夏目漱石のレビュー一覧

  • 悪魔 乙女の本棚作品集

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    「堕落させたくないもの程、益(ますます)堕落させたいのです。」
    美しい顔をした悪魔はこう言って、涙を流した。

    美しいものはそのままにして愛でたい、という思いはあるのに、それを汚してしまいたいと思う己の醜さに悪魔は涙した。悪魔は、人を堕落させるのが仕事なのだろうから、そう思い悩んでしまう辺りが悪魔に似つかわしくなく、哀れんであげたい気持ちになった。

    大切にしたいけど、悲しませたい。
    清くいてほしいと思うけれど、真っ黒にしたい。

    この欲望はどこから来るのだろう。
    占有したい感覚、所有して支配したい気持ちは、どうして生まれてくるのだろう。
    どうして、美しいものほど、汚したくなるのだろう。

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    2024年06月24日
  • こころ

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    ネタバレ

    9年ぶりの再読でした。初めて読んだ時はよくわからないまま終わってしまいましたが、今回は内容をちゃんと理解できたと思います。お父さんがどうなったのか不明のまま終わりましたが、先生の遺言書のことを考えると分からないままで良かったのかもしれませんね。

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    2024年06月23日
  • 三四郎

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    広田先生や与次郎の描き方

    10年以上前に発表された小説なのだが、青春恋愛ものという普遍的なテーマを扱っているせいか古さを感じさせない。三四郎や美禰子の造形も相当に良いが、広田先生や与次郎の描き方がとても面白い。初期の作品の「吾輩は猫である」や「坊っちゃん」で大いに発揮されたユーモアがまだまだ残っているところが嬉しい。この作品でヘリオトロープを覚えた。

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    2024年06月08日
  • こころ

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    ネタバレ

    漱石の後期三部作の第三作。

    書生の「私」は、鎌倉の海水浴場で出会った「先生」の不思議な人柄に強く惹かれ、先生のもとに通うようになる。
    そして、「先生」が、恋人を得るため親友Kを裏切り、彼を自殺に追い込んだ過去は、先生の遺書によって「私」に明かされてゆく。

    下宿先の一人の女性「お嬢さん」に恋をした、親友どうしの「先生」とK。
    Kがその胸の内を先生に打ち明けたにもかかわらず、先生はそれを握りつぶし、お嬢さんに結婚を申し入れる。
    親友に裏切られ、恋に敗れたKは失意のうちに自殺する。
    以後、先生は、自分がKを死に追いやったと罪悪感に苛まれ続ける。
    「私」の目に世捨て人のように見えた先生は、お嬢さん

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    2024年06月07日
  • 草枕

    購入済み

    文化論社会論

    冒頭部分の名セリフから始まって語り口の良い名文句が並んでゆく。当時としては進んでいたであろう直裁的な語り口が現在読んでも心地よい。もっとも現在では全く使われなくなった漢語が多いので突っかかるところは多いが。ストーリーはそれほど凝ったものではなく、漱石自身の文化論社会論として読むべき作品かと思う。

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    2024年06月07日
  • 三四郎(新潮文庫)

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    ネタバレ

    夏目漱石の青春小説。坊っちゃんとは反対の構図(都会から田舎、田舎から都会)で描かれる、学生時代の話。

    三四郎と周りを取り囲む人々(世間に駆けて騒がしい与次郎、少し浮世離れした先生たち、三四郎が恋をする女性)が、三四郎の視点で描かれる。
    俗世間と精神世界、その中での恋愛感情を、明治の雰囲気と共に「一種の感じ」を持たせてくれる本。

    好きなフレーズ
    「今の思想界にいてその動揺の激しい有様を目撃しながら、考えのあるものが知らん顔をしていられるものか。実際今日の文権は全く吾々青年の手にあるんだから、一言でも半句でと進んで言えるだけ言わなけりゃ損じゃないか。〜進んで自分からこの機運を拵えあげなくちや、

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    2024年05月31日
  • 三四郎

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    恋の駆け引きはやはり自分の性に合わないとしか言いようがない。ぶつかって玉砕しても、仕方ないからといってはずれた形に収まりたくはない。

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    2024年05月28日
  • 門

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    ネタバレ

    最初の方でごく普通のように見えながら少し不穏な家庭の様子が書かれていましたが、後になってその秘密がわかりました。秘密が分かってからは日常のような場面でもかなり怖く感じます。
    最初からずっとあったわだかまりは結局消えないまま残っていたのもまた恐ろしかったです。

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    2024年05月27日
  • 乙女の本棚8 夢十夜

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    絵が綺麗で気になっていたシリーズ。
    昔の話というのもあるので、絵があると情景が想像できてよいですね。
    お話は第一夜がお気に入りです。とても美しいお話だなと感じました。
    不思議で難解ですが、そこがまた解釈が分かれて想像力がかきたてられます。
    第九夜も、悲しいお話だけれど好きです。
    わからないもの、というのは自分の想像によって自由に変えることができる。
    というのが面白いなと思います。

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    2024年05月11日
  • それから(新潮文庫)

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    最後の方の展開に釘付けになり、本から手が離れなくなるような不思議な感覚。数年経ってからもう一度読みたいと思う。感情の描き方が、理屈チックでありながらも秀逸。さすが漱石、表現が巧くて脱帽。

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    2024年05月08日
  • それから(新潮文庫)

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    ネタバレ

    親の脛をかじり悠々自適に暮らして来た代助。金に困らぬ故か、冷静かつ平常心でいる事を常としていた。
    が、平岡夫妻が上京し、三千代が不幸と知る。三千代へ気遣っているうちに、次第に慕情が募ってくる経過が見事だ。あの代助が、三千代の為なら今までの自分を全て捨てて一緒にいたいと。
    最後は、果たして代助と三千代は一緒になれるのか不安な終わり方で、読者に委ねる形か。後半から夢中で読んだ。

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    2024年05月03日
  • 私の個人主義

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    色々と自分のみの処し方や今後について悩んでいたので、励みになった。徹底的に自己本位でやってみて腹の底から納得することが肝要だ。

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    2024年08月17日
  • 坑夫(新潮文庫)

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    最初に読んだときは、…???
    さっぱり意味がわかりませんでしたが、解説を読んでから読み直すとすらすらと読めるようになりました。

    特別な事件が起こる訳ではありません。
    いま流行りの伏線回収もありません。
    何かの意味や、コスパを求めて読む人には向いていないかもしれません。

    それでも本書を読み終えると何か〈文学〉を読んだという感じで満たされます。

    主人公が〈地獄の三丁目〉で見たものとは?そこで下す決断とは?
    華厳の滝で「立派」に死ぬことなのか、それとも現実社会で生きてゆくことなのか…。

    漱石先生の隠れた名作だと思います。

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    2024年04月21日
  • 文鳥・夢十夜(新潮文庫)

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    夏目漱石の小品集ですね。
    7篇の作品集です。
    朝日新聞社の依頼で執筆されたそうです。
     
      文鳥
      夢十夜
      永日小品
      思い出す事など
      ケーベル先生
      変な音
      手紙

    小品と書きましたけど、私は随筆と思って読んでいました。
    解説の三好行雄さんは『日本の近代文学には〈小品〉と呼び慣わされた独自のジャンルがある。小説ともつかず、感想ともつかず、いわば短編小説と随筆との中間にひろがる曖昧な領域なのだ。』と位置付けされています。
    漱石もモーパッサンの短編小説『二十五日間』を〈小品〉と呼んでいるそうです。
    また、この小品集を三好行雄さんは、「漱石の〈私小説〉と呼んでよいかもしれない」

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    2024年04月14日
  • 吾輩は猫である

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    猫が人間のように人間を批判するのがおもしろい。実際に猫はこんなことを考えているんだろうかと思った。しっかりとオチがあって読後の感覚もよかった。題名は英語なら、I am a cat(吾輩は猫である)となる。人間が主人猫(動物だから主人公はおかしいかもしれない)と同じように語ったら、見下す感じになるかもしれないが、猫が語ることによって、鮮やかに受け入れられやすいものとして読むことができる。

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    2024年04月09日
  • 草枕(新潮文庫)

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    20年余も積読だったようだ。

    そもそも、夏目漱石の作品はあまり読んでこなかったのだけど、やはり読むべきかなと思ってしまった。

    内容としては、小説とその登場人物の語りを借りた当時の芸術や社会に対する反論であると読み取った。

    それ以上に感じたのは、作品を埋め尽くすかのようなレトリックの量と質だ。

    冒頭文はあまりに有名だけれど、本文中のレトリックはそれをも凌駕する。

    明治の文であり、また漱石の博学ゆえに難解な語もあるが、脚註に道草せずにその韻や語調を楽しみたい。

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    2024年04月08日
  • 門(新潮文庫)

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    "こころ"で夏目漱石に惹かれて、内容もわからずとりあえず読んだ一冊。
    起承転結がはっきりしているSFが好きな私でも、日常に潜む些細な感情を独特なセンスで表現している本書に読む手が止まらなかった。宗助と御米との幸せな夫婦生活の裏にある確かな影が人生の儚さと奥ゆかさを感じさせられた。タイトルにもある"門"と宗助との繋がりも読んでいただきたい。

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    2024年04月07日
  • 坊っちゃん 9

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    言わずと知れた夏目漱石の名作。児童用にまとめられており、挿絵もカラーで資料も豊富に揃っているので、極めて読みやすい。こんな本が自分の子供時代にも欲しかった。

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    2024年03月23日
  • 乙女の本棚8 夢十夜

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    夏目漱石先生+しきみさんのコラボ!即購入しました。イラストが凄く綺麗。鑑賞用として買っても後悔しないと思う。小説を読んでいても思ったけど、やっぱり夏目漱石先生の文章って凄く言葉遣い良いですよね。全巻集めたいけど、結構な値段するので月に一度のペースで買おうと思っています。シリーズの名前が凄く尊い。乙女の本棚、最高。

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    2024年03月20日
  • 文鳥・夢十夜(新潮文庫)

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    夢十夜目当てで読んだら意外と長かった。
    思い出す事など、が結構好き、意図してないタイミングで好きになる作品って運命感じて好きよ

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    2024年03月13日