【感想・ネタバレ】夢十夜 他二篇のレビュー

あらすじ

長篇の合い間をぬうようにして書かれた小品とよばれる一群の短篇がある。小品とはいうが、しかしその存在は大きく、戦後の新しい漱石論は『夢十夜』の読み直しからはじまったと言っても過言ではあるまい。ここには荒涼たる孤独に生きた作家漱石の最暗部が濃密に形象化されている。『文鳥』『永日小品』を併収。 (解説 阿部 昭)

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本書には、「夢十夜」「文鳥」「永日小品」の3つの小品がおさめられています。

「夢十夜」
人間の深層心理をえぐっているような、とても怖くてゾクゾクするもの(第三夜)もあれば、漱石の芸術観が表れていて興味深いもの(第六夜:運慶の彫刻)もあります。何度も読み返したくなる文章です。さすが!と思いました。

「文鳥」
漱石が執筆するときの“さらさら”というペンの音。文鳥の“千代々々”の声。静かな場面を演出していました。文鳥の観察がとても細やかで、文鳥を“淡雪の精”と表現しているのが素敵でした。漱石のちょっと不器用な一面や、もの悲しさが感じとれました。

「永日小品」
漱石の人柄を垣間見ることのできる随想集。題材は、子供のころ、ロンドン時代、東京での日常生活。おもしろくて笑えるもの、ちょっと不気味なもの、悲しさが伝わるものあり。

私が好きなのは

“柿”→喜いちゃんと与吉のやりとりが笑えました。

“猫の墓”→悲しさの直接表現はないけれど、漱石の子供の行動を通して伝わりました。

“山鳥”→ある青年にお金を貸す話。漱石の人の良さが感じられ、多くを語らずして心情に訴えかけるものがありました。他の本で、漱石が正岡子規に金銭面での援助をしていたことを知りました。漱石は、人柄を見てお金を貸していたと思われます。

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2025年11月26日

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現代文で読んだ作品をもう一度読みたくて読みました。「夢」ということもあってか、幻想的で美しいです。ただ、よく考えてみたらこうした夢は見られそうで見られないかもしれません。「夢」ですから。

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2023年04月14日

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こんな夢を見た・・・というフレーズで始まる不思議な話し。全体的にホラー要素が強かったように思える。夢というのはあいまいで、だからこそ面白く。その無軌道な進行が物語に奥行きを持たせ、さらに不思議な迷宮の中をさ迷うような感覚を再現するのだ。特に、3夜の子供を背負う父親の話しが好みだった。後半、いきなり百年前に盲人を殺した話しになるのが怖い。7夜の行先不明の船旅行の話しは、明治時代の人たちの時代背景をよく表していると思った。

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2019年08月14日

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こんな夢を見た。

そこから始まる夢のお話を10話。

夢のお話なので摩訶不思議。ここに何か意味やメッセージがあるのか、よくわからない世界です。

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2019年02月07日

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正統派ブンガク
かかった時間は…こまぎれに読んだのでわからない

「夢十夜」「文鳥」「永日小品」が収録されている。まあ購入したのは「夢十夜」でも読んでみるかな、と思ったからだが、「永日小品」がものすごくよかった。

思えば私にとっての夏目漱石は「吾輩は猫である」が始まりだった。小学生の自分にとってさえ、作品全体に流れる、なんとなく対象と距離をおく視点や、逆に対象に没頭する視点、そして日常や光景の切り取り方にユーモアのようなものを感じ取ったことを覚えている。

「永日小品」はまさに、その「吾輩」の面白さと相通ずるものであると思う。それぞれの断片が、どこかもの悲しく、というか皮肉めいて描かれながら、そういうもの悲しさや皮肉めいた現実への愛というか、そこから面白さや美しさを同時に切り取るスタンスというか。

今更ながら、名作に出会ったと思う。これは折に触れて再読したい。

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2018年05月19日

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ネタバレ

これ、ナゾナゾだと思う。読まれた方々それぞれの答えを尋ねてまわりたい。僕は、一夜は「音楽」。三夜は「歴史」が答えだと思うんだ。

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2014年07月15日

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面白い。想像したよりも面白かった。
個人的には一夜と三夜の話が好き。
これは漱石自身の夢をもとに書かれたものらしいけど、本当にこんな様々にみたのかね?
ロマンチックだったり、怖かったり、滑稽だったり。
それにしてもどれもたんたんとしていて、それでいてドラマチックなのが流石。

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2013年01月18日

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山のシューレで能楽師の安田登さんが演じたものが、この夢十夜のオマージュ(物語内のいくつかの話が混在している)だったと知って読んでみました。
夏目漱石はあまり読んだことがなかったけど、これはすごく好き。曖昧さの極致を表現してると思う。

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2012年11月27日

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第一夜の夢が好き。

白い百合ってとこがいい。百年も待ち続けて百合って。

なんとなく、小泉八雲の「怪談」を思い出しました。

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2012年06月28日

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追記
表題作「夢十夜」について学部で読書会を行なって随分理解が深まったので追加。

夢十夜はそれぞれを漱石が見た夢と考えてもいいが、よく読んでみると技工の優れた点や、後の作品の片鱗、漱石らしい主張などなど様々なものが盛り込まれている。


第一夜は、死や土の匂いなど負の要素が確かにあるのにそれを全く意識させない美の連続、流麗な文章の巧みさは漱石ならでは。特に白い肌の色から白百合への色の流れの美しさと輪廻の象徴は脱帽。

他にも七夜八夜が表す英国文化に迎合する日本批判は十夜の庄太郎に見える「それから」の代助の片鱗などなど。たった数ページの文章でも読めば読むほど深みが知れて底が見えない作品でした。







漱石先生可愛い

表題作の夢十夜はずいぶんと暗示的で理解するのが難しいです。
ですが、一緒に収録されている文鳥と永日小品はとても面白い。

漱石先生がロンドンで道に迷ったり、道に迷ったり道に迷ったり。
先生の他愛も無い日常を垣間見るのは明治の世の人と今の人とが同じ「日本人」であることを感じられとても面白いです。

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2013年02月25日

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ネタバレ

夢十夜:1908年(明治41年)。
こんな夢を見た、で始まるシュールで幻想的な十の物語。ソウセキなんて難しいと思っていたけど、こういうのは好きかも…と、学生時代に思った。

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2022年09月06日

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ネタバレ

夢は抑えられている感情が表れるものとよくいうけれど、漱石自身の社会に対する見方とか生命に対する考えを、夢という形で読者に訴えた作品のように感じた。

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2024年07月21日

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「夢十夜」。
黒澤明監督「夢」の元となった、「こんな夢を見た」で始まる(実際には前半のお話だけだけど)不思議な十篇の物語。

「文鳥」。
細部にわたる情景や心情などのうつろいの描写に感嘆した。ひょっとしたら初めて夏目漱石の偉大さにふれたかもしれない。

「永日小品」。
随筆とも短編ともつかない、落語の小噺のようで、それでいて漱石の身の回りを語ったものもあり、お話が詰まったショートショート。漱石の才能に振り回される。

ページ数は少ないが、声に出してみるようにゆっくり読むのがおすすめ。

正直、教科書から出ることなくなじめなかった漱石のイメージが、変わった。

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2022年05月02日

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夢十夜も永日小品もいろんな話があって、解説を細かく調べたくなる話もいくつかあった。
どんどんのめりこんでしまった。

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2018年03月22日

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夢十夜、読んだことないと思っていたが、第一夜に覚えがある。これは、多分、学生時代に教科書で出会った気がする。

第一夜が一番好き。美しい。亡くなる女性の願いは、真珠貝で墓を掘り、星の欠片で墓標を作ること。そして、さらに控え目に申し出たのが百年待ってほしい。そして、墓の傍で待つ男の下に、ゆりが花を手向けてきた。そして気づく。百年目だということに。
この日本文学の繊細さ、美しさ。
百年待ってほしいというのをためらう女性の奥ゆかしさ。
どこに忘れ去ってしまったのでしょうか。

解説本は多くあって、例えば、ゆりが何を象徴しているのかなどネットでも議論されているけど、ただ純粋に言葉や情景の美しさを楽しむだけではだめなのかと最近思ってきた。

後は第七夜が好き。
行方も、いつ接岸するのかも分からない船にいるより、死ぬことを選ぶ主人公。その瞬間、命がある方がよかったと悟る。深い。。。

実際の夢を文字に起こしたのか、夢と言う設定の物語を創作したのか分からないが、うまい。これだけの短いページでどれも起承転結で綺麗に完結している。

そして、どの主人公も結構孤独やら寂寥感がある。解説にあるように、「荒涼たる孤独に生きた漱石」を感じる。

文鳥については、引用した個所が漱石の繊細さを現していて好ましい。

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2016年06月19日

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読んでいる最中も読み終えた後も運慶が明治まで生きている理由を考えているが、とんと分からない。
そも、この夢を見た主は、本当に分かっているのかさえ、だんだん疑わしく思われてくる。

よく、夢を見る。
夢を見て、その中でものを思い、天啓を受けたような、閃光を目の当たりにすることがある。
けれど、果たして夢から覚めてみれば、いったい何に合点が行ったのかさっぱり分からなくなっていることがほとんどだ。
時々覚えていることもあるのだけれど、夢の中で得たような「あっ!」というひらめきはもう消えていて、改めて検討すると「あぁ…?」というがっかりが残る。
いや、夏目先生のことだから、しっかり考察するだろうけれど。

それにしても不思議なのは、運慶が生きていることだ。
運慶が「今日」まで生きていたら、ぜひ、夢の中でお会いしたいものだ。
そうしたら、ほぼ解る気もするのに。

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2015年10月07日

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不思議な夢から怖い夢まで。文鳥は悲しくなりますね。夏目さんの日常は周りにいろんなひとがいるので飽きないです。

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2014年10月09日

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すこし星新一を思い浮かべながら読んでた。
夏目漱石っぽくなくて、でも理屈っぽいとこはやっぱそうか、とかいろいろ。

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2013年01月07日

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改めて、文章が上手い。嘆息…。
漱石の文章は、ふとした感覚が、的確に美しく表現されているのがすごい。
夢十夜の異様性たっぷりな美しさ、文鳥と永日小品での日常続きの描写、良かったです。

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2012年12月04日

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夢特有のぼんやりと幻想的な雰囲気をまとった文章。文鳥は昔の女と文鳥が重ね合わされて描かれていて、その艶やかさに引き込まれた。

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2015年01月10日

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「夢十夜」
もう何度も読んでいるけれど、やはり第三夜の印象は強い。
この気味の悪さ、リアルな夜の手触り。
自分もその静けさに包まれているかのように感じる。
第六夜もよく覚えている作品。
子どものときに読んで、いや、木に埋もれているわけではないだろう、と、笑った記憶がある。
なんとなくただよう気味の悪さの裏に、人間の感情や情念がちらちら見えて、正しく夢のかけらを集めたかのような作品群だと思う。

「文鳥」
美しい文鳥と、それに対する心の動き・流れが、水のように流れ込んでくる、そんな文章だった。
文鳥を死なせてしまったときの彼の心が、そのしんとした行間からあふれてくる。
「あふれる」という表現では、しっくりこない。
行間そのものが、心の塊だ、というか。
「こう思った」などという描写などより、うんとはっきりとその心情が伝わってくる。
すごいな、漱石。

「永日小品」
「下宿」と「過去の匂い」は、アグニスは義理の姉弟同士の子ども、ということか。
様々な作品が収められている。
まるで夢の話のようなものから、英国留学の経験を踏まえたもの、日常の風景を切り取ったようなものまで。
漱石の視線の流れを感じるような気持で読み進めた。



1999.6.23
以前どこかで「夢十夜」の第三夜を読んで、とても印象に残った。漱石の作品は、古臭くない。そして品がある。暗さもあると思う。太宰が泥棒をあつかった小説を書いていたが、漱石の「永日小品」の「泥棒」とはだいぶ様子が違う。漱石の描く人物の目はいつだってすごく落ち着いている。この落ち着きが品を生んでいるのかもしれない。そういえば、村上春樹も落ち着いた文を書く人だ。こういうのが、好きだ。

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2025年04月09日

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ネタバレ

夢十夜は暗めだけど、やはり漱石の文章はいいな。ただ文鳥は、時代が時代なのは分かっているけど、動物虐待だよ…と悲しくなった。永日小品が良かった。

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2025年03月06日

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「夢十夜」はそれなりにおもろかったが、「永日小品」はどれもおもしろくはなかった。漱石はエッセイ風の小篇が苦手だったのかもしれない。

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2024年05月20日

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夏目漱石はとても暗い作家とは聞いていたが、その暗さが存分に味わえて面白い。
自己嫌悪?とも取れる過去の恥や綺麗なものを目の前にした時の醜い自分など…丁寧に描き出されて引き込まれる面白さがある

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2023年11月30日

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32冊目『夢十夜 他二篇』(夏目漱石 著、1986年3月、岩波書店)
「小品」と称される、漱石の短編作品を集めた文庫本。表題作の他、「文鳥」と「永日小品」という作品が収録されている。表題作は、10本の短い短編からなる連作である。胸を締め付けるほどロマンチックな「第一夜」、背筋も凍るほど恐ろしい「第三夜」、コメディとトラジェディが見事に同居している「第十夜」など、バラエティに富んだ短編が揃っている。夢と現の境目がわからなくなるような、独特の読後感に痺れる。漱石ビギナーにも易しい一冊。
「こんな夢を見た。」

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2022年05月18日

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「こんな夢を見たんだ」と話を切り出すことがある長男から借りた「小品」と呼ばれる短編集。気軽に読めるが内容は濃く、漱石の人となりを感じる。『夢十夜』はちょっと不気味。特に「第七夜」はホントの夢に出てきそう。一転、『文鳥』は微笑ましく展開するが、最後はちょと複雑。『永日小品』はブログ的なのりで漱石を味わえる。長男の“切り出し”は『夢十夜』の影響なのかな。

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2019年07月14日

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なんとも不思議な世界観の見せてくれる作品。短編だが味わい深い。持っていた漱石の印象とは少し異なる。

後半の2作は、作者の日常を描いている。文鳥に対しては、
飼ったからには面倒を見てほしいと思った。死なせたのは下女のせいにせずに。この作品によらず、所々少し冷酷な点が垣間見えるが、それがまたリアルなのかもしれない。

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2018年10月20日

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漱石先生の夢日記、妄想日記、普通の日記。
普通の日記は読んでてちょっとしんどかった。
「文鳥」は漱石が自分勝手なことばっかり言ってるのが面白い。

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2016年08月06日

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全編を通して不安、脈絡のなさを感じた。しかしそれが夢だ。第三夜が怖い。第一夜と第十夜がすき。

おじいさんが川へ入っていく話がコミカルで面白いけど、ラストが怖い。どこからきたの? 臍の緒 っていう受け答えが面白い。

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2013年10月20日

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夢十夜はタイトルそのまま、夏目漱石本人が直に見た十日分の夢を小説にまとめたもの。やはり夢だと思わせる何回りも捻くれた内容が目立つ。再読が必要

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2014年11月18日

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