夏目漱石のレビュー一覧
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中学生になったばかりの頃に読みました。
教科書に,一章だけが紹介されており,思わず惹かれてしまったのです。それは,主人公の正義漢ぶりが,直情さが,不作法だが無造作で飄々としたところが,
人物として当時の私がとても憧れたからだと思います.
夏目漱石のコミカルで軽快な書き口に,勧善懲悪の爽快感が加わり,文学作品のなかでもとても読みやすい作品の一つです.
多くの版がありますし,また多くの映像や絵や漫画も生まれています.学生の皆様には一読を勧めたい一冊です.
中学生の時と,今とでは,この作品に対してどの様な感想の変化があるだろうか,一度試して見ようと思います. -
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ネタバレ「『彼岸過迄』というのは元日から始めて、彼岸過まで書く予定だから単にそう名づけたまでに過ぎない実は空しい標題である。」
そんな由来だったとは。漱石後期三部作、その一。
まず登場するのが敬太郎。冒険を夢見るロマンティストでありながら、実際は大学を出て職も見つからず汲々としている青年である。物語の前半はどちらかというと軽妙な筆致で、敬太郎を中心とする人間模様が描かれる。謎めいた隣人に探偵ごっこにと、読者を楽しませるようなエピソードが目立つ。
ところが後半になると雰囲気は一変する。敬太郎が主人公なのかとおもいきや、今度は彼の友人である須永の存在が物語の全面に出張ってくる。従妹の千代子との恋愛を通し -
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『三四郎』『それから』を読んでからかなり時間を置いて読んだ。『門』というタイトルからしてなんだか地味だし、「横町の奥の崖下にある暗い家で世間に背をむけてひっそりと生きる宗助と御米」なんて紹介文を読むにつけてもあまり食指が動かなかったのだ。今にして思えば、読むのを先延ばしにしていたのが実に悔やまれる。
よかった。ひょっとしたら前二作よりもよかったかもしれない。
思うに、漱石の作品には独特の雰囲気が漂っている。匂い立つような明治の東京の空気が。それは鮮やかな風景の描写からも、活き活きとした登場人物たちの会話からも色濃く感じられる。漱石の小説を読むたびに、私はその空気の中に浸る。筋を追うというよ -
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ネタバレ前半部分の絢爛すぎる怒濤の描写についていけず,挫折しかけた.
登場人物の立ち位置も全く頭に入ってこなかった.
セリフが中性的で,さん付けで呼ばれていたことから,小野さんを
女性と判断して読み進めた.しかし,小野さんが女性だと
話のつじつまが合わなくなることに途中から気付いた.それは,そこまでに自分で描いていた『虞美人草』が誤っていたことを意味し,絶望した.
しかし,後半は会話が多くなり,ようやく話の概形がおぼろげながら浮かんできた.物語の本質である小野さんと藤尾の恋が,
多数の人物が互いに絡み合ってできた複雑な事情の上に成り立つ
ものであると知る.この仕組みを理解するためには,前半部分が
ど -
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夏目漱石未完の遺作。有名な本を今更読むと言うのが恥ずかしながら一度はやはり読んでおきたく。第一印象から文章や言葉選びが綺麗で、日常の言葉なのにあまりにクリアに伝わってくるのでどきっとしたりする事がしばしば。さすがでした。他の名著でもしばしば、読みながら何をぐだぐだしているんだろうこの本有名だけど面白いかなぁどうかなぁとか思いながら読み進めて行くのだけれど、後から思い返せばとても深遠で壮大で何日も、ずっと思い返してたりする。本の1つだった。未完なので結末ばかり気にされるけれど、良い物は個々の要素がどの全体とも綺麗に呼応する様に出来ているので、どこで切っても関係ないと思うんだよね。と言うのも良く言
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「二百十日」
会話が大部分を占めテンポ良く話しが進み、風通しの良い印象。金持ちへの痛烈な皮肉を含むものの人物造詣、思想ともに深みはこれといって無く、ただただ読んでて楽しい短編。
「野分」
その理想主義のために中学教師の生活に失敗し、東京で文筆家としての苦難の道を歩む白井道也と、大学で同窓の高柳と中野の三人の考え方・生き方を描く。
とのことですが、こちらはもう本当に好きです。わたしは最近、自意識と、他者との関わり、つまり内的生活と外的生活のバランスについてすごく悩んでいるのですが、この短編に出て来る主人公達もバランス取りにとても苦しんでいるという印象。それから経済的なこと、現実的生活の労苦にも -
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「死ぬか気違うか、そうでなければ宗教に入るか」
学問をやりすぎたために、人を信じられず、妻さえも自分を愛していないのでは無いかと疑い出した一郎。
その弟の二郎は兄や友人、下女など様々な人の使いとして結婚とは何か、愛とは何かの現実を見る。そんななか、どうしようもないほどに精神衰弱な兄の影響を受け、二郎も結婚について疑問を抱き始める。
この作品の底にあるテーマは結婚に関すること、人を信じること。明治以前の家が関わる旧式の結婚制度、恋愛結婚などなど様々な形で夫婦になり、こどもが生まれ、年をとる。
そうした、夫婦間の関係について、疑問を投げかける作品です。
漱石作品として相変わらず、登場人物に起 -
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ネタバレ「彼岸過迄」「行人」「こころ」の後期三部作や、それがさらに私小説的にドグマった「道草」より全然暗くない。複数の視点に立って、ありもしない「本当の自分探し」から進化したと言えば、言葉が軽すぎでしょうか?
結末の予想に関しては、おおむね日本文学畑の人は全てが未解決のまま終わり、海外文学系の人はドラマチックな結末を迎える、というような傾向に分かれるというようなことが書かれた研究書を読んだ記憶がありますが、「なるほど」という感じもします。日本文学派の中には、「明暗」の次には「猫」に戻ったような作品を書いていただろうという予測もあり、またまた「なるほど」と。「続明暗」がまさに、筆者が外国系だから、まさ -
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ネタバレ実家から出られず母親の古い古い本をあさり読んで。
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智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらする唯の人である。唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりも猶住みにくかろう。
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、くつろげて、束の間の命を、束の間でも住み