夏目漱石のレビュー一覧

  • 門

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    ネタバレ

    前期三部作の第三部。

    宗助と御米は不倫の末結ばれた夫婦で、他人との交流を最小限に抑えてひっそりと慎ましく暮らしていた。彼らの不義は社会的な制裁のみならず、運命的な力も彼らを苦しめる。宗助は不安を解消するために宗教にすがるが、何も変わらないまま季節は移ろいでゆく。

    宗助・御米夫婦は、互いを慈しみ支え合って生きている。きっと理想的な夫婦と言えると思う。しかし、「彼は門を通る人ではなかった。また門を通らないで済む人でもなかった。要するに、彼は門の下に立ち竦んで、日の暮れるのを待つべき不幸な人であった。」(P224)のイメージが示すように、悲哀や不幸、憂うつから逃れるすべをもたない。哀しくて切

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    2011年06月25日
  • それから

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    明治時代のニートこと代助の横恋慕。

    明治も平成も人(青年)はそんなに変わらないということ。もっとも、現代では人妻を奪ったからといって親に勘当されることはないだろうけど。そう言う意味では、人は「自然」に従って生きやすくなったのかな?

    面白かった。三部作の最後「門」も読むぞ。

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    2011年06月25日
  • 行人

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    ネタバレ

    【概要・粗筋】
    学者である一郎は、妻・直の本当の気持ちがわからず、信じることができず、夫婦の間は冷え切っていた。直はそのようなこと気にするそぶりもなく冷淡であった。しかし、一郎は妻の本心が知りたくてたまらない。そして、一郎は妻の貞操を試すために、弟である「自分」に嫂と二人きりになるよう依頼する。知識人の孤独と狂気を描いた小説。

    【感想】
    第一章「友達」から第三章「帰ってから」までと第四章「塵労」では作品の雰囲気ががらりと変わった。三章までは長男夫婦の不和に周りの家族が巻き込まれていくというある平凡な家族の姿を描いていたのに、四章からは一郎の内面が掘り下げられて家庭小説の枠をはみ出した。

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    2011年06月19日
  • 文鳥・夢十夜・永日小品

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    「夢十夜」
    第一夜
    「百年、私の墓の側に坐って待っていてください。きっと逢いに来ますから」

    夢ってなんだか不気味だ。私はろくな夢を見ない。

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    2011年06月11日
  • 道草

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    起承転結の起伏が無いと感じるのに、面白いところがスゴイと思う。
    状況が同じ輪の上を回る様に、人間関係も回って何とかならんかなーと感じるのは何時でも同じなんだなぁ。
    細君が随分と恰好良い。男尊女卑の時代に、尊敬して欲しいなら尊敬される人格でないと、てのは強くて好き。細君がちょいちょい良い味だしてる。

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    2011年05月23日
  • それから

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    最近だが通勤の満員電車の中で狭苦しく冊を開いている。
    そんな中で迫りくる代助と三千代の心の荒波に、思わず涙がこぼれた。

    繊細な心の動きを華麗に表現しているのは凄い!

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    2011年05月23日
  • 行人

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    兄一郎が弟二郎に妻の節操を試して貰いたいというところは狂気であり作中の圧巻である。 直の本心は謎のままである。一郎も二郎も直に翻弄されている。直は恐れない女である。

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    2011年05月14日
  • 門

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    ネタバレ

    漱石前期三部作のトリを飾る作品『門』。

    世間から冷たい目で見られる覚悟を互いにしてまで不倫関係となった代助と千代子。その二人は今後どう生きていき、どう世の中を渡り歩いていくのか。その答えが『門』にあると、『それから』の解説では述べられていた。

    自分自身その事が気になっていただけあって、「門=不倫後の話」を頭の中で繰り返しつつ読み進めていった。けど、どこにも見当たらない。気付けば残るページは1/3。ここから先にようやく出てくるのかと思いきや、迫りくる事態に対処できる自信をつけるために参禅し、戻ってきたら無事暗雲は過ぎ去っていきましたとさ、めでたしめでたし。気付けば注訳のページになっていた。

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    2011年05月15日
  • 草枕

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    「山路を登りながら、こう考えた」と始まる非人情の旅物語。
    非人情とは世間的な人情を放棄して住みにくいこの世を離れた気分になること。人間の感情で溢れかえる住みにくい都会を離れ、非人情を求めて田舎への旅に出た画工。

    当時の西洋化の流れで登場した「芸術」という観念で括られるようになった様々な表現活動。絵画と詩の対比がよく登場する。はじめは手応えがなくとも休むことなく続けるものだという詩作りと葛湯作りの比較がいい。

    「菓子箱の上に銭が散らばり、呼べど待たれど人は来ず」
    田舎で垣間見られる20世紀らしからぬ非人情の世界。
    おばあちゃんが店番したままうたた寝していた近所の駄菓子屋さんのようなシーン。

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    2011年05月02日
  • 坊っちゃん

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    愛媛県民なのに坊ちゃん読んでないのもどうなのと思って県外に引っ越してから読みました…噂通り愛媛の扱いはひどいけど(笑)子規もお手紙でそう書いてたものね^^
    漱石先生の小説はうんうん唸って読むような難解さがなくってとても読みやすいんだけど、決して軽い、薄っぺらいものじゃない。こりゃあすごいことだとしみじみ。
    江戸っ子・坊ちゃんのいきおいや情があざやかに描かれています。なんにせよ坊ちゃんは最後まで坊ちゃんでした。こうやって見るとちょっと昔の小説ってタイトル付けが非常に秀逸…

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    2011年05月02日
  • 草枕・二百十日

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    智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。

    何回でも読みたい綺麗な文章。
    この文章が印象強すぎて本編はあんまり。。

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    2011年04月30日
  • それから

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    恋人たちは自然にお互いが惹かれあうならば、正直に、そうあるべきなんだなぁ。タイミングも肝心だと思った

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    2011年04月28日
  • 行人

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    ドン・キホーテ前編の「愚かな物好きの話」がモチーフになっているようだ。
    お直の心境は書かれていないがやはり二郎に好意を持っていたんだろうか。手紙の最期に暗示してあるように兄は死んでしまうのだろうか。二郎は結婚せずに外国に行き戻ってこないのだろうか。自分の中に神がいて苦しむさまは近代人の苦悩を表現しているように思う。

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    2011年04月16日
  • 行人

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    一郎の妻、直のような女性が好きだ。そう思って最後まで読んでいたら、解説で酷くこきおろされていていらっとした。ただ、たしかにそういわれればそうだと納得もした。
    晩年の漱石の小説は、執拗に孤独を、我執を主題として追い求めていく。ただ、それは紹介の帯がいうような「近代知識人の苦悩」に回収されてしまうのだろうか。仮にそうだとしたら、漱石の小説は過去の廃墟にすぎない。廃墟を好きなひとがいるように、それが過去であり、痕跡であるからこそ価値を持つような、そんな代物にすぎない。
    ぼくが漱石を好きなのは、そのような懐古主義からではない。彼の魅力は、彼が本格的に小説を書き始めてから一貫して、三角関係のなかで人間を

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    2011年04月16日
  • 吾輩は猫である

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    冒頭の文章はみんな知っているのに、最後の結末は知らない。衝撃のラストだからかな?
    感想としては、とにかく長い。意外とダークな内容だし、現代では差別的とされる言葉もどんどん出てくる。道理で学校で詳しく教えないはずだ。
    風刺された内容は現代を予言しているかのようだ。

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    2011年03月30日
  • 彼岸過迄

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    モザイクが細かくなっていき、だんだんはっきりと画像が見えてくる感じ。
    主人公は狂言回しに過ぎず、本当の主人公は須永なのだろう。
    好きなのに好きとは云えず、裏の裏まで読んだ気になってしまう須永。
    須永と千代子の物語は三部作のなかで形を変えて出てくるのだろうか。

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    2011年03月20日
  • 吾輩は猫である 下

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    特別愛がこもっているわけではない、至極冷静な視点から描かれているにも関わらず、ただの意地っ張りやほら吹き達が愛おしい
    煩わしい世の出来事から身を引いて生活しているかと思いきや、生きる上での智慧を雑談の合間になんでもないことのように挟んでくるから侮れない
    俗世間を超越している法語の格好良さ
    語りの姿勢が崩れないところが武士的
    メメントモリを悟っていたかのような最期、あっぱれ

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    2011年03月09日
  • 吾輩は猫である 上

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    人間から見た猫同様、人間だって馬鹿らしいことを大真面目にやっている生き物かもしれない
    今では聞くことのできない言葉遣いのせいなのか、漱石の文章力なのか、一文がいちいちカッコイイ
    押し付けがましくなく、教訓を説いているわけでもないのに憧れを抱かせる
    つまり、教養が深い

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    2011年03月07日
  • 坊っちゃん

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    四国松山の中学校に赴任した数学教師「坊っちゃん」が、生徒や他の先生を相手に様々な事件を起こす。正義感が強く純粋な青年と、彼を取り巻く利己的な社会とを対比的に描いた、痛快な物語。

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    2011年08月29日
  • 吾輩は猫である

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    捨て猫の「吾輩」(名前がない)は、英語教師苦沙弥(くしゃみ)の家に住み着く。主人をはじめ家族や友人たちを観察し、彼らを痛烈に批判する「吾輩」だが、最後には酔って水瓶に落ちて死んでしまう。

    読もうと思っていた矢先に、国語教師にオチを言われてしまったので、自分も堂々とネタバレします(笑)
    言わずとも知れた風刺小説です。猫可愛いよ猫。

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    2011年07月28日