夏目漱石のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ後期三部作の1作目。
短編が集まって長編の形式を取っているし、序盤は割とお気楽な感じだから読みやすい。
中盤からとても濃ゆい。前期三部作とは全然違う。
あれも恋愛の話には違いないが、こちらの方がズドンと迫ってくる。
男の嫉妬心と猜疑心がとても良く描かれている。
私個人としては、須永の気持ちも分からんでもないけれど、千代子とくっついた方が幸せになれると思う。
ただ、千代子の気持ちに応えられるか分かんないんだよね須永は。
何だか二人の関係がもどかしくてもどかしくて。
これは、現代人が読んでも十分に楽しめる。
印象的なシーンも多々。
楽しかったり、悲しかったり、物寂しかったりもするけれど、漱石 -
Posted by ブクログ
ネタバレ標題の「私の個人主義」は大正三年、大病を患った後に学習院でおこなった講演の内容だが、今読んでもさすが漱石というか、構成もメッセージもすばらしい。青空文庫で読めるので未読の人はぜひ。
講演として読むと、初めは前振りが長くいつテーマに入るのかと思うほどだが、気づくとすっとテーマに入っていて、それが最後のメッセージまでしっかりと繋がっている。
前半は人生の指針としての自己本位主義、後半はその前提となる個人の自由とそれに伴う義務と責任、という内容。
まず前半は、漱石自身の懊悩とその打破という経験を若い人たちへのメッセージに転化しているが、これによって人生の方向を決定された学生も当時いたのではない -
Posted by ブクログ
神経症的な甲野、彼の異母妹藤尾、甲野家と縁戚続きで飄々とした感のある外交官浪人生宗近、その妹糸子、甲野達の友人である小野と彼の恩師の娘である小夜子、この六人の六角関係を扱う。
序盤は古文、漢文、口語文を融合したような地の文と、登場人物の区別に苦労するも、人生に迷える小野君と彼を慕う小夜子に感情移入できた時点から、やっと物語世界に入って行けた。
藤尾とその母を徳義心に欠けた人物として書くが、こういった人は当時はともかく現代では結構普通にいるような気もしないではない。甲野家の財産を我の物とするために画策する藤尾と母、それに利用される小野という構図。
終盤でそれまで何を考えているかわからず、風に吹か -
Posted by ブクログ
ネタバレ前期三部作の2作目。三四郎よりも好きだ。
これは、とても良い本だと思う。
有り体に言えば、まぁ不倫ものみたいな感じなのかも知れないが…。
「最初に三千代を好きになった時点で、何で仕事探さなかったの??そもそも何で結婚しなかったの?最後に好きって言うくらいなら!!」と思わずにはいられなかった。
読んでいるうちに、段々と嫂の梅子の様な気持ちになってきてしまった。つい、没入してしまった。
ただ、代助の気持ちも分からないでもなくて…今の生活が心地よいから、親が持ってきた結婚の話も断り、ついそのまま過ごしていく、みたいな。好いた女もいるし、みたいな。
平岡に自分の気持ちを告げたあと、家族から絶縁さ -
Posted by ブクログ
心配性の兄を持つ「自分」の日常をつらつらと書き記した一冊。
大きい山場はないのだけれど、不思議に頁をめくる手が止まらない。
兄から、兄嫁の節操を試すために一夜の旅をしてくれ、と言われるところが山場といえば山場。
その依頼を断り、ただ出掛けで話を聞くだけという妥協案を出したものの、荒天により結局旅先で兄嫁と宿で一夜を過ごすことになる。
自宅へ帰った後も兄の猜疑は消えず、彼の言動が狂い始める。
その兄に旅を勧め、共に旅をした兄の友人から自分に手紙が届く。そこには心配性どころでなく、深く神経を病んだ兄の姿があった。
近代知識人が急速な社会の変化に惑う姿を、兄という装置を使って描いたのかも。
手紙の中 -
Posted by ブクログ
夏目漱石 「明暗」
三角関係を中心に複雑に交錯する人間関係から 自意識を描いた心理小説?
全体の雰囲気は「行きどまりの先にまだ奥がある」という正体不明の不安や陰気さに包まれている。
自意識の強い人物と社会規範的な人物を対称的に描いているが、外から見た自分と 内から見た自分の二重構造を意図しているのでは?
絶筆未完。社会に背立し、物質的不安を抱える津田夫妻、小林、清子がどう変化するのかが読みたかった
津田妻「自分の過失に対しては、自分が苦しみさえすればそれで沢山」
小林「僕には細君がないばかりじゃないんです。何もないんです。親も友達もないんです。つまり世の中がないんです〜人間がないと -
Posted by ブクログ
ネタバレ夏目漱石の『こころ』は、太宰治の『人間失格』と共に累計発行部数を争っているらしい。『人間失格』は前に読んだけど、『こころ』は未読だった。日本で最も売れている作品がどんなものなのか、興味があった。
この作品は、「上 先生と私」、「中 両親と私」、「下 先生と遺書」の3部に分かれている。主人公の「私」と「先生」との関わりが、作品のほとんどを占めている。
「私」は夏の鎌倉で「先生」と知り合い、それから頻繁に「先生」の家に通うようになる。「私」はなぜこれほど「先生」に好意を持つようになったんだろう? 後からその辺りの理由が明らかになるのかと思ったけれども、特にそれらしいことは明らかにならないまま物 -
ネタバレ 購入済み
囚
自分の過去に囚われすぎて,心を閉ざし,社会を遠ざけ,絶体絶命のピンチを目前に寺に籠もってしまう。
己と向き合うふりをして,逃げ続ける。
後ろを向いたまま,自分だけの悲しみに酔いしれることは,何の奇跡ももたらさない。 -
購入済み
恋物語
結ばれても不幸だったり,結ばれないのが幸せだったり。
昔の人たちの恋愛は,今よりも縛りが多くて,大変な苦労と我慢が必要であっただろう。
今も昔も,完璧に人を愛することなんて,完璧に人に愛されることなんて,きっと誰にもできない。