夏目漱石のレビュー一覧

  • 坑夫(新潮文庫)

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    (心理的に)地下に潜っている身として、深く共感させられる語りが随所に出てきます。青年の外的体験と漱石の内的体験が重なり合って生まれた作品だと、私にはそう感じられます。

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    2016年11月29日
  • 三四郎

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    面白かった。これまで古典は字面の黒さが読みにくくて苦手だったが、角川のものは仮名遣いや漢字を現代の用法に近づけていてルビも不必要に振っていなく読みやすかった。それからイワタ明朝体オールドがよい。

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    2016年12月02日
  • 明暗(新潮文庫)

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    一度、挫折したのですが読み直して漸く読み切れた感じです。
    物語の進み方が前半、半分は「明」で、後半が「暗」といった感じで、落語の語源や仏教語源に使われる単語が盛り込まれているのにも拘わらず、非常にイメージが湧きやすい内容でした。
    続きが気になり、また良い所で未完になってしまっているのが、とても勿体なく、悔しい所です。

    言葉の選び方や、使い方により夏目漱石という人間像が浮かび上がってくる作品だと思います。

    ただ、前半はかなり根気が要りましたね。
    とはいえ、前述の通り勿体なく悔しい作品でもあります。

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    2016年11月09日
  • 二百十日・野分(新潮文庫)

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    二作品ともに奮い立たされるような気持ちの湧いてくる作品でした。野分の方が、個人的には克己心を煽動されるという意味で好きです。

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    2016年10月04日
  • 虞美人草(新潮文庫)

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    学生を終えた頃のモラトリアムの宙ぶらりん感と大人になる切なさ決意を思い出す。真面目に生きることは素晴らしい!いつまでも善きひとでいられたら。。
    甲野さんの日記の書き言葉と話し言葉の使い分け、漢詩などの教養、インテリ同士の会話の応酬など、自分の教養のなさ、緊張感のない乱れた言葉遣いなど大いに反省。独特の描写部分は音読するように読んだ。 端的で且つ美しくその的確さときたら!会社や身近な人物の評価表現の参考になりそうだ。最後に女の人生の難しさを思わずにいられない。そうそう、エリザベステイラーのクレオパトラが頭に浮かんだな。

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    2016年09月19日
  • 三四郎

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    こころ、吾輩は猫であるに続く漱石三作目。
    熊本から東京大学に通うために上京してきた三四郎青年の物語。
    物語に入り込むまでに少し時間がかかったけれど
    最後の100ページくらいは先が気になって急いで読んでしまいました。

    三四郎と美禰子がどうなるのか最後まで分からずドキドキもの。
    美禰子の発した「ストレイ・シープ(迷える子羊)」は名言です。
    明治時代でも現代でも若者の苦悩というのは普遍的なものだということを痛感。

    当然東京大学の学生なので本郷キャンパスの界隈の話が随所に出てきます。
    私は現役で東大を受験して落ちたので諦めてしまいましたが
    この本を読んでやっぱり東大に行きたかったなとそんなことを思ってしまいました。
    高校時代に読んでいたら違ってたかもなと思います。

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    2016年09月09日
  • 吾輩は猫である

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    猫から見た視点で、主人や友人など人間世界の様子が綴られている。人間は、滑稽だったり、妙だったり、おもしろいそうだ。当時の日本で文明が進むことにより起こる弊害を風刺しているようで、今の日本にも通じるところもあるみたいに思えて驚いた。この猫は、随分かしこくて、まるで悟っているように見える程だが、主人や友人などにあくの強い個性的な人物が多く飽きなかった。

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    2016年09月01日
  • それから(漱石コレクション)

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    夏目漱石三部作の第2作
    仕事にもつかず、結婚もしない代助が
    友人である平岡の妻、三千代に恋をしてしまう物語。

    ラストが文学的で好きだ。

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    2016年08月18日
  • それから

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    ネタバレ

    代助と三千代はこれからどうなっちゃうんだろう…。
    学校で映画を観るらしいので、その前にと思って読んでみました!
    三四郎とは全然違う雰囲気。
    門も読んでみたいと思います。

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    2016年08月16日
  • 明暗(新潮文庫)

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    ネタバレ

     日常のたった一瞬で10も15も思いを煩わす事がある。この本は、その一瞬を永遠と書きだした本だと思った。その内容は人情とは異なり利己的な指向で描きだされ、粘着性をおび醜悪さを引き出していた。同時に、人の感情の移ろいやすさ弱さも読み取れ、次の展開をみたいという好奇心も呼び起こした。
     読み進めるにつれ、自分の場合だったらどうだろうかと考え、胸を突く文章が何度もあった。読むのに苦労するが、その苦労を押してなお魅力的な一冊だった。・・・途中何度も発狂しそうになったが・・・。
     完結しなくてよかった。
     

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    2016年08月06日
  • 三四郎

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    ネタバレ

    こころと、坊ちゃんの間くらいのイメージ?
    漱石もこんな爽やか切ない小説を書くんだ!と思いました。
    今度三四郎池に行くので、美禰子さんの真似でもしようかな。

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    2016年08月01日
  • リライトノベル 坊っちゃん

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    ライトノベルじゃなくて、リライトノベル…(笑)
    設定にも新しく手を加えて現代風にアレンジ…って、もう「坊っちゃん」じゃないと思うの。面白かったけどね。
    夏目漱石没後100年の展示に使おうと思ったんだけど、一緒に置くのを躊躇うような紛らわしさ&「こころ」の隣に置くと良心が痛む感じがするのは何故…
    「原作:夏目漱石」じゃなく、「原案」だったら納得?
    これを読んだことで、私の中の「坊っちゃん」がゲシュタルト崩壊…orz面白かったから、まぁいいか(笑)

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    2016年07月26日
  • 夢十夜 他二篇

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    夢十夜、読んだことないと思っていたが、第一夜に覚えがある。これは、多分、学生時代に教科書で出会った気がする。

    第一夜が一番好き。美しい。亡くなる女性の願いは、真珠貝で墓を掘り、星の欠片で墓標を作ること。そして、さらに控え目に申し出たのが百年待ってほしい。そして、墓の傍で待つ男の下に、ゆりが花を手向けてきた。そして気づく。百年目だということに。
    この日本文学の繊細さ、美しさ。
    百年待ってほしいというのをためらう女性の奥ゆかしさ。
    どこに忘れ去ってしまったのでしょうか。

    解説本は多くあって、例えば、ゆりが何を象徴しているのかなどネットでも議論されているけど、ただ純粋に言葉や情景の美しさを楽しむだけではだめなのかと最近思ってきた。

    後は第七夜が好き。
    行方も、いつ接岸するのかも分からない船にいるより、死ぬことを選ぶ主人公。その瞬間、命がある方がよかったと悟る。深い。。。

    実際の夢を文字に起こしたのか、夢と言う設定の物語を創作したのか分からないが、うまい。これだけの短いページでどれも起承転結で綺麗に完結している。

    そして、どの主人公も結構孤独やら寂寥感がある。解説にあるように、「荒涼たる孤独に生きた漱石」を感じる。

    文鳥については、引用した個所が漱石の繊細さを現していて好ましい。

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    2016年06月19日
  • 門

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    三四郎、それから、門と続けて、朝日新聞で読む。学生時代、略奪結婚、そして、その後の暗雲たる生活。門では、宗助が座禅のため、寺を訪れるが、結局のところ、悟りに至るまで我慢できず、ろくでなしな主人公が、再び描かれている。

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    2016年03月04日
  • こころ

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    色々と伏線があったり、第一部、第二部と第三部とで主人公が違って視点が異なって初めて見えることなどもあり、読み終わると、「あれ?どうだっけ?」と思う点も多く、もう一度読み直したいと思った。

    新潮の解説も読んでみたところ、これは元々他にも短編がある予定だったらしいが、3部が予測を超えて長くなったので、3部までを一冊として出したとあった。その証拠として、3部の最初に四つ折りの紙が分厚い封筒に入っていたとあるが、明らかにそんな厚さで済まないほどの内容量であることを挙げてあった。確かに。
    だから、2部の最後で病院を抜け出した私と先生がどうなるのか?といった結末がない。

    一番気になったのが、武者小路実篤の友情と異なり、先生とKの間に友情をあまり感じれなくて、もやもやした。それはあっているのか、時系列的には、すべての後だと思われる1部の冒頭で先生のことを「よそよそしく」頭文字で呼ぶ気はないとあるので、やはりKをKと呼ぶ先生とKの間は、すべてを知った後のわたしにとってもよそよそしく目に映ったということだろう。

    明治天皇の崩御と乃木中将の殉死が物語の中で出てきて、そのことが先生とKに影響を及ぼすようだが、すでに平成の世を生きる私には残念ながら、その感覚が身近なものとしては分からない。

    後、気になったのが、御嬢さんはほんとうに私の方が良かったのかということだ。個人的には、Kの方に惹かれていたのではないかと思った。私はこれといった特徴もなく、俗に言う「結婚なら彼、付き合うなら彼」というあれだろうか?

    それにしても、谷崎作品と違い、漱石の作品の女性の存在感はいつも薄い。谷崎と異なり、漱石がまじめな人で、妻が悪妻だったからだろうか。現実味がなく、このお嬢さんも顔の美醜以外、二人の男性に取り合いされるような魅力的なエピソードが描かれていない。

    むむ、とうならせられる表現が多々あった。
    「遠眼鏡のようにぐるぐる巻いた卒業証書の穴から、見えるだけの世の中を見渡した」これって、つまり大学の卒業なんて、ほんの少し視野を広げてくれるだけに過ぎないってことなんかな?まだまだ世間には知らない事が沢山あると。

    従姉妹との恋愛、自分の火鉢だけが燃え尽きて、他人からの気づかいが感じられずしょげる様、女性が倫理的に間違っていても自分だけに寄せられる偏った愛を好む、苦痛や恐怖の感情が悲しみによる緩和される、親しくなりたい相手から同程度の親しみが返されない時の物寂しさなど言いえて妙。

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    2016年02月21日
  • 樋口一葉 たけくらべ/夏目漱石/森鴎外

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    お目当と言えばおきゃんな未映子がおきゃんな美登利をどう描くか興味津々だった「たけくらべ」、しかしながらやはり原作が原作だけに大きく崩すわけにもいかず無難にまとめたかなの印象。
    などと偉そうに言うものの実は私自身ガラスの仮面版たけくらべしか読んでおらずマヤの演技が「こんな美登利見たことない!」と絶賛されても「どんな美登利?」程度のものでしかなかったのだ。
    水仙の造花が切ないしっとりした悲恋の物語を堪能した上での初くらべ、しっくりくるのは亜弓さんではなくやはりマヤだと思うのですが…そうですよね、月影センセw

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    2016年02月10日
  • 樋口一葉 たけくらべ/夏目漱石/森鴎外

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    川上未映子訳の「たけくらべ」に興味があった。川上未映子訳に対して賛否あるようだが、これはこれで良いのではないかと思う。

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    2020年05月18日
  • 硝子戸の中

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    つまり、エッセイ集だと思えば良いのではないでしょうか。
    夏目漱石というと、なんだか恐れ多いんですけれど。
    僕はこの人の文章は、そこはかとなく乾いたユーモア、好きなんです。
    面倒くさい人だなあ、とは思います。面倒くさいインテリのオッサン。

    内容は、作家の日常ってやつですかね。

    「こんな変な客が来たんだよね」
    「実は僕の幼少時代にこんなことがあって」
    「私の母親っていうのはこういう女性でして」
    「俺、ちょっと変わってて。こんなことしちゃうんだよね」

    というようなことを書き綴っているわけです。

    僕は、なるほどナルホドと、肩もこらず読みやすく面白かったです。
    時代風俗固有名詞、無論こと明治時代のことどものなんです。なんですけど、読みやすい。
    それは、結局はヒトのお話だからでしょうね。

    「こんな人のこんな無礼に怒った」
    「こんな可哀想な人がいた」
    「母って自分を愛していたんだろうか」
    「友達と再会、いやあ、互いにオッサンになったもんだ」
    「こんな犬、こんな猫を飼っていてね」

    みたいなことなんです。
    だから、一見、とりとめもない。
    とりとめもないようでいて、実はちゃんと計算して書かれている。
    タレントさんの「今日はこんなカレー食べた!うまかった!テレビ局なう」みたいなブログではないですから。
    ちゃんと読み物になっている。
    ただ、話題が自分のことである。自分のことだから事実である。ジジツであるからには、そんなに大したことはない。大したことはないから、気軽に読める。

    具体的には。

    ●雑誌の記者なんかに写真を撮られる時に、笑ってくれって言われるのがどうにもイヤなんだよなあ。

    という冒頭編から、漱石さんらしさ炸裂。
    つまりは面倒くさいインテリなんです(笑)。
    面倒くさいインテリが、なるたけ誠実に、なるたけ褒められて生きていきたいなあ、という。

    ●講演をしたけど、出席した人が「さっぱり面白くなかった」と言っていた。と、聞いて落ち込んだ。と、どこかに書いたら、別の人から「面白かったですよ」と慰めてもらった。

    この講演話なんか、なんだか面倒な人柄が彷彿として、ほとんど落語のマクラ話みたいな爆笑モノ。

    一方で、夏目漱石さんは結構、不幸な生まれ育ちなんですね。
    養子に出されたり、両親のことを祖父母と言われて育ったり。
    そんな生い立ちや、生家のこと。
    まだまだ江戸時代の香りが残る江戸の暮らし。
    そして複雑で面倒な家族に育ったんだから、まあ、面倒な男になってもしょうがないか…という若干の重さ。
    ただ、それをまったくもって「俺ってかわいそうでしょ」という臭みを抜いて語り切る筆力技術は、やっぱりすごいなあ、と。

    そして、僕にとっては白眉は
    「他人に対する自分の態度について」みたいな内容の一章。
    これはもう、とにかく人間関係っていうやつの泥沼の深み、他人と自分との距離感、さみしさ、救い、面倒さみたいなものを、
    これまた実に淡々と語りつくしています。
    夏目漱石さんの後期の小説を読んだことがある人なら、
    「ああ、この人こんなこと考えてるから、あんな小説かけるんだよなあ」という。

    でもそれも、実に面白い。
    僕はどこかしらか、ユーモアを感じます。

    好きなんですよねえ。漱石さん。

    「極めてあやふやな自分の直覚というものを主位において、他人を判断したくなる。そうして私の直覚が当たったか当たらないか、要するに客観的事実によって、それを確かめる機会をもたない事が多い」

    「私は凡ての人間を、毎日毎日、恥をかくために生まれてきたものだとさえ考える」

    「今の私は馬鹿で人に騙されるか、あるいは疑い深くて人を容れることが出来ないか、この両方だけしかないような気がする。不安で、不透明で、不愉快に充ちている」

    いやあ、面倒くさいオッサンですね。
    これがユーモアがなかったら、読まないだろうなあ…僕も。

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    2015年12月31日
  • 漱石人生論集

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    この本では、漱石が書いた手紙や随筆の中から題名の「人生論」に見合った部分が選別されて年代順に並べられている。

    手紙はそれぞれ全文を載せているようだが、随筆『硝子戸の中』や『思い出す事など』については一部分だけを載せている。おそらく漱石の「人生論」が表れている箇所だけを編集者なりに抜粋しているのだろう。

    通して読んでみて、幾つかの有名な小説を読んだだけでは中々見えてこない漱石の内なる様々な思想・意志が明確に伝わってきた。そしてその心の熱さに驚き、感動した。励まされた。漱石がこんなに熱い男だとは知らなかった。

    『吾輩は猫である』、『坊っちゃん』、『明暗』などの作品名こそ人口に膾炙しているが、漱石が一体どんな思いを込めようとしたのかは作品を読んだだけでは中々判然としない。しかしこの本を読むと漱石の各作品への思いを知ることができる。その上でもう一度作品を読んだらきっと様々な発見ができるに違いない。私も早速『坊っちゃん』を再読したい気分である。

    一方で、特に書簡の章で強く感じられるのだが、この本は注釈が少ない。なぜ漱石はこの手紙でこの人物(例えばイブセン)の名を挙げたのか、或いは森田草平や和辻哲郎らへの書簡は一体何に対する返事なのか、などの説明が全く無い。そのため漱石がここで何を言いたがっているのか深く理解することが時折できなくなる。その書簡・随筆が書かれた背景についての注や固有名詞についての注を入れるなど、もう少し読者の理解をサポートする要素があっても良いだろう。

    この本の欠点はその辺りと言えるが、なまじっか注釈ばかりあってもかえって読みにくいかもしれない。注がほぼ無いから220ページほどの薄さで収まっているわけである。この薄さで漱石の「人生」に対しての驚くほど熱い思い・意志が充分感じ取れるという点だけで大きな意義がある。

    そう考えればこの本は、「夏目漱石という名前は知っていて作品もいくつか読んだことがある」ぐらいの人がより一層漱石に関心を寄せることができる再導入書と言っても良いだろう。

    ポケットの中に常に入れておきたい。少ないページの中に漱石の心が凝縮された良書。

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    2015年11月02日
  • それから(漱石コレクション)

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    「もっとシャキとしたら?」とあまり好きになれない主人公です。
    でも、ストーリーを彩る文章の美しさや、秘められた意図等々、何度も何度も読み返したくなる作品です。

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    2015年10月24日