【感想・ネタバレ】硝子戸の中(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

硝子戸の中から外を見渡しても、霜除けをした芭蕉だの、直立した電信柱だののほか、これといって数えたてるほどのものはほとんど視野に入ってこない――。宿痾の胃潰瘍に悩みつつ次々と名作を世に送りだしていた漱石が、終日書斎の硝子戸の中に坐し、頭の動くまま気分の変るまま、静かに人生と社会を語った随想集。著者の哲学と人格が深く織りこまれている。(解説・石原千秋)

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漱石のエッセイです。兄弟のこと、母のこと、自分のこと、友達のこと、飼い犬のこと・・・・・
身辺に起きたことを語るその描写は、真面目に言っているのに妙におかしく思えたり。何だろう、このおもしろさみたいなものもあり。それだけでなく、さりげない優しさも文章全体にしみわたっています。

人との会話の中で、自分の主張もするけれど、(それが結構おもしろい)相手への気遣い、思いやりが感じられるのです。メンタルを病んだことのある漱石だからこその温かみのある言葉。「漱石さんて、いい人なんですね」と声をかけたくなります。

他人の死を通して、自分の死を考える描写に、心に訴えかけるものがありました。49歳で亡くなった漱石の晩年の執筆であることから、目に見えない何ものかに、つき動かされているようにも感じてしまいます。

人生の夕暮れの物悲しさが漂う、アンニュイな雰囲気がありながら、木漏れ日が差し込むような明るさも合わせもつ、そんなエッセイでした。

硝子戸ごしに、外をぼんやり眺めている漱石、絵になるなあと思います。

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2025年09月19日

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変わりゆく心が鮮明に映し出されている。表現が手に取るように分かるでもなく、私に溶け込むように沈んでくるはような言葉が多々ありました。

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2024年08月24日

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小学生の頃に『吾輩は猫である』で挫折して以来の夏目漱石。薄い本なので読めるはずと思い手に取った。

病で床に伏し、閉じこもっている漱石の随筆。何処か志賀直哉の『城の崎にて』を連想させる。解説を読んで気付いたが、テーマが時間や死だったからかもしれない。

この時代の文化に根ざしているので、現代しか知らない我々でははっきりとは理解しかねる描写もあるが、話の大筋である漱石の苦悩には共感しながら読み進めることができる。分かるな〜と思いながら、稀代の作家でもこのように思い悩むのかと思いながら読むと楽しい。

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2023年07月05日

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病に臥す。
硝子戸を隔てた内と外。
そこは生と死の暗喩ではないか。
「死は生より尊い」は建前であり、本音の死生観は他にある。母との記憶、人々との回想は、生への後悔・執着とも云える。
「雲の上から見下して笑いたくなった..」
作者の自我が開け放たれた瞬間だった。

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2021年10月28日

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漱石晩年に執筆された回顧談、追想、随想集とよべるもの。漱石の人生への鋭い洞察が随所にちりばめられる。以下、印象に残った箇所。

不愉快に充ちた人生をとぼとぼ辿りつつある私は、自分の何時か一度到達しなければならない死という境地に就いて常に考えている。そうしてその死というものを生よりは楽なものだとばかり信じている。ある時はそれを人間として達しうる最上至高の状態だと思うこともある。
「死は生よりも尊い」
こういう言葉が近頃では絶えず私の胸を往来するようになった。
p20

私は凡ての人間を、毎日々々恥を掻く為に生れてきたものだとさえ考える事もあるのだから、変な字を他(ひと)に送ってやる位の所作は、敢えてしようと思えば、遣れないとも限らないのである。
p30

私は宅へ帰って机の前に坐って、人間の寿命は実に不思議なものだと考える。多病な私は何故生き残っているのだろうかと疑って見る。あの人はどういう訳で私より先に死んだのだろうかと思う。p.55

この最後の一言(いちごん)で、私は今まで安く買い得たという満足の裏に、ぼんやり潜んでいた不快、-不善の行為からくる不快-を判然(はっきり)自覚し始めた。そうして一方では狡猾い私を怒ると共に、一方では二十五銭で売った先方を怒った。どうしてこの二つの怒りを同時に和らげたものだろう。私は苦い顔をしてしばらく黙っていた。p80

極めてあやふやな自分の直覚というものを主位に置いて、他を判断したくなる。そうして私の直覚が果して当ったか当らないか、要するに客観的事実によって、それを確める機会を有たない事が多い。其所にまた私の疑いが始終靄のようにかかって、私の心を苦しめている。もし世の中に全知全能の神があるならば、私はその神の前に跪ずいて、私に毫髪の疑を挟(さしはさ)む余地もない程明かな直覚を与えて、私をこの苦悶から解脱せしめん事を祈る。でなければ、この不明な私の前に出てくる凡ての人を、玲瓏透徹な正直なものに変化して、私とその人との魂がぴたりと合うような幸福を授け給わん事を祈る。今の私は馬鹿で人に騙されるか、或は疑い深くて人を容れる事が出来ないか、この両方だけしかできない様な気がする。不安で、不透明で、不愉快に充ちている。もしそれが生涯つづくとするならば、人間とはどんなに不幸なものだろう。p84

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2020年01月01日

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漱石を、こんなに身近に感じたのは初めて。読んでよかった。もっと早く読めばよかったのかもしれないが、若い頃に読んでも、この随筆を面白くは感じなかったように思う。

漱石が晩年、病気がちになってからの随筆。過去や懐かしい人を振りかえる内容が、とても多い。年齢を重ねた今だからこそ、漱石の寂しさもなんだか共感できて、しみじみ味わえる本のように思う。

漱石を訪ねてきた読者や知人、学生にたいして、とても丁寧に誠実に接していたことがよくわかった。こういうまじめな誠実な人だったんだなあ。

死にまつわる話題も多く、なんだか今にも世を去りそうな、儚げな随筆。しかしこのあと「道草」「明暗」を書いた、というのはちょっと驚いた。

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2019年02月04日

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ネタバレ

夏目漱石晩年のエッセイ。
解説に詳しく書いてありましたが病気をしながらも
何とか生き長らえている自分に対比して
いつの間にか亡くなってしまう知人を思い
生への執着について哲学的に述べているところが印象に残りました。

また漱石の生い立ちや日々の生活が垣間見えて
親しみを感じました。

それにしても漱石は思慮深く、その考えを的確な表現を
用いて述べているので理路整然としており
その頭の良さを再認識させられました。

個人的には人間は死ぬまで自分は死なないと思っている
みたいな文章の部分が特に印象深く残っています。

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2018年03月17日

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ネタバレ

知人などが死んでいく話も多いが淡々としている。
自分の歴史を小説にしてほしいと言ってきた女とのやり取りが特に印象に残っている。流れに身を任せて、大切な記憶が薄れていっても平凡でも、生きるほうが適当としたその判断が心を打った。
平凡でも生きている。悩み尽くし疑い尽くしたが故の平凡なのではないか。
魂を自由に遊ばせるという表現が、軽やかで好きだ。
最後、春の景色と心の状態が穏やかに描かれており読んでいて心地よい。満足感が見える。

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2017年08月30日

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今はまだ感想をちゃんと言葉で表現できませんが、この後に道草を書いたのはなんだかなるほどな〜繋がってるなーと思いました。
9,10のOとの話が、作者が一緒にいて心地の良い関係を彼と持っているのだなということが伝わってきて好きです。2/12

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2025年01月25日

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つい先日のことですが、知人を駅まで送った折に、駅ビルの本屋さんに立ち寄り……決して懐の寂しさを隠すためではなく……「ワンコイン一本勝負」として500円玉を握りしめて本棚の海を回遊しました……狙い目としては小説の文庫本ですね……流行りの作家や作品に関しては例え小品でも税込500円を切るものを探すのは難しいと思ったので、新潮文庫の棚で古めの作品を探したのですが、これがなかなか難しい。詩歌や戯曲を読む気分ではないなぁなどと勝手なことを独りごちながら、本の厚みを目安に探して最終的に手に取ったのが本体価格340円(税別)の『硝子戸の中』(夏目漱石著/石原千秋解説/カバー装画:安野光雅/新潮文庫)でした。今、寝落ち本の中の一冊として枕元に置いてあるのですが、「寝る間際にちょっとだけ読む」のにちょうどよい内容ですね。一編一編が短い文章の随筆で、騒がず慌てず、ちょっとだけおかしく、ちょっとだけ妙で、ちょっとだけ侘しく。普段の暮らしの中のリアルというものは、こういった「際立った"オチ"のある筈のないもの」でしょう。とてもいい。

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2023年10月29日

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 お彼岸も近くなり、なんか漱石が読みたくなり手にした随筆。一つが約3ページの39篇から成る作品。大正時代前期に書かれた文豪のブログを読んでいるよう。さすがに今は見慣れない単語が多いです。
 12、13の失礼な男の話が秀逸。些細な事を気にしては悩み、胃潰瘍になり、それらを紛らわすかのように小説を書いた漱石。まだ読んでいない小説を読みたくなりました。
 「ある程の 菊投げ入れよ 棺の中」
この句が大塚楠緒に詠んだことも初めて知りました。安野光雅のカバーも素敵です。

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2023年11月18日

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「死は生よりも尊(たっ)とい」p23

晩年、漱石先生が辿り着いた死生観だそうです。
しかし、人に対しては
「もし生きているのが苦痛なら死んだら好いでしょう」と助言ができない自分をもどかしくも思っている。そうして
「もし世の中に全知全能の神があるならば、(中略)私をこの苦悶から解脱せしめん事を祈る」ほど苦しんでいる。p97
これは本当にただの随想集なのでしょうか?? 

****
読んでいる間ずっと『こころ』の続編?!という思いを禁じ得ませんでした。(本作は『こころ』の後に書かれたそうです)

「不安で、不透明で、不愉快に充ちている。もしそれが生涯つづくとするならば、人間とはどんなに不幸なものだろう」p98

漱石=〈先生〉が硝子戸の中から見つめていたのは、電信柱でも社会でも他者でもなく、紛れもない自分の「こころ」だったのかもしれません。
本書は『こころ』のアナザーストーリーとしても読めるでしょう。

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2023年09月09日

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硝子戸の中で夏目漱石が外の景色を眺めながら執筆している姿が想像できてそれだけで楽しい。
漱石自身の子供の頃や家族の思い出や郷愁、関わった人達との出来事や所感が徒然に綴られていて、漱石の小説に結びつくものの発見もある。
最終話は硝子戸を開け放って春の光に包まれて描き終えているのもいいですね。
『そうした後で、私は一寸肘を曲げて、この縁側に一眠り眠る積である』

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2022年01月13日

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漱石先生最後の随筆集。病気がちゆえ、家から出れない最晩年の漱石先生の心持ちが、漱石先生の名文によって丁寧に描写される。まさしくその心情はタイトル通り「硝子戸の中」で、またしても漱石先生に心を鷲掴みにされる。
漱石先生の足元にも及ばないが、少しでも漱石先生の洞察力に近づくことが出来たらと、今回も思わずにはいられなかった。

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2020年03月16日

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ネタバレ

夏目漱石の家を訪れた人、過去の友人や知人、家族などの思い出を淡々と書き連ねた作品。
今風で言うところの"自分語り"と揶揄できるかもしれないが、読んでいると目の前で漱石が自分に語りかけているような感覚を覚える。
この本を読めば、漱石の思想に直接的に触れることができる。
圧倒的語彙力は同作でも健在で、夏目漱石は日本語の天才だと改めて思う。

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2019年03月20日

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夏目漱石が、主に生と死について書いた随筆集。夏目漱石が謙虚で誠実な人だったということが伝わってくる。読み物として普通に面白いからおすすめ。

100年も昔の文章なのに、何の違和感もなく読めてすごいなあと思う。誰にでも読める文章で詩的に、生死というものを書き表している。

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2018年12月04日

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丁寧な文章で漱石の身の回りの事が語られており、漱石がなどんな生活をどんな考えを持ちながら執筆活動をしていたのかが伝わってきた。

ふだんの生活の中の何気ない会話でも一つ一つに物語が感じられてじわじわとくる作品。

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2018年02月27日

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晩年の夏目漱石の随筆。死についての随筆が多い。太田達人との会話を契機に、美しい破滅や死 から 生への執着や則天去私へ 心境の変化が起きていると思う

タイトルの意味は 狭い硝子戸の中にいる漱石の身近な出来事を筆に随って書いた本ということ

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2017年08月11日

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「私は凡ての人間を、毎日々々恥を掻く為に生まれてきたものだとさえ考えることさえある」と綴っているが、凡ての人間とまでは言わなくても、殆どの人間は恥を感じることなく生きているように感じる。俺が感じている生き辛さの正体はまさしく生きていることが恥ずかしいという実感である。硝子戸の外に出ると、他(ひと)との交わりが意識の上に昇ってきて、他と話している自分の表情や発する言葉、全ての交わりがぎこちなく感じられて、生きていることが恥ずかしいと感じるのである。

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2017年08月05日

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全編穏やかで静かな文体ながら、内容は死を意識したものや、今は亡き人々の思い出が多い。
中でも飼い犬のヘクトーの死は印象的。意外にも猫よりも犬が好きだったらしい。
また夏目先生ともなると、さすがに様々な人から勝手なお願いをされることが多かったのだなと改めて知った。
子供のころの思い出、両親とのこと、母への想いなども知ることが出来て、興味深かった。

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2017年03月10日

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夏目漱石の、随筆としては最後の物ということだ。
“随筆としては”ということわり書きは、その後に「道草」と「明暗」が書かれているからということ。

風邪で寝込んで、硝子戸の中から外を見ている…という心持なのだが、内容は、今見ている物というより、回顧録に近い。
とりとめない。

写真に撮られるときに笑わなくてはいけないことへの抵抗感。
ヘクトーという名の犬の事。猫が有名になったけど、本当は犬の方が好きなのだと知人に漏らす。
身の上話をする女。
作品を見て欲しいという人たち。実は「どこかに掲載して欲しい」つてを求めているのが真実。
厚かましく、しつこい依頼をする男(頭おかしいな。漱石先生かわいそう)
好意で行ったつもりの講演に対しての金銭の御礼についての考察。
哲学的なことを言う女。
子供のころに住んだ家。
養子に出された過去。
名主の家だったから玄関が立派だった実家。

漱石は気難しくて、家族は戦々恐々としていたというのを読んだことがあるけれど、なるほど面倒くさい人であったようだ。
ただ、文章をモノする人は皆面倒くさいとは思うのだけれど。

お金に対して潔癖で見栄っ張り。
というか、確固とした信念がある。
みみっちいのは嫌だから払うけど、後でそのことにずっとこだわっている。
隠れ吝嗇?

人との接し方にも悩む。
居丈高にするべきかへりくだるべきか。

講演の意味が分からなかったと一人の学生が言ったというのを伝聞しては落ち込み、(多分、理系だったから?)
別の学校の講演で「分からない事があったら家までいらっしゃい」と言い添えたら大いに反響があって(文系だったから?)喜び…

つまり、ある意味小心な人柄で、こまやかだったのだろう。
胃潰瘍で命を落とすというのも、さもありなんである。

2016年は、漱石生誕100年であり、没後50年の記念の年だった。

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2017年02月02日

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初読時のような感興は得られず。
寧ろ、奥歯に物が挟まったような言い方、悟ったふり、今風に言えば天然ぶっているような。
好きではある。

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2016年12月28日

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漱石がこれまでにあったことや考えたことを、つらつらと書き綴るエッセイです。

講演の謝礼の話は、拗らせていますねぇ。言わんとしているとはわからなくはないですが、本当に面倒くさい。こうして本で読む分には楽しいですが、実際相手にすると疲れるでしょうね。

岩崎弥太郎の話も面白かった。不愉快だといいながらも、どことなく友情を感じるんですよね。実際に所はどうなのかは分かりませんが。

ヘクトーや飼い猫の話は、漱石のツンデレ加減が笑えます。「文鳥」でもそうなんですが、動物に対してすら素直に心を開けないところが、ある意味かわいらしさを感じます。

「道草」を陰とすると、「硝子戸の中」が陽のような感じを受けました。自分の拗らせ具合を自虐的に書いていますので、一見暗くなりそうな話題も多いですが、不思議と楽しく読めました。

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2025年05月18日

Posted by ブクログ

昔の作家と読者の距離感が、近すぎて怖い。
自分の人生を元ネタに小説を書いてくれとか
『ミザリー』もかくや(°_°)
それでまた、そういう人たちにも
真面目に相手をする漱石がすごいわ。
こうやって随筆の「元ネタ」にしてるしね。

子供時分の思い出から、執筆状況や
今の暮らしについて感じること
あちこち話題を飛ばしながら
思いついた時に書きつけていたのかなぁ。
なんだかこの文豪が
弟子たちに愛されていた理由がわかる気がする。
読んでいて、ちょっと好きになりましたもの。

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2022年08月21日

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1915年 朝日新聞連載 随筆39回

漱石後期、胃潰瘍大病後、持病を抱えての執筆。
書斎に籠り、硝子戸の中から、世の中を見る。
時折、硝子戸の中に、訪問者がある。
漱石の身近な出来事を綴っている。
死に対する随筆も幾つかあり、後期の死生観を表現しているのだと思うが、私が好きだったものは、漱石が、楽しそうだった以下の2項ですね。

9・10
友人O(太田達人)が、上京して久しぶりに会った楽しそうなひとときの話。漱石の少ない友人の一人で、教師。なかなか、人を誉めない漱石が、人格も頭脳も素直に認めている。

34
頼まれて高等学校等で、生徒達の利益になるように意識して講演をする。それでも、わからなければ、家まで来てくれて良いからと、本当に生徒を自宅に招く。又、他の生徒達から、講義を理解したという手紙をもらって素直に喜ぶ。

いつも物事を俯瞰的に眺めている感じだけど、本当に自身の事を書いている様子が良いなと。

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2022年04月04日

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公人、私人の差
作品と随筆の中身
飯のタネ 理想と現実
本音 建前
売れなくなったタレントのヌード集 
凋落作家の愚痴

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2021年03月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

(個人的)漱石再読月間。小説15作品と短編集3冊。これにてファイナル。

漱石先生の亡くなる前年に書かれたエッセイ集。病床から外を眺める静かな諦念。思い起こす面倒だったあの人も恋しい母も懐かしい幼なじみももはや亡い。

2020年4月から5月。特別な時間の中で、「いつか、気力的体力的もしくはその他の理由で本が読めなくなる時が来る。その前にこれだけは再読しておきたい。そうすれば読書人生に悔いは残らない」とぼんやり考えていた計画を、いきなり実行に移す時が来てしまった。家にこもってただひたすらに読書読書の日々。

これでほぼ達成。なんとも言えない充実感。
プルースト先生、埴谷先生、漱石先生、ありがとうございました。もういつでもOKです。

さて!ここからは徐々に普段の読書生活に戻していきますよ。(世の中が戻ることが大前提ですが祈)





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2020年05月21日

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漱石晩年の随筆集。
幼少期の思い出から生と死に関する話題まで、39の随筆が収録されている。
他人の日記を読んでいるようで面白かった。
私が漱石の作品に対して抱く肯定的な感情が、文章に滲む彼の思想への共感なのか、はたまた100年も昔の生活に対する擬似的なノスタルジーなのかよくわからないなと思う。
1つ1つの内容が独立していて文量も少ないので、漱石の美しい文章を手軽に楽しめる作品だった。

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2020年01月07日

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漱石晩年の随筆集。朝日新聞に連載されていたようで読みやすかった◎

両親や母のことを書いているところがよかった。

自分は両親の晩年に生まれた子で、2回里に出されたが事情があり家に帰ってきたこと。だからずっと両親のことを祖父母だと思っていたこと。ある夜、女中さんがこっそり「あの2人はあなたの祖父母でなくて両親ですよ」と教えてくれたこと。それがうれしかったこと。その事実ではなく、女中さんが親切にもそれを教えてくれた事実がうれしかったこと。

夢でうなされたときに母が助けにきてくれて、安心して眠れたこと。

私も、大きくなって夢でうなされてたしか「助けて!」って叫んだら隣の部屋からお父さんが「どうした?!」って起きて駆けつけてくれたこと、思い出したな〜。笑

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2019年09月15日

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夏目漱石は読みにくいと、勝手に決めていたところがあった。私には彼の思想についての理解はほとんどないに等しいが、本作品はエッセイとしてみると、とてもフランクで漱石を身近に感じられる素朴さがあった。
身体の調子が思わしくなく、随所に死を意識するような文章が出てくるが、あまり堅苦しくなく、ユーモラスに軽いタッチで触れているので読みやすかった。

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2019年02月05日

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