夏目漱石のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
四国旅行に行く前に読んだ。
何年か前に二宮くん主演でドラマをやっていて、登場人物の顔をそのドラマの俳優さんの顔をそのまま思い浮かべて読んだ。
夏目漱石が楽しく勢いよく文章を書いていることが伝わってくる。実際に解説で短期間で書き上げたことを知り、やっぱりなと思った。
わたしの中で夏目漱石といえばロンドンでの留学生活で打ちひしがれて帰ってきたという印象が強い(某裁判ゲームのせい)。
その中で近代化の恐ろしさ、危機感、土着の文化への愛おしさが培われたんだろうなと思った。その視点で『坊っちゃん』を振り返ると、坊っちゃんの「難しいことはわからないが気に入らないからぶっ飛ばす」という単純さが、漱石が近代 -
Posted by ブクログ
ネタバレ総題の漢字よし。
収集箱じゃつまらない、蒐集函なのだ。
カバーイラストも素敵。
新潮文庫nexというレーベルで、ヤングアダルトにこの作品たちを差し出した編集部、GJ!
■坂口安吾 桜の森の満開の下
既読を再読。
■芥川龍之介 影 ★
初読。
芥川といいえばドッペルゲンガーなのでそういうことかと中盤で思わせておいて、ラストなんと映画だった? 夢だった? というオチ!
しかもそれすら真実かどうか不明な放り出し方。凄い。
しかし、「歯車」でも感じたことだが、狂気に飲み込まれそうな感覚を、それでも作品化「しちゃえる」ことが、逆に悲劇だったのかもしれないと考えたりもした。
■江戸川乱歩 芋虫
既読 -
Posted by ブクログ
坊ちゃんの痛快さや、こころの男心のナイーブさを味わった上でこれを読むと、話の飛躍さにビックリする。
育ての親から金をせびられ、それで終わりかと思うと知人を名乗る者たちまでもが金を恵んでくれと擦り寄ってくる。
まるで乞食のようだ。
完全なフィクションではなく、夏目漱石の実体験に基づいているとすれば、彼はなんと複雑な人達のいる環境で育ってきたのだろうか。
養子として迎え入れた子供が大きくなると、育ててあげたと恩着せがましい態度をとる養父母たちに嫌悪感を抱く。
人を変えて金をふんだくろうと策略する養父がいちばん嫌いだが、細君が病んだことに腹を立て、自分本位に振る舞う主人公にも嫌気がさした。
あれ -
Posted by ブクログ
漱石がこれまでにあったことや考えたことを、つらつらと書き綴るエッセイです。
講演の謝礼の話は、拗らせていますねぇ。言わんとしているとはわからなくはないですが、本当に面倒くさい。こうして本で読む分には楽しいですが、実際相手にすると疲れるでしょうね。
岩崎弥太郎の話も面白かった。不愉快だといいながらも、どことなく友情を感じるんですよね。実際に所はどうなのかは分かりませんが。
ヘクトーや飼い猫の話は、漱石のツンデレ加減が笑えます。「文鳥」でもそうなんですが、動物に対してすら素直に心を開けないところが、ある意味かわいらしさを感じます。
「道草」を陰とすると、「硝子戸の中」が陽のような感じを受け -
Posted by ブクログ
ネタバレ耽美とは何なのか未だ理解できていないが、収録作から思うに愛憎、背徳、情念、倒錯、フェティシズム、幻想、狂気etcが入り混じったものか。そこにタナトス≒死への衝動が加味された、名だたる文豪らによる10編。
「桜の森の満開の下」(坂口安吾)や「瓶詰地獄」(夢野久作)は本書のコンセプトをまさに体現している作品か。作家のフェチ全開「刺青」(谷崎潤一郎)、美しくニューロティックな幻想「夢十夜」(夏目漱石)、サスペンスからの意外な結末「影」(芥川龍之介)もそこに沿ったものかと。
"美"という点では泉鏡花の「浮舟」、折口信夫「身毒丸」なのだろうが、個人的には独特の文体含め作品世界にハ -
Posted by ブクログ
「明暗」の題名は(意)。漱石が小説執筆中に芥川龍之介と久木正雄に示した漢詩のなかの語「禅家で用ひる熟字」と説明された「明暗双々」の解釈を中心に論議されてきた。たとえば小宮豊隆はいわゆる「則天去私」と結びつけて、「私の世界」とそれを超越した「天の世界」と明・暗と考え、禅語との関りに消極的な荒正人は、登場人物各自の立場や状況に応じた価値観の「明と暗の交錯」に題意を求めている。昼の世界と夜の世界、日常と非日常、現実と異界など、明と暗を分つ説は従来ささまざまだが、人間関係・因果関係に視覚的問題も加えて、見える(と思っている)ものと見えないものとの別を措定することも可能だろう。諸説それぞれに異同はあって
-
-
Posted by ブクログ
「夢十夜」
もう何度も読んでいるけれど、やはり第三夜の印象は強い。
この気味の悪さ、リアルな夜の手触り。
自分もその静けさに包まれているかのように感じる。
第六夜もよく覚えている作品。
子どものときに読んで、いや、木に埋もれているわけではないだろう、と、笑った記憶がある。
なんとなくただよう気味の悪さの裏に、人間の感情や情念がちらちら見えて、正しく夢のかけらを集めたかのような作品群だと思う。
「文鳥」
美しい文鳥と、それに対する心の動き・流れが、水のように流れ込んでくる、そんな文章だった。
文鳥を死なせてしまったときの彼の心が、そのしんとした行間からあふれてくる。
「あふれる」という表現では