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Posted by ブクログ
本書には、「夢十夜」「文鳥」「永日小品」の3つの小品がおさめられています。
「夢十夜」
人間の深層心理をえぐっているような、とても怖くてゾクゾクするもの(第三夜)もあれば、漱石の芸術観が表れていて興味深いもの(第六夜:運慶の彫刻)もあります。何度も読み返したくなる文章です。さすが!と思いました。
「文鳥」
漱石が執筆するときの“さらさら”というペンの音。文鳥の“千代々々”の声。静かな場面を演出していました。文鳥の観察がとても細やかで、文鳥を“淡雪の精”と表現しているのが素敵でした。漱石のちょっと不器用な一面や、もの悲しさが感じとれました。
「永日小品」
漱石の人柄を垣間見ることのできる随想集。題材は、子供のころ、ロンドン時代、東京での日常生活。おもしろくて笑えるもの、ちょっと不気味なもの、悲しさが伝わるものあり。
私が好きなのは
“柿”→喜いちゃんと与吉のやりとりが笑えました。
“猫の墓”→悲しさの直接表現はないけれど、漱石の子供の行動を通して伝わりました。
“山鳥”→ある青年にお金を貸す話。漱石の人の良さが感じられ、多くを語らずして心情に訴えかけるものがありました。他の本で、漱石が正岡子規に金銭面での援助をしていたことを知りました。漱石は、人柄を見てお金を貸していたと思われます。
Posted by ブクログ
正統派ブンガク
かかった時間は…こまぎれに読んだのでわからない
「夢十夜」「文鳥」「永日小品」が収録されている。まあ購入したのは「夢十夜」でも読んでみるかな、と思ったからだが、「永日小品」がものすごくよかった。
思えば私にとっての夏目漱石は「吾輩は猫である」が始まりだった。小学生の自分にとってさえ、作品全体に流れる、なんとなく対象と距離をおく視点や、逆に対象に没頭する視点、そして日常や光景の切り取り方にユーモアのようなものを感じ取ったことを覚えている。
「永日小品」はまさに、その「吾輩」の面白さと相通ずるものであると思う。それぞれの断片が、どこかもの悲しく、というか皮肉めいて描かれながら、そういうもの悲しさや皮肉めいた現実への愛というか、そこから面白さや美しさを同時に切り取るスタンスというか。
今更ながら、名作に出会ったと思う。これは折に触れて再読したい。
Posted by ブクログ
追記
表題作「夢十夜」について学部で読書会を行なって随分理解が深まったので追加。
夢十夜はそれぞれを漱石が見た夢と考えてもいいが、よく読んでみると技工の優れた点や、後の作品の片鱗、漱石らしい主張などなど様々なものが盛り込まれている。
第一夜は、死や土の匂いなど負の要素が確かにあるのにそれを全く意識させない美の連続、流麗な文章の巧みさは漱石ならでは。特に白い肌の色から白百合への色の流れの美しさと輪廻の象徴は脱帽。
他にも七夜八夜が表す英国文化に迎合する日本批判は十夜の庄太郎に見える「それから」の代助の片鱗などなど。たった数ページの文章でも読めば読むほど深みが知れて底が見えない作品でした。
漱石先生可愛い
表題作の夢十夜はずいぶんと暗示的で理解するのが難しいです。
ですが、一緒に収録されている文鳥と永日小品はとても面白い。
漱石先生がロンドンで道に迷ったり、道に迷ったり道に迷ったり。
先生の他愛も無い日常を垣間見るのは明治の世の人と今の人とが同じ「日本人」であることを感じられとても面白いです。
Posted by ブクログ
「夢十夜」。
黒澤明監督「夢」の元となった、「こんな夢を見た」で始まる(実際には前半のお話だけだけど)不思議な十篇の物語。
「文鳥」。
細部にわたる情景や心情などのうつろいの描写に感嘆した。ひょっとしたら初めて夏目漱石の偉大さにふれたかもしれない。
「永日小品」。
随筆とも短編ともつかない、落語の小噺のようで、それでいて漱石の身の回りを語ったものもあり、お話が詰まったショートショート。漱石の才能に振り回される。
ページ数は少ないが、声に出してみるようにゆっくり読むのがおすすめ。
正直、教科書から出ることなくなじめなかった漱石のイメージが、変わった。
Posted by ブクログ
夢十夜、読んだことないと思っていたが、第一夜に覚えがある。これは、多分、学生時代に教科書で出会った気がする。
第一夜が一番好き。美しい。亡くなる女性の願いは、真珠貝で墓を掘り、星の欠片で墓標を作ること。そして、さらに控え目に申し出たのが百年待ってほしい。そして、墓の傍で待つ男の下に、ゆりが花を手向けてきた。そして気づく。百年目だということに。
この日本文学の繊細さ、美しさ。
百年待ってほしいというのをためらう女性の奥ゆかしさ。
どこに忘れ去ってしまったのでしょうか。
解説本は多くあって、例えば、ゆりが何を象徴しているのかなどネットでも議論されているけど、ただ純粋に言葉や情景の美しさを楽しむだけではだめなのかと最近思ってきた。
後は第七夜が好き。
行方も、いつ接岸するのかも分からない船にいるより、死ぬことを選ぶ主人公。その瞬間、命がある方がよかったと悟る。深い。。。
実際の夢を文字に起こしたのか、夢と言う設定の物語を創作したのか分からないが、うまい。これだけの短いページでどれも起承転結で綺麗に完結している。
そして、どの主人公も結構孤独やら寂寥感がある。解説にあるように、「荒涼たる孤独に生きた漱石」を感じる。
文鳥については、引用した個所が漱石の繊細さを現していて好ましい。
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