垣根涼介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
二十歳になったアキは百人を配下にした渋谷のチームを解散後、ヤクザや政治家などの裏金を専門に強奪する犯罪プロフェッショナルの仲間になることを決意する。
あらゆるクライム・テクニックを修得するために仲間の柿沢と桃井から様々なトレーニングを受けるアキ。
彼の実戦デビューは成功するのか──。
「ヒートアイランド」第2弾。
アキが犯罪のプロになる成長物語、といったお話で、倫理的にはアレですが中々面白かったです。
裏の顔を作るために戸籍や住所・車を手に入れたり、格闘技や銃の扱いや経済知識を学んだり…。
物語の前半はタイトル通り、一人前の泥棒になるための修行がつぶさに説明されていきます。
この通りに習得したらほんとにアンダーグラウンドのプロになれそうな実践的なレッスンで、読み応えがありました。
最終章はいよいよアキの初仕事、実戦デビューのお話。
ヤクザの裏金を強奪するためにホテルに忍び込んで電源やセキュリティシステムに細工したり、賭場に乱入したり…。
用意周到な準備とド派手なアクションシーンで読者を小気味よく惹きつけておきながら、最終的にはまさかのガムテープ探しというアナログなアクシデントにアキたちは右往左往…というのが笑えます。
この肩すかし感というか、ドラマの緩急の付け加減が絶妙で、読ませる仕掛けが半端ないと思います!
また、前作は魅力的な女性キャラが出てこなくて残念だったのですが、今回は個性的な女性が複数登場したので満足でした。
桃井の昔の彼女、コンパニオンの明美、家出中年女性と、どの女性も、迷いながらも最後には自分の人生を覚悟を持って引き受けていく様子が描かれています。
逆に言えば覚悟を決めた者だけが人生を変えられるのかも…と思いました。
みんな、男性陣よりもカッコよくて、ゲストキャラだけどまた今後も出てきてほしい!と思うほど印象的でした。
ヤクザの柏木の番外編も含蓄のある内容で、すごく面白かったです。
なんか読んだことあるな、と思ったら「人生教習所」の柏木さんなんですねー!!
というか、この「ギャングスター~」の方が先だったんですね…こっちを先に読めばよかったわ…。 -
Posted by ブクログ
まあまあまあ、短篇は得手不得手があるので全体的な評価は 微妙になってしまいました。
しかし、自分が思い入れがある作品のサイドストーリーはやはり気になります。
百瀬~の田辺くんを主人公とした『鯨と煙の冒険』はよかった。百瀬~でも田辺くんのキャラクターは光っていたのでこの話が読めて嬉しかったです。
『多田便利軒、探偵業に挑戦する』は話はどうということもないのですが、相変わらずの多田×行天コンビにニヤつきます。
ただ全てのストーリーにJTの企画らしく必ず煙草、喫煙シーンがあって(不必要に)もうそれだけで気持ちが削がれた。
今の世にこういう企画は合わないと思う。 -
Posted by ブクログ
重たい海外小説の後に本棚から取り出して読み始めた。未読だと思っていたが、9年前にしっかり読んでいた。レビューまでしていた。まあ。いいかと内容を全く忘れたままで読み始めたところ、NHKでドラマ化されたものを見た記憶が蘇ってきた。田中美佐子と堺正章の脇役陣は想い出したが、坂口憲二の主役はあまり印象にない。ぼくの中でこの小説の主人公は、フィットしていなかったのだろう。坂口憲二では少しイケメン過ぎる。
アウトソーシングでリストラを請け負う会社、というのがバブル崩壊後のこの時期には売り上げを伸ばしていて、資本金が勧めの涙みたいなこの小さな会社を舞台に、仕事の退職や移動や見直しということをポイントに様々な職種に就く人たちの、人間の棚卸しが改めて題材として面白くて、この作家うまいところに眼をつけたものだと、そのストーリーテリング含めて感心したものだ。そもそもこの作家はクライム小説が素晴らしく、それをおっかけていた筈なのだが、どういうわけかこのシリーズ、より平凡な小市民の現実に寄り添った小説でも、山本周五郎賞を獲得しちゃった。やはり実力があるのだなあ。
シリーズは、リストラ請負人・村上伸介をレギュラーとした連作中短編集で、それぞれの作品毎に個性的なゲストキャラクターが登場。両側の眼線を入れ替えながら展開する、非常に読みやすいストーリーである。作品毎に会社が変わるので様々な業界や、変わった職場なども覗きながら、そんなバリエーションのなかで、様々な種類のゲストヒーロー&ヒロインたちが取り上げられる。彼らの生き方を巡る物語。
個人的には自分もリストラを受けたことがあるし、リストラをせねばならぬ立場にも立ったことがあり、小説を読みながらもそのときの両サイドでの自分の判断を棚卸しさせられるような、少し、自分の人生の鏡みたいな小説だな、と冷やりとさせられるところなどもありつつ、それ以上に自分のやってきた仕事を振り返り、そこそこいい仕事をやってこられた部分もあったりして(もちろん不甲斐ない結果も山ほど!)、今の仕事ももっともっとレベルアップしたりして行きたいものだなあ、などと心を入れ替える機会になるのは、この本の中でいろいろな人たちの人生に向き合えたからだと思います。
(2019.03.28)
以下、初読時レビュー
『君たちに明日はない』の一巻目が出てから早や5年。2.5年ぶりに出た三冊目のシリーズ作品集は、ちょうど本シリーズがテレビドラマ化される機会に合わせて出版されたものなのだろう。なので、第二巻では『借金取りの王子』以外に副題がなかったのだが、本書ではテレビドラマで作品に馴染んだニューカマーをしっかり捕まえようと、ドラマと同じ副題がしっかり接続された。
小説では顔などのはっきりしなかった人物たちにテレビドラマでは、顔が与えられてしまうのだが、これを無視して読んでも、意識に取り込んで読んでもそれは読者の勝手である。ドラマを気に入るかどうかがポイントかもしれない。ぼくはこのドラマが気に入ったので、村上真介は坂口憲二、芹沢陽子は田中美佐子で読んでみた。前二冊は顔がなかったので、そのままという手もあったけれど、まあドラマがよかったので。
本シリーズは、リストラ請負会社から、やってきた村上真介と秘書・川田美代子の二人が、いわば各短篇小説の狂言回しの役割となり、主役はそれぞれの仕事を追われようとしている社員たちであり、その個性である。その個性は仕事と密着している場合もあれば、仕事というよりは人生観・世界観の突出が会社とフィットしない場合などもあり、それらが、いつの間にかリストラを題材にしながら、それぞれの人間小説として完成してゆくあたりが面白い。
もちろんこんな稼業を選択したということに対する村上の自己への疑心が根底にあり、それを仕事を通じて次第に誇りに変えようとする大きな連作としての流れもある。しかしそれらは個々の短篇小説に登場するそれぞれのキャラクターたちの魅力によるものが大きい。南米冒険小説や都市型クライム活劇の傑作を書く作家が、こうした地味なシリーズを書き、その一冊目で山本周五郎賞を獲得してしまったという、皮肉というべき流れも、作品に親しめば、決してわからないでもない。それだけ、このシリーズ世界は既に定着し、安定して一人歩きをしているのだ。
ちなみに、作者の車好きは知る人ぞ知るところ。本書のうち、自動車整備士を主人公にした一篇では、カキさんという作家が、整備士のお得意さんとして名前だけだが登場してそのフリークぶりを語り、笑わせる。そんな遊び心も含めて、垣根涼介の本来のジャンルであるクライム・ノヴェルとは違った地平での肩の凝らないシリーズながら、作家の幅と奥行きと、双方ともに感じさせる佳品集であった。
さて、時を経ずして『ボーダー ヒート・アイランド5』というクライム活劇の新作を出してくれた。こちらもシリーズ名表記は初めてとなる。見ていないが映画化されたことによるタイトルの知名度アップが背景にあっただろう。映画化作品はまだ見ていないが、是非、時間を作ってDVDチェックと行きたい。
(2010.07.13) -
Posted by ブクログ
元経団連会長が主催し、そうそうたる団体や企業が後援する「人間再生セミナー 小笠原塾」。
募集広告を目にして集まった個性的な人々は人生の再起をかけ、それぞれの思いを抱いて参加する。
果たして彼らは人生をやり直せるのか。
人生に行きづまった人たちが小笠原で自己啓発セミナーを受ける。
その美しい自然と数奇な歴史に触れることによって、登場人物たちは少しずつ変わっていく。
それだけの話なのですが、妙に心に残るものがありました。
前半は人生の成功確率論や人生の目的設定、自己認知などのセミナーの様子が淡々と描かれ、後半は小笠原の歴史と共に生きた島民たちの体験談が語られていきます。
セミナーを受けただけで人の気持ちはそんなにすぐ変わるものではないと思いますが、気づきを得て少しずつ変容していこうとする登場人物の心の動きは気持ちよく、何だか嬉しかったです。
物語の力点は自己啓発セミナーの内容や小笠原の歴史に置かれているので、キャラクターの絡ませ方やエンタメ小説としての緩急はイマイチだったかな。
でも、年齢は関係なく、心持ちが若い人の再出発を見るのは(読むのは)、いいものですね~。