夏目漱石のレビュー一覧
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「こういう危うい時に、生まれつきを叩き直しておかないと、生涯不安でしまうよ。いくら勉強しても、いくら学者になっても取り返しは付かない。此処だよ、小野さん、真面目になるのは。世の中に真面目は、どんなものか一生知らずに済んでしまう人間がいくらもある。皮だけで生きている人間は、土だけでできている人形とそう違わない。真面目がなければだが、あるのに人形になるのは勿体ない。(中略)僕が平気なのは、学問のためでも、勉強のためでも、何でもない。時々真面目になるからさ。真面目になるほど、精神の存在を自覚する事はない。天地の前に自分が現存しているという観念は、真面目になって始めて得られる自覚だ。真面目とはね、君
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夏目漱石は、おそらく近代日本の作家の中では例外的に、文学を理論的に考えようとした書き手である。漱石は、小説が「書かれるもの」=言語による再現であることに自覚的だったし、だから、小説の構成やさまざまな語りの技術=技法をおろそかにできないとも考えていた。一定の留保は必要ではあるが、漱石のテクストは、彼の文学理論の実作化という側面があることは事実である。そして、この自覚が、漱石と?外とを分けるポイントでもあるのだろう(?外は稀代の名文家であるが、小説的な構成、構想力という点では、漱石と比べて見劣りがする)。
それにしても、この構成は編者の磯田光一によるものなのだろうか。抄録がほとんどで、一つ一つ -
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「夢十夜」を改めて読み返したくなったので購入したが、
冒頭の短いエッセイ「京に着ける夕」の、
格調高い語り口と内容のギャップにお茶噴いた(笑)
いや、大文豪の手に掛かれば、
こんなちょっとしたエピソードも立派な作品になるということか。
「夢十夜」については、脳の働きと夢について研究している学者曰く、
いくつかの根拠によって、まったくの作り話ではなく、
漱石が実際に見た夢を述懐していると思われる……とかなんとか、
高校生のときに読んだ科学系の本に、
そんな風に書いてあったと記憶しているけれど、よく思い出せない(泣)
が、何にしても、夢の持つ不条理感に充ち満ちていて、すこぶる面白い。 -
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中学生になったばかりの頃に読みました。
教科書に,一章だけが紹介されており,思わず惹かれてしまったのです。それは,主人公の正義漢ぶりが,直情さが,不作法だが無造作で飄々としたところが,
人物として当時の私がとても憧れたからだと思います.
夏目漱石のコミカルで軽快な書き口に,勧善懲悪の爽快感が加わり,文学作品のなかでもとても読みやすい作品の一つです.
多くの版がありますし,また多くの映像や絵や漫画も生まれています.学生の皆様には一読を勧めたい一冊です.
中学生の時と,今とでは,この作品に対してどの様な感想の変化があるだろうか,一度試して見ようと思います. -
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ネタバレ「『彼岸過迄』というのは元日から始めて、彼岸過まで書く予定だから単にそう名づけたまでに過ぎない実は空しい標題である。」
そんな由来だったとは。漱石後期三部作、その一。
まず登場するのが敬太郎。冒険を夢見るロマンティストでありながら、実際は大学を出て職も見つからず汲々としている青年である。物語の前半はどちらかというと軽妙な筆致で、敬太郎を中心とする人間模様が描かれる。謎めいた隣人に探偵ごっこにと、読者を楽しませるようなエピソードが目立つ。
ところが後半になると雰囲気は一変する。敬太郎が主人公なのかとおもいきや、今度は彼の友人である須永の存在が物語の全面に出張ってくる。従妹の千代子との恋愛を通し