夏目漱石のレビュー一覧
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夏目漱石の『こころ』をNHK100分de名著のテキストといっしょに買ってみる。
「先生」は自分が死に至るまでの経緯と理由を、唯一「真面目」だと認めた「私」に宛てた手紙のなかで述懐。
この「手紙」という媒体に残した・書ききったという行為が、自らが生きた世界に何らかの痕跡を残したいという人としての本能的な行為であったように思う。手紙にしては長過ぎるけどな。
それにしてもスネに傷を持ったことを抱えながら生きることは出来ないのだろうか。そういう意味でまったく救いのないストーリーだと思った。
が、テキストの姜尚中は、漱石自身は死を肯定も否定もせず、死あってこそ生を見出だすことができるみたいなことを言 -
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何と言う小説。
水村美苗さんの「続明暗」を読みたいな、と思い再読したのだけど。
此処に津田という男がいる。主人公である。会社員で、まずは悪くない勤め人で、30前後のようで、新婚である。その妻が延子。
粗筋で言うと、津田が胃腸らしき病気である。大層ではないが数日入院して手術が必要だ。会社と、世話になっている親戚筋に挨拶して入院。手術する。
津田の家庭はやや使い過ぎで、毎月の給料では足りない。京都の親が仕送りをくれていたが、仲違いしてそれが途切れた。金策に困る。
延子は新婚で、津田との愛情、夫婦のあり方にぼんやり不安がある。
津田の妹、秀子。津田の上司の吉川氏の奥さん。…などが、「 -
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こんな夢を見た。
自分はとあるサーカスで働く道化の少年である。白と黒の化粧をし、同じ色の白黒の道化服を着て、毎日客の前に立っている。年齢は幼く、サーカスのヒエラルキヰでいえば底辺に属するような位置である。賃金も大変に少ないが、しかし、自分はさして悲しんではいなかった。自分の隣には、道化の相棒がいるからである。相棒もまた、白黒の紛争をしているが、少しだけ赤色の混じった服を着ている。身長は自分よりわずかに高いが、自分より痩せていた。
自分と相棒はサーカスの部屋でいつも同室であり、二人で共有している錆の浮いた焼き菓子の缶箱がある。
古びたその中には、菓子は入っていない。入っているのは、僅かばかりの -
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『夢十夜』で初めて漱石を知り、『草枕』で文体に衝撃を受け、この『虞美人草』で面白さにどっぷりと嵌った。漱石の小説の中で一番好きかも。
よく「漱石は女性が描けない」とか言われるけど、だからって別に男性が描けているとも思わない。小説を書いている。
それはともかく、この人間関係、マンガ的で面白い。ちゃんとキャラが立っている。男も女も。
それを「通俗的」だと言われれば確かにその通りなんだろうけれども。
職業作家としての初めての長編小説。「面白い小説」を書こうと苦心したんだろうな。
装飾華美な文体や、ほんの少しハミ出ている「セオリー」たる主張のようなものがちょっとくどいような気もするけど、それはご愛敬 -
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ネタバレ漱石の手に心臓を掴まれた気がした。
第四章『塵労』は読んでいて苦しい。
「ああおれはどうしても信じられない。どうしても信じられない。ただ考えて、考えて、考えるだけだ。二郎、どうかおれを信じられるようにしてくれ」
「僕は死んだ神より生きた人間の方が好きだ」
「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか。僕の前途にはこの三つのものしかない」
「僕は迂濶なのだ。僕は矛盾なのだ。しかし迂濶と知り矛盾と知りながら、依然としてもがいている。僕は馬鹿だ。人間としての君は遥に僕よりも偉大だ」
「どうかして香厳になりたい」
ああ、苦しい。
駄目だ。
泣く。 -
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中学生の時に読んだ本。
しかしタイトルは覚えていても中身が思い出せない。。。
ということで、10数年ぶりに再読してみました。
本作は三四郎の学生生活を書き綴った作品。
田舎から出てきた三四郎の周りに、
自分とは異なる考えを持つ様々な人物との交流から
様々な経験を得るようなストーリー。
明治時代の作品なので、学生生活といっても
現代とはマッチしないし、言葉が難しいのもあるけども、
色々な心理描写があり、全体の雰囲気は分ります。
本作はずっと気になる美禰子に失恋した感じで終わります。
本作は「それから」「門」と3部作なので、
さらに引っ張りだして他も読んでみようと思い -
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布団の上から身を動かせずに見えるものがこんな豊かで慈愛に満ちたものなのか、そしてそれを表現している文章の綺麗さに感動してしまった。死に近いという一点のみでは、少なくともその気概を持って接する分には若い人には負けない。どっかでこういう言葉を聞いたけど、いやいや、もうただただ頭を垂れるしかない小さな自分がそこにいるだけだった。
知り合いの旦那さんが亡くなられる数年前に読んでいた本が並んである本棚から拝借してきた本の中の一冊なんだけれども、こうやってものを介して出会う前に一度お話ししたかったなと思わずにはいられません。
思い入れこみでの評価だけども、星5つの基準を変えなきゃなと思いました。 -
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しっかり?夏目漱石読んだのはじめてだな〜。
夢十夜をちゃんと読みたくて借りたけど予想以上に収穫があった。
中でも『永日小品』と『我が輩は猫である』の「迷亭くんの話」がよかったな。
なんかもう足先がぬるま湯に浸かっているような安心感がある。でも足先しか浸かってないから肝心の本体はふとした瞬間に寒気が走る。そんな気持ちいいホラー。
夏目漱石を一度キッチリ読もう。
実はかなり好きな文体で話の組み方でござった。
古い文体だと毛嫌いしてはいけませんね。読みだすとかなりハマりそうな気がする。
それにしても『夢十夜』の完成度の高さよ………
全部ものすごく好きだわ〜。 -
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3度目の三四郎。
最初に読んだのは、高校生のとき。「坊ちゃん」のような派手な展開もなく、田舎者の三四郎が美禰子さんに憧れるが、地味な失恋をするという陳腐な青春小説という印象で、面白い本とは思えなかった。
50代での再読で漸く良さがわかった。汽車の中の情景、途中下車した名古屋での女性との一夜、水蜜桃を頬張りながらの富士山談義で構成される印象的な導入部。日露戦争後当時の東京の情景と漱石が思うこれからの日本の将来への展望も良く書かれていて、読書の楽しさが味わえた。
そして、今回は「それから」「門」を読んでからの「三四郎」。漱石の世界に馴染んでからの「三四郎」の世界は心地よかった。なんと言っても