あらすじ
三部作の前作「三四郎」で描かれた淡い恋愛は、この作で、より深刻な人間的苦悩にいろどられる。自然の情念に引きずられ、社会の掟に反いて友人の妻に恋慕をよせる主人公の苦しみは、明治四十年代の知識人の肖像でもある。三角関係の悲劇を通して漱石が追求したのは、分裂と破綻を約束された愛の運命というテーマだった。西洋化する近代日本文明への失望と封建的道徳の偽善の狭間で苦悩する自意識を描き鋭い文明批評ともなっている。明治42年作。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
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前期三部作の第一作目である三四郎より気に入った
三四郎より随分と知識人らしい高次元での懊悩が書かれていて、読みにくい部分はあったけど、漱石自身が知識人だったこともあり、そこはリアルに描かれていたような気もする。
前期三部作のラストである門も読みたいです
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中盤まで話が動かず根無草の主人公にイライラもした。三千代に思いを告げてからは一体どうなるのかという緊張感を持続させながら物語は一気に最後まで進んでいく。結末は描かれないがあのラストは良いと思った。
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終始代助の子供っぽさ、煮え切らなさ、だらけ具合にムカついていた。これから代助はどうするのだろうか。
代助は三千代が平岡と結婚する前から好きだと言っていて、最悪な形ではあるが三千代の気持ちも確かめることができた。だが、いざ三千代が自分と一緒になるためなら死んでも良いと言った際には怯えて何も言えなくなった。あれほど三千代のことを愛していると言っていたのに、結局は三千代の意思を侮っていたのだと思った。
三千代は死んでまで代助と共に生きることを選んだが、代助は三千代も手に入れ、あわよくば家族ともうまく付き合っていきたい気持ちが表れていてどうしようもないと思った。
家族に見捨てられ、親友にも裏切られた代助を可哀想だと思うが、仕方がないことだ。
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清くまっとうに生きる人間のなんとつまらないことか!代助は親の言うがままに従えばいくらでも楽に生きる道はあったのに、激情に任せて自分の意思で茨の道を選んだ。この後悔と裏腹な大胆な感情の揺らぎこそ漱石文学の醍醐味だと思う。ニートだろうが金が無かろうが親に勘当されようが、人を好きになってしまったらもうしょうがない。それでこそ人間ではないか。クソのつくほどつまらない人生を生きながら「オレはまだマシな方」と自己正当化を繰り返し、「あーあ可哀想に、あいつは堕ちたな」と他人の内心不幸を喜ぶだけが娯楽になっている人間から見れば代助の決断は大いなる愚行に過ぎないだろう。しかし私は代助のように真に人間的に生きたいと思う。
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「代助の言動はあまりに優柔不断で、やきもきした読者も多いのではないか」との考察をする感想を見かけたが、私は、やきもきはしなかったな、、、人とは、感性がずれているのか、はたまた寛大な心を持っているのか(笑)
全体主義的な風潮に対する批判として、個人の自由主義的な考えを表現したかったようだ。今も昔も、社会的な常識に従って、安全牌な振る舞いについ走りがちだけど、社会を無視した代助の考え方や行動にはむしろ憧れを持っている自分がいる。ふとしたときに思い出したい作品。
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この文量ならば『坊っちゃん』に次いでとても読みやすい時感じた。物語終盤に差し掛かると、代助の逼迫した心境が、漱石の素晴らしい描写によってわかりやすく伝わってくる。情景描写がスッとここまで入ってくるものは他にないくらい素晴らしい。
まあ客観視したら、代助くん不倫するなよ、と言う感じですけれどね…
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自己欺瞞に気付き、本心(自然)へと向かおうとするが、狂気へと至ってしまう。
理屈を述べて世間を批判するが、根底には臆病さがある。生きる理由を三千代への愛に見出だし突き進むが悲劇となる。
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ずいぶんかかった。
いつから読まなきゃと思っていたんだったか。
谷崎潤一郎の『蓼食う虫』を彷彿とさせる主人公の足踏み状態。進まない。ちっとも先に進まない。四の五の言ってばかりなり。なんなん!ブルジョワの余裕というには金に余裕はないし、それなのにあの余裕は。いやだから余裕ではない。
だから結末に向かっての雪崩れ込み方は,オヨヨである。
さぁ、職を探そう!と外に飛び出すってあーたびっくりよ。
思わず、そのあとが知りたくて『門』に突入しちゃったじゃないの。
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後半代助が自分と三千代のために動き出すところから読むスピードがグンと上がった。面白かった。
三千代を貰いたいと思いながらいざ三千代が「いざとなったら死んでもいい」ぐらいな覚悟を代助の上に認めるとたじろぐ代助。滑稽で思わず笑ってしまった。
ラストの終わり方、漱石作品にはあまりない「それから」を思想させる表現の仕方だと思った。
全体を通して、と1番最後の部分が今の自分には難しく感じた。自分があまり読めてないだけだが、なぜ「赤」を強調させているのかよく分からなかった。炎の色だから?
もう少し年齢と経験を重ねてからもう一度読み返したい。
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初めは本当に何が書かれているか理解はできなかった、しかし読み進めるにつれ代助の恋心を肌に感じることができこれが夏目漱石の力かと再認識させられた。不倫という曲がった愛の形ではあったがそれが美しくて汚いものだと思ってしまうような漱石の文に正に天晴れと言いたい。
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「自然」に生きることの難しさ。代助の過去の一つの後悔によって現在の暮らしが歪んでいくの様子は残酷といえるけど、いまいち代助には感情移入できんかった。三千代さんがいちばん不憫。
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前期三部作の2作目。三四郎よりも好きだ。
これは、とても良い本だと思う。
有り体に言えば、まぁ不倫ものみたいな感じなのかも知れないが…。
「最初に三千代を好きになった時点で、何で仕事探さなかったの??そもそも何で結婚しなかったの?最後に好きって言うくらいなら!!」と思わずにはいられなかった。
読んでいるうちに、段々と嫂の梅子の様な気持ちになってきてしまった。つい、没入してしまった。
ただ、代助の気持ちも分からないでもなくて…今の生活が心地よいから、親が持ってきた結婚の話も断り、ついそのまま過ごしていく、みたいな。好いた女もいるし、みたいな。
平岡に自分の気持ちを告げたあと、家族から絶縁されて、何もかも失いつつある代助が「ちょっと職業を探してくる」と真夏の日差しの中へ飛び出していく…
その描写が、何となくだけど、代助の今後を暗示しているような気がしないでもなかった。
読んでいるときは「何が"それから"なの?」と思っていたが、通読して鳥肌が立った…これが日本の文豪か…
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明治末の「高等遊民」を主人公にした小説。夏目漱石の前期三部作の2作目。大きな筋は一種の恋愛小説であるが、社会との関係、友人との関係、家族との関係など、いろいろな要素が盛り込まれた小説となっている。
主人公と立場・状況は違うが、アンニュイな気分など、主人公の考えに共感できる部分も少なくなく、100年前の小説とは思えない新鮮さがあった。
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夏目漱石作品に外れなし‼︎の私としてはうーん今回の話はいまいちかなーと思ったけど終わり方が想定外で吃驚。
そしてこの題名である。
鳥肌が立った。
ずーっと気になってたんです。
この題名の意味するところはなんだろうと。
まさかのまさかでした。
題名だけで星1つ分増えた。
そして『門』へ続く…か。
今からだと気が急いでしまうから来年またゆっくり読もう。
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代助と三千代はこれからどうなっちゃうんだろう…。
学校で映画を観るらしいので、その前にと思って読んでみました!
三四郎とは全然違う雰囲気。
門も読んでみたいと思います。
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とても漱石らしい感じのした話でした。
主人公の代助が颯爽と登場する冒頭は、なんとも滑稽でちょっと微笑んでしまうような感じだったのに、三千代に対する思いを自分で改めて認識してからは、とても痛々しくて哀れだった。
まぁ、金持ちの坊ちゃんで、その割に変な理屈を捏ねるちょっと変わった人物ですが、この小説を読むと、無職の主人公でも好感がもてる。
家族に勘当され、友人とも絶交されてでも、愛を貫き通そうとするには、昔も今も変わらないんだな~って思う。
二人がやっとお互いの気持ちを分かり合えたのに、3年の間で作り上げた障害はとても大きすぎるだけに、二人の愛は昔以上に深まってるような気がする。
3年前、平岡に本当の代助の気持ちを言って三千代と結婚してたら、そうではなかったかもしれないんじゃないか。とも思うけど。。。
この二人は、その後どうなるのだろう。。。。
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漱石らしいとても歯切れのいい文体が気持ちよくて、主人公の代助の、現代で言えばニートな身分でありながらインテリで偉そうな思考回路がおかしくてところどころ笑いながら読みました。前半は。
後半は、代助がどんどん追いつめられていく様子がちょっと痛々しい。自業自得なんだけど。
どんなに頭がよくても感情(特に恋愛感情)はなかなか制御できない。それなのにそこに理屈をくっつけようとして余計苦しんで…漱石の重い小説にはこういう主人公が多い気がします。
ぼんやりした終わり方がかえって印象的でした。
漱石の比喩表現は見事ですね。さすが文豪、と惚れ惚れしました。
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社会の掟に背いて友人の妻に恋慕をよせる主人公の苦悶は、明治40年代の知識人の肖像でもある。三角関係を通して追求したのは、分裂と破綻を約束された愛の運命というテーマであった。
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結末を描かないことで、余韻が残る作品です。
続きが気になりますが、想像するしかありません。
いわゆる親のスネをかじりまくっている主人公ですが、彼には彼なりの苦悩があるようです。
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さすが文豪!!
昨日書いたかのような、色褪せない筆致に惚れ惚れしながら、中盤まで読み進めました。
だんだん、内容にイライラしてきて、終盤動きはあったものの、暇なお金持ちの散歩と悩み相談にただただ時間を費やした感覚に。
文章は本当に素敵。でも令和の感覚では、内容にピンと来ず。
所帯のある人を好きになるには相応の覚悟が必要なんだということだけは、しっかり伝わりました。
Posted by ブクログ
■ Before(本の選定理由)
言わずと知れた、夏目漱石の前期三部作のひとつ。
初めて読んでみよう。
■ 気づき
なんと煮え切らない、鼻もちならない主人公!
親の金で暮らしながら友人の妻を愛してしまう体たらくにイライラしたが、同時に明治も令和もヒトなんてそんなものだろう、と感じた。現代なら芥川賞的な話。
■ Todo
文明は我々をして、孤立せしめるものだ。
狭くて効率的な借家に人々が暮らし始めるのを見てそう感じたそうだ。いま私達が、70年代の団地乱立を見る感情とまったく同じでは無いか。きっと令和のタワマンも40年後には笑い種なのだろう。知らんけど。
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三千代と代助が気持ちを伝え合うシーンがピークだった。1番美しいページだった…。
しかしながら平岡のしたことはなんら間違いもない。
愛を貫き通すのが美しいかもしれないがそれだけでは生きられない。
結局落ちるところまで落ちてしまった話。
最後に落とされるような物語も悪くない。三四郎より断然好き。
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『三四郎』のその後を描いたから『それから』だそうですが…。
+++
『こころ』を読んだとき同様「なぜ??」が多く浮かぶ作品でした。
なぜ全てが幼く、そして遅すぎるのか?
『こころ』の謎が解けたように本書の謎も解けるでしょうか???それとも三部作目の『門』で解決するでしょうか。
解説で石原千秋さんが言われたように、時代背景や漱石の生い立ちが深く関わるのかも知れません。
それにしても…働きたくないことをよくあれだけ理屈をこねられるものです。(。-ω-)~
+++
続編を書くなら…覚醒した主人公がめちゃめちゃ新時代を先取りした事業で財を成し、実家に札束を叩きつける話、もいいかも知れません。たぶん無いでしょうけど…。
Posted by ブクログ
齢30ともなろうに一向に定職に就かず、財を成した父親からの援助で遊戯三昧の主人公・代助は、貧乏にあえぐ友人の平岡&三千代の夫婦と3年ぶりに再会してからというもの、その生活苦に同情して金を渡したりなどもしている。
息子の将来を憂いた父が縁談をすすめるも、代助はまったく煮え切らない。なんと三千代のことを好きでいる自分に気がついてしまったのである。
という、代助へのツッコミどころ満載の小説。
本の帯に印字された本文抜粋"ひとの妻を愛する権利が君にあるのか"って、もっと深淵を覗き込んだ末にでたセリフなのかと思ってたけど、そのまんまの意味だったね。不倫からの略奪、いやあんた無職ですやん!?
高等遊民(当時のニート)と現代のニートとは社会的な立ち位置もまるで違うのは分かってるんだけど、とにかく屁理屈を垂れ流して働こうとしない代助にイライラした。
曰く、「働くのもいいが、働くなら、生活以上の働きでなくっちゃ名誉にならない。あらゆる神聖な労力は、みんなパンを離れている」
曰く、「だからさ。衣食に不自由のない人が、いわば、ものずきにやる働きでなくっちゃ、まじめな仕事はできるものじゃないんだよ」
ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜???(°〜°)(°〜°)
それで三千代を寝取ったはいいものの、不義をしたことで実家からは絶縁され送金がなくなり、さて生活どうしよう?となって急に慌て出すところで終わり。まさしく「それから」である。ザ・ノンフィクションって感じだ。愛の刑と愛の賜物。現実(意志)よりも自分の本心(自然)をとって愛を貫くことって、さほど綺麗なものじゃないよ。
Posted by ブクログ
きょうから、それから、が朝日新聞で再連載開始。
「三四郎」「それから」「門」の三部作のうち、
昨年、「門」を再読しました。
「三四郎」は、先日終わった再連載で再読。
で、また再連載を読むのが何か気が重かったので、
今日、「それから」を再読しました。
40年前に購入した真っ茶色の文庫。
朝日の再連載は岩波文庫の「それから」を基準にしているらしいが、
私が高校生の時に読んだのは角川文庫でした。
破れないように、ページをめくる時に少し気を遣いつつ。
あんまり読みにくいので、タブレットに青空文庫からダウンロードして読んでみる。ただし、バックは茶色くして。(^_^;)
さすがに漱石、というか、相変わらず漱石、斬新な文章ですね。
198ページの3~4行、同じ単語で押韻しているので、
「あれ、同じ行を読んじゃった」と何度も勘違いしてしまいました。
漱石に遊ばれた感じ。
三部作、十代の時に読んで一番面白かったのは「三四郎」。
漱石の作品の中で一番好きでした。
でも、今回の再連載で読んだらちっとも面白くなかった。
結局、去年に再読した「門」が一番ジンときました。
漱石研究家でもある姜尚中さんも、「門」が一番好きだとのこと。
自分も年を取った証拠だなあと感じております。
Posted by ブクログ
ニート(高等遊民)の主人公が、親友の妻に恋をして親から勘当され、社会の荒波へ漕ぎ出そうとするまでの物語。あらすじを端的にのべてしまえばこんな感じだろう。続きがとても気になる。それから、どうしたのか。
代助の三千代への恋心は、露骨に描かれることがなく、逆にリアリティを感じさせる。雨音に包まれた告白のシーンが良い。