垣根涼介のレビュー一覧
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街道と大河を交わらせた交通の要衝に、商人と武士が融合した城郭都市を築く。そのような意味での城下町という概念は、日ノ本では宇喜多直家が初めて具現化した。この新しく普請した石山城が、のちの岡山城である。さらに言えば現在の岡山県の商業発展の基盤となった。
次に城下町をも内包した城が出来たのは、これより五年後、近江国に着工した安土城である。むろん、その城主は織田信長であった。
本書は、その宇喜多直家の物語である。
武力とはすなわち財力である。それを直家は実践していく。
乱世に生きる上での人知の深さは、その当人に、悪の要素が多少なりとも入っていることから生まれる。正確には、悪とは何かを充分に知りながらも善人である必要がある。何が悪かを充分にわきまえつつも、基本的にはなるだけ善人としての行いを心掛けている必要があるということだ。それが、表も裏もないまるっきりの善人では、この世が激しくうごめく動乱の世にあって、人の上に立っていくことなど到底できない。
人間は、その風向き次第では、ごくごく普通の性質でも、必要に迫られればいとも簡単に悪人になることもでき、また、利害の絡まぬ状況次第では、すぐに善人に成り代わることもできる。
山野の獣というものは、強いから生き残っていくのではない。その用心深さで生き残っていくのだ。
生きておる冥利とは、好ましい相手に当てにされることである。つまり自分の生は、自分一人でこしらえたものではない。自分がこれまで関わってきた数多の人々の、無数の生の断片で成り立っている。その断片の連なりの上に漂い、時に枝分かれし、時に戸惑い、笑い苦しんだ結果、今の自分がいる。いわば、今の自分とは、それら断片の集積だ。そしてその断片は、これからも生きていく限り、自分の中に落ち葉のようにさらに積み重なり、発酵していく。どこかへと自分を誘っていく。それは、場所ではない。まだ見ぬ心のどこかへだ。
直家という男は目的さえ達せられれば、そのやり方には一向に頓着しないようであった。
戦の心得は、
いつさつたしょう
「一殺多生」
であると、直家本人がしばしば家臣たちに公言していた。予め敵の威力を削ぎ、なるべく味方の損傷を経ず戦に勝つには、奇策はいくらでも弄してよい。卑怯と世間でそしられようが一向に構わない。武士道とはそもそもが畜生道であり、この世界にあっては、目的は手段を正当化するのだ、という意味のことも、折に触れて口にしていた。
宇喜多直家は臆病だからこそ、先々のことに対しても先回りし、あれこれと手を尽くす。遠方の織田家のことも調べる。そもそも武門の知恵とは、その根を洗えば臆病さから発酵するものではなかろうか。だからこそ宇喜多家もこのように大きくなった。
この世に絶対などということはない。もしあるとするならば、人はいつかは死ぬということだ
無慈悲に踏み付けられるのが嫌なら、大なる者が襲い掛かってくる前に、自らがその攻撃に耐え得るくらいに大きくなっておくしか仕方ないのだ。その大きくなった分だけ、相手はこちらに気を遣う。
自分の人生は、存外に自分では決められない。たとえ自分がこうであれかしと願っていても、それまで自分と関わってきた人々との流れ、つまりは世間が決めることなのだ。自分の生き方の在りようは、世間の関わりと、自分のこれまでの来し方の因果によって、思わぬところへ定められる。人は生まれながらにして、岩肌を伝う水のようなものだ、と。ある方向に向かおうと必死になってあがいても、不感もなく流れゆく方向を岩の起伏によって変えられ、遮られてしまう。人が唯一決められることは、その立っている岩肌の舞台から降りていくことだけなのだ。退く自由しかない。
人はたとえ互いに好き合っていても、それぞれの過去の重みには、自らが一人で耐えていくしかない。夫が、妻の来し方を背負うわけにはいかない。自分一人で過去に折り合いをつけ、持ち越していくしかない。そこで示せるのは安易な同情ではなく、相手に黙って寄り添うことだけだ。
人は基本、損得で生きるものだが、常にそれだけではつまらない
長い目で見て物事の得手不得手は、そのことを好むか、気が乗るかどうかで決まる。好まぬままやっていれば、いつかは心が破れ、自滅する。つまりかとは、気性のことなのだ
何かを得ようとするなら、何かは手放す。生きるとは、その痛みを伴う分かれ道の連続なのだ。 -
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鯨と煙の冒険(『百瀬、こっちを向いて』番外編/中田栄一)
一服広場の謎(『防犯探偵・榎本径』シリーズ番外編/貴志祐介)
皇帝の宿(『校閲ガール』番外編/宮木あや子)
街で立ち止まる時(『ススキノ探偵』シリーズ番外編/東直己)
同窓会(『君たちに明日はない』シリーズ番外編/垣根涼介)
心の距離なんて実際の距離にくらべれば、(『遠くでずっとそばにいる』番外編/狗飼恭子)
平和と希望と(『さよならドビュッシー』番外編/中山七里)
ゴロさんのテラス(『春を背負って』番外編/笹本稜平)
雁首仲間(『天地明察』番外編/冲方丁)
落としの玲子(『姫川玲子』シリーズ番外編/誉田哲也)
オレンジの水面(『北天の馬たち』番外編/貫井徳郎)
多田便利軒、探偵業に挑戦する(『まほろ駅前』シリーズ番外編/三浦しをん)
小説を読んだことがなくても映像作品を見たことがあったり、全く知らないシリーズは少なかった。 -
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定番コースだと思うが、「君たちに明日はない」、「ワイルド・ソウル」からの流れで、垣根涼介の歴史物を読み終えた。(「光秀の定理」は未読)
信長・秀吉・家康の天下人三名の世間一般の人気はこの登場順通りだと思うが、上司として誰が良いか、というと、逆の順だろうと改めて思った。
信長が現代の株式会社の社長であれば、解任動議が毎回出るだろう。
信長による家康謀殺計画はフィクションの筈だが、妙にリアリティを感じてしまうのは、信長のキャラが立っているが故か。
信長程の合理的精神の持ち主が「織田家」という価値観をほんとうに重視したのか史実としてはよく知らないが、違っていて欲しい、と思った。
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極楽征夷大将軍は読む予定は今のところないのですが、
2005年第18回山本周五郎賞 受賞作
リストラ請負会社に勤める主人公
依頼のあった会社のリストラターゲットとなった社員達と面談し、依願退職に持ち込むのがお仕事
そのリストラ対象者の会社人生と人柄を描く
File1から5
そこそこ人間ドラマが面白かったのですが
多少中途半端感が残るかなと思いました
ですが、やっぱり思い直し この面談のその後は
想像してくださいというスタンスが
この作品の良さだと思いました
リストラ対象者だった女性とこの主人公が
お付き合いを始めるのですが
まあ、お似合いのふたりですのでよろしいかと
リストラ依頼の業種は多方面で それぞれの職種で現実感があります
特に合併後の大手銀行の内部事情は、うなずける方が多いのではないかしら
「君たちに明日はない」としながらも
明日がある時もある
「俺たちに明日はない」は、本当に無かったけれど
ロードショーでは見てないですよっ
テレビの洋画劇場とかで見たんですっ