夏目漱石のレビュー一覧
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表紙のあるものが、新潮とこれしか見当たらなかったが、私が読んだものは岩波であったように思う。
私はこの作家の書くものがなべて好きだ。
胃弱で、おそらく心痛から意を痛めたと推察される彼は、おそらくあの時代を集約した「近代人」のはしであり、それを文筆と言う形で表に現した数少ない人物の一人だった。
或いは、江戸を引きずり、或いは日本を否定し、或いは困惑のうちに影響を整理しきれず、西洋と日本を周知した上で、自己分析までをなして見せ、東洋を失わなかった彼の、その視線の鋭さと優しさに時折感嘆する。
私は彼の著作が好きだ。
彼の書くものは、ひかりもやみも含めて、とてもやさしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ通読するのは2回目になるのかな?前回は確か高校生の時で、ご多分に漏れず教科書で読んで衝撃を受けて通読しようと思ったんだった。たしか。
「私」と「先生」、「若い頃の先生」と「K」の他に、本文に潜む「今の私」が過去の自分の目を通して「先生」をどう見ていたか、またその時の感情を今はどう思っているのかをうまく読み解けると解像度がもっと上がりそうだと思う。つまりこれは2回めが本番、の構図を持つ話だったんだな、と今更気づいた。さすがに高校生の時が初読だと「今回が2度めで本番」とは読めないので、近いうちに読み直したい。
多分、若い頃の「私」は「先生」をとても大きな、あるいは完璧なもの、偶像化するよう -
Posted by ブクログ
ネタバレ「ええ、まあ有難いわ」と三千代は低い声で真面目に云った。代助は、その時三千代を大変可愛く感じた。わかる、急に真面目な態度取るの可愛い。
代助の結婚や未来へのモラトリアムは甘えだけど気持ちはわかる、彼はただ彼の運命に対してのみ卑怯であった。何も選択せずその日暮らしだと確かに楽だよね。
真剣な話し合いの時には酒を飲まない方が誠実だという価値観、この頃もあるのね。
251ページから物語がやっと動き出す感じ、グンと面白くなる。「僕の存在には貴方が必要だ。どうしても必要だ。」ストレートな告白がいいねやっぱり。
夜明けを「世界の半面はもう赤い日に洗われていた。」って表現するのかっこいい。
最後は狂気に向 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第一夜が美しすぎる。
一度読んだ後に本を閉じ、余韻に浸りながら眠りました。え? 夏目漱石ってこんな綺麗なの? こんな綺麗なんだ……続きは翌日に。
「こんな夢を見た」
話の切り替わりのフレーズで気が引き締まり、ハッと現実に戻った後、次の夢に入っていく感じがする。
後半はそのフレーズが無いので、夢から覚めずにずっとふわふわと夢を見続けているような感覚がする。
楽しい。
他収録されている作品ですが、
「文鳥」の、文鳥の姿・動き・生きる様子……死んだ鳥の姿勢って、ああだよな、という部分まで鮮明に書かれていて、元鳥飼いとしてはリアルに想像してしまいました。
普通に悲しい。
そのときの感情の動きもとて