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Posted by ブクログ
▼トシを重ねて読み返すたびに、本筋の事件のオモシロさよりも「坊っちゃん」と、坊っちゃんの疑似母的な「清」とのラブストーリーに、ココロ打たれます。泣ける。涙が止まりません。そうか、これは「赤毛のアン」だったのか。アンの物語に見えて、アンを巣立たせるマリラとマシューの物語でもある。さすが、漱石。
▼「坊ちゃん」夏目漱石。1906年初出。どうでもいいですが「赤毛のアン」が1908年。岩波文庫。2019年8月に、何度目かの再読。短い。あっという間に読めます。
▼大人になって読めば読むほど、哀しい話だなあ、と思ってしまいます。坊ちゃんの勤務先で起こった事件については、勧善懲悪は全く成されないまま。赤シャツ、狸、野だいこの思惑のままに終わってしまいます。生卵をぶつけて、ぶんなぐる、というテロリストな行為で束の間の溜飲を下げただけ。
▼ある種、極めて深い、世間様一般への絶望感みたいなものを、諦めた前提でのストレス発散みたいな小説ですね。しかしこの小編と、豊穣だけどストーリーのカタルシスとしてはかなり弱い「我が輩は猫である」が、一貫して漱石のベストセラーであるというのが、一種、不可思議でなりません。
▼でも。不可思議でも無いかな、とも思うのは、どちらの小説も、割と「世間は嫌なヤツらがはびこっている。腹が立つ!」という一貫性がある。そして、一方で素敵に浅い。気楽なところがある。深刻すぎない。
▼「世間を、世俗を批判する我が身、私も世間の一部である」という視座とか、「そういう俗な世界をもっともっと圧縮して、我が身と家族、夫婦との図式をどう感じるか」みたいな「内省の深み」までは、潜って行きません。そこの「ぞっとするダークサイド」は見ないようにしているンですね。そういう意味では、読みやすい。後年の、「行人」とか「道草」とか「明暗」なんて、読みようによっては、「ホラーかっ!」て言いたくなるくらい、そのあたりが、深い。息詰まるオモシロさ。でも気楽には読めない…。
▼しかし、「坊っちゃん」も、「猫」も、一方で言葉のリズムとか、文章の流れなんかは、上手いなあと改めて。そして、にやにやくすくすしていると、清の存在が、駆け抜ける終盤、そして最後の数行が涙腺を直撃…。
▼これ、今風に言えば、「現役バリバリの東大文学部の教授が、文芸誌に発表した小説」なんです。すごいなあ。
Posted by ブクログ
言わずと知れた夏目漱石の有名作。
処女作「吾輩は猫である」が好評を得て、一般的にはその次に発表した小説です。
無鉄砲で短気で喧嘩っ早く、両親から冷たくあしらわれて育った主人公は、唯一、下女の清にだけたいそう可愛がられ、清から「坊っちゃん」と呼ばれて育ったのですが、物理学校の卒業後、四国の中学校で数学教師として赴任することになる。
赴任先の中学校で起きた騒動について、坊っちゃんが語り手として書かれたものになっています。
学校を舞台とした教師が主人公の物語です。
こういった舞台設定だと、通常生徒といざこざがあって、その後和解し、そして感動の展開なんかがありそうなものなのですが、本作はそういう話ではないです。
坊っちゃんは生徒にからかわれた結果、職員会議で感情のままに罵倒し、そのまま和解せずに終わります。
教師たちがメインの話になっているので、学園モノですがお涙頂戴とはいきません。
ただし、ラストは勧善懲悪となっていて(善も若干やられてますが)、誤読感はスッキリとすると思います。
あの学校のその後を考えると少し心配な気もしますが。
文章は口語表現で、非常に読みやすいです。
ストーリーが頭に入ってきやすく、小中学生でも普通に読める内容だと思います。
実際に小中学生が読む場合は、子供が読むに不適切と思われる箇所もあるので、実際に読むとなると注意が必要と思います。
坊っちゃんは青い鳥文庫などからも出ているので、子供向けにはそちらをおすすめします。
どちらで読んだにせよ文章の軽快さと、また、他の多くの人がレビューで書いている通り純粋な面白さは損なわれないと思います。
語り手がべらんめえな青年である故か、地の文がかなり特徴的です。
文学小説らしからぬほどリズミカルで、本を読むときは情景を浮かべながら読むことが多いのですが、本作は情景から頭に浮かび上がってくるような感じで、かなり読みやすいです。
わかりやすいのは、坊っちゃんの行動・言動が真っ直ぐで正直なためと、行動が逐一インパクトを与えるためかと思います。
文学小説としては異色ですが、これなら読めるという人も多々いると思います。
坊っちゃん以外のキャラクターも立っていて、読んでいて楽しかったです。
坊っちゃんは赴任早々に他の教師陣に「山嵐」、「赤シャツ」、「野だいこ」、「うらなり」、「狸」などとあだ名をつけるのですが、彼らにもそれぞれのポジションがあり、活躍の場があったことがまた本作を名作たらしめる要因だと思います。
今出版されたとしても普通に楽しんで読める良作だと思います。文学の入り口としてもおすすめです。
Posted by ブクログ
テンポが良くて読みやすい。
主人公の性格と語り口がクセになる。
坊っちゃんは、嘘がつけなくて単純で無鉄砲でわかりやすい。そして情に厚くて信用できる。
客観的に見れば、坊っちゃんの判断は危なっかしいんだけど、読者としてはその単純さに妙な爽快感がある。
そしてそれが、テンポのいい語り口調と完全に噛み合ってる。
赤シャツは確かに信用ならない人物として描かれているけど、結局証拠は何もない。
こいつ気に食わねえ!やっつける!!って突っ込んでいくのは気持ちいいけども。
山嵐は本当に信用できるのか?っていうのも、坊っちゃんの視点だけだと結構怪しいんだよな。
推理小説みたいに「真犯人は誰だ!」と読むと、情報が足りない。そもそも語り手の坊っちゃんの偏ったフィルターを通しているし。
最後に証拠を突きつけて赤シャツの悪事を暴く展開になるのかと思ったら、それも微妙な状況証拠で結局暴力で制裁するし。これでスカッとはしないんだよな。
坊っちゃんは竹を割ったような気持ちいい性格はしているけど、結局悪いやつを裁く人間じゃなくて、嫌いなやつを殴る奴なので、お前も大概だぞってかんじはする。
誰もが裏表のある人間関係の中で、何を基準にして、誰を信用するかって話なのかも。
面白かったけど、まあ普通かも。
読みやすくて短いから良い箸休めにはなった。
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