夏目漱石のレビュー一覧
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帯に「村上春樹の『海辺のカフカ』カフカ少年も読んだ名作!」とあるからそんな場面があったんだろうか、忘れたがなるほど相通じるものがある。最近読んだ桐野夏生の『メタボラ』をも思い起こさせる不思議な作品だ。
といって当然こちらが先。あるものからのがれる逃避行の物語。逃げるってちょっと魅力的。
だけど「坊ちゃん」がぽっと世の中に家出すれば、だまされてとんでもないところに連れて行かれる。連れて行かれたところが銅銀山の飯場。
坑道に案内されて地獄を見、抗夫仲間にばかにされ、粗悪な食事がのども通らず、寝れば虫に悩まされる。しかし、そこは教養のある「坊ちゃん」人生が見えてくるからよしよし、というかなあん -
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津田由雄は30歳、延という23歳の女性と結婚して半年も経っていない。
お延とか延子とか呼ばれる彼女は細おもて色白、目が細いのだけど眉を動かすと魅力的である。
新婚なのに津田は病気で手術しなければならない、なのにしかしなにやら家計が苦しいのである。そのわけは新妻に高価な宝石の指輪をプレゼントしたから?いや、裕福に育った派手好きの彼女にいい顔をしたからに違いない。
気が強い新妻は新妻とて、なぜだか不安に付きまとわれる。一目ぼれの弱み、彼の愛情を独占したくてたまらないが、いまひとつすっきりしない。深いわけがありそうなきざしがあるのだ。
この夫婦がてんでばらばらならば、相談する津田の両親や親代わ -
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漱石の作品を丹念に読んでいくと、教科書的文学史的知識を通り越してやはり文豪だ、天才だと実感する。100年前にこんなすごい文学を書いた天才が日本にいた、という誇りが湧いてくる。
『行人』
人間と人間の関係を、心理の奥深くに探求してやまない作者の彷徨は、苦しくも胸を打つ。
前半、二郎は兄一郎のストイックな性格に翻弄され、兄の家族(妻、両親、妹)まで巻き込んで起こってくる葛藤を語る。兄嫁との三角関係まで疑われ、微妙な立場になる。あげく後半、兄の友人Hにも世話をかけ、手紙で描写される兄の性格とは。
「ひとのこころはわからない」と人を信じられない。いえ、いい加減なところで妥協できない性格なのだ -
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久し振りの夏目漱石。職業作家としての第1作とのことで、他の有名な作品と比べるとかなり力の入った(ところどころ難解で読みにくい)文体だなと感じる。ただ、内容は男女の恋愛を主軸に物語が展開しており、描写を全て理解してやろうと思わなければ、けっこう楽しめる小説だったと思う。
哲学を学んだ甲野欽吾、その勝気な妹の甲野藤尾。欽吾の友人である宗近一と、あどけなさの残る妹の糸子。藤尾を嫁にと考えている男、小野清三。清三の恩師である父を持つ、清三との婚約の約束がある内気な娘、小夜子。この6人を中心に物語は展開する。
藤尾と小野が両想いであるが、小野には許嫁である小夜子がいる。謙虚でおとなしい古い価値観 -
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ネタバレこの本は1910年に大病を患った夏目漱石が、復帰後に最初に書いた長編小説であり、後期三部作の一冊と言われています。
長編小説といっても、この物語は6つの短編から成っています。短編がひとつの話にまとめ上げられ、長編小説になったものなのです。夏目漱石は当時新聞でこの作品を新聞で連載していました。毎日少しずつしか進まない物語を短編として仕上げていきながら、その短編を さらにまとめ上げたときに、長編小説が現れる。夏目漱石がかねてより思い描いていたというこの構想は、なんとも素晴らしく粋で素敵なものに思われるでしょう。
この物語は、主人公、そして聞き手に田川敬太郎がおかれ、様々な登場人物から話を聞いてい -
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ネタバレ後期三部作の1作目。
短編が集まって長編の形式を取っているし、序盤は割とお気楽な感じだから読みやすい。
中盤からとても濃ゆい。前期三部作とは全然違う。
あれも恋愛の話には違いないが、こちらの方がズドンと迫ってくる。
男の嫉妬心と猜疑心がとても良く描かれている。
私個人としては、須永の気持ちも分からんでもないけれど、千代子とくっついた方が幸せになれると思う。
ただ、千代子の気持ちに応えられるか分かんないんだよね須永は。
何だか二人の関係がもどかしくてもどかしくて。
これは、現代人が読んでも十分に楽しめる。
印象的なシーンも多々。
楽しかったり、悲しかったり、物寂しかったりもするけれど、漱石