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Posted by ブクログ
今回で読むのは恐らく3回目になる。主人公である萌絵の友人である杜絵の家族に起きた不可解な誘拐事件のお話。意外な結末に、3回目でも驚かされて楽しませてもらった。トリックというよりもその真相に辿り着くまでの登場人物の会話が面白い。この話では犀川先生よりも、萌絵と萌絵の叔母である睦子の会話が印象に残る。睦子の余計なお節介に怒り捲し立てる萌絵に対して、騙し討ちした睦子は反省する事なく、逆に「今回は見逃すけど、今のは言い過ぎ」とキッパリ言ったり、別れ際には服装の事を実は気にしてる素振りを出してお茶目な一面を見せたり、完全には憎めないキャラクターだと改めて思った。登場人物の会話に知的さとユーモアさが混じってて、こんな会話に参加したいなぁと思わせてくれる。
Posted by ブクログ
この上ない満足感。圧巻の一言。
ミステリーとしてもヒューマンドラマとしても極上の作品であった。
今後好きな作家を問われた際の回答には森博嗣の名が加わるだろう。
普段は自分の考えが上手く整理できるかと、少なからず億劫になる感想も今は思うがままに書いている。考えをまとめている場合などではない。
ここからは少し冷静に。
作中の登場人物も言っているように一見すると事件自体は地味なようにも感じた。
それでも退屈しなかったのは西畑刑事や萌絵が次々と仮説を立ててくれたおかげだろう。
巧妙なトリックも衝撃の犯人も最後まで見破ることができず、ミステリー作品として充分面白かった。
那古野の屋敷で銃声が響いたシーンの伏線回収には驚いた。
最終章ではあらゆる謎の解決、華麗な伏線回収、予想だにしないどんでん返しなどミステリー作品の魅力が次々と溢れてきてページを捲る手が止まらなかった。
しかし、"面白いミステリー"だけでは終わらないのが森博嗣。
杜萌を筆頭に様々な人間関係が描かれている点も今作の魅力の1つであった。
素生の間に起きた出来事や萌絵との友情、そして何よりラストに明かされるとある人物との関係性には驚いた。
そして登場人物の間で交わされる会話にユーモアがあるのも森博嗣作品の特徴であると思う。
萌絵と犀川のタッグにはその要素がふんだんに盛り込まれていて飽きることなく読むことができる。
すべてがFになるに次いで夏のレプリカもこの満足感。S&Mシリーズは読破しようと心に決めた。
個人的に50~60ページという丁度いいページ数で章が区切られていると読みやすいことに気がついた。
他の作品の解説は一作者として書かれているものが多いが、今作の解説は散文的な要素もあったことから一読者としての解説かのような親近感を感じる解説であった。
Posted by ブクログ
一夏の再会が、私を一つ大人にした。
S &Mシリーズも随分と読み進め、犀川と西之園二人の掛け合いにもだいぶ心地よさを覚えてきたこのタイミングで起こった事件は、前巻のマジシャン事件と同時並行に起こっており、そのため犀川、西之園コンビがあまり出てこない。キーパーソンの杜萌の視点から殺人事件と失踪事件が描かれていた。
ミステリーを読む時には色々と推理をしながら読み進める人もいれば、そのときの雰囲気に浸るのを楽しむ人もいる中でこの作品はどちらかというと「後者」の読み手がより楽しめると思う。いつものような「仮定」とか「論理」とかの視点よりも、登場人物の「立場」や「過去」、「心情」といった視点から味わうことができ、それはいつもと違うキーパーソン杜萌の視点から描いたという良さが出たところだと思う。
人はどのようなときに大人に近づくのであろうか。受け入れられないことが受け入れられるようになったとき、過去の出来事に区切りをつけられたとき、新しい自分を人や自分が見つけたとき、色々なときがある。「変化」をどのように捉えて、どのように受け入れるか、それにより「今」の見え方、「真相」の見え方も変わるのであろう。
物語のラストに向けて様々な「余韻」が残されている。一夏の出会いや別れ、出来事ってそんな感じの「虚い」や「儚さ」を纏った朧げなものがあって、自分が目の前にしている「現実」に向き合えるのではないだろうか。そんな一夏に魅せられて、人はまた一つ何かしらのカタチで大人になるのだろう。
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小説・文芸
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