【感想・ネタバレ】八月の御所グラウンドのレビュー

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Posted by ブクログ 2024年05月02日

直木賞受賞作

十二月の都大路上下る
八月の御所グラウンド
の2篇からなる

女子全国高校駅伝のお話と草野球大会のお話で、内容は違えど作品の根っこは同じ

学生の青春真っ只中の清々しい感じと不思議な体験、そして人と人との巡り合わせ。

とても優しい気持ち、そして少し切ない気持ちになる素敵な本でした。...続きを読む

「心の中に炎が一個、証の代わりに着火したように感じられた。」
はい、私にも感じられましたよ。

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Posted by ブクログ 2024年04月10日

ぜひとも映像化してほしい作品。
一編目の「十二月の都大路上下ル」がとても良いプロローグ的な導入になっていて、次の表題作も同じように不思議なことが起こるのかな?と自然とフワーッといつの間にかあちらの世界に連れて行かれてしまったような、そんな感覚。
八月に京都に残っている人は“八月の敗者“なのだそうです...続きを読む。八月の京都の暑さに勝てる者などいない。皆、実家に帰ったり旅行をしたりしているのに、彼女にフラれて何も予定がなくなってしまった、そして、就職活動もせず怠惰な生活を送っている朽木。就職は決まったけれど卒業できる見込みがない多聞。
多聞は卒業させる代わりに、草野球大会で優勝しろ!と担当教授から仰せつかる。
寄せ集めのメンバーで草野球をすることになった朽木と多聞。メンバーが足りなくて、その辺を歩いている人にまで声をかける始末。
真夏の早朝、夜の仕事が終わったばかりの派手なスーツの金髪君や、工場の仕事に行く前の作業着君、はたまた、中国人留学生の女子まで。
どうしても卒業したい多聞が一生懸命寄せ集めたメンバー達。
何やってんだよーと読み進めるうちに、メンバー同様、ここまできたらぜひとも優勝してほしい!と思わせられるから不思議。試合の成り行きに夢中になっている私。
でも、ここから不思議な世界になってくるのです。
ここからはぜひとも読んで確かめてほしい。
京都のうだるような暑さ。送り火。お盆。終戦記念日。映像が浮かび上がってきます。
夏休みももうそろそろ終わりだなぁ、と感じ始めるこのくらいの時、やっぱり日本人には感じるものがある気がする。日本人特有の感覚が。
とても良かった!

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購入済み

一気読み

2024年02月03日

標題作と「十二月の都大路上下ル」の2作品、どちらも心に滋養を与えてくれるサプリメントのような作品でした。特に「十二月〜」は続きが読みたくなるほど、短編なのに登場人物が全員魅力的でキャラ立ちしていたので、長編小説として膨らませていただきたいほど、この世界観から離れるのが惜しい気がしていました。いずれの...続きを読む作品も読み始めたら止まりません。文章の読みやすさもさることながら、テンポ、ユーモア、エピソードのバランスも絶妙で、読後に地理や歴史を確認する楽しみも付加されてます。最近の直木賞作品は重厚骨太な作品が多いように感じていましたが、軽やかで爽やかな中に込められているメッセージは、読書離れと言われている時代にこそ求められる作品であるように思いました。万城目ワールドのますますのご発展を期待しています。

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Posted by ブクログ 2024年05月05日

万城目さんの直木賞受賞は本当に嬉しい。
京都で起こる不思議な出来事と、登場人物たちのウィットに富んだ会話が万城目作品の魅力だ。駅伝を急遽走ることになった女子大生の坂東の不思議な体験『十二月の都大路上下ル』と、真夏の京都で野球大会に参加することになってしまった朽木の謎に満ちた表題作『八月の御所グラウン...続きを読むド』。どちらも読み心地良く、そして温かな気持ちになる。御所グラウンドでの試合結果ははたして…。

毒味のない物語で、滑稽でそれでいて不思議で魅力的な登場人物が多く出る。これぞ万城目さん!という作品を読みたい方にオススメしたいし、はじめて万城目さん読む方にも良い。

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Posted by ブクログ 2024年05月04日

第170回直木三十五賞受賞作品の『8月の御所グラウンド』と、『十二月の都大路上下ル』の2作。
8月の御所グラウンドは、借金のカタで無理やり参加させられた野球の大会でのひとコマ。映画フィールドオブドリームスのように、野球がしたかった戦死した昔の若者たちと、野球をするという話。ストーリーに奇抜性は少ない...続きを読むが、現代の心に光のない若者の気持ちが、ありし日の戦死した若者たちに寄せられていく過程がみずみずしい。
十二月の都大路上下ルは、急遽参加することになった控えの1年生ランナーが、すごく生き生きとして、こちらまで力をいただけるようだ。

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Posted by ブクログ 2024年05月04日

万城目学さんの本は何冊か読んでいるけれど、この作品もちょっぴりファンタジー。タイトルの『八月の御所グラウンド』と『十二月の都大路上下ル』の2作が読める。
『十二月〜』は駅伝に青春をかける女子高生の坂東が、京都での女子全国高校駅伝に出場したときのエピソード。
『八月〜』は彼女に振られ、暑い京都での夏を...続きを読むなんの予定もなく過ごすことになった大学生の朽木が、友達の多聞に誘われて、京都御所内のグラウンドで早朝に野球大会に参加することになったときのエピソード。
主人公はどちらも、ちょっとだけ悩みを抱えていて、でも誰かに相談するようなことでもなくて、何とも言えない気持ちでいたところに、不思議なエピソードを経験する。そのエピソードを、主人公たちはどう受け止め、この先はどうなっていくのか。読者に余韻をもたせて考えさせてくれるような作品。
とても読みやすかったです。

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Posted by ブクログ 2024年05月02日

私にとって1982年以前の出来事は教科書で習ったことであり、古い出来事は自分とはあんまり関係ない事だと無意識のうちに思っていた。
当たり前のことなのだけど、人類はずっと繋がっている。過去があって、今があって、未来があって、今はその一瞬。
最近観ているドラマの影響もあり、100年前の世界や100年後の...続きを読む世界を何となく自分と繋がるものとして感じられるようになった。このタイミングでこの作品に出会い、心が動く体験を積み重ねることができた。

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Posted by ブクログ 2024年05月02日

 昨年(2023年)の第170回直木賞受賞作品です。万城目学さんの作品を読むのは初めてでした。
 物語の舞台は酷暑の京都のグラウンドで、想像するだけで汗が出てきそうですが、読後感は爽やかな清流の前にいるような涼しさを感じました。
 この本のどこが評価されて直木賞を受賞したのか後で選評も読んでみたいと...続きを読む思いますが、とても読みやすかったと感じた一方で、重厚感みたいなものはなく、あっさり物語が終わってしまったというほんの少し物足りなさも感じました。
 もう一つの、こちらは冬の京都が舞台の全国女子高校駅伝の短編も面白かったです。この物語は是非続編も書いてほしいですね。

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Posted by ブクログ 2024年04月29日

八月のフィールド・オブ・ドリームス。
アイヤーシャオさんも実はえーちゃんと同じゾーンの人で、和歌山に彼氏とというのは嘘で、あちら側に行ってしまった……のかと思った。
深読みしすぎた。
えーちゃん達と野球仲間のお陰で、朽木に火が灯って人生うまくいきそうな感じになって良かった。

ともあれ今日本は平和で...続きを読む、野球も駅伝も楽しんでることを幸せなことなんだと思おう。

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Posted by ブクログ 2024年04月29日

万城目さんの本は、鴨川ホルモー以来です、って、2冊目ってことです。
今回はちょっといつもの万城目さんじゃないような・・・というような予感のようなものがあり読んでみました。
確かに違う・・・ わらわらした小さい、もののけが訳もなく動き回っていただけでストーリーなど思い出せないホルモーしか知らない私が言...続きを読むえることでもないのですが、なんか違うぞ。
確かに今回も、異界の物が出てくるんだけど、訴えるものがあるよね。
特に表題の「御所グラウンド」の話、最初は何のために?誰のために?意味ある?って??だらけだったんだけど、うーんそういうことだったの、うーん。って納得。
そこで万城目さんは、その時代時代の抗えない情勢、世の不条理、数々のいろんな人の無念さを書いている。
うん、ちょっとジーンとしました。
何はともあれノミネート10回め? 直木賞受賞おめでとうございます。

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Posted by ブクログ 2024年04月28日

 万城目先生の直木賞受賞作品。今まで何回もノミネートされ、まだ受賞してなかったのかという驚きと、遂に受賞したかという安堵感がありました。
 本書は2つの物語があり、一つ目は都大路の高校駅伝の話、2つ目はタイトルにもなってる草野球の話。二つの物語に関連はほぼないんですが、私的には1つ目がとても面白かっ...続きを読むた!今までの万城目先生にはない作風で、ほっこりと、でも熱い青春を感じられ、続編があるなら読みたいと思える物語でした。
 2つ目のメインの話は草野球の話。メンバーを集めるのを苦労しているなか、偶然、試合を見ていた「人」に助っ人を頼むと、まさかの快諾。…その助っ人は実は、という話。
 作風は「偉大なるしゅららぼん」に近いと感じました。物語の世界にのめり込み、一気読みしてしまうくらい面白かったですけど、直木賞の期待感からすると、少し物足りなく感じました。万城目先生の代表作としてこれでいいのかと思ってしまいました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年04月25日

初めは正直読む手が進まなかった。ただ後半にかけて段々とえーちゃん達が故人だったことを戦争の愚かさと共に描かれていて、心に響くものがあり最後は一気見していた。送り火を見ながらなぜこの世に帰って来たのかの問いに野球がしたかったからというシンプルな答えがあまりにも似合いすぎていた。

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Posted by ブクログ 2024年04月29日

この不思議な世界観の京都は、まさしき万城目さんだ。万城目さんの作品はだいたい、悪い人がいなくて、どの人も優しくて、いつも読み終わって良い印象が残る。どちらかと言えば、表題作より「十二月の都大路上下ル」の方が好き。読み終わってから今年の直木賞受賞作だったことに気がついた。

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Posted by ブクログ 2024年04月21日

良かった!

実際にこういった体験をした事ある人は実は少なくないらしい・・?といった事を聞いたことがある。

何となくストーリーの流れが変わった「!!」の瞬間、嬉しくて、早く知りたくて、手が止まらなかった。

ただ野球がしたい。

もっと生きたかっただろうなぁ。

この物語のほんの少し先を見たかった...続きを読むけど、そこは自分の頭の中で遊んでみようかな。

映像化してほしい作品。

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Posted by ブクログ 2024年04月21日

直木賞作品。万城目学氏の作品は、ほぼ初めて読んだ感じ。読みやすいし、わかりやすいし、面白い。しかし、表題作品より、その前の「十二月の都大路上下る」の方が、個人的には好きです。また、万城目学作品は読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2024年04月20日

京都に住んでいたことかあり、御所やその他の地名など懐かしかった。
沢村栄治さんについての番組を数ヶ月ほど前に見て気になっていた方でした。彼について触れている点が良かった。

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Posted by ブクログ 2024年04月19日

万城目学さん著『八月の御所グラウンド』の概要と感想になります。

概要ですが、本作は『十二月の都大路上下ル』の短編と表題作『八月の御所グラウンド』の二編で構成されています。

前半は女子全国高校駅伝、後半は御所グラウンドで繰り広げられる草野球というスポーツを題材とした作品ですが、京都の冬と夏をそれぞ...続きを読むれ対比させながらスポーツに挑む人たちの模様を描いた作品になります。

感想ですが、前半の『十二月の都大路上下ル』を是非ともシリーズ化して欲しいです!!
表題作より段違いで面白かったと個人的に感じた本作は第170回直木賞を受賞していますが、『十二月の都大路上下ル』を肉付けした作品一本の長編でも受賞出来たのでは?と思ってしまう味わいでした。(それが叶っていたら星5でしたね。)

万城目学さんは今作が私にとって初読みでしたが、また追いかけたくなる作家さんが増えて嬉しいです^_^

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Posted by ブクログ 2024年04月17日

読み始めは、若者の微笑ましくも本人には深刻な日常を描いた作品だと思ったが、実はホラーのような展開がある。収録されている2作品は独立したものかと思ってしまうが、通して読むと共通するものが見えてくる。瑞々しい物語の内側に過去の亡霊が現代に顕現する。それの意味を考えると、いろんな解釈ができそうで、読んでい...続きを読むて楽しい作品である。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年04月15日

読んだ後、しんみりじんわり、心に沁みるような心地いい感動がありました。
読みやすく、さらさらと一気読みできた。

生徒たちの読者感想文の図書にお勧めしてみよっと。

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Posted by ブクログ 2024年04月14日

ほんのりあたたかい 読後感良い物語
第170回直木賞受賞作品ということで読んだ本
著者の万城目学さんを 「まきめまなぶ」さんと読むのだということと いくつかの著書のタイトルを知っているだけで 万城目さんの本を読んだのは初めてだった

文体が平易で場面状況も分かりやすく非常にサクサク読めたが 京都を舞...続きを読む台に新撰組らしき一団や野球選手の沢村栄治さんらが現代に影をちらつかせたあたりのストーリー構築に 私自身が上手く馴染めない部分もあり星は4つ
結局 新撰組と思しき一団が登場した意味がよく分からないままだった

それでも あたたかみのある登場人物らが織りなす心に響く物語性や沢村栄治を登場させたことによリ 歴史的事実が訴える平和が当たり前になっている今日への警鐘がなされる部分は素晴らしいと思った


物語は『十二月の都大路上下ル(かける)』という京都で冬に行われる「全国高校駅伝」の女子部門において 大会前日に補欠からアンカー走者に選抜された1年生のサカトゥーこと坂東(さかとう)が奮闘する話と

表題作である『八月の御所グラウンド』という祇園の芸妓「たまひで」に心を支えられて大学生時代に課せられた研究を終えた者たちが代表者となり結成された幾つかのチームで毎年八月に行われる野球大会の話で構成されている
芸妓名「たまひで」から取った「たまひで杯」で「しょうしゃは、ほっぺに、たまひでのままの、ちゅうがもらえる」と表記し「呪文の如き文字列」と比喩した部分は面白いと思った

さてこの2作は冬に始まる京都の寒さを感じながら駅伝大会を読み始め 暑さがクライマックスの盆地の京都でしかも野球するんかい!という後半の物語で 作中の寒暖差に読み手の私もクラクラしてしまった
貧血で高校駅伝辞退を申し出た心弓(ここみ)や暑さで熱中症にならないかと心配する野球プレイヤーにいちいち身体が反応して 読後は体力磨耗

 2作は京都が舞台であることが大きい繋がりだ
京都についてこんな記述がある

◯『「カラスは目が黒くて見えないから、『鳥』から目玉の部分を表す横棒が消えて、『烏』って文字になったらしいよ」』
(本文より)

サカトゥーが地名の烏丸を「とりまる」って読むから 咲桜莉(さおり)さんが説明してくれるんだけど その咲桜莉さんも「からすまる」って読んじゃうから 顧問の菱先生から「からすま」って読むのだと言われるシーン…面白い!
実は私も去年 人生初の一人旅で京都に行ったのだが 最初は宿泊先の住所はさすがに「とりまる」ではなかったが「からすまる」だと思っていたので…


◯『何でも京都では、碁盤の目状に通りが入り組む特徴を活かし、通りの名のあとに「上ル」や「下ル」をくっつけて、そのまま住所とする慣わしがあるらしい。』
(本文より)

これがタイトルの上下ル(かける)に繋がったのか…としみじみする



1作目は駅伝大会でサカトゥーと 彼女の良きライバルになった別の高校の荒垣さんの2人だけにおそらく見えたであろう新撰組の一団
2作目はなぜがメンバーが急に欠員しても誰かが入ってくれて9人野球ができ続けた歴史を持つ「たまひで杯」
その誰かは沢村栄治を始めとする今は亡き人物だったという 
現代に過ぎ去りし時代の人物が影をちらつかせるという設定が同じだ
沢村さんは京都の大学を出ているなど京都に思いもあろうという内容の記述があったが 京都という舞台に奥行き持たせる効果を狙って新撰組なども登場したのだろうか…


そして何より大事な試合の詳細がリアル中継される部分が少ないのが2作に共通しており そこは面白いと思った
1作目の駅伝大会も 生々しい大会の状況は物語られない 読者の想像にまかせたり 後日談でサカトゥーが荒垣さんや咲桜莉(さおり)さんと会話してる場面や 自分で回想してる部分から情報を読み取ってまあこんなかんじだったんだろうな…ぐらいの幅広い解釈ができるのも楽しい

2作目は「たまひで杯」の最終戦が明日行われるという場面で終わっている
送り火である京都の大文字焼きが行われたところがラストだ
宮崎アニメのトトロを用いて「そういった不思議なことは、誰かに言うと消えてしまう」「そこに部外者を招くと、それまでは通っていた道が突然閉じられる。」と部外者はトトロに会うことはできないとシャオさんが告げている
もはや正体の知られた沢村栄治ら3人の野球選手は明日の最終試合には姿を現すまい 
送り火も焚かれ「今、まさに向こう側に送っている最中」だという理由も相まって もう来ないだろうと朽木が言うが 死んでようが生きていようがやりたくてくるなら一緒に野球したいという希望を持つ多聞(たもん)の受け止め方は素敵だと思った


そんな多聞は
◯『なあ、朽木。俺たち、ちゃんと生きてるか?』
(本文より)
と言っている

これは この物語を集約するセリフだと思う
新撰組や沢村栄治さんが歴史上の過去の人物で 俺たちが今を生きている人物なら 俺らはちゃんと今、命を感じて生きているかという大きな問いかけだと感じた

これは私自身にも響いた
私は「ちゃんと生きているか?」

「ちゃんと生きる」とただの「生きる」の違いはなんなのか…

考えが深まりすぎると 本当に生きているのが自分なのかどうかさえよく分からなくなる
哲学に浸れる時間があるというのは やはり今は平和で
あり この平和を維持するためにも平和でなかった時代を学ぶことが重要なのだと感じずにはいられない



◯『十月入学なんてあるのかとその時は思ったが、俺も沢村栄治とともに学徒出陣について調べてみた。十月入学は一九四三年の前後だけ存在した。変則的な入学月だった。当時、戦局の悪化に伴い、少しでも多くの新兵が欲しい政府は法律を変更し、それまで制限がかかっていた大学生からの徴兵を可能にした。さらには九月に学生を卒業させることを法律で定めた。徴兵検査を一日でも早く受けさせるためである。
 かくして、九月に執り行われた卒業式に合わせ、新入生の入学式は十月となった。』
(本文より)


◯『沢村栄治が二十歳で一度目の召集を受けたこと。軍の手榴弾投げ大会で、通常は三十メートル投げたら上等のところを九十メートル以上も投げたこと。おそらく戦場でも何度も投げ込み、肩を消耗したこと。二十三歳で満期除隊し、プロ野球に復帰を果たしたが、二年のブランクは大きく、元の投球はできなくなっていたことー。
 「手榴弾って、重いよな。」
 「硬球の三倍の重さがあったらしい。戦場では人は痩せるから、筋肉も落ちて肩に悪いことずくめだっただろうな。復帰しても、前のように投げられなくて、サイドスローに転向した。』
(本文より)


現代何度も学校の10月入学問題が検証されるが それは海外で10月入学が多く見られるために 日本から海外進学を考える際に足踏みする理由のひとつとなっている(卒業後の就職を日本でと考えた際も)ためと解釈している
しかし 戦時中 前例で数年間行われた経緯のある10月入学は あまりにも勝手な政府の目論見が反映されたものであると知り悲しく思う

戦争は想像以上に歪んだものを生み出すのだ

私は野球に詳しくないが「沢村賞」というピッチャーに贈られる賞があるということまではなんとなく知っていた
「沢村賞」がもらえるような投手になりたいと何人かがインタビューで答えているシーンもおぼろげながら記憶にある

しかし その沢村さんとは こうも壮絶な人生を送った方だったとは全く知らずにいた
さぞ 優秀な投手だったのだろうと思っていたが…その力を発揮できない体にされた上 「三度目の招集により、フィリピンへ向かう輸送船に乗りましたが、一九四四年十二月二日、魚雷を受けて船は沈没。二十七歳でした』(本文より) とある

日本で最初のプロ野球チームに17歳で召集され、活躍したものの3度も軍から召集を受け、3度目の招集に応じた移送中に魚雷を受けて亡くなるだなんて…
酷いと思う
沢村さんに限らず 誰もがそうだ
戦争はおかしい

沢村賞は 日本プロ野球史上初のノーヒット・ノーランの記録をつくった偉大な投手沢村さんの名にちなむ賞であるとともに 戦争が奪った若い命を偲ぶ日だと回想される賞であってほしい
沢村賞受賞にぬか喜びするに収まらず 沢村さんの人生を伝え 引いてはこの平和な時代に競技野球を行うことができる感謝し もう戦争は起こしてはならないのだと心に訴えかける時間を作れる賞のあり方であってほしい


1作目と2作目は 「全国高校駅伝」と記された青いキャップや蘭者堂(らんじゃどう)というお香屋でリンクする部分があって面白いと思った


さてさて 八月の御所グラウンド…最終戦はえーちゃんこと沢村さん率いる3人が早朝6時にちゃんと来てくれたのかな?

もしメンバーが揃ったら 試合結果はどうだったのかな?

余韻を楽しめる物語だ!


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Posted by ブクログ 2024年04月12日

全国高校駅伝大会に出場する方向音痴の女子高生と新選組。御所グラウンドで行われた謎の草野球大会に参加することになったぐーたら大学生と沢村栄治たち。
どちらも不思議な話だか、京都が舞台だとそういうことが起きても不思議ではないと妙に納得してしまった。
2つ目の話は「八月」と「御所グラウンド」が物語のキーワ...続きを読むードだ。毎年メンバー不足が何とかなったのもなるほどと思った。多聞がつぶやいた「みんな生きたかっただろうな」を聞き、とても切なくなり目の奥がツーンとなった。
心の中に火がともったぐーたら大学生にエールをおくりたい。

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Posted by ブクログ 2024年04月11日

直木賞受賞作ということで初読みの作家さん。京都を舞台にしたスポーツもの二篇。
表題作は戦争にも触れるので、切なさが交じる。
世の中戦いはスポーツだけにしてほしいものです。

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Posted by ブクログ 2024年04月10日

心に種火を宿す。大袈裟なことではなく、ずっと受け継がれてきた火をそっと受け渡す。知っている京都の景色と相まって、その瞬間を共に体験する人々と自分が重なりあう。
読み終わったあとに、爽やかな気持ちになる。
私の心に種火をつけるための空気が入ったようだ。

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Posted by ブクログ 2024年05月06日

第170回直木賞受賞作。
久々に直木賞受賞作を読みました。
そして初の作家さんでした。
何も前情報入れずに読みました。
なるほど、単純なスポーツ青春小説かと思いきや
ファンタジーや歴史要素が。
久々にこの類の小説を読みました。

京都は何度か行っているので、御所の周辺とか
暑さとか、碁盤のような道と...続きを読む
イメージはわきやすかった。

どうなっていくだろうのワクワク感はあったものの 
やはりリアル×ファンタジーは得意ではない私でした。

でも登場人物は魅力的で、作品自体もあったかい。
京都の人たちにはきっともっと刺さる作品なんだろうなー。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年04月27日

直木賞ということで読んだが、個人的には非現実な話はあまり好みではなく…
新選組出てこなくても良く、むしろ蛇足に感じてしまった。
八月御所も同じく…
すみません。

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Posted by ブクログ 2024年04月22日

なんていうか、ペットボトルのお茶飲んだときの様な、飲んでるときは喉を潤してるんだけど、飲み終わって30分経ったら「あれ?さっきお茶飲んだっけ?」ってなるような喉越しの良い本でした。

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Posted by ブクログ 2024年04月21日

初めての万城目ワールド。ファンタジーが苦手な私にとって、直木賞を受賞しなかったなら手に取ることはなかっただろう。
今作は万城目ワールドの中ではおとなしめとのことだからか、案外楽しく読めた。
なぜ突如として新撰組が出てくるのかよくわからなかったが、『十二月の都大路上下ル』が好きだった。
いつも、自分好...続きを読むみの同じような作品ばかり読んでいる私には、新しい世界をかいまみれてよかった。

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Posted by ブクログ 2024年04月17日

一つ目の「十二月の都大路カケル」は小気味いいテンポの小説、高校女子駅伝参加チームの物語。
「八月の御所グランウド」は草野球の物語、伝説の沢村栄治投手を絡めた人間模様、野球経験者には懐古の念を覚えそう。
両作とも一気に読めてしまい物足りなさを感じるところもある。

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Posted by ブクログ 2024年04月13日

読みやすくサラッと読み終えてしまった
十二月の都大路上下ルは爽やかな話だったけどそこから何が始まるかと思ったらもう終わり?
って物足りなく感じた
八月の御所グラウンド不思議な優しい話
毎年メンバーが揃ってしまう野球大会
5戦目は出来たんですかね
沢村氏のことは知っていたけれども
詳しい経歴は知らなか...続きを読むったのでなるほどと
どちらの話も京都の地理がわかる人は
もっとのめりこめそう

いつも嫉妬や復讐要素のある作品を
好んでるんで穏やかだなーと感じた
これが万城目作品なんですねw

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Posted by ブクログ 2024年04月12日

12月の都大路上下ルは好きな作品でした。
8月の御所グラウンドはもう少し先まで話を進めて欲しかったです

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Posted by ブクログ 2024年04月10日

独特な世界観が広がるストーリーで、読んでいて不思議な空間に飛び込んだような感覚になる。突拍子もない設定だけど、自然と受け入れられるのはさすがだなとも思う。

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万城目氏には直木賞取って欲しい

2023年10月16日

高校時代陸上を経験し、京都で学生時代を過ごした自分にとって前半部は非常に感情移入して読む事が出来ました。サカトゥーのキャラクターや走ることができなかった先輩、代走に選ばれなかった同級生の思い、ライバル校のアラガキ先輩とのやりとりの部分は熱い想いが込み上げ涙が出てしまう部分がありました。
鹿男の剣道の...続きを読む試合もそうでしたが、万城目さんはスポーツの試合の描写がすごく臨場感があり面白いと感じます。
ただ強いて突っ込ませて頂けるならなぜ新選組が一緒に走っていたのか?そこの部分が少し納得行かない部分がありました。
坂東という名字が多摩出身の新選組と関係しているのか?坂東のご先祖様が心配して併走してくれていたのか?それともなんの関係もないのか?そこの部分がもう少し物語と絡まっていたらより良かったと思います。

#笑える #アツい #感動する

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