夏目漱石のレビュー一覧
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夏目漱石の前期三部作の3作目。
「三四郎」、「それから」に比較すると知名度が低く、三部作を上げたときに思い出せない作品だと個人的には思ってます。
ストーリーも他の2作と比較すると地味で、カタルシスを感じるようなシーンなどもなく、平坦な日々を送る主人公「野中宗助」とその妻「御米」夫婦の苦悩を描いた作品となっています。
三部作の他の2作同様、夏目漱石らしい直接的ではない表現が多々用いられており、それが返って情景描写を鮮やかにするのは変わらないのですが、本作はそもそも何が起きたのか、物語の核となるストーリーが深く語られないままとなっていて、人によってはよくわからない、面白くないと感じる可能性がありま -
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主人公は数えで30になる青年「長井代助」。
彼は裕福な家に生まれており、実家のお金で一人暮らしをして書生を置き、読書をしたり演奏会に行くなど、働かずに自由気ままに生きています。
夏目漱石の作中でしばしば登場する高等遊民と呼ばれる人々の代表格として挙げられることが多い人物です。
代助は作中、友人の平岡の「何故働かない」という問いに「日本対西洋の関係が駄目だから働かない」と答えます。
曰く、「西洋の圧迫を受けている国民は、頭に余裕がなく碌な仕事ができない」、「悉く張り詰めた教育で目の廻るほどこき使われるから揃って神経衰弱になる」と、そして、「働くなら生活以上の働きでなくちゃ名誉にならない」とも述べ -
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夏目漱石の前期三部作と呼ばれる3作(三四郎・それから・門)の一作目。
この3作は独立していて主人公も別、世界観に繋がりもないのですが、なんとなく前の物語から次の物語に続くようになっていて、前作の主人公が成長すると次の作品の主人公のようになり得る、次の物語のようになっています。
本作の主人公「小川三四郎」は九州の田舎から上京してきた大学生で、純朴さの残る素直で真っ直ぐな青年です。
三四郎が東京でいろいろな人や考えに触れ、体験し学ぶ話なのですが、どのような物語であるかを説明しようとするとどうも難儀します。
何を書き出そうとしても言葉にした途端に違うものになるというか、日本語って存外不自由なんだな -
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さすがに濃厚な内容でした。読むのに骨を折ってしまい、時間がかかりました。
が、さすが文豪、これぞ文学といった「構成」。
難解ではありながら、読んでいると腑に落ちる「文体」。
人物の細かな心情変化、とくに「男性の嫉妬心」「猜疑心」を絶妙に表現していました。
夏目漱石の文学的知識が多少なりともあるからこそ、読み進めていけるけれど、現代小説に慣れきってしまうと、漢文の素養をいかんなく発揮した回りくどい漱石の言い回しは読みにくく感じてしまうかもしれません。
が、夏目漱石の表現は、大げさに思える比喩の一つ一つを繋げていくことで「ああ、これしか表現のしようがない」と思えるようなもので、咀嚼して読んでいく -
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夏目漱石の処女作。小学生低学年のうちの子が知っていたこともあり、氏の著作で一番有名な作品だと思います。
主人公は英語教師の苦沙弥先生にひょんなことから飼われることになった一匹のネコ。
「吾輩は猫である。名前はまだ無い」という有名な書き出しの通り、吾輩などという不遜な一人称の妙に堂に入ったネコ君の目から、苦沙弥先生やその仲間たちの滑稽な会話や、ネコ同士の交流、そして不合理極まりない人々の生体をネコの視線から風刺した作品になっています。
基本的に読みやすく、クスりとくるシーンもあったのですが、冗長なところもあり読みづらさを感じる時もあります。
人々の日常の描写がネコの視点から語られており、物言わ -
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この作品に至るまでの多くに登場する苦悩する主人公がいます。「道草」は明確に自身の過去を下敷きにしているとのことですが、他の作品にもやはり作者自身の苦しみが投影されていたんだなと改めて思い至ります。
先日、漱石山房記念館に行ってまいりました。周辺の路地を入ったあたりなどは、当時の香りがほんの少しだけ残っていて、また記念館て掲出されている夏目さんの生涯に触れ、なるほどこういう境遇から編み出された名作たちなんだ、と感じ入りました。
苦悩の末、全くなにも解決しないままであったり、あるいはむしろ精神を分裂してしまった主人公たちがある中で、本作は僅かではありますが一件落着の感がないわけではありません。 -
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それなりの家に生まれて学問も修めていた青年が
言い寄ってくる女と、許嫁との三角関係に苦しんだあげく
死にたくなって、そこを逃げ出してしまう
ところが死に場所を探すうちにだんだん死ぬ気も萎えてきた
そんな折、ぽん引きのおっちゃんに引っ掛けられて
鉱山労働者になる決心をする
安易なわりにプライドの高い彼は
何度も引き返すチャンスを与えられながら
その誘惑をことごとく跳ね返し
ついには居直り者のふてぶてしさを手に入れる
「虞美人草」に続く、夏目漱石の新聞連載第二弾
ただしこれは、「春」の執筆が進まない島崎藤村の穴埋めとして
急遽書き下ろされたもの
いちおう教養小説としての体裁をつけており
また、前 -
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ネタバレ三四郎の美穪子への恋心や周囲の人との関わりが描かれた作品。日常の(学生)生活の中に織り込まれて展開されている印象であるため、若干の退屈さを覚える一方、それが自分と重ね合わせることのできるリアリティを生み出しているのかもしれない、と思った。
文章で読むとまた違うのかもしれないが、この作品の中で描かれている美穪子にはやはり、惹かれるものがあった。どこかミステリアスな雰囲気があり、それが美穪子を「気になる女」に仕立て上げているように思う。
~(個人的)パワーワード~
1.「あなたは余っ程度胸のない方ですね」
2.「ストレイシープ」
3.「熊本より東京は広い、東京より日本は広い、日本より……頭の中 -
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漱石の作品は、何回読みなしても、その度に違った印象や違った味わい、それまでにはなかった見え方のする作品ばかりだが、今回の「道草」は、一番その感が強かったかもしれない。
他の方もお書きになっているが、若い頃はネガティブな内容だけが続いて正直そんなにいい小説かな、と思わなくもなかった。が、数十年経って読み返してみると、置かれた状況は違うかもしれないが、いろいろなものが降りかかってきて、でもそれらを無視するわけにもいかず、そしてそれらは遠い昔に起因しているということは本当によくわかる。簡単に言ってしまえば「しがらみ」ということなのかもしれないが、それゆえ、大人になってからのほうが共感できる作品なのか -
ネタバレ 購入済み
ちゃぶ台返し
3年前義侠心という情に流されてからのそれから
全ての登場人物の思惑とはかけはなれた主人公
唯一人それを喜んだ三千代の不在と、物語の終盤散在する代助の発狂の兆しが当時にあっての純粋に理性的な存在の危うさを浮き彫りにしています。 -
ネタバレ 購入済み
もんもんと
坂井へ書生に出した小六がのちのち安井と接触するリスクについて
宗助が思い至らなかったか承知だったのか、
あえて描かれていないところに宗助の人柄と来るべき冬に
奥行きと色彩が残されたように思います。
限られた余地の鮮やかではありえない何色かが。
門の開く余地を見る思いです。