夏目漱石のレビュー一覧
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ネタバレ漱石の手に心臓を掴まれた気がした。
第四章『塵労』は読んでいて苦しい。
「ああおれはどうしても信じられない。どうしても信じられない。ただ考えて、考えて、考えるだけだ。二郎、どうかおれを信じられるようにしてくれ」
「僕は死んだ神より生きた人間の方が好きだ」
「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか。僕の前途にはこの三つのものしかない」
「僕は迂濶なのだ。僕は矛盾なのだ。しかし迂濶と知り矛盾と知りながら、依然としてもがいている。僕は馬鹿だ。人間としての君は遥に僕よりも偉大だ」
「どうかして香厳になりたい」
ああ、苦しい。
駄目だ。
泣く。 -
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布団の上から身を動かせずに見えるものがこんな豊かで慈愛に満ちたものなのか、そしてそれを表現している文章の綺麗さに感動してしまった。死に近いという一点のみでは、少なくともその気概を持って接する分には若い人には負けない。どっかでこういう言葉を聞いたけど、いやいや、もうただただ頭を垂れるしかない小さな自分がそこにいるだけだった。
知り合いの旦那さんが亡くなられる数年前に読んでいた本が並んである本棚から拝借してきた本の中の一冊なんだけれども、こうやってものを介して出会う前に一度お話ししたかったなと思わずにはいられません。
思い入れこみでの評価だけども、星5つの基準を変えなきゃなと思いました。 -
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しっかり?夏目漱石読んだのはじめてだな〜。
夢十夜をちゃんと読みたくて借りたけど予想以上に収穫があった。
中でも『永日小品』と『我が輩は猫である』の「迷亭くんの話」がよかったな。
なんかもう足先がぬるま湯に浸かっているような安心感がある。でも足先しか浸かってないから肝心の本体はふとした瞬間に寒気が走る。そんな気持ちいいホラー。
夏目漱石を一度キッチリ読もう。
実はかなり好きな文体で話の組み方でござった。
古い文体だと毛嫌いしてはいけませんね。読みだすとかなりハマりそうな気がする。
それにしても『夢十夜』の完成度の高さよ………
全部ものすごく好きだわ〜。 -
Posted by ブクログ
1914年(大正3年)。
明治の精神とやらはともかく、生物として、配偶者の獲得は弱肉強食の仁義なき戦いである。だからKを出し抜いた先生については、私はさほど責める気になれない。人間はしょせん動物なのだから。第一、勝敗を決めるのは先生でもKでもなくお嬢さんであり、その点において3人の間に不正は何ら存在しなかったのだから。
だがKは死ぬべきではなかったと思う。生きて愛する女性のために、未来を祝福してやるべきだったのだ。たとえ心で号泣したとしても。そこで涙をのんで祝杯をあげてやることこそ、どんな道を説くより見事な心意気じゃないかと私は思う。そうすれば2人は幸せになれただろうし、世界に女はお嬢さんだ -
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狂言回し的な主人公である敬太郎の周辺の人物たちを巡る作品。
同じ下宿の住人である森本、友人の須永、その叔父である、実業家の田川と、高等遊民の松本、そして、従妹の千代子。
話は、森本から始まり、田川と松本との接触、須永と千代子の関係、松本の話に終わる。
本作で最も中心を成すのは、須永と千代子の話、補足的にそれにまつわる松本の話である。
「行人」の一郎同様、須永の苦悩は根本的に、千代子(それに拡大解釈すれば彼の母)を含めた女を介した、他人に対する「不可解」なのではないかと思う。
同時に、「行人」のレビュー・感想に記したごとく、自らにとっても、この「不可解」や、他者との交感、他人を受け入れる苦悩 -
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弟の二郎と妻お直との仲を疑う、学者である兄の一郎の苦悩を綴った作品。
高校時代の国語教師は「漱石は女を不可解な存在と感じていた」と論じたのを覚えている。
本作や「彼岸過迄」を読むと、漱石が「不可解」だったのはおそらく、女のみならず全ての他者、特に、最も近しいはずの身内ですら、その「不可解」の対象だったのではないかとすら感じる。
他の方のレビューに目を通すと、その感想には、概して一郎へ共感したかどうかの分かれ目があるように思える。
だがそれは、他の方々が一郎へ共感したかどうかを重要視したのではなく、個人的には、はたして他人は一郎のような苦悩を抱えたことがあるのかどうか、が気にかかったのだ。
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追記
表題作「夢十夜」について学部で読書会を行なって随分理解が深まったので追加。
夢十夜はそれぞれを漱石が見た夢と考えてもいいが、よく読んでみると技工の優れた点や、後の作品の片鱗、漱石らしい主張などなど様々なものが盛り込まれている。
第一夜は、死や土の匂いなど負の要素が確かにあるのにそれを全く意識させない美の連続、流麗な文章の巧みさは漱石ならでは。特に白い肌の色から白百合への色の流れの美しさと輪廻の象徴は脱帽。
他にも七夜八夜が表す英国文化に迎合する日本批判は十夜の庄太郎に見える「それから」の代助の片鱗などなど。たった数ページの文章でも読めば読むほど深みが知れて底が見えない作品でした。