夏目漱石のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【兄さんがこの眠りから永久覚めなかったらさぞ幸福だろうという気がどこかでします。同時にもしこの眠りから永久覚めなかったらさぞ悲しいだろうという気もどこかでします】(文中より引用)
知識人の一郎を兄に持つ二郎は、旅行先でその兄が妻に不信を抱いていることを知る。心の内の疑いを晴らすため、一郎は二郎に対し、彼女と旅行に出て欲しいと頼み込むのだが、一夜を過ごした二郎は兄に結果を報告する時宜を逸してしまい......。著者は、近代日本を代表する作家・夏目漱石。
焦点が当てられる登場人物がパートによってずいぶん異なるため、どこに主眼を置くかでずいぶんと印象が異なってくるのではないかと思います。やはり圧 -
Posted by ブクログ
(2018年2月のブログ内容を2020年11月に転記したものです)
夏目漱石は英文学を専攻し、学校は出たものの、文学とは何かということをつかめず、悶々とする日々を送っていました。幸いにも教師の職にはありつきましたが
“「その日その日はまあ無事に済んでいましたが、腹の中は常に空虚でした。空虚ならいっそ思い切りが好かったかも知れませんが、何だか不愉快な煑え切らない漠然たるものが、至る所に潜んでいるようで堪らないのです。」。”
そして、ついにはロンドンに留学したが、分からない。しかし、そうしているうちについに分かったのです。「文学とはどんなものであるか、その概念を根本的に自分で作り上げるより外 -
Posted by ブクログ
ネタバレ夢の中の話。
「こんな夢を見た。」から始まる第一夜。
百年目に合うから百合の花。文章は余韻が残る言葉が散りばめられていてまさに夢のように幻想的。関係を曖昧にすることによって女の涙の解釈が分かれるところが技巧的。
第三夜。
民俗学に見られる民間伝承、「こんな晩」パターンの類型。不気味としか言いようがない。「ちょうど百年」と出てくるが第一夜との関係性があるのかは謎。
第七夜
対象をつきはなして見ている。自殺者の視点に立って心情を描写している点において、類型的なものが見られないため何か伝えたいことがあったのか。
なんとも言えない、考えさせられる、でもわからない
謎に包まれたような、味のないも -
購入済み
この本は漱石なのです。
漱石は「自己本位」という四文字を発見して、すくわれました。私も頭の中がぐちゃぐちゃになったら、この作品をよみ、漱石の言葉を聞きます。この本を読んでいる間、漱石はまるで今この世にいきているようなパワーを与え続けてくれます。おそらく、漱石の魂がこの本に込められているからだと思います。そういった意味で、彼は不死なのです。この本とこの思想がある限り。
ちょっと匂わせたくらいにして、後は皆様に読んでもらいましょう。これは生きている意味を問う傑作です。ご自身でご覧あれ。 -
ネタバレ 購入済み
夏目漱石が好きなら買い
夏目漱石ファンなら笑えること請け合いのゾンビバトル+旅情漫画。
1巻ではこころ、門、坊っちゃん、吾輩は猫であるのパロディキャラが出てきます。特に坊っちゃん前後編はキャラ重視で面白いです。
ただし若干グロ多し。冷酷な独裁者と化した赤シャツとのバトルはなかなかの迫力でした。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ(個人的)漱石再読月間の12。残すは3。
初読は高校生の時だと思うが、当時は哲学書や思索的なものが好きで、この作品もとても面白く読んだ記憶があるのだが…いやこれは高校生には無理でしょ!特に男女、家族、夫婦の問題は時代を超えて無理。齢を重ねてから読むべし。
後半の兄の友人の手紙は、漱石再読を始める直前に読み返した埴谷雄高「死霊」の三輪4兄弟を思い起こさせた。思索を重ねに重ね、狂うか、死か、宗教しかないと苦しむ兄。
軽薄な父とその性質を受け継いだ語り手である弟の方が生きやすい。思索的であるとはなんと生きづらいことか。
…自分が本来好きな読書の形とは何なのか、それを考えることができて、再読月間 -
Posted by ブクログ
ネタバレ(個人的)漱石再読月間の6。
いよいよ虞美人草です。10代の中頃に読んだはずなのですが、まっったく歯が立たず、藤尾の壮絶なラストだけはくっきり記憶にあるものの、とにかく辛かった思い出しかないので、今回の再読月間に当たり、最後に回そうか、さもないとここで引っかかって終わらないかも…くらいの苦手意識だったのが、なんとするする読めるし、もう面白くてたまらない。最初の朝日新聞での連載小説で、気合いを入れて、面白い仕掛け満載なのがよくわかり、いやぁ、私も読書人として成長したなぁと感慨深いものがありました。
キーワードは「道義」と「悲劇」
ここでもやはり、お金がないのはツライということが延々と述べら -
Posted by ブクログ
▼トシを重ねて読み返すたびに、本筋の事件のオモシロさよりも「坊っちゃん」と、坊っちゃんの疑似母的な「清」とのラブストーリーに、ココロ打たれます。泣ける。涙が止まりません。そうか、これは「赤毛のアン」だったのか。アンの物語に見えて、アンを巣立たせるマリラとマシューの物語でもある。さすが、漱石。
▼「坊ちゃん」夏目漱石。1906年初出。どうでもいいですが「赤毛のアン」が1908年。岩波文庫。2019年8月に、何度目かの再読。短い。あっという間に読めます。
▼大人になって読めば読むほど、哀しい話だなあ、と思ってしまいます。坊ちゃんの勤務先で起こった事件については、勧善懲悪は全く成されないまま。赤