森博嗣のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。」
ずっと気になっていた作品。
まずタイトルがかっこいいですよね。
理系ミステリと言われてる本作、ド文系の私でも理解できる範囲の理系要素なので、それが理由で避けていた人はぜひ読んでみてほしいです。
トリックについては良くあるトリック、ですが「すべてがFになる」というタイトルの回収は素晴らしいです。
ただ、これは作品の中でも言及されているのですが、犯人の動機は天才ゆえに読者には理解できないものとなっており、そこだけ少し現実離れ感があります。
そもそもこの作品の主人公である犀川も西野園も天才の分類なので、現実離れしているので、そこを許容できれば、理系SFミステリとしての完成度は高い作品だと思います。 -
Posted by ブクログ
今作はタイトルどおり、これまで以上に「宗教」が前面に出た作品だった。
ついに四季本人が登場するのかと思わせる場面もあったが、もちろんそんな単純なはずはない。むしろ本人が姿を現さないまま、その存在だけがますます大きくなっている。今回では、四季を狂信的に信奉する人々の存在もはっきりと見えてきた。
殺人や自殺と思われる出来事については、結局その動機が明確に解き明かされたとは言い難い。ただ、ここまで来ると、末端で起きている個々の事件について「誰が、なぜ殺したのか」を追究すること自体に、あまり大きな意味はないのかもと思えてきた。
Gシリーズは、個々の事件の謎を解かせるというより、全体を通して読者の視点を少しずつ動かしていく物語なのだと思う。
最初は目の前の殺人事件を見ていたはずが、事件を起こす人々、その人々を動かしているもの、さらにその背後にある四季という存在へと、少しずつ視野を広げることを求められる。前作『目薬αで殺菌します』で感じた「事件が途中のまま終わってしまったような感覚」も、今作を読むと少し意味が変わってくる。そもそも見ている「事件」の単位が小さすぎたのかもしれない。
四季本人が直接命令しなくても、彼女を信奉する者たちがその思想を解釈し、自ら行動する。それならば、四季本人がそこにいる必要すらない。「神が本当に存在するか」ではなく、人々が神だと信じ、その存在によって行動を変えた時点で、神は現実に作用し始める。『ジグβは神ですか』というタイトルも、そんなふうに読むと面白い。
今回は萌絵と犀川の出番がなかったが、前作に続いて紅子が登場したことには妙な安心感があった。四季を神格化せず、少し離れたところから彼女を見ている人物がこちら側にいてくれるような感覚がある。
個々の事件を追いかけていたはずなのに、いつの間にかもっと壮大な計画の一部分を見せられていたらしい。
四季が何をしようとしているのか、その輪郭がようやく少し見えてきたような気がする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ毎回騙された。語り手の性別や立場を疑いながら読んでも裏切られる形になった。
どの短編作品も面白いけど、特に「悩める刑事」は秀逸だった。「刑事が主人公」という思い込みがタイトルから誘導されていて、ひっくり返った瞬間に「あ、そういう構造だったのか」と気持ちよく騙された感があった。「やさしい恋人へ僕から」も思い込みをそのまま使う手口で、叙述トリックにまんまと。2回読んでも楽しいと思う。「キシマ先生の静かな生活」も好き。
短編集として読みやすく、それぞれの作品が独立した驚きを持っていた。ただ犀川先生があまり出てこないぶん、本編S&Mシリーズを読みたい欲が高まった読後だった。 -
Posted by ブクログ
後輩からのオススメ本として借りたこちらの作品。
最初は天才の考えることが天才すぎて、なかなか読み進められず。。。
そして本を返す時にプレゼントしたくて、講談社文庫55周年夏フェアのめじるしブックチャームでこの作品を狙って何冊も買ったのに、結局当たらず。。。笑
その代わり? 私の好きな『十角館の殺人』のチャームを2つゲットしたので、これを早く後輩にプレゼントしたい!という一心で、なんとか読み進める。
ところが最後は、
「えっ?!えっ?!つまり。。。えっ??!!」
となり、まんまとこのシリーズを読み進める門をくぐってしまいました♪笑
ミステリーでありながら、所々に哲学的な会話もあって、出てくるキャラクターたちのことをもっと知りたくなる。
今まで読んできたミステリーとはひと味違う魅力のある作品だったなぁ☆ -
Posted by ブクログ
森博嗣のエッセイはやっぱり面白い。いつも新しい視点をくれる気がする。
本書では「みんな」が言っていることを鵜呑みにせずに、「自分なりに」分析する、数字を用いて考えることの重要性が主張されている。またその、「自分なりに分析する」には、どこから考えればいいのか、ということについても具体例を挙げて誰にでもできる方法を教えてくれている。
本書が執筆されたのは東日本大震災発生直後の頃であったため、その頃の人々の態度や科学者のなすべきことについて、著者の考えが結構はっきりと書かれている。思い返してみると、当時の自分も、何が起きているのか自分なりに考えていただろうか?という疑問を抱かざるを得ない。「科学とともにある」現代を生きるうえで、必要な物の見方を示唆してくれる一冊。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ濃いめのミステリーで読むのに時間がかかってしまった。
まず98年刊行の小説と分かりながら読むと、今でいう所謂AIであったりだとか、研究所内の最新テクノロジーが30年後の現在が見えているかのようなリアリティがあり面白すぎた。
ただ内容としては読者レベルが求められるだった。
受験の現代文みたいな文章ですんなり入りにくい部分が結構あったり、会話も一定の専門的な知識がないと100%理解できないとこがあったりで、自分がまだこのレベルに到達してないのを感じた。
殺人の動機やトリックは斜め上すぎるとは思ったが、まあ天才の考えることやし理解できんでいいかとぎり納得。
最後の推理パートの部分はVRの中で繰り広げられてるのがなんかワクワクした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレVシリーズ3作目。
今回は、機械仕掛けのトリックでしたね。事故なのか殺人なのか、その真相は明確にはされませんでしたが。
また、事件が起きた夜にシコちゃんが庭で聞いた「男の声」。庭に男がいたわけではなく、マンションからパラボラみたいなのを使って神部の声が届いていた。ほー。
今回から素直くんが準レギュラー的な存在に。
4人ともクセが強いので、素直くんのような、のほほんとしたキャラクターが入ることでバランスが良くなった気がします。
そして、へっ君と紅子の会話を聞けたのも嬉しかったです。へっ君、推理のきっかけですよ。
今回の印象に残った森語録は、
「口紅だけが妙に赤く、朱肉でキスの練習をした直後のようだった」
「久しぶりの煙草ほど懐かしいものはない」
シニカルな表現なのに美しい。好きです。
「月」「幽咽」「デバイス」は読み終えてみると、月夜や狼、声、水の音、音響装置、仕掛け、ですかね。「幽咽」という言葉は「かすかな声」や「水音」といった意味らしいです。
また、エピローグの紅子と保呂草の会話は、相変わらず「分かるような、分からないような」感じでした(笑)。森博嗣さん、Vシリーズのこだわりなのかな?
島田荘司さん、森博嗣さん、京極夏彦さんを自分の「本格推理の御三家」と勝手に呼んでいますが、推理だけでなく文章そのものに魅力があります。
島田荘司さんは、行動や場面をクリアに描く。
森博嗣さんは、何気ない瞬間や感情を独特のシニカルな視点で表現する。
京極夏彦さんは、登場人物に背景と厚みを与える。
それぞれ方法は違いますが、謎解きだけではなく、文章によって作品世界に引き込んでくれるところが、僕がこの3人を好きな理由なのだと思います。
Vシリーズ3作目、今回で4人(5人?)の関係に大きな変化はなかったのかな? -
Posted by ブクログ
ネタバレオリオン像が消えるギミックについては、最初の殺人事件が起きるかなり前、物語の冒頭で気づいてしまいました。その結果、必然的に「これから誰が死ぬのか」「誰が犯人なのか」までわかってしまい、初読なのに伏線確認をするような、不思議な読書体験になりました。
ただ、ほとんどネタバレされたような状態でも、不思議と最後まで面白く読めてしまう作品でした。その理由は、登場人物たちの理系トークや、頭のいい人同士のやり取りそのものにあるのだと思います。
そして最後の最後で、作品のギミックが実は二重構造になっていたことに気づき、「なるほど」と唸らされました。エピローグでは『笑わない数学者』というタイトルの意味も回収されます。
作者の森博嗣は、本作についてのインタビューで「ただトリックに気づいただけの人が、いちばん引っかかっている」という趣旨のことを語ったようですが、まさしく私もその通りでした。
第一のギミックに気づいたことで、むしろそこで思考停止し、それ以上考えなくなっていたのかもしれません。
「謎が解けた」と思った瞬間こそ、自分の思考を疑うべきなのだと、少し警鐘を鳴らされたような読後感でした。 -
Posted by ブクログ
1996年に書かれたとは思えない。未来を完全に見通していた天才的な一冊。
正直、理系の専門用語や独特なロジックが多くて、今まで読んできた小説に比べると最初は頭に入りにくく、少し苦戦しました。自分の理解力不足か文章のクセか……と思いながら読み進めていたのですが、途中でそんな戸惑いも吹き飛びました。
何より衝撃的だったのは、この本が1996年に書かれたという事実です。
今でいうスマートスピーカー(アレクサ)のような存在や自動配膳ロボット、そして「ボーイフレンドなんてそのうちコンピュータが作ってくれる」というAI恋人を予言したかのようなセリフまで出てきます。当時としては先進的すぎたVRの概念も含め、インターネットすら一般普及し始めたばかりの時代に、現代のテクノロジーをここまで正確に先読みしていたことに恐ろしさすら感じました。
そして、物語の真相にたどり着いたときの衝撃。
自分が頭の中で「こうだ」と勝手に思い込んでいた前提や認識が、見事に足元から覆される感覚がたまりませんでした。この手の「まんまと騙される快感」がある小説が好きな自分には、最高のごちそうです。
読む人を選ぶ難解さは少しあるものの、時代を超えた先見性と、見事なミステリとしての仕掛けを味わえる大傑作でした。 -
Posted by ブクログ
Gシリーズに突入。C大学国枝研究室の山吹、海月、そして海月と同級の加部谷の3人組が、新たなシリーズの中心人物ということでいいのかな。
犀川先生がほとんど出てこないのは寂しいが、新たな名探偵・海月くんには犀川先生を彷彿とさせるところがあり、実質的な後継者という位置づけなのだろう。
本作で印象的なのが、各章の冒頭に引用されるヴィトゲンシュタインの『論理哲学論考』。3人は事件の当事者ではなく、山吹が偶然現場に居合わせたことをきっかけに、犯人や密室殺人の手法について考察していく。その一方で、殺害の動機や背景については最後までほとんど語られない。
英語タイトルは「PATH CONNECTED φ BROKE」。“path-connected”は数学で「弧状連結」を意味する言葉だそうだが、事件について論理的にたどれる道筋が途中で断ち切られ、その先にある人間の内面には到達できない、という本作の構造にも重なるように思えた。
「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」からだ。