森博嗣のレビュー一覧
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ネタバレ加部谷がプリンを食べているだけで、微笑ましい。
どうか元気に過ごしていてくれ。
自殺がタブーでなくなって、法律として認められるようになったら、幇助の罪がなくなるのか。
それは大きい気がする。望まれて手伝ったなら、良いことをしたともいえると思う。
作中で触れられていたような、薬を飲んで眠っている間に死ぬことができたら良いのにって、みんな一度は思うだろうけど、簡単に手に入ってしまったら世界は大混乱で、悪いことをするだけして、死んで逃げる人が続出する可能性も出てきてしまうから、むずかしい。
本当に苦しんでいて、1年後も気持ちが変わらなかったら……とかなら、ありかな。
そのような方法があることは救いになると思う。 -
Posted by ブクログ
理想を追い求めた「嘘」は、いずれ綻びを生む
Vシリーズの中の今作品は探偵役の紅子さんの「科学者」としての考え方や佇まいを存分に生かして、容疑者や被害者となっている「科学者」たちにどのような推理を、どのような解釈をするのかというところが見どころであると思う。
殺害方法についてはどちらかというと古典的でわかりやすく、「誰がやったか?」がわからなくても、「どうやったか?」や「なぜやったか?」ということは導き出しやすいと思う。こういった計画的な殺人においては、計画段階と実施段階における、周りの人や状況の変化に伴うリアルタイムでの変更の意図を読み解けば自ずと導き出しやすいと思われる。
今作品はどちらかというと紅子さんが解きほぐした真相に対して、紅子さんが容疑者、犯人に対して返した「事件の解釈」がとても「科学者」としての一面がありつつ、とても品のある導きであったように感じた。
解説で志らく氏が述べられているようにこのシリーズはとても品がある。キャラクターのアイコンは女装をする美少年、完璧そうな美女、ドジっ子っぽい刑事とかという現代劇に合わせたもの。
それに対してその人物像をセリフや行動で肉付けする際に、品の良さを与えるようなセリフや行動で示している。
最近のとにかくバズればいいとかの過激かつ消費的な言動ではなく、深掘りをして読み手に染み込ませていく、時間をかけて読み手の中にキャラクターを描いていく。
そんな現代にはあまりない「余白」かつ「余力」、「余裕」がこのシリーズをより深めているんだなと思った。 -
Posted by ブクログ
わりと心配性、考えすぎと言われることが多いので、この本を読んでたら自分を肯定してもらえているようでほっとした。
【印象に残ったフレーズ】
p.30-p.31 人間は、機械などよりもはるかに不確定だから、信じていたのに裏切られる、という場面が頻繁である。そもそも、信じていたのが勝手な思い込み、つまりは観察不足による見込み違いなのである。詐欺のように、本当に相手が悪い場合も稀にあるけれど、多くの場合、そうなることを予測できなかった自分の落ち度と捉えるのが妥当なところだろう。
p.222 絶対に失敗しないと言いきれることが、自信ではない。やれることは全部やったと言いきれることが、自信である。 -
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森博嗣の作品は実は1作しか読んだことがない。「喜嶋先生の静かな世界」だけ。数ある有名作のなかでなんでこれ、と言われそうだけれど、かれこれ10年くらい前のことなので自分もよく覚えていない。あらすじが面白そうだったのかな。
でもユニークで衝撃的な作品だったことは覚えていて、住む場所を何度か変えても、本棚にはずっとこの本を残している。
近頃はエッセイを読むのが好きで、色々な人のエッセイを読むようにしている。恥ずかしいことに森博嗣のエッセイシリーズがあることも、しかももう13作目ということも知らず、本屋でたまたま目に入り何も考えずに買った。
難しいことを考えていそうなイメージはあったけれど、こんなことまで考えて過ごしているのか、と凡なる自分にはただ感嘆するしかなかった。ニュートラルとも違うし、フラットとも違う不思議な考え方だ。
(著者曰く、よく書かれるという)「上から目線」とは思わなかったけれど、主語がデカいなと思うことはあったかも?しかしながら嫌な気持ちになるわけではなく、そういう考え方もあるか〜と新たな視点を得られた。
印象的だったのは70近い森博嗣が「最近になって自分のことがようやく分かってきた」と書いていること。これだけの人でも70年近く生きてそう感じるのかあ、と半分以下の年齢の自分が勝手に元気付けられた気がする。
思っていたようなエッセイではなかったし、正直内容は気楽に読めるものではない(難解)ので過去のクリームシリーズをすぐに読めるかというとそうではない、が、いつかは読みたい。 -
Posted by ブクログ
Vシリーズの四作品目はテレビ局の公開撮影の最中に起こる殺人事件、登場人物の1人の練無さんに焦点を当てたお話。個人的には今までのVシリーズの中では一番読みやすく感じた。
小説ではありがちな主要キャラの深掘りをするにあたり、練無さんの「キャラクター性」を生かした推理の筋道にしているところは推理小説としてはとてもよく単純ではあるが練無さんのアイコンを軸に犯人を絞っていく過程がなるほどなと思った。
犯人の独白が小説内に多いことからも犯人像を絞りやすくしているのかなと思いつつ、それが罠であり思いっきりミスリードされた。はっきり言っちゃうと犯人が判明した時の意外性のところには突っ込んではいけないかもしれないが、それに対してお釣りが来るほどの「論理性」と「動機の恐ろしさ」があったように思える。
森ミステリは動機の面に哲学性が高くあり、そこに共感ができるかと言ったところで賛否両論がある作品が多い傾向にあると思うが、作者の行いたい実証実験としての推理小説だとしたら、これは共感するというよりも、そこに含まれる作家性を読み解き、今回のテーマを読後に考えた方が良いと思った。そう思えば確かに人間誰しもがその人なりの仮面をかぶっているのだな、そしてその仮面が「自分軸」なのか「他人軸」なのかがその人の生き方に影響があると感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初から疑いの目を向けなかった人物が犯人だった。アリバイがあると思い込んでいたのに、「そうくるか」という驚き。前提ごとひっくり返される逆転の発想が凄かった。
謎を解き明かす過程で「境界条件」など数学的な言葉。数学の問題を解くように推理が進んでいく論理性が面白い。
寒地を再現する大学の実験施設。西之園が現場で「冒険」するシーンは手に汗を握った。
犯人は天才だと思った。シャッターの誤算がなければほぼ完璧だった(詰めの甘さはあったにせよ)。最後まで読むことで動機が少しずつ明かされ、行動の意味がパズルのようにつながっていく。読後の「納得感」はそこから来ている。残ったのは怖さよりも、常人には到達できない頭の良さへの敬意に近いもの。
「学問とは虚しいもの」「数学は役に立たない。役に立つ必要ないだろう?」とか。散りばめられてる金言が好き。
3巻購入予定。コミカライズ版も気になってる。