夏目漱石のレビュー一覧

  • 虞美人草(新潮文庫)

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    漱石の時代と現代とで、人間はこんなにも変わらないものなのかと読みながらとにかく驚かされたし、自分自身の醜い部分を時代を超えて見透かされているような気分になってドキっとしました。
    今の自分に喝を入れてくれる様な話で、読むことが出来て良かった。
    真面目にならなければ。

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    2015年07月03日
  • 吾輩は猫である

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    夏目漱石といえば・・・
    と聞かれたとき、私は間違いなくこの作品を掲げるでしょう。

    猫視点で描かれる本作品は、当時非常に斬新でその後同形式の作品が多数出たという。
    私はそのような意味で本作品をお勧めしたい。

    時代に新たな風を吹かせるということは、ごく限られた人物にしか可能たらしめない。

    特に学生さんにお勧めしたい作品です。

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    2014年12月18日
  • 三四郎

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    明治大正期の作品では「三四郎」と「雁」が圧倒的に好きで、もう何回読んだかわからない。特に「三四郎」は10回や20回ではきかないと思う。
    そしてやはり、なんど読んでもいつ読んでもいい。書き出しから最後に至るまで本当に素晴らしい。読むたびに心のいろいろなものが調う。
    本郷上野周辺を好ましく感じるのも、この2作品の影響が大きい。しかし、そんなに好きなのにどうして東大に行こうと思わなかったのか、今さらながら不思議でならない。

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    2014年12月16日
  • こころ

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    糸瓜忌のBBで「仰臥漫録」の代わりにプレゼンした作品。但し集英社文庫で。理由は解説が優れているから。だけどそもそも岩波書店が発行した最初の書物が「こころ」だった。岩波文庫の解説は古井由吉!実父の臨終間際を放って東京行きに飛び乗る道徳性、日露戦争ではなく勃発直前の第一次大戦に見る作品の背景、この2つは意見が違うが「先生」とKと「私」という3人の大学生の精神分析が面白い。Kは郷里を欺いた報いで学業も生活も破綻していく。猜疑心が強い「先生」は端からそれが許せない。自他共にだ。どう読んでも49章と50章は圧巻。

    岩波文庫創刊時のラインナップ。先日の読書会で、今年も岩波文庫を1冊も読めなかったと言って

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    2014年12月11日
  • それから(漱石コレクション)

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    思慮深いがために行動できない主人公。
    周りの環境が次第に変わり、自分自身も成長していく、その成長に耐えられないまま終盤を迎え、なんとか生に抗おうとするその葛藤が絶妙に文章にされていて、どの一つの文も書き落とせない。完成された本だと思う。

    恋愛模様を描くのが上手いですよね。

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    2014年09月30日
  • 彼岸過迄(新潮文庫)

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    前半で一年前に詰まってしまい、色々と思うところあってまた読んでみた。

    恋なのか情なのか、分からない。そんな人たちのお話し。
    考え過ぎると人間ってのは前に進む勇気がなくなってしまうのかもしれない。
    勿論それは一つの正解だと思う、人の道に正解も不正解もないんだろうけど。
    でもどこにも行けなくなってしまったら人はどこに落ち着けばいいのだろう。落ち着く必要ってなんなんだろう。

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    2014年09月21日
  • 漱石「こころ」の言葉

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    夏目漱石の『こころ』刊行から百年、らしい!
    ということで、漱石のこころに触れるための、名言が作中や書簡などから抜粋されて掲載されている。

    読んだことのないものも多数あった。
    心を打たれるものもあれば、反面、内容の解釈ができないものも多数あった。

    本書の構成として、言葉の注釈は幾つか加えられているけども、”名言”に対する解説は一切なく、読者にその解釈(味読)をゆだねている形になっている。
    余計なことはしないという、良い計らいだ。

    漱石の言葉に触れる良い機会だった。

    やはり原著/原作に当たることが大切だと思う。
    ※最近、名言のみを集めた本が多数出版されているけども・・・。

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    2014年07月21日
  • 坊っちゃん

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    高校生以来。
    昔から鼻持ちならない奴はいたんだなぁ。
    そんなに真っ直ぐだと神経衰弱にもなっちゃうよ。
    大人になった今、痛快だけじゃない部分も読める。
    清とのつながりがいとおしい。

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    2014年07月19日
  • 夢十夜 他二篇

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    ネタバレ

    これ、ナゾナゾだと思う。読まれた方々それぞれの答えを尋ねてまわりたい。僕は、一夜は「音楽」。三夜は「歴史」が答えだと思うんだ。

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    2014年07月15日
  • 三四郎

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    ネタバレ

    物語としては「三四郎のキャンパスライフ」というなんでもない話だけど、人物描写が今でも通用するのでおもしろい。今もこんな人いるよね!みたいな。冒頭、名古屋が出てくるのもちょっとうれしかったり。
    漱石先生はときどき文明開化の総括的なことを作品の中で登場人物に語らせるのだけど、文明開化によってまるっと西洋の文明を受け容れてしまうことでがらっと風土が変わってしまった日本に、戸惑っている感じが伝わってくる。きっと漱石先生自身がそうだったのかなと思うのだけど、西洋文化を喜んで受け入れられる人がいる一方で、新しい動きに馴染めなずもやもやしている私みたいな人が、明治時代にもいたのだなぁ。
    いま與那覇潤さんの「

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    2014年06月07日
  • それから

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    1909年(明治42年)。
    国語の教科書のイメージが先行しているせいか、文豪作品は優等生的で退屈と思われがちだが、読んでみると必ずしもそうではない。最初こそ文体が堅苦しく感じられるかもしれないが、慣れてしまえば大したことはない。というか文体に慣れてしまえば、実はいわゆる古典的名作こそ、その中身は反社会的で、病的で、自意識過剰で、ひねくれていて、だからこそ面白い、ということに気づく。むしろ、書店で平積みにされているベストセラー本の方が、文体がくだけていて読みやすいというだけで、中身は「仲間を大切にしよう」「努力することは素晴らしい」「成功こそ人生」など、教科書以上に教科書的な内容だったりする。

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    2014年07月21日
  • 門

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    ネタバレ

    「秋日和と名のつくほどの上天気」から、物語はつらい冬を越えて、春にいたる。
    「うん、でもまたじきに冬になるよ。」

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    2013年12月27日
  • 明暗(新潮文庫)

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    実は漱石の作品中、最もお気に入りかも。
    兎に角登場人物が皆周りの腹を伺いつつ、本音をひた隠す。
    と言うかこれは本当の現実だと思う。本音って誰も世に公言したことがないはず、だからこそ家族という最小単位であっても社会には緊張関係が絶えず存在する。
    しかしこの厳然たる事実にはあまり皆目を向けたがらない、何故なら精神的に厳しいであろうから。漱石はそれに拘泥し、延々とそれこそ終わりなき描写に終始する。
    未完だが、漱石には終わらせる腹積もりはあったのだろうか?
    色んな妄想をかき立てるある意味至高の本です、当方にとっては。

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    2013年12月12日
  • 二百十日・野分(新潮文庫)

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    二百十日
    単純で剛健な豆腐屋の圭さんと金のある禄さんの阿蘇山登山を、ほとんどふたりの会話で描写する。
    主題は華族、金持ちに対する庶民の批判。その批判を圭さんに言わせ、禄さんが軽くかわす。おそらく、この小説が書かれた時代は、格差社会の入り口でもあり、かつ人々が理想を持ち始めた時代。したがい、漱石も単純には新興の金持ちを批判はできなかったのではないか。禄さんの態度が漱石に近かったような気がする。
    ユーモア小説としても抜群の出来。熊本の宿屋で半熟玉子をふたつ頼むと、ひとつは固ゆで玉子、もうひとつは生玉子が来る。くすぐりが効いている。

    野分
    正義や理想主義のために教師の職を辞し、雑誌記者として細々と

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    2013年10月17日
  • 明暗(新潮文庫)

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    小林が津田に言う。"君は度胸が坐ってないよ。厭なものを何処までも避けたがって、好きなものを無闇に追懸けたがってるよ。なまじ自由が利くためさ。贅沢をいう余地があるからさ。僕のように窮地に落とされて、勝手にしやがれという気分になれないからさ"。気持ちを開放出来なければもはや不自由である。わざわざ温泉場まで追いかけていって、津田と清子はどうなっていくのだろう。だからと言って、他の作家が書いた続篇を読みたいとは思わないな。前後期三部作から自分で想像するのも一興。

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    2013年10月16日
  • 明暗(新潮文庫)

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    明と暗。
    夫婦、親子、男女、兄妹、貧富・・・
    数々の明と暗を登場人物に織り込みながら、時には明が暗となり、暗が明となる。
    心理描写は精細にそして奥深く、読む者を惹きつける。
    未完であることも作品として完成度を高めているような気もする。

    漱石を読む面白さの一つが、明治という価値観が純粋な形でぶつかり合う時代背景を知ること。
    社会主義の萌芽、資本主義の価値観に戸惑う中産者階級、自己に目覚める女性・・・

    以下引用~
    ・「普通世間で偶然だ偶然だという、所謂偶然の出来事というのは、ポアンカレーの説によると、原因があまりに複雑過ぎて一寸見当が付かない時に云うのだね」
    ・「僕は味覚の上に於いても、君に軽

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    2013年10月16日
  • 坊っちゃん

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    小学生時代に読んだ本を半世紀ぶりに読むと印象が変わって面白い。歳をとったせいか、”そんなに人に突っかかってたら苦労するよ~”と言いたくなる場面ばかりで。清が愛おしい。最初の停車場の別れで”何だか大変小さく見えた”という表現はよく覚えている。最後の”後生だから、清が死んだら坊っちゃんの御寺…”で「後生」という言葉を覚えたような。解説で平岡氏が坊っちゃんと清の二人の生活は”四ヶ月程度であろう”と言うがその根拠は?「鹿男あをによし」の”鹿せんべい、そんなにうまいか”はこの話のオマージュだった、と今頃気がつく。

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    2013年10月10日
  • 虞美人草(新潮文庫)

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    難解な中にもこの時代の美しい文体を楽しむことができる。
    宗近の云う「真面目になること」は自分の心に備え置いてきたことと重なり合う。

    「真面目になれる程、自信力の出る事はない。真面目になれる程、腰が据わる事はない。真面目になれる程、精神の存在を自覚する事はない。天地の前に自分が厳存していると云う観念は、真面目になって初めて得られる自覚だ。真面目とはね、君、真剣勝負の意味だよ。遣っ付ける意味だよ。遣っ付けなくちゃいられない意味だよ。人間全体が活動する意味だよ。口が巧者に働いたり、手が小器用に働いたりするのは、いくら働いたって真面目じゃない。頭の中を遺憾なく世の中へ敲きつけて始めて真面目になった気

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    2013年08月07日
  • 虞美人草(新潮文庫)

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    ネタバレ

    【Impression】
    「虞美人草」が一体誰のことなのか、結局は藤尾さんであると分かるんだが、虞美人草の花言葉は「平穏、無償の愛、慰め」などであるらしい。

    作中の藤尾さんは全くの正反対である。
    最後は意中の人を得る事が出来なかったため死んでしまうような、気性の荒い人である。

    この正反対にある状況は一体どういうことを意味しているのか、いや、面白かった。
    文章が綺麗で、詩的で、漢語のにおいがする、また読み返したい本
    【Synopsis】
    ●宗近と糸子、甲野と藤尾、そこに小野が加わり、表面的には平穏に、内面では策略を巡らせた人たちとの恋愛もの。宗近と甲野はこの策略に飽き飽きしている、小野は利己

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    2013年07月29日
  • 門

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    2013/04/11-2013/04/22
    星4.8

    僕は果たして大学生になったので、色々と名作と謳われる文章を読んでみることにした。その第一号が、この『門』。夏目漱石作。
    僕は理系であって、読解というものは比較的苦手とする所なので、こういう込み入った文章を読むにはゆっくり消化しながらでなければいけないから、少し疲れた。しかし、僕の日常にあるような、読後の疲労感というものには不思議と見舞われなかった。
    陰か陽かと問われれば陰に値するだろう物語だのに何故だろう、物語を通して問題は全く解決していないように思われるのに何故だろう、陰鬱な気持ちにはならなかった。

    もしかするとそこらへんが、この文章

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    2013年04月26日