夏目漱石のレビュー一覧
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1912年 朝日新聞連載 後期三部作
個々の短編を重ねた末、その個々の短編が相合して一長編を構成するという試みー プロローグで漱石が語る。
主人公は、卒業後求職中の青年・田川。
彼に関わる、あるいは、聴いた、物語。
冒険談・サスペンス・友人の恋愛談・生い立ち 等、語部を替えながら、其々短編として独立する。
前期三作に比べれば、ストーリー豊かで、読み物として面白い。
「雨の降る日」は、雨の降る日、幼女を突然亡くした一家を描く。突然の悲しみを、淡々ととやり過ごすような家族の描写が、痛ましい。感情表現はされず、「雨の降る日に紹介状を持って会いにくる男が嫌になった。」とだけ主人に語らせる。
漱 -
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ネタバレ夏目漱石の小説が好きなので為人を知りたく読んでみたわけですが、誰かに当てた手紙、講演内容、どこかの誌面へ寄せた文書などバラエティに富んでいます。
人生論集というだけあり、漱石の人生論を垣間見ることができる良書です。
まず。愚見数則は、教訓集のようなもの。
人として基本的なことだとを語っているわけですが、全てできているかというと微妙だなぁと我を振り返り反省したり、そうだよなぁと赤線を引いたり。
人を屈せんと欲せば、先ず自ら屈せよ
などは成功すればするほど高飛車になっていくであろうものなのに、漱石自身が語っているのが素晴らしいと思います。
また、私の個人主義は現代の多様性の話に通ずるもの -
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冒頭に、漱石から読者へのメッセージがある。
彼岸過迄という、なんだか気になるタイトルは実は、単に正月から書き始めた連載がそれぐらいに終わるだろうと付けられた名前らしい。
そうなの、という気持ちで読み始めた。
そこには、短編を連ねて、最終的に大きな一編になる試みをすると書いてある。
話の語り手は、うまく流れにまかせて生き抜いていくタイプの青年。
探偵に憧れたり、まめまめと占いを信じたり、職探しも縁故に甘えて気楽に成功させている。
一方、真の主人公ともいえる、彼の友人はといえば、考えてばかりで、行動ができない。
その理由が最初の方から匂わされているが、そればかりが理由ではない。
自分の心とば -
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私は、色々読んで、漱石の妻が嫌いだ。
この本を読んでいくにつれて、漱石が自分の妻と(浮気という観点ではないが)、心がちっとも通じている気がしなくて苦しかったんのかなーと同情を感じてきた。
この話は、後期三部作と言われる彼岸過迄から確かに続いている。彼岸過迄の須永と今回の行人の兄さんが似ている。
二人とも、最も身近な存在の女性の”本当の気持ち”を求めて、袋小路に迷い込む。
しかし、1作目の須永はが悩むのは少し複雑な事情がある関係の二人の恋愛関係が軸で、それ以外の要素もあるが、細かい気持ちの描写を読むと、それは恋だねとかわいく思える部分もあった。
ところが、今回の兄さんは、気持ちの読みにくい妻へ -
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ネタバレたまたま友人と同じ人を好きになることは決して珍しいことでもないと思うが、なぜこんな寂しい結末になってしまったのか。
先生は妻の心を汚すまいと、自殺したKとの詳細を胸に秘めたままいなくなってしまった。話せば良かったのに、と無粋な自分は思ってしまった。親しい周りの人が次々に死んでしまうことのほうが妻の心にはつらいだろうと思った。
先生は大学卒業後も、Kに対する罪悪感などから死んだように生きていた。そんな先生を慕った「私」に、遺書で赤裸々に過去を打ち明けたが、妻が生きている以上はそれを全て秘密にしておくよう言い残していったのはなかなか酷なことだと思った。 -
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『三四郎』『それから』に次ぐ3部作の最後。
『それから』の「高等遊民」から一転、勤め人となり安月給で慎ましやかな生活を妻としている主人公。お互いを労り合いながら仲睦まじい夫婦の様子が見られる前半。
後半になり意外なところから物語の核心に触れ始める展開となり、主人公は過去に犯した罪の意識から救いを求めて禅寺へと赴くが、何の悟りも救いも得らないまま帰宅。
妻もまた同じように罪悪感を抱いている事がわかる場面も前半に見られ、夫婦は今までもこれからも、ずっと罪悪感に苛まれながら生き続ける事からは逃れられないと言う悲哀の結末。
暗いし『三四郎』の様なユーモアのある楽しさを味わう事は出来ないけど、心理描写、 -
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小説”草枕”の反戦主義
夏目漱石の小説は数編読んでいるが、この小説では漱石がこの当時に起きた日露戦争に反対していたことが明確であったように感じている。
漱石は必ずしも自身の政治的な立場や主張は氏の文学作品の中で強く述べてはいないが反戦思想は強く持っていたものと理解できる。この作品は勿論多くの評論等で述べられているように漱石の作品の中でも優れた小説であり、秋の夜長に読む作品としては最適なもののひとつであるように感じている。