夏目漱石のレビュー一覧
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広田先生や与次郎の描き方
10年以上前に発表された小説なのだが、青春恋愛ものという普遍的なテーマを扱っているせいか古さを感じさせない。三四郎や美禰子の造形も相当に良いが、広田先生や与次郎の描き方がとても面白い。初期の作品の「吾輩は猫である」や「坊っちゃん」で大いに発揮されたユーモアがまだまだ残っているところが嬉しい。この作品でヘリオトロープを覚えた。
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ネタバレ漱石の後期三部作の第三作。
書生の「私」は、鎌倉の海水浴場で出会った「先生」の不思議な人柄に強く惹かれ、先生のもとに通うようになる。
そして、「先生」が、恋人を得るため親友Kを裏切り、彼を自殺に追い込んだ過去は、先生の遺書によって「私」に明かされてゆく。
下宿先の一人の女性「お嬢さん」に恋をした、親友どうしの「先生」とK。
Kがその胸の内を先生に打ち明けたにもかかわらず、先生はそれを握りつぶし、お嬢さんに結婚を申し入れる。
親友に裏切られ、恋に敗れたKは失意のうちに自殺する。
以後、先生は、自分がKを死に追いやったと罪悪感に苛まれ続ける。
「私」の目に世捨て人のように見えた先生は、お嬢さんと結ばれたにもかかわらず、この暗い過去のため、「死人のようにして」暮らしていたのだった…。
主人公が交代しながらも一貫して自我の苦悩を捉え続けてきた三部作ですが、ここへきて主人公が自殺してしまうという事態に。
「私は淋しい人間です」と言って静寂のうちに暮らす先生はひたすらに孤独。
誰にも相談できないでいた先生が、唯一その内心を明かせたのは「はらの底から真面目な」書生の「私」だった。
抱えきれないほどの痛みに、人はどう向き合うのか。
漱石が対峙し続けた問いは、今なお読者に響く。 -
購入済み
文化論社会論
冒頭部分の名セリフから始まって語り口の良い名文句が並んでゆく。当時としては進んでいたであろう直裁的な語り口が現在読んでも心地よい。もっとも現在では全く使われなくなった漢語が多いので突っかかるところは多いが。ストーリーはそれほど凝ったものではなく、漱石自身の文化論社会論として読むべき作品かと思う。
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Posted by ブクログ
夏目漱石の小品集ですね。
7篇の作品集です。
朝日新聞社の依頼で執筆されたそうです。
文鳥
夢十夜
永日小品
思い出す事など
ケーベル先生
変な音
手紙
小品と書きましたけど、私は随筆と思って読んでいました。
解説の三好行雄さんは『日本の近代文学には〈小品〉と呼び慣わされた独自のジャンルがある。小説ともつかず、感想ともつかず、いわば短編小説と随筆との中間にひろがる曖昧な領域なのだ。』と位置付けされています。
漱石もモーパッサンの短編小説『二十五日間』を〈小品〉と呼んでいるそうです。
また、この小品集を三好行雄さんは、「漱石の〈私小説〉と呼んでよいかもしれない」とも語られています。
確かに読んでいて、随筆とはおもむきが異なるようです。筋書きがしっかりしていて、物語性を感じますね。それだけ読むのが楽と言うか、読み進め易さがあります。もともと、漱石の文章は、私には親しみ易さを感じてもいましたが、漱石自身の〈私小説〉ならば余計に親近感が湧くのは当然の事でしょう。
ともあれ、この『小品集』は面白かったです。何回読んでも味が有ります。出版社も様々出ていますので、それぞれで読み直せるのも醍醐味ですね。 -
Posted by ブクログ
中盤こえるくらいまでやたらと難しい言い回しがくどくどと続く印象。漢籍や西洋の書籍からの引用が多いとかそういう話ではない。解説で、正宗白鳥は今作を批判したと読んだが、わからんでもない。
しかし終盤になると俄かに展開が速まり、筋に重きを置いたからなのか、格段と読みやすくなった。小野さんが突如として「真面目」になったのには少し狐に摘まれた感じがしたが、宗近一の言葉はなるほど人を動かす熱さがある。思わずじんと来た。
これまでに漱石の作品は『吾輩は猫である』『坊っちゃん草枕』『彼岸過迄』『こゝろ』『明暗』を読んだが、どれもそれぞれに特徴があっておもしろい。向田邦子の文章も好きだが、あの人のは反対にどれを読んでも変わり映えしないので、その対比からなおさら作品によって表情の違うのが面白く感じた。
解説によると、正宗白鳥は今作を説教くさいというような趣旨で批判したらしい。正宗白鳥の作品は『入江のほとり』を岩波文庫で読んだくらいだが、割と好き。しかし正宗白鳥が批判する今作も別の味があってよい。どの作家も同じ文章書き始めたら世も末。あまんきみこじゃないが、みんな違ってみんないい。
莫邪路と干将路というのが蘇州市内にあり、どっかの将軍(干将)と悪玉の親分(莫邪)の故事でも引いているのかと当時思っていたが、なるほど干将は剣匠でその妻が莫邪というのかと今作の註釈を読んではじめて知った。