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井瀬は電車の中で、駅のホームから何者かに突き落とされて、親友の五味淵と共に死ぬ夢を見た。 隣に乗り合わせた女子高生・紗世は夢の内容を当て、 さらに自分も同じように電車に轢かれた夢を見たことがあると告白する。 電車で見た夢は必ず自分の身に起こると言う紗世の言葉通り、夢は次々と現実になり――。 紗世の制止を振り切り、井瀬は自分たちの死を回避すべく奔走する!
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Posted by ブクログ
伏線回収がすごいと思いました。最後の最後の方まで、あの夢は結局なんだったんだろう、どうなるんだろうと思っていたらそう繋がるのか、、、!と感動しました。
ふと見てしまった未来。変えようとしても変わらない未来。逆に残酷になる未来。それと同時に見る過去の映像。 そこには何の意味があるのか、初心者の私でもとても読みやすかったです。
あなたは、今から『半年後には電車に轢かれて命を落とす』という未来がわかったとしたらどうするでしょうか? この国では一日に三千名もの人が亡くなられているようです。亡くなられた理由は千差万別です。病気によって長い療養期間を経て亡くなられた方、交通事故によって亡くなられた方、そして自ら選んで終止符を打た...続きを読むれた方も残念ながらいらっしゃいます。大まかに区分はできても、そんな死亡理由は人によって当然異なります。 では、人は自分が亡くなることを事前に知った上でその瞬間を迎えているのでしょうか?もちろん、余命宣告を受けておおよそのその時を意識されてという方もいらっしゃるでしょう。しかし、不幸にも事件や事故によって亡くなられた方は、まさかその日、その時刻に自分がこの世を去るなんて!という思いの中にこの世を後にしたのだと思います。当然ながら、そんな旅立ちの心づもりなどできるはずがありません。思い残すことも多々あっただろうと思います。しかし、それが人の運命です。抗うことなど誰にもできません。 では、人は自分が亡くなる日時や場所、そして原因までもが事前にわかっていたとしたら、その方が幸せなのでしょうか? さてここに、今から半年後、『二〇一九年二月四日(月) 十六時五十四分』に、『電車に轢かれて命を落とす』という未来を『夢』に見た一人の男性が主人公となる物語があります。そんな未来が『現実になる』という恐怖に抗おうとする男性を描いたこの作品。そんな『死の結末を変化させようと行動を起こすたびに、内容が更新された夢を見』る様が描かれるこの作品。そしてそれは、そんな男性が『今目の当たりにしている光景こそが、夢で見ていた未来そのものだった』というまさかの瞬間を見る運命の物語です。 『二〇一八年八月四日(土)』『車輪のきしむ音と、鈍い衝撃音が』し、『電車が緊急停止』するのを『とっさに窓枠をつかんで耐えた』のは主人公の井瀬巧(いせ たくみ)。『ホームには大勢の人があふれ』、『幾人もの駅員』が『離れてください』と『緊迫した声』を出しているのを聞く井瀬は、『人が線路に落ち』、自身の『乗る電車が事故を起こした』ことを知ります。『しばらくこのまま停車いたします』というアナウンスの中、『再び眠りの世界へと戻っていった』井瀬は、『ああ、これは夢だな』と『はっきりと分かった』中に夢を見ます。『鴨宮駅のホームに立』ち、『視覚以外の五感は、非常にぼんやりとしてい』るのを感じる中にそんな『夢』を見る井瀬。『携帯のホーム画面』を見る井瀬は、そこに『二〇一九年二月四日(月) 十六時五十四分』という表示を見て、『今から半年後の日付だ』と思います。そんな中に『揉み合っている二人の男』を見た井瀬は、その一人が友人の五味渕だと視認しますが、『もう一人の男は、格子柄のコートを着て』いるものの顔はよく見えません。五味渕の元へ駆け寄った井瀬ですが『五味渕もろともホームから転がり落ち』『そこに電車が迫ってき』ます。『隣で絶叫する五味渕』。『ぶつかる ー と覚悟したところで』飛び起きた井瀬は、その衝撃で鞄を落としてしまいます。そんな中に『通路を挟んで向かい側のボックス席に、制服姿の女子高生が座っていることに気がついた』井瀬は、そんな彼女に自身の今の行動を目撃されたことを不本意に思います。そんな井瀬に『大丈夫ですか』と寄ってきた女子高生は、『どこかで、会ったことがありませんか』と言いながら隣に座り、そのまま動こうとしません。そんな女子高生を無視して眠りについた井瀬は再び夢を見ます。『粕谷拓実 ー 小学校の頃の同級生』が『片手を持ち上げ』、『その手にはナイフが握られて』いるという状況に、またもや飛び起きた井瀬。そんな井瀬に『もしかして、夢を見ていましたか』と語る女子高生は『明晰夢じゃありませんでしたか』『夢だと分かっていながら見る夢のことです』『内容は ー 電車にぶつかって死んでしまう夢…』と続けます。『「なんで」ー 分かるんだ』と問う井瀬に『私も、最近よく見るんです。自分がホームから落ちて、電車と衝突して死んでしまう夢』と女子高生は語ります。『バカ言うな』と反論する井瀬に女子高生は『私たち、死んでしまうんですよ。夢で見たように。…近い将来、電車の事故で』と言うと『悲しそうに目を伏せ』ました。そして、『変えたいのに、変えられないんです。どう頑張っても』と言うと電車を降りていきました。主人公の井瀬が見るようになった『明晰夢』と、そんな夢のことを知る謎の女子高生・片岡紗世。そんな二人のまさかの接点が描かれていくミステリーな物語が始まりました。 “夢で見た未来は変えられるのか。それとも、変えないことが君にとっての最善なのか。可能性のその先が知りたくて、ついついページを捲ってしまった”という武田綾乃さんの書かれた本の帯の言葉が読書欲を掻き立てるこの作品。そこには、”究極のタイムリミットサスペンス”と記されている通り、自身が死ぬ日時、場面を知ることとなった主人公が、そんな未来を変えるべく奔走する姿が三つの章にまたがって描かれていきます。作者の辻堂ゆめさんはデビュー作「いなくなった私へ」で、”このミステリーがすごい!”大賞優秀賞を受賞された方でもあり、独自の舞台設定の上に緻密なストーリー構成によって見事な物語を創造してくださいます。 そんな辻堂さんが、如何にもサスペンス!という領域へチャレンジされたこの作品には、『明晰夢』と『予知夢』という二つの言葉が登場します。どちらも私にとっては初耳ですが、それぞれ以下の説明がなされていきます。 ・『明晰夢』: 『夢だと分かっていながら見る夢のこと』。『物の色や形も細部まで鮮明で、目が覚めた後も記憶が一向に薄れない…夢の内容を思い出すというよりも、現実の出来事を振り返る感覚に近』い。 ・『予知夢』: 『過去に体験したことがないのに、ものすごく細かくてリアルな内容の夢』。『いつか必ず自分の身に降りかかる』。『夢が具体的なのは、本当に起きる未来の出来事を見ているから』。 物語は、主人公の井瀬がJR東海道線の車内で見るようになったそんな奇妙な『夢』の様子がたびたび描かれていきますが、当初は単なる『悪夢』であり、『一過性のもの』と考えます。しかし、『これは夢の中だ』と気づく中に再びこんな『夢』を見ます。 ・夢の内容: 『鴨宮駅のホームを』『スーツの上着と通勤鞄をまとめて右手に持ち、改札へと向か』う井瀬。そんな『夢の中の井瀬は、手元の携帯電話に視線を落とし、文字を打って』います。『「了解」という二文字が画面に浮かび』、次の動作で『顔を上げた瞬間 ー 目の前に、自動販売機の外扉が勢いよく迫ってき』ました。反射的に飛びのいた井瀬に、作業着の中年男性が頭を下げています。 ・その数分後の現実: 『まもなく、鴨宮…』の車内アナウンスで目を覚ました井瀬は電車を降り『通勤鞄と上着を右手に引っかけ』ホームを歩きます。そんな時、携帯を取り出した井瀬は五味渕からのメール『電話での問い合わせからいくつか案件浮上。今日か明日、回ってほしい』を見て『了解』と返信します。『その瞬間、視界に大きな壁が飛び込んでき』て、慌てて横へと動いた井瀬に、『あっ、すみません…』と『作業着姿の中年男』が幾度も頭を下げました。 上記した通り、夢の内容は『現実の出来事を振り返る感覚』に近い『明晰夢』であり、その内容が『本当に起きる未来の出来事』であることがわかります。『どういうことなのか、頭が混乱していた』という井瀬は『夢と ー 今、まったく同じことを経験しなかったか』と不思議な感覚に支配されていきます。なかなかに面白い感覚の物語です。似たような感覚に”デ・ジャブ”というものがあると思います。恩田陸さんがご自身のありとあらゆる作品で登場させるものでもあり、”既視感”とも呼ばれます。ただ、こちらはあくまで自分が今経験していることをかつて経験したことがある、知っているという感覚です。辻堂さんがこの作品で描く『予知夢』は、そうではなく、その『夢』が現実に起こるという違いがあります。”デ・ジャブ”に危険はありませんが、『夢』の内容が現実に起こる『予知夢』は悠長なことを言っている時間はありません。 そんな物語最大の『予知夢』であり、主人公・井瀬が恐怖することになるのが、自らの死の場面に関するものです。『二〇一九年二月四日(月) 十六時五十四分』という日時を自らの『携帯のホーム画面』で確認した先に展開するその夢は、友人の五味渕と顔の見えない男がホームで揉み合い、巻き込まれた井瀬が五味渕と共にホームから転落、『電車が迫って』くる中に、『隣で絶叫する五味渕』、そして『ぶつかる』というまさかの瞬間を見る『夢』です。なんとも緊迫する場面、それを『明晰夢』としてはっきりと体感、目が覚めても記憶が残り続けるという井瀬。これは、恐怖です。とはいえ、日時がわかっているのであれば、その時間にホームになど行かなければ良いだけ、そんな風にも感じます。そこに、この作品では片岡紗世という謎の女子高生を登場させます。なぜか、彼女も『明晰夢』、『予知夢』のことを知っていて、かつこんなことを井瀬に語りかけます。 『今から七年後に横浜駅のホームから転落して死ぬ、っていう夢を見たんです』。 そんな女子高生は付き合っていた先輩が見ている前でそんな死を迎えたとも語ります。だからこそ、女子高生は行動に出ます。 『電車に轢かれて死ぬなんて、嫌じゃないですか。だから、七年後にそういう未来が訪れないように、現在の自分の行動を変えることにしたんです』。 過去へとタイムスリップした人間が、未来を変えるために未来に繋がるであろう過去の出来事を変えようと奔走する…タイムマシンが登場するようなSF作品ではよくある展開ではありますが、この作品にはタイムマシンは登場しません。あくまでそれは『予知夢』です。しかし、現実は甘くありません。そんな女子高生はこんな風に続けます。 『どんなに頑張っても、七年後に電車に轢かれて死ぬっていう未来は変えられないんです』 『それどころか、未来を変えようと焦れば焦るほど、未来はどんどん悲惨になっていきます』 これは衝撃的な現実です。自分がいつ、どこで、どんな風に死ぬかわかっているのにどうすることもできないという残酷極まりない現実。物語では、それでも『自分の死を回避しようと』試みる井瀬の試みと結果論が淡々と説明されます。 ・『一か月前から車通勤』に変更 → 『一月に死ぬ夢を見た』 ・『二か月前から』車通勤に変更 → 『十二月に死ぬ夢を見た』 ・『すぐに車を購入してやろうと中古車販売店に足を向ける』 → 『明日死ぬ夢を見た』 ・『引っ越して徒歩通勤』 →『踏切で轢かれる夢を見た』 ・『退職届を書く』 →『事務所の建物に脱線した電車が突っ込』み、スタッフ一同『木っ端微塵に吹き飛ばされる夢を見た』 ↓ ・『抗うことを諦め』る → 『夢の内容は元に戻った』 もうどうしようもないことがわかります。しかし、起こることは自らの死であり、そう簡単に諦められるものではありません。『いったん戦いをやめた』井瀬は、『まだ半年あるとも思えたし、あと半年しかないという焦りもある』という日々を生きていきます。”究極のタイムリミットサスペンス”という本の帯の言葉は”言い得て妙”という言葉そのものです。 そして、この作品は兎にも角にもその構成が非常に込み入った作りになっているのも特筆できます。そんな作品で主人公を務める井瀬の置かれた大前提を説明しておきましょう。 高校三年の時、ある事件により懲役五年の刑を言い渡された主人公の井瀬は、『少年刑務所』に服役します。そんな刑務所から『出所したら、真っ当な仕事をして普通に生きたい。少年刑務所は地獄だ』という中に高校時代の友人であった五味渕に手紙を出したことをきっかけに、出所後、五味渕が設立したNPO法人コネクテッドに迎えられます。そして、『ITを利用して寄付者と奨学生を一対一で繫ぐ』という考え方の下に貧困家庭の子どもに給付型奨学金を支給していくという仕事に関わっていく井瀬。 物語は、出所後、ある意味落ち着いた仕事をする日々の中に、そんな井瀬がある日から見るようになった夢によってその人生が大きく揺らいでいく様が描かれていきます。 全体のイメージは以上でおわかりいただけると思いますが、そんな物語では、次から次へと謎が提示されていきます。上記もした女子高生・片岡紗世の正体は?NPO法人の誰かが秘密を抱えている?小学校時代の友人・粕谷拓実は敵か味方か?等々、こんなにミステリーの大風呂敷を広げて大丈夫なのか?と心配になるくらいに、謎が謎を呼ぶ展開を見せていきます。しかし、そんな中でも読者が認識している前提が一つあります。それらは全て、主人公・井瀬が死を迎えるとされる『二〇一九年二月四日(月) 十六時五十四分』までに決着し、そこに何らかの結末がもたらされるということです。これは間違いなくおもしろいです。この作品を読む読者は朧げながら隠された全体像が明らかになってくるのを感じます。しかし、辻堂さんは、そんな読者が考える結末の二段、三段上のゴールへと読者を導いていきます。正直なところ、”ページを捲る手が止まらない”という読書とはこういうことを言うんだ!と実感する読書がそこにありました。そして、そんな結末に私を待っていたのは、今まで全く経験したことのない不思議な読後感でした。 “ハッピーエンドな結末ではない。なのに、なぜか読後感は悪くない” なんとも摩訶不思議な感情に襲われるその結末。練りに練られた、凝りに凝った辻堂さんの緻密な物語設計に舌を巻く、そんな物語の全体像がここにはありました。 『もう、夏という季節を経験することはないのだろうか』 人は自分の人生が永続することを前提として日々を生きています。しかし、そんな前提が崩れる可能性を知ったなら、季節の移り変わりといった日々の些細な出来事にも愛おしさを感じるようになるのだと思います。この作品では、自身が死ぬ日時を知った主人公・井瀬巧が、そんな死の日までの人生を複雑な感情の中に生きていく姿が描かれていました。『明晰夢』、『予知夢』といったなかなかに面白い概念が登場するこの作品。巧みな物語構成に、最後の最後までハラハラドキドキ、怒涛の展開を見るこの作品。 今まで経験したことのない複雑な読後感、さまざまな感情渦巻く不思議な読後感の中に、げみさんの描かれた素晴らしい表紙をじっと眺めてしまった、素晴らしい作品でした。
過去と未来の出来事を夢の中で経験する男と少女の物語。 次はどうなるのだろうとどんどん物語に惹き込まれて、一気に読み進めることができました。登場人物の関係性が明らかになっていく場面では、感情が揺さぶられて涙がこぼれました。読み終わった後も表紙の絵を眺めながら、物語の余韻に浸るくらい良い物語でした。
運命に立ち向かう運命を越える - 辻堂ゆめ「今、死ぬ夢を見ましたか」 ★★★★★ すごーーーく良いです。特に終章はイッキ読みしちゃいました。思わず「まぢかーー」と独り言がでました。映像化できる形式なのに唸るネタは凄いのひとこと! ファンタジー感のある、明晰夢という設定ですが、井瀬の実生活がリアリテ...続きを読むィがあり、現実世界で起きる実際の出来事のように感じられます。また、会話の小ネタが伏線になっているなど構成が見事です。 映像化の際は、永野芽郁さん主演でお願いします。あっ、でも紗世目線に改編しちゃやだよ。そっちは裏テーマだからね!あくまで裏だぞ!白地にピンク色のタイトルにするなよ! 辻堂ゆめ先生の名前を冠にした作品(舞台は辻堂を含む東海道線だし、夢を扱っているし)なので、代表作になること間違いなし!。
電車に轢かれて死ぬ夢?日にちも時間もわかるその夢が真実? その少女と出会わなければそこまで考えただろうか?夢を忘れて何の気なしにその時を迎えただろうか? 空を飛ぶ夢を子供のころに見たなと思い出す。
こちらの作品は、さてさてさんから、私の大好きなげみさんが表紙を手がけた作品ということで、教えてもらいました。さてさてさん、ありがとうございます。 主人公は実父を高校生の時に殺害し服役を終えて、友人の五味渕が立ち上げた奨学金支援を行うNPO法人に就職した井瀬巧…。通勤に利用する東海道線の車中で、...続きを読む五味渕とともにホームから突き落とさたり、小学生の同級生である粕谷拓実を刺してしまう夢をみることに…。そんな井瀬に話しかけてきた女子高生の片岡紗世…彼女もまた同じような夢をみたことがある…それは「明晰夢」でありどんなに抗おうとしても、見た夢は現実になってしまうのだと話す…。 刻一刻と時間が進んでいく中で、徐々に解明されていく真実にドキドキしました。運命は変えることはできなくとも、どこかすべてがわかった上でということなので、わからないままよりはずっといいのかと思いました。大事な人を守りたい思いが、ぎゅーっと詰まった作品でした。
読みたいリストに辻堂ゆめさんのが幾つか入ってるけど、これが初読み。 主人公の井瀬巧が花火大会のあった茅ヶ崎駅で人身事故で電車が止まっているときに、自分が電車にひかれて死ぬ夢を見る。同じように死ぬ夢を見る片岡紗世に声をかけられ、それが運命であることを知るが、避けようとすると事態はさらに悪化する、という...続きを読むことも気づかされる。やりがいのある仕事に就けてありがたく思いつつ、他にも理不尽な夢を見ることの解釈を試みるが、なかなか進まない。死ぬ日まであと3日となって、事態は急展開し、すべての伏線が回収されていくが、運命は変えられないラストだが、もう少しハッピーエンドはなかったかな、と思ってしまう。
前半、誰もが経験しそうなことが描かれていて、妙に恐ろしい。自分自身も体験しそうなありふれた光景。これはなんだか不気味すぎる。そして後半、巧妙に作られたストーリー展開。ハラハラしながら、そしてちょっぴり切なく終わっていくストーリー。なかなかな読み応えだった。
乗っている電車が人身事故を起こした直後から、明晰夢を見るようになった井瀬。女子高生の紗世によるとそれは現実になるものであり、それによると井瀬も紗世も電車に轢かれて死ぬことが決定しているのだという。その運命は変えようとしても事態が悪化するだけであり、そのまま座して死を受け入れるしかないのか。さらに井瀬...続きを読むの明晰夢の中で起こる不可解な事態は何を示しているのか。スリリングな読み心地のミステリです。 少年院から出所して更生の道を歩み始めたところで、逃れえぬ運命を知ってしまった井瀬がどのように行動するのか。前科持ちで学歴もない井瀬だけれど、しかし彼はとんでもなく冷静だし強い人物であると感じます。だからこそ彼を取り巻く不審な状況にハラハラさせられどおしでした。立身出世した不良仲間の五味渕と、小学生時代の綺麗な思い出だけを共有した粕谷、対照的とも思える二人の友人のどちらが味方となり得るのか。そしてまた七年後に死ぬことを予知した紗世がどのように生きるのか。リミットが迫っていくのがもうつらくて、だけれど先が気になって仕方ありません。 真相は予測がついたところもあり、まったく予想外だったところもあり。ああ、そういう結末になるのかあ……だけど流れ的にはこれしかないんですよね。
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