【感想・ネタバレ】吾輩は猫であるのレビュー

あらすじ

近代の日本文学史上、最も豊富かつ奔放な風刺文学の王者。ユーモア・ウィット・風刺の宝庫である。漱石の処女作であると共に、一躍その名をたかめた代表作でもある。苦沙弥先生に飼われる一匹の猫にたくして展開される痛烈な社会批判は、今日なお読者の心に爽快な共感を呼びおこす。明治38年作。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved

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文句無しの日本文学の金字塔。
苦沙弥先生と寒月や迷亭といったクセ強キャラたちによる日常の屁理屈合戦。この手のフォーマットは現在でもアニメやマンガで見るし、「常識を皮肉る」という点では本書の前にもあったが、漱石の面白さは出てくるネタの博識さと名人の落語やコントのような軽妙な掛け合いにあるだろう。舞台装置を固定して登場人物の掛け合いだけで読ませるのは純文学的だが、良い意味で下らないトークが続くので高尚さを感じさせず肩の力を抜いて楽しめる。また、ジャンルの都合で作者の信条が見え隠れするが、出し過ぎず抑え過ぎず、実に上手い。

大人になって、坂の上の雲を読んでから読んだのだが日露戦争ネタが多いことに驚く。乃木希典が読んだらブチギレそうな気もするが、当時どうだったんだろ。

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2025年07月27日

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猫の目線で作者自らを含む当時の知識層を自虐的にも風刺しつつ、彼らの会話から展開される落語的笑いが実に面白い。しかし、あんな結末で終わるとは…びっくり。

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2025年07月20日

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ネタバレ

久しぶりに読んだけど、面白かったなぁ。
猫の最後がなんとも劇的であり印象的。
子供達の食事風景の描写、なんか以前読んだ時より場面を想像できて面白く読めた。年をとった巧妙か。
巻末の年表が良かった。

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2024年10月06日

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この作品は、地の文が苦沙弥先生の家に住み着いた猫に
よるもので一貫されていて、人間心理の内側はまったく見えないので、
各人の言葉の裏側をのぞき見ることができません。

猫は実質主人公ですが、ストーリーを動かす力はまったくなく、
折々のシーンの空間に『居ても構わない』立場、
かつ、人間よりも幅広い高低差レンジでの機動力を活かして
人間を俯瞰視しつつ、事細かい観察でもって数々の批評を
繰り出しては読むものの笑いを誘います。

恐らくこの作品はオートフィクションであり、漱石本人の
自虐ネタがふんだんに盛りこまれていて、
それをとりまく家族や交友関係を巻き込んだ
壮大なイタズラ心で出来ていると思います。

発表された当時の本人の周辺は、いろんな意味でさぞかし
ざわついていた事だろうと思いますが、これが単なる暴露本でなく、
当時の、西洋文化をどんどん吸収して変化していく日本の在り方に
警鐘を鳴らす様なメッセージを随所に込められている点が、
この作品をただの娯楽本と一線を画するものとしている
重要な点だと思います。

彼は、あの当時では普通でない留学を経験し、何足飛びかで
未来の日本の姿を既に予測していたわけで、自国民が元々持っていた
文化や思想が西洋からのそれに書き換えられていく姿に対して、
なんとしても声をあげたかったんでしょう。

例え話は無数に挙げられていますが、特に自分の心に残ったのは、

 向こうに檜があるだろう。あれが目ざわりになるから取り払う。
 とその向こうの下宿屋がまた邪魔になる。
 下宿屋を退去させると、その次の家がしゃくにさわる。
 どこまで行っても際限のない話さ。

独仙の言葉この部分で、トンネルを掘る、橋をかける、
西洋文化は、なんでも合理的にすることに目線が向いていて、
無理に移動しなくてもその場で事足りるようにする、
かつての日本なりの美徳やつつましやかさを、上書きさせられている。
この考えは、確かになぁ、と頷くものがありました。

自分たちで学識を積むでなく、婿を取り、金の力で箔をつけようと
画策する金田一家に対する皮肉はほぼ全編にわたって描かれていますが、
これも金と権力で人を動かそうとする金満主義への非難を
投影したもののように感じました。

登場人物の主要キャラクターである、迷亭、寒月、東風、独仙の
4人は、当時を生きていないうえに夏目先生の身の回りの人間関係も
まったく無知の自分にとっては、それらにモデルがあったかどうかも
謎ですが、彼らは苦沙弥戦隊ゴレンジャーを形成して、
それぞれ個別の概念を象徴するものして描かれているのだと思います。

迷亭=生まれたての個人主義
寒月=知的好奇心
東風=保守主義
独仙=禅

ゆがみひずみはあるものの、ここには、古き良き日本人の心を
宿す者の、この時点での現代・未来への憂いが凝縮されているのかなと。


この作品が発表された時からは120年近くの時間が
経過していますが、個人主義の社会が導く人の世って、ホントに
手放しでいい世の中に繋がっているのかな?って疑問はあります。
むしろ、一人一人を分断して結束する力を削ぎ落として
支配者階層の体の良い言いなりになる様に仕向けている様な気はします。

夏目漱石には何が見えていたのか、何が言いたかったのか。
なかなか一読して全容が掴みきれるものではないですが、
ほんのすこしだけ伝わった様な気がします。
伝説的・夏目漱石の記念すべき第一作。
楽しませてもらいました。

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2024年07月21日

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苦沙弥先生のような自若の中に天然を併せ持った性格は個人的にツボだった。そこに迷亭の飄々とした性格が合わさると尚面白い。

高度な教養から高度な洒落が放たれて、反応できない所が多過ぎたが、漱石の俗人を寄せつけない天才肌を感じられて面白い。

猫に人間哲学を啓蒙された気分になった。人間を皮肉っているが厭味がないのは、それが至極的を射ているからだと思う。
100年以上経っても人間の本質は変わっていない、だからこそ色褪せず支持される作品だと感じる。

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2018年02月19日

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猫の『吾輩』からとして描かれている視点が面白く、
電車の中で何度も吹き出してしまった。
面白いのだけど、文体の難しさと注釈の多さ、
字の小ささ笑とでなかなか読み進まない笑

この時代の人たちは知性がすごい。
書物や文献•翻訳本などへのアクセスが今に比べて全然乏しかったであろうこの時代、なのに知識量ハンパない。

後半、この時代の『個』の考え方がわかって面白い。
最後『吾輩』のラストシーンはじんとくる。

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2024年08月18日

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★★★★☆いつも途中で断念していましたが、今回は理解できないなりに読み終わりました。未来の人間の死についての話が印象的でした。人間はどこまで長生きすることになるのか。その死に方も変わってくるのか。未来の「死」を考えた事もなかったので、衝撃的な死のあり方だと思いました。

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2024年07月14日

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読むのにどれくらいかかっただろう。
2ヶ月弱か?

中学か高校の『こころ』ぶりの夏目漱石
いつも帰国した時にテキトーに本を買い漁って読むんだけど、ついついその時のセルラン上位の読みやすいが後味少ないいわゆるライトノベル…?というのか?に飽き飽きして、ちょっと文学を読んでみた

結果的にめちゃくちゃ時間を使って、2週間1ページも読まない日、逆に一晩で100ページ読む日

夏目漱石が世に対して、自身に対して、猫を通して風刺する感じの内容
哲学デブの手紙からの猫のdisりは読んでて食らった
人は理解できないものをありがたいと思う

そして最後、なんか2ヶ月一緒に過ごした猫の最後を知ってちょっとセンチになった
私の猫は天寿を全うできますように

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2023年11月19日

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人の営み(主に会話)を猫の目から観察した物
会話の輪の中にいると「へーそうなんだ」とか「それは大変やな」ぐらいに思う内容も、猫目線で聞いてきると途端に滑稽で、バカなことをずっと話してる事に気づく。

喜劇と悲劇がどこに(誰に)フォーカスして語られるかによって違ってくるみたいなものにも通ずる気がする

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2023年06月11日

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猫の目を通して、周囲の様子が淡々と語られる。
猫が見ているだけの滑稽な人間ドラマへの社会風刺。
怒濤の展開ありきの現代には、ちょっと冗長気味なのかもやけど
令和の今でも面白かったのは、読み手が大人になったからかな?

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2023年04月20日

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十数年ぶりに再読。読み心地のいい文章は落語のよう。
長大なる世間話。そのくせユーモアと風刺がわりに鋭い。
とりとめのない世間話に対する「猫」くんの語り口は軽妙で、また作中人物を通して自分自身をも諷刺の対象にしてしまうのはまさにイギリス的。
最終章は後の作品にも見られる厭世観が漂う。

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2022年04月17日

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 苦沙弥先生をはじめとする登場人物を猫の視点に預けて痛快に批判する漱石の感性に脱帽である。個人的には口達者で自分勝手な美学者迷亭の言動が小気味よく面白かった。もっとも、彼のようにデリカシーのない人物が実際にいても友達にはなりたくないが(笑)

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2021年03月07日

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淡々とした話だったので、読み終わるまで時間がかかった。ラストが意外と面白い感じで、長い話ではあったが、読んでみて良かったと思う。

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2020年07月06日

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猫から見た視点で、主人や友人など人間世界の様子が綴られている。人間は、滑稽だったり、妙だったり、おもしろいそうだ。当時の日本で文明が進むことにより起こる弊害を風刺しているようで、今の日本にも通じるところもあるみたいに思えて驚いた。この猫は、随分かしこくて、まるで悟っているように見える程だが、主人や友人などにあくの強い個性的な人物が多く飽きなかった。

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2016年09月01日

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 夏休みの課題図書に勝手に指定した恐るべき猫の物語。『坊っちゃん』を愛読してるくせに初めて全文読んだ。本文516ページはかなりの教養がないとサクサクとは読めない(現代人には無理?)。
 ただ、注釈を確認しながらも明治社会や漱石自身を含む教養人の生態を勢いのある文章で味わえる。「オタンチン・パレオロガス(189p)など“乾いた”ユーモアで笑える一方、「とにかく人間に個性の自由を許せば許すほどお互いの間が窮屈になるに相違ないよ(500p)など100年後の現代を予見するような記述にドキッとさせられる。恐るべき猫の最期は、“らしいな”と思った。

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2014年08月17日

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漱石の作品群の中での評価という意味も含めて★4つ、単品なら★5つでも良いかと思う。
非常に独特の空気をもっており、これに続き並び評される作品はそんなにないと思う。
ただ漱石好きの当方の感想は、やはり「デビュー作」であるということ。
異様なまでのテンションなど才気に満ち満ちているのだが、詰め込みすぎで脱線のきらいもある。
良い意味での乱雑さとその後の作品にて徐々に洗練されていく変化を作家の成長・成熟と見るか才能の枯渇と見るかは正直好みの問題だと思うが、当方は前者の立場。
でも良い作品、これは疑いようもない。

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2013年02月18日

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ネタバレ

我輩は猫である。名前はまだない。
この文だけで何の小説か分かるくらい有名。
読んでみて思ったのは難しい…注釈あるけどそれすら難しい。
それでも最後まで読むことが出来た。
迷亭が好き。でも真剣に読んでたら嘘かい!ってなる

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2025年10月12日

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ネタバレ

猫目線で面白かったけど、途中から先生の話が主になってきたから飽きた。
でも、なんか猫ってかわいい。正直内容全く覚えてない。人間の汚い部分をバカにしてかわいい感じ。
落ちちゃって死ぬっていう最後の終わり方が結構好き。

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2025年02月09日

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先月で読み終わろうと思ってたのに、長なった苦笑
やっと読み終わったよ。
猫のくせによう細々色々考えるねえw
結局昔の人も今の人も言ってることやってること変わらないね。無駄なマウントばっかり。
そりゃ猫にも飽きられるよ。
独仙君の考え方は好きだな〜と思ったが、結局彼も他の人に言わせれば変わり者。
てか、それぞれ自分普通だと思ってて、それぞれ変わり者で、結局変わり者ばかり集まれば別に変わり者じゃなくなるよね。
そんなもんだよな。

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2024年08月01日

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ネタバレ

先生のもとに集まるひとたちってよくまぁこんなに適当な話を思いつくものですね。
最後はあっさりと、そしてまさかの展開で切ないです。

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2024年04月07日

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一本の物語が大動脈としてあるのではなく、主人公の家にやってくる友人知人との珍妙なやり取りが描かれる。スパイシーな日常系小説(失礼)である。

日露戦争の時代の日本人風刺、社会風刺を通じて、当時の人間や暮らしを垣間見ることができる。人間はいつの時代も変わらんのやなというところもみられる。

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2023年05月16日

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会話の掛け合いが面白くて、何度もクスッと笑ってしまいました。猫の視点を通して人と社会を視ることがこんなにも面白く、そして皮肉もたっぷり。
読みごたえがありすぎて、読み終えるまでにかなり時間がかかりました。時間があるときに読むべきですね

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2022年10月13日

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先生と仲間たちと奥さんと猫…。
面白い人間には面白い人間が集まる。
相乗効果が見事である。
肩の力を抜いて、ボンヤリした状態で読むととても気持ち良く読める。お酒のお供にしたい。
夏目漱石の他の作品を読もう思う。

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2019年09月27日

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ネタバレ

猫の視点で書かれた小説。漱石やみんなが集まって話している風景。
泥棒が入った時など想像すると面白いと思う。とてもユーモアのある小説
500ページくらい熱い小説。読みごたえが十分。

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2016年10月10日

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自分の周りにいる動物たちもこの猫のように、人間を馬鹿にしながら生活しているのか。
そんな想像をしながら読みました。

登場する人物はどこまでもありふれていて、どこまでも現実的。
その人物たちのさらにありふれたどうでもいいような会話が、猫から見ると滑稽である。

夏目漱石の作品は初めてですが、文章や言葉の難しさにかなり戸惑いました。
もう少し教養と知恵があったらさらに楽しめたかも...

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2015年03月18日

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覚悟してたが、やはり漱石の作品は難しい言葉が多い。広辞苑にない言葉も多数ある。「吾輩」の猫を通して自分自身や人間を大いに揶揄している。『ガリヴァー旅行記』も想起した。ギリシア、ローマ、中国の諸賢人たちを引用しつつ、「吾輩」の鼠取りの演習、幼児の食事、泥棒の様子も描く。苦沙弥先生を交えた滑稽な会話はユーモアだが、どこか寂しい。

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2014年12月11日

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夏目漱石のデビュー作。夏目漱石の他の作品にくらべかなり長いほう。また、今は使わない言葉が多く、なかなか先へ進めないので、読み終わるのに結構時間がかかった。最後は意外な結末だった。今は差別用語となっている言葉が時々出てくるので気になった。

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2014年11月28日

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夏目漱石が、飼い猫に心を投影して書いたものと思われる
そのせいか猫の「我輩」には
何事にも散文的な思考をもって当たる癖があり
本能よりも先に理屈がでるその性質ゆえ
鼠一匹とらえることもままならないのだった
猫にとっては実に迷惑な話である
しかし漱石には
己を客観的に見つめるトレーニングとなったのかも知れない
ユーモアでもってそれを描くということは
おそらく、当時としては画期的なことだろう
これがデビュー作品である

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2013年10月10日

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いちおう読んでおかないと、
ということではあったのだが、
やっぱその時代に読まないとおもしろくない。

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2013年08月24日

Posted by ブクログ

昔の言葉だからか難しく、なっかなか頭に入って来ないのでサクサク読み進められない。
まだまだ勉強不足。

ざっくり言うと、猫の人間観察日記。
ピリリと風刺がきいている猫目線の観察は愉快。

出てくる人間たちも個性が強烈。
しゃべり好きで未来の事などを嘆いている会話もあるが、それが割りと当てはまってるのはさすが。

何気なくすぎて行く日常の幕引きはなかなか衝撃的な展開で、突然終りがくる、それこそが人生というものなのかなと、猫を通して考えさせられる。

知識を深めてまた読み直したい。

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2012年09月11日

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