垣根涼介のレビュー一覧
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仕物(暗殺)を得意にした卑怯な謀略家というイメージの宇喜多直家の物語下巻。
こちらでは勢力を拡大しつつある織田信長に付くのかどうかの葛藤、長年の付き合いがある黒田満隆・官兵衛親子を通じての秀吉からの取り込み工作、毛利家・三村家・浦上一族・尼子一族などの一大勢力と渡り合い領地と石高を増やしていく様子などが描かれていく。
上巻のレビューでも触れたが、木下昌輝さんの「宇喜多の捨て嫁」とは家族関係も描かれ方が違う。
最初の妻やその間に生まれた娘たちとは距離があり最後まで和解することはなかった。だが後添いであるお福と彼女の連れ子、そしてお福との間に生まれた嫡男(後の秀家)とは睦まじい。睦まじ過ぎて上 -
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木下昌輝さんの「宇喜多の捨て嫁」を読んで以来、気になっている宇喜多直家。
仕物(暗殺)を得意とし、特に娘を嫁がせてはその家を滅ぼすという、武士としてはダークなやり方にネガティブなイメージを持っていた宇喜多直家を木下さんは様々な視点で新たな印象に変えてくれた。
今回の垣根涼介さんの「涅槃」は450ページ超上下巻という大作。
上巻では不遇の少年時代から宇喜多家再興までを描く。
木下版ではサラッと描かれていた少年時代に130ページを割いている。落城した砥石城から落ち延び、豪商・阿部善定に庇護された数年間は直家の人間形成や考え方の基礎を作ることになる。
父・興家は全く頼りにならないばかりか善定の娘 -
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殺し殺されは武士の常。
男の妬みは女のそれより根が深い。
ここは土豪が乱立する備前の国。
有力豪族であった宇喜多家だが、同じ浦上家家臣の島村氏に夜襲をかけられて落城し没落していた。
一戦もせずに逃亡を図った現当主、興家と妻、そして幼子の三人は備前福岡の商人の家で逃亡生活を送っていた。
何もすることのない日々。
そのやるせなさに、八郎は鬱屈していた。
武士になんかなりたくなかった。
八郎は成長し、やがて再びかつての主君、浦上のもとに出仕する。
女を知り、槍を学び、そして一城の主として乱世を生きる。
そこらのビジネス本を読むよりは、よほど役に立つ歴史小説。
今回のテ -
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★3.1 2021.03.30
太刀川要が深夜のドライブ中に遭遇した大きな黒い犬。
太刀川とその大きな犬の視点が交互に語られるハードボイルドっぽい物語。
太刀川と大きな犬の似たもの同士な不器用な優しさ。
彼らの人生が今後どこかで再度交差することを願う。
↓↓↓内容↓↓↓
太刀川要が深夜に遭遇した異様な大きさの黒犬は、半死半生の状態だった。動物病院へ駆け込むと、不可解なことに判別不能の犬種で獣医も戸惑うばかり。やがて始まった共同生活は、かたくなに孤独を貫く男の見慣れた風景を変えていく。そして湧き起こる、ある疑惑の真相とは―。ジョンの眼差しを通じて見つめる人の営み、滑稽さ、哀しみ。淡く胸に