしょうか?
とても興味があります♡
〔作品紹介・あらすじ〕(文庫版 2018年4月)
「家族」で起こる、ささやかな大事件。いま一番旬な作家、辻村深月の最新文庫。息子が小学六年の一年間「親父会」なる父親だけの集まりに参加することになった私。「夢は学校の先生」という息子が憧れる熱血漢の担任教師は積極的に行事を企画。親子共々忘れられない一年となる。しかしその八年後、担任のある秘密が明かされる(「タイムカプセルの八年」より)。家族を描く心温まる全7編。
近くにいるから傷つけ合う。遠くにいてもわかり合える。
大好きだけど、大っきらい--読めばきっと、あなたの「わが家」に帰りたくなる。
弟はアイドルオタク、姉はバンギャ。趣味も性格も正反対。犬猿の仲の二人は顔を合わせれば衝突ばかり。ある日、盗み見ている姉のブログに不審な投稿を発見してしまった弟。日に日に覇気がなくなっていく姉の様子が気になって仕方ない(「サイリウム」より)。
息子が小学六年の一年間「親父会」なる父親だけの集まりに参加することになった私。「夢は学校の先生」という息子が憧れる熱血漢の担任教師は積極的に行事を企画。親子共々忘れられない一年となる。しかしその八年後、担任のある秘密が明かされる(「タイムカプセルの八年」より)。
真面目な姉を鬱陶しく思う妹。
趣味で反発し合う姉と弟。
うまく息子と話せない父。
娘の考えていることが理解できない母……
あなたの家族もこの中に。家族を描く、心温まる全7編。
〔作品紹介・あらすじ〕(単行本版 2014年10月)
同じ中学校に通う姉は、「真面目な子」。褒め言葉のようだけど、実際は「イケてない」ことの裏返し。こんな風には絶対になりたくない――だけど、気にせずにはいられなかった。 (「妹」という祝福)息子が小学校六年生になった年、父親中心の保護者会「親父会」に入った、大学准教授の私。熱心な担任教師に恵まれて、順調に思われた日々の裏には、とんでもない秘密が隠されていて……? (タイムカプセルの八年)
同じ中学校に通う姉は、「真面目な子」。
褒め言葉のようだけど、実際は「イケてない」ことの裏返し。
こんな風には絶対になりたくない――だけど、
気にせずにはいられなかった。 (「妹」という祝福)
息子が小学校六年生になった年、
父親中心の保護者会「親父会」に入った、大学准教授の私。
熱心な担任教師に恵まれて、順調に思われた日々の裏には、
とんでもない秘密が隠されていて……? (タイムカプセルの八年)
すべての「わが家」に事件あり。
ややこしくも愛おしい家族の物語、全七編! -
Posted by ブクログ
初読みの津村記久子さん。1981年から10年ごとに物語が進み、40年という長い時間を描く構成に、読み始めから期待が膨らむ。母親とのつらい生活から逃れ、家を出た18歳の理佐と8歳の律。二人がたどり着いたのは、山深い場所にあるそば屋だった。そこで出会うのが、水車小屋で暮らすヨウムの「ネネ」。そば屋の守と浪子、絵描きの杉子など、二人を温かく見守る人たちとの出会いによって、新たな生活が少しずつ形づくられていく。
10年、さらに10年と時が流れ、理佐と律を取り巻く人々も変化していく。幼かった律が大人になり、今度は困難を抱える研司を支える姿が印象に残った。かつて自分が多くの人に助けられたからこそ、今度は自分が誰かを支える。そんな優しさのつながりが、世代を越えて受け継がれていくところにぬくもりを感じる。
人は歳を重ね、仕事や暮らしも変わっていく。それでも、人と人とのつながりや大切にしてきた思いは残っていく。そして、その穏やかな世界の中心には、いつもネネがいる。
40年という時間を登場人物たちと一緒に過ごしたような読後感。日常を描いているのに、どこか特別な世界に触れたようでもある。読み終えたとき、じんわりと幸せな気持ちと充足感が広がった。初読みの津村記久子さん。素敵な作品との出会いになった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレおおお面白かった。前作がすごく面白かったので、今作は前作とはまた違う話だと知って、ちゃんと面白いかなあと心配したけど、ちゃーんと面白かった。泰麒が健気でかわいくて、彼なりに頑張ってるのに報われないことが読んでて苦しかった。でも折伏したあたりから、「やっぱりこの子は違うんだ…!」と思ってそこからの展開がすごくアツかった。前半の女仙たちとの温かな触れ合いにはほっこりした。驍宗を王に選んでからの泰麒の苦悩も苦しくて、「私でも驍宗だと思うよ…!きっと大丈夫だよ…!」と励ましてやりたい気持ちになった。前作ではあまり触れられなかった景麒の人となりが結構分かって、景麒格好いいじゃん…と沼に入りそうになった。延王、延麒、景麒の3人の関係もなんかもっと見てみたい感じがした。この後そういう作品もあるのかしら。複雑な世界観だけど、今作を読んですごく理解が深まった。今改めて前作を読んだら、また面白いんだろうなと思う。あとがきでほんのちょびっとネタバレしてたのが地味に結構残念。
-
Posted by ブクログ
一気読みしてしまいました!
最近、何読もうかなと思い読書家のユーチューバーさんの動画を見漁ってました。読書歴は割と、停滞していた時期も含めていいのであれば10年ほどになりますがまだまだ読んでない本がたくさんあるなあと思い、今こそ初心にかえるべきでは?と思い読書初心者さん向けの小説を紹介している動画をたくさんみました。すると、結構本書が紹介される割合が高い!本書は、中学校の朝読書とやらで学級文庫にあったものを読んだ記憶はあるのですが内容の記憶がまったくなく。とりあえず読んでみようとあらすじも見ずに購入しました。そして、さて読んでみようと、あらすじを見てみましたが、なんだこれファンタジー?そんなこと聞いてないけどな、と思いつつ読み始めました。もうすらすら読みやすすぎて止まらない!ほんと、おもしろかった。こういうのが読みたいのよ!!これはねー、うん中学生から大人までに読んでほしい。自分も自殺未遂経験があるから尚更響いたし、でも主人公が母親や父親それぞれとゆっくり話をし始めるあたりからなんとなく切なくなってきた。本物の真は早まりすぎたし、もう遅いし、偽物?今の真はもうすぐ体から魂が消えてもうこの人生では生きられない、あーあとか思ってたらまさかのラスト。こういうエンディングのものってあまり読まないんだけど、いいもんだな。ただ、真の家族の問題?がわかったとき、なんかまあありきたりな問題だなとも思ったし、まあラストは予想できる気もしたが、まあでもとてもよかった。ひろかの、パパ活?援交?のことについても切り込んで欲しかった感はあったが。
表示されていない作品があります
セーフサーチが「中・強」になっているため、一部の作品が表示されていません。お探しの作品がない場合は、セーフサーチをOFFに変更してください。