森博嗣のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
一番印象に残ったのは、「人間らしさとは何なのか」ということについて。
人間社会で一般的とされる価値観や感情から大きく離れている人物がいること。その人物の考え方にはあまり人間味を感じず、むしろ人間という生き物を外側から観察しているような印象を受けた。
高度な知性を持ちながら、一般的な人間の感情や常識とは異なる価値観を持っている。そのギャップが、この作品の独特な不気味さや面白さにつながっていると感じた。
ミステリとしての謎解きだけでなく、「人間は何を基準に物事を判断しているのか」「論理と感情はどこまで切り離せるのか」といったことを考えさせられる作品だった。 -
Posted by ブクログ
久しぶりのラヴちゃん登場!懐かしくて嬉しかったですねー。新シリーズなので主人公も変わってるんですが、やっぱり知ってる人が出るとホッとします。
今回は山吹くん出番少なめで、加部谷さんが主人公ポジション。海月くんは相変わらず切れ物だけど掴みどころがない感じ。けれど加部谷さんとの関係性は見ていて微笑ましいですね。Gシリーズも登場人物が魅力的なのは相変わらずで、最後まで楽しく読めました。
ミステリとしては、トリックは明かされるものの、動機などは一切判明せず。「真実を知っても、それは一側面から見えた情報に過ぎないから意味がないという」のは、これまでの森作品から継続しているテーマでもあると思うのでまったく不満はありませんが。
ただθの影に見え隠れする真賀田四季の存在と、保呂草さん、各務さん(あの女性そうですよね?)の登場、赤柳さんの正体(紫子?練無?船のこと言ってたから恋恋蓮歩の演習に出てきた大笛梨枝さん?)など、シリーズ追ってるからこそ気になる点も多数。次回も目が離せませんね! -
Posted by ブクログ
まず、自分がなにに支配されているかに気づくこと。
自分の思い込み、周囲の意見、
一般に正しいとされていること。
生きていて、不自由だと感じることは沢山あるが
それは本当に仕方ないことなのか。
その不自由さはどこからくるのかを、
もっと日常的に考えるのが大事なんだと知った。
————
ただ、欲しいな〜と思うのは
願っているとは言わない。
本当に願っていることなら、具体的な行動や
それに伴う課題が見えるはず。だから、
諦めなければ夢は叶う、は綺麗事ではない。
周囲に流されて生きている人々を見て
サバンナの水牛の群れを思い浮かべる、という森さん。
「それ、本当にあなたの願いですか?」
と、深く考えていないそれっぽい人生の目標を
見透かされるようでぎくりとする。
————
あとがきで印象的だったエピソード。
この本の第二章の量が少なめだから
何か付け足しましょうか、と出版社の方に提案されて
最初は何を挿入しようか考えていたけれど
それはフォーマットに支配されているのでは?と
思い直してそのままにした、とあった。
常に支配や自由について
考えているからこその対応で、さすがだなと思った。
日常にひそむ支配はたくさんあって、
その流れに乗っている間は心地がいいけれど
少し遠くを見ると危険な方向へ向かっていることに
気付く、とある。
今調子が良いものはいずれ悪くなる、
一番安定しているのは死んだ人間である、
など、ぬるま湯から引っ張り上げてくれる言葉が
多々あって、もっと冒険しよう、
もっと自分にとっての正解をちゃんと考えよう、
と気を引き締められた。
-
Posted by ブクログ
読みやすい文章。
研究への熱い思いが伝わってくる。楽しそう。羨ましい。
自分は理屈っぽくて、研究が好きだと思っていたけれど、実際の大学、大学院で過ごした時間は全然、研究に熱中するカケラも出てこなくて、就活の心配ばかりしていた。
研究室とも馴染めていなかった。研究の世界は、あまりにも先が見えなくて、そこで生きていくなんて、精神的な負担が重すぎるはずなのに、何故大学の研究室はあんなにゆるい空気なんだろう、その空気感が好きだけど、と思っていたけれど、この本を読んで、本気で研究に向き合っている人は、しっかりと精神的にキツイ世界の中で生きているんだなと、思い至った。 自分の大学生時代は、そんなことにも気づけないくらい、研究に打ち込んでいなかったし、研究室に馴染んでいなかったんだな、と思い知らされた。切ない。
自分はきっと、浅く広く知ることしか楽しめない人間だな、と感じてきた。限界とか、突き詰めるとか、やり切れない。
知ることの喜びは感じられるけど、切り拓くまでの気概がないんだなあ。 それが一概に悪いこととも思わない考え方もできるようになってきた最近だけど、でもやっぱり打ち込み切れる人に憧れるなあ。
-
Posted by ブクログ
「密室」は誰のために存在しているのか
森博嗣先生の作品、さまざまなシリーズを読み進めてきて遂に新シリーズ「Gシリーズ」に辿り着きました。本作品の最初は森ワールドらしさ溢れる「密室」、猟奇的な遺体との邂逅に登場人物達は、読者は向き合います。
まず最初に西之園さんたち前シリーズまでの人たちが少しずつ出てきて、特に萌絵さんはあどけなさ溢れる少女らしさから随分と余裕のある大人の女性となり、新しい登場人物達を支えてくれているところに成長をとても感じる。犀川先生との関係性、あまり出てこない中で少しの描写で二人の関係性を描くのは読書にとってもとてもありがたい。四季シリーズでまた一歩踏み出した二人のこれからを追っていきたい。
密室殺人のトリック面に関してはネタバレになってしまうので言えないが読者としても想像はしやすいもの、さらにいうと今回はあくまでも推理は解決ではなく一つの解釈、そこから先を読者に委ねるところも良かったと思う。
密室に対しての解釈は読んでいる中で衝撃的であった。よく犯行の可能性を絞る、自殺に偽装するなどといった加害者目線や都合で語られることが多い密室にこのような結末をもたらすところもまた森ワールドらしさ溢れる密室であり、それに対する私、読者としても、その密室は登場人物にとっては、「φ」であったんだなという読後感に辿り着いた。
-
Posted by ブクログ
Gシリーズ第9弾となる。
今回は、学会に参加するため犀川研、国枝研、西之園研の面々が勢揃いしている。
とある殺人事件が起きる。
殺人事件は解決する。トリックも解き明かされる。
しかし、何故起きたのか?動機は?謎のギリシャ文字は?結局犯人は誰だったのか?説明が無いまま物語は終わりを告げる。
Gシリーズ特有の共通点みたいです。
真賀田四季をチラつかせるも関係があるのか、無いのかもまだ明かされない。
大人になったメンバたちの今後の動向や展開も気になるし、これは続きが気にならない方がオカシイだろう。と、いうことで引き続きシリーズを追わねばならないのは明白だ。 -
Posted by ブクログ
春はそう、「四季」の始まり
森博嗣さんの作品にどっぷりハマり読み続けて来た中で楽しみにしていた「四季」シリーズに辿り着いた。犀川先生や西之園さんのS &Mシリーズや、紅子さんや保呂草さんのVシリーズの根底にずっと流れていた「彼女」の存在が、「彼女」の始まりが、周りの人との交流を軸に深掘りされ始めていた。
天才はそう、自分のもつ天性のギフトに対しての肉体的な、時間的な、人間関係的なキャパをオーバーしてしまう。私たちが精一杯生きているこの世界の見え方もまた違うように、天才である「四季」にとってはそれは自由ない存在になるための足枷になっている部分もある。それを思うと「すべてがFになる」や「有限と微小のパン」などで描かれていた行動や思考にも我々には観測できない筋道があるのだなと思った。
この天才「四季」と登場人物との距離やズレといったものは同時に天才「四季」と私たち「読み手」との距離やズレ、それは二次元的な存在である小説と我々が生きている高次元の実世界という一見すると我々の方が明らかに上位存在であるのに、そうとはならず二次元存在の小説世界の方が実世界を遥かに超越している。
「四季」と我々との間の次元的なズレの間にある魅力に我々は引き摺り込まれ、小説世界に引き込まれていると同時にそこで明らかに理解を超えた存在である「四季」と出会う。
読み手が主体で行っている行為としての読書に意志を持たないはずである小説側からまるで読まされている、読み進めるように手を動かされている、そんな魅力や魅惑が小説世界の「四季」には存在していた。