【感想・ネタバレ】私の個人主義のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年04月02日

「もしあなたがたのうちですでに自力で切り開いた道を持っているかたは例外であり、また他(ひと)の後に従って、それで満足して、在来の古い道を進んで行く人も悪いとはけっして申しませんが、(自己に安心と自信がしっかり附随しているならば、)しかしもしそうでないとしたならば、どうしても、一つ自分の鶴嘴で掘り当て...続きを読むる所まで進んで行かなくっては行けないでしょう。
行けないというのは、もし掘りあてることができなかったなら、その人は生涯不愉快で、終始不愉快で、終始中腰になって世の中にまごまごしていなければならないからです。」本文より

ためになる内容だった。
繰り返し読んで自分の中に落とし込みたい。

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Posted by ブクログ 2024年02月13日

私の個人主義
著:夏目 漱石
紙版
講談社学術文庫 271

夏目漱石の講演をまとめたものであるが、かなり読みにくい。けっこう難渋しました。
複文、重文のかたまりであり、かなり時間がかかりました。

明治という、近代化を始めたばかりの日本にある、自立と開化の雰囲気がよいとおもいました。

気になった...続きを読むのは以下です。

■道楽と職業

・こと昔の道徳観や昔気質の親の意見やまたは一般世間の信用などからいいますと、あの人は家業に精を出す、感心だと褒めそやします。いわゆる家業に精を出す感心な人というのは取りも直さず真っ黒になって働いている一般的の知識の欠乏した人間にすぎないのだからおもしろい

・職業というものは要するに人のためにするものだという事に、どうしても根本義をおかねばなりません。人のためにする結果が己のためになるのだから、元はどうしても他人本位である。

■現代日本の開化

・要するに、2つの乱れたる経路、すなわちできるだけ労力を節約したいという願望から出て来る種々の発明とか器械力とかいう方面と、できるだけ気儘に勢力を費したいという娯楽の方面、これが経となり緯となり千変万化錯綜して現今のように混乱した開化という不思議な現象ができるのであります

・現代の日本の開化は前に述べた一般の開化とどこが違うかというのが問題です。
西洋の開化は内発的であって、日本の開化は外発的である。
ここに内発的というのは、内から自然に出て発展するという意味でちょうど花が開くようにおのずからつぼみが破れて花弁が外に向かうをいい、また外発的とは外からおっかぶさった他の力で已むをえず、一種の形式を取るのを指した積なのです

・もう一口説明しますと、西洋の開化は行雲流水のごとく自然に働いているが、御維新後外国と交渉を付けた以後の日本の開化は大分勝手が違います。

・学者は解ったことを分かりにくく言うもので、素人は分からない事を分かったように呑込んだ顔をするものだから非難は五分五分である

■中身と形式

・相手を研究し相手を知るというのは離れて知るの意でその物になりすましてこれを体得するのとは全く趣が違う。いくら科学者が綿密に自然を研究したって、必竟するに自然は元の自然で自分も元の自分で、決して自分が自然に変化する時期が来ないごとく、哲学者の研究もまた永久局外者としての研究で当の相手たる人間の性情に共通の脈を打たしていない場合が多い

・なおこの理を適当に申しますと、いくら形というものがはっきり頭に分かっておっても、どれほどこうならなければならぬという確信があっても、単に形式の上でのみ纏まっているだけで、事実それを実現してみない時にはいつでも不安心のものであります。

・要するに、形式は内容のための形式であって、形式のために内容ができるのではないというわけになる。
もう一歩進めていいますと、内容が変われば外形というものは自然の勢いで変わってこなければならぬという理屈にもなる

・一言にしていえば、明治に適切な型というものは、明治の社会的状況、もう少し進んで言うならば、明治の社会的状況を形作るあなた方の心理状態、それにピタリと合うような、無理の最も少ない型でなければならないのです。

■文芸と道徳

・近年文芸の方で、浪漫主義及び自然主義、すなわち、ロマンチシズムと、ナチュラリズムという2つの言葉が広く使われてまいりました

・今日の有様では道徳と文芸というものは、大変離れているように考えている人が多数で、道徳を論ずるものは、分限を談ずるをいさぎよしとせず、また文芸に従事するものは、道徳以外の別天地に起臥しているように独り極めて悟っているごとく見受けますが、けだし、両方とも嘘である。

■私の個人主義

・自力で切り開いた道を持っていく方は例外であり、また他の後に従って、それで満足して、在来の古い道を進んで行く人も悪いとは決して申しませんが、しかしもしそうでないとしたならば、どうしても、一つ自分のつるはしで掘り当てる所まで進んでいかなくってはいけないでしょう

・第一に、あなた方は自分の個性が発展出来るような場所に尻を落ち付けべく、自分とぴたりと合った仕事を発見するまで邁進しなければ一生の不幸であると。
しかし、自分がそれだけの個性を尊重し得るように、社会から許されるならば、他人に対してもその個性を認めて、彼らの傾向を尊重するのが理の当然になってくるでしょう

・我々は、他が自己の幸福のために、己の個性を勝手に発展するのを、相当の理由なくして妨害してはならないのであります。

・私のここに述べる個人主義というものは、決して俗人の考えているように国家に危機を及ぼすものでも何でもないので、他の存在を尊敬すると同時に自分の存在を尊敬するというのが私の解釈なのですから、立派な主義だろうと私は考えているのです。

目次
この本によせて
1 道楽と職業
2 現代日本の開化
3 中味と形式
4 文芸と道徳
5 私の個人主義

ISBN:9784061582712
出版社:講談社
判型:文庫
ページ数:170ページ
定価:660円(本体)
1978年08月10日第1刷
2018年04月17日第81刷改版発行
2020年09月15日第83刷

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Posted by ブクログ 2024年02月02日

夏目漱石のことを偉大で凡人が理解の範囲外に押し切られるような人物だとどこか考えていましたが、自分が読んでも素直に納得できる(凡人にも理解ができる)発言を淡々と述べられる人物だということを知り、ただただ身近な存在に感じることができました。
他のものも手をつけて行きたいと思います

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Posted by ブクログ 2023年08月09日

 およそ100年前のスピーチとは思えないほど、今の時代に通ずることが多くて人生の指針にしたくなるような本だった。
 何度も読み返したい

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Posted by ブクログ 2023年05月13日

著者は1867〜1916まで生きた人ですが、現代でも通用する「バランス感覚」と「先見性」がある人だと思い、この本を読んで、めちゃくちゃ好きになりました。
とても参考になることが多く書いてあり、とてもいい本に出会えました!
ぜひぜひ読んでみて下さい。

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Posted by ブクログ 2023年05月02日

漱石が自分自身を見つけるまでの話。
100年以上前の講演にも関わらず、人間の本質を的確に捉えた言葉が私の心を勇気づけてくれる。漱石の悩みと自分の悩みがどこかで重なり、言葉の力で、何だかそれを乗り越えられるような光が指す瞬間があった。これこそ本を読む醍醐味。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年10月03日

夏目漱石先生が病で亡くなる5年前に各地で行った講演を主にまとめている。

夏目漱石先生は小説の執筆だけでなく、講演もされていたのはちょっと驚きだったが、これがとても面白い。

講演の中に出てくる謙遜や周囲を引き立てる話もユーモアに溢れ、話の導入は分かりやすくも、話す内容は明快だが斬新で、100年以上...続きを読む前の社会のみならず、今にも通用する事ばかりだった。

講義の断片だけ見ても、当時の社会で余程愛された人だったんだなと感じられる。

講義は6講義に分けられ、主たる内容は以下

『道楽と職業』
・自分中心に行うのが道楽、他人中心に行うのが職業
・文明が進むにつれ、仕事は分業化し断絶してくる

『現代日本の開化』
・開化には煩わしい事を無くす方面と、快い事を追求する方面がある。
・外的開化と内的開化がある。
・日本は外的開化を強いられた為に、砂上の楼閣のような不安定さを内包している。

『中身と形式』
・ものを知らないと形式、規律や外聞ばかり気にするようになる。
・大して中身を知ると、場合によっては形式を変えてよい事に気が付く。

『文芸と道徳』
・道徳は文学になぞって2種類ある。
 すなわち浪漫派と自然派である。
 浪漫派は理想を求め、自然派はあるがままを肯定する。
・どちらかに偏るのも弊害だから、どちらも持ちうる社会が健全なのではないか

『私の個人主義』
・個人は自分のこれだと尻の座るものを探し続けるべきである。
・しかしそれを他人に強制してはいけない。特に権力には義務が、金力には責任が伴う事を自覚すべきである。

もちろん、ここに書ききれるものではない。
特に最後の私の個人主義は、何度でも読み返したい勇気の出る素晴らしい講演だった。

以下、心に残った言葉

・博士の研究の多くは針の先で井戸を掘るような仕事をするのです。それを世間ではすべての方面に深い研究を積んだものとして誤解して信用を置きすぎるのです。

・科学者、哲学者、芸術家のようなものは他人本意では成り立たない職業です。

・物質的に人のためにする分量が多いほど物質的に己のためになり、精神的に己のためにするほど、物質的に己の不為になるのです。

・できるだけ労力を節約したいという願望から出てくる方面と、出来るだけ気儘に勢力を費やしたいという娯楽の方面、これが経や緯となり開化という現象が起こるのです。

・今日は生きるか死ぬかという問題はだいぶ超越している。それが変化してむしろ生きるか生きるかという競争になっている。

・さて、自分がその局に当たってやってみると、かえって自分の見縊った前任者よりも激しい過失を犯しかねないのだから。。だから実行者は自然派で、批判者は浪漫派だと申したいくらいに考えている。

・私は終始中腰で、隙があれば自分の本領に飛び移ろう、飛び移ろうとのみ思っていたのです。が、さてその本領というのがあるようで、無いようで、どこを向いても、思い切ってやっと飛び込めないのです。

・私はこの 自己本位 という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。

・ひとつ自分の鶴嘴で掘り当てるところまで進んでいかなくてはいけないでしょう。もし掘り当てることが出来なければ、その人は一生不愉快で、終始中腰になって世の中にごまごましていなければならないからです。

・もしどこかにこだわりがあるのならば、それを踏み潰すまで進まなければだめですよ。

・個人主義は人を目標として向背を決する前に、まず理非を明らめて、去就を定めるのだから、ある場合は一人ぼっちになって、さみしい感じがするのです。
それはそのはずです。槙雑木でも束になっておれば心丈夫ですから。

小説の方も是非読みたいと思いました。

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Posted by ブクログ 2021年04月08日

夏目漱石の演説をその言葉遣いのまま文字起こししたもの。

漱石の言葉遣いの面白さを感じられる。
内容も現代に通じるところがあるので、なお面白い。YouTubeに朗読版があるみたいなので、それも聞いてみたい。

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Posted by ブクログ 2020年11月23日

(2018年2月のブログ内容を2020年11月に転記したものです)

夏目漱石は英文学を専攻し、学校は出たものの、文学とは何かということをつかめず、悶々とする日々を送っていました。幸いにも教師の職にはありつきましたが

“「その日その日はまあ無事に済んでいましたが、腹の中は常に空虚でした。空虚ならい...続きを読むっそ思い切りが好かったかも知れませんが、何だか不愉快な煑え切らない漠然たるものが、至る所に潜んでいるようで堪らないのです。」。”

そして、ついにはロンドンに留学したが、分からない。しかし、そうしているうちについに分かったのです。「文学とはどんなものであるか、その概念を根本的に自分で作り上げるより外(ほか)に」途(みち)はない。当時は文学といえば、外国の評論家が別な外国人の文筆家を批評していったことをそのままコピーして吹聴してまわってありがたがるということが多かったのです。

逆に、漱石は、ついに、自分の文学は自分で作るという境地「自己本位」に行きついたのです。自己本位、自分が右だといえば、他人が左だといえども曲げる必要はない。といことです。ある評論家がある文学についてこうだといったからといって、自分が反対の意見を持ったとしてもよいし、むしろ、自分だけが持てる意見を大事にしなければいけないということに気が付いたのです。

こういうと、「自分勝手」と誤解されてはいけないのですが、その点についても夏目漱石は論考しています。他の人が同じように自由に考えることを阻害してはならないという形でなされなければならない。

“「我々は他が自己の幸福のために、己れの個性を勝手に発展するのを、相当の理由なくして妨害してはならないのであります。」”

現代の私たちにとってはとても当たり前のことのように思えますが、実践できている人となると、どれくらいいるでしょうか。漱石は「妨害」してしまう要因として「お金」と「権力」を挙げています。そして、自分がこれを持つ立場になったときには気をつけよと論じています。人は生活するうえで、権力やお金をもつ立場に立ってしまうのは仕方ないものですが、そうした場合、知らず知らずのうちに、他人の「自己本位」を妨害してしまいかねない。これに気を付けてさえいれば、自分を自分の考えで満たすことに全力で取り組むべきであると、若者に向けて語っています。

漱石はその後帰国した後、自分の思うように職が得られない時も、神経衰弱になった時も、この「自己本位」という言葉(概念)が胸にあったため、不思議と気に病むことなく、生活を送ることが出来たといいます。

自分が何者なのか、見つけられるきっかけは突然訪れます。それを個人の経験に照らしながら、醸成していくのが、人生ということでないでしょうか。性自認に限ってみても、体と反対の性であるとか、性の境界であるといった場合の自分の位置づけは、なかなか定まるものではないでしょう。

各々が作り上げて発信していく、その一端を担う仕事ができたら、それがわたしに直結する自己本位ということなのだろうと、思っています。

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Posted by ブクログ 2020年05月08日

バイブル的存在の一冊。
あくまで一つの考え方ではあるものの、物の考え方、姿勢の在り方は参考になる。
今でも通用する内容なので人間の本質って変わらないという事か。
本当の意味での個人主義とは自立、自律、寛容、責任、義務と深く結びついており、他者排除ではない。
何度も読み返す価値あり。

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Posted by ブクログ 2020年05月04日

漱石による講演の書き起こし。ネガティブな枕からあれよあれよと話題が転じて最後にピタッと着地する。オススメ!

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Posted by ブクログ 2020年04月11日

夏目漱石が晩年に行った五つの講演「道楽と職業」「現代日本の開化」「中味と形式」「文芸と道徳」「私の個人主義」を収録。想像していたよりも読みやすく面白かったです。「道楽と職業」では細分化する職業について言及していて、この問題は現在でも見られるもので漱石が生きていた時代からあまり変わっていないのだなと思...続きを読むいました。表題作の「私の個人主義」はやはり名講演。若い頃、何かをしなければならないと思うのに何をしていいのか解らず、思い悩んでいた日々……正しく私も今そのような状態で悶々としているのですが「もし途中で霧か靄のために懊悩していられる方があるならば、どんな犠牲を払っても、ああここだという堀当てる所まで行ったら宜かろうと思うのです」この言葉に励まされる思いです。どんな小さなことでもいいから、何かを堀当てられたらいいな。そうしたらもっも自分に自信を持って生きていける気がします。

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Posted by ブクログ 2019年01月16日

彼の示した『個人主義』の考え方に深く納得させられた。権利とは一種の自由であり、自由には限度がないと無秩序状態に陥ってしまう。義務がないとカオスの世界を作り出すことになりかねない。だから権利を持つことを許された者は、それをどこかで還元すべきなのだ。それが義務なのであり、新たな自由、権利を生み出す元にな...続きを読むってくれる。今を生きる私も、そのことを忘れずに生きていこうと思った。

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Posted by ブクログ 2019年01月16日

一度読み終えた...
多分 凄くいい事が書いてあるんだと思う... 読解力が無くてきっと1/10も理解してないんだと思う。

最後の「解説」をもう一度じっくりと読んで、そして次に「私の個人主義」を読み、後ろから読んでみようと思う...

内面の形成、個人主義 個人がとても自由でありながらとても秩序の...続きを読むある国イギリス

己の進むべき道を「掘り当てた」という確信を見つける事の大切さ...

等々...

講演を収録した物...


未だ、はっきりと理解してないけれど、これから生きて行く上で、そして社会の中で気持ちが揺れ動かないで居られる為に何をしたら良いのか...を考える。という事を考えなければ...と気付かせてくれる一冊だと思う。

ちゃんと理解する迄 何度でも読まなくちゃ..

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Posted by ブクログ 2023年09月04日

漱石のいう「自己本意」「自分の鶴嘴をもつ」とは、主体的であるということだろうか。
自己本意であると同時に他人の個性を尊重しなければならない。権力をもった人間は、権力が時に「自分の個性を他人の頭の上に無理やり押し付けるようなもの」になりかねないということを肝に銘じておかなければならない。
権力には義務...続きを読むや責任が付随する。叱る権力があるのなら、同時に相手が理解できるまで教える義務と責任を伴う。

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Posted by ブクログ 2023年01月08日

2023.1.5
かなり時間をかけて読んだので初めのほう覚えていない、かつ理解できていないところもあるのでまた読み返す。
現代にも通ずるところがたくさんあって、数年後に読み返しても発見もありそう。
・普通一般の人間は平生大抵浪漫主義だが、いざとなると皆自然主義変ずる。

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Posted by ブクログ 2022年05月04日

「個人主義」に対する考え方が変わった。

特に、俗に言われる「価値観の押し付けは良くない」の真髄が分かった。
自身の自由を守るためには、他者にも自由を与えなければいけない。故に自分の価値観を押し付けるのは良くない。

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Posted by ブクログ 2021年10月05日

じぶんの個人主義を発見せよ、そして貫けというごくシンプルな教え。なんだかフツーな結論やなあと思う一方、そうだよね、うんうん、見つけなきゃ、と素直に納得もした。いやーむずい、幸せに生きるための努力はしやきゃ。

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Posted by ブクログ 2021年06月14日

キーワード

「道楽と職業」
 ・人のため=己のため(一般的な職業) ・己のため=人のため(科学者哲学者や芸術者) ・職業と道楽の内発性と外発性 

「現代日本の開化」
・2種の活力と開化の関係 ・開化と幸福、生活の関係
・西洋の開化(一般の開化と日本の開化)

「私の個人主義」
・人格と3か条 

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年01月22日

標題の「私の個人主義」は大正三年、大病を患った後に学習院でおこなった講演の内容だが、今読んでもさすが漱石というか、構成もメッセージもすばらしい。青空文庫で読めるので未読の人はぜひ。

講演として読むと、初めは前振りが長くいつテーマに入るのかと思うほどだが、気づくとすっとテーマに入っていて、それが最後...続きを読むのメッセージまでしっかりと繋がっている。

前半は人生の指針としての自己本位主義、後半はその前提となる個人の自由とそれに伴う義務と責任、という内容。

まず前半は、漱石自身の懊悩とその打破という経験を若い人たちへのメッセージに転化しているが、これによって人生の方向を決定された学生も当時いたのではないかと思う。この懊悩が普遍的であり、漱石が偉大であるだけに、この指針は説得力を持つ。

一方の後半は、一転して、学習院という特権階級の学生たちに彼らの持ち得る力についての自覚を促し、それに伴う義務と責任を説く。「君たちは将来のリーダーだ」というメッセージはよくあるが、「君たちは特権階級だから責任を持ちなさい」というメッセージはもっと重要であるにもかかわらずあまり言われない。

そして、すばらしいのは、前半の自由な自己追求の前提として、後半の倫理原則が説かれているところ。自由には義務と責任が伴う、という基本的な原則をこれほど見事に述べた講演も多数はないと思う。この講演を生で聞けた学生たちは幸福だった。

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Posted by ブクログ 2021年01月03日

何度も読み返すほど、元気をもらえる本。
特に、社会に馴染めていなかったり、我が道を行かんとする方におすすめ。

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Posted by ブクログ 2020年04月27日

夏目漱石もそうだったのかー。と勇気をもらえる気がします。お札になるほど偉大な作家がなんだか身近なおじさんに思えるような…。もちろん難解な部分が多いけれど、自分の理解できるところ、共感できるところがあると思うので、表題は難しそうですが、小難しか考えず、雑誌のエッセイを読むくらい、気楽に読んだらいいと思...続きを読むいます。個性とか自分探しとかに思い悩まされるお年頃の方への漱石からの暖かいエールが込められている本だと勝手に思っています。

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Posted by ブクログ 2020年03月03日

もろに今の日本で考えるべきことが言われていると思う。
義務を無視した自由を主張する人の多いことは問題だよねと思う。履き違えた個人の自由を主張する声、権力・財力ある人の妨害または支配や強制力…そんなことを助長させる本も幾つも出ている中、短くも大変腹落ちする本だった。

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Posted by ブクログ 2019年12月28日

「一番好きな本は?」と訊かれれば『坊っちゃん』と答える。あの明るく真直(まっすぐ)な「坊っちゃん」と文章が好きだ。本書は昔教科書で学んだ「私の個人主義」など5つの講演集。『坊っちゃん』同様、漱石の明るさと自然なユーモアが垣間見れる一方で、その明るさが長い煩悶・懊悩から「自己本位」を見出した結果である...続きを読むことが分かる。
『坊っちゃん』の中で「赤シャツ」を評する「人間は竹の様に真直でなくちゃ頼もしくない」は漱石自身への戒めなのかもしれない。

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Posted by ブクログ 2019年07月07日

明治44年に関西でおこなった講演4本プラスその3年後の学習院での講演となる表題作。

どうでもいいと言えばいいのだが、一連の講演旅行であった関西での4本が、多少重なり合うとは言えそれぞれ別々のテーマとなっているのは面白い。聴衆は当然、毎回違うわけだから同じ話を4回すればよかろうという気もするが。新聞...続きを読むへの掲載、または事後の出版を前提としていたのか。

最初の4本がどちらかと言えば聞き手を面白がらせる軽妙洒脱さに重きをおいているのに対して、「私の個人主義」はこう生徒たちに訴えかけるような重さがある。中身には大きな違いがないがトーン&マナーにおいてちょっと違う感じ。脈絡ないのだがマックス・ウェーバーを思い出した。

「中身と形式」など100年後の日本企業社会に照らし合わせても大いに身につまされる。

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Posted by ブクログ 2019年02月20日

夏目漱石の博学さに触れられる貴重な一冊 私の個人主義では、今後自分の人生に活かせることが漱石自身の言葉で一杯一杯書かれており、人生のバイブルになること間違いなしの一冊だった。

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Posted by ブクログ 2023年08月17日

夏目漱石は講演も上手かったというのは知らなかった。特段尖ったことを言っているわけではなく、普遍的に大事にされるべき価値観を述べているので、そこまで大きな発見はなかった。しかしこれが約100年前に語られた内容で、現代にまで通じていることからも、説得力・妥当性が評価されて、本書が語り継がれているのだと思...続きを読むう。

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Posted by ブクログ 2023年04月17日

夏目漱石の創作というより、講演録です。

夏目漱石の作品もこれまでいくつか読んできましたが、いつもぼんやりまともに働いていないような暮らしを描くので、あまり好きではありませんでしたが、講演は面白かった。

自分たちが自由になる場合には、相手にも自由を与えなくてはならない。自分の価値観を押し付けていな...続きを読むいか、検証すべきというのはとても良く理解できました!

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Posted by ブクログ 2022年09月19日

自身の読解力が乏しく、どうもこういう昔の作品は読みにくく感じてしまい難しい。
そんな中でも個人的におもしろかったのは「中身と形式」と「私の個人主義」
「中身と形式」では、形式にばかり固執して頭でっかちになるのではなく、中身は変わっていくのだから時代に応じて柔軟に形式も変化させていかなければならない、...続きを読む「私の個人主義」では個人としての幸福の追求、ただそこにはそれなりの責任が伴ってくるという内容が言及されていた。
この夏目漱石にしても、福翁自伝を記した福沢諭吉にしても、世の中を俯瞰して大局的に物事を捉え分析する力が素晴らしいと感じた。こういった人物が今の世の中に存在していたなら、きっと大きな成功を残す人になっていたのだろう。

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Posted by ブクログ 2019年12月19日

面白いかどうかは微妙。

堅苦しくまどろっこしいところもあり。

人の役に立つものがお金になる。
人の役に立つとは大衆の単純欲求を満たすもの。

という考えは興味深い。

高尚なものよりも、
低俗なものの方がお金になる事を
うまく説明している。

夏目漱石好きなら読んでみてもいいと思う。

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