垣根涼介のレビュー一覧
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織田信長の命を受けた明智光秀が腕利きの友垣2人と風変わりな武田家臣の四人で毛利の銀山を密偵する物語。
時代小説のポイントである個性的でクセがあり魅力的な人物像が書かれている。
今とは違う倫理観や死生観ながら人の営みや本質は変わらない。
苛烈な描写が先行しがちな織田信長だが、本作では加えて怜悧に書かれている。
人の上に立つヒトは少なからず非人情なのは今も同じ。
『〇〇で「ありましたか」』末尾の言い回しが安芸地方の方言がルーツなのは意外だった。
銭の世であるからこそ、その銭で浮世から俯瞰する立場を買うのだ。
夢中になるものがありますれば、そこに没入し、世の縛りから自在に舞うことが出来るように思 -
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街道と大河を交わらせた交通の要衝に、商人と武士が融合した城郭都市を築く。そのような意味での城下町という概念は、日ノ本では宇喜多直家が初めて具現化した。この新しく普請した石山城が、のちの岡山城である。さらに言えば現在の岡山県の商業発展の基盤となった。
次に城下町をも内包した城が出来たのは、これより五年後、近江国に着工した安土城である。むろん、その城主は織田信長であった。
本書は、その宇喜多直家の物語である。
武力とはすなわち財力である。それを直家は実践していく。
乱世に生きる上での人知の深さは、その当人に、悪の要素が多少なりとも入っていることから生まれる。正確には、悪とは何かを充分に知りなが -
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ネタバレある1つの歴史小説を読む時、その小説が描いている時代や主人公が、他の小説、TV、映画などによく取り上げられているものだったりする場合、私はどうしても前に読んでいたり、見ていたりしていたものとつい比較してみる。勿論、今読んでいる小説にしろ、前に見ていたTVや映画にしろ、所詮フィクションであり、その小説などの主張したいテーマによっては歴史的事実を意図的に省略したり、文献をわざと曲解したりすることもあるかもしれないと分かってはいるが。
この小説の場合、登場人物は全て実存した(であろう)人物なので、行った歴史上の行為行動が殆んど全て分かっている。そしてその人の考え方、思想はその人の行為行動からしか推測