夏目漱石のレビュー一覧
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表紙のあるものが、新潮とこれしか見当たらなかったが、私が読んだものは岩波であったように思う。
私はこの作家の書くものがなべて好きだ。
胃弱で、おそらく心痛から意を痛めたと推察される彼は、おそらくあの時代を集約した「近代人」のはしであり、それを文筆と言う形で表に現した数少ない人物の一人だった。
或いは、江戸を引きずり、或いは日本を否定し、或いは困惑のうちに影響を整理しきれず、西洋と日本を周知した上で、自己分析までをなして見せ、東洋を失わなかった彼の、その視線の鋭さと優しさに時折感嘆する。
私は彼の著作が好きだ。
彼の書くものは、ひかりもやみも含めて、とてもやさしい。 -
Posted by ブクログ
夏目漱石前・後期各三部作のうちではやはり「こころ」が群を抜いて面白く、また、高校生の自分がなぜこれを読んでいたのかも何となく理解した。
正直、「こころ」以前の5作品は物語に大きく影響のないような風景もスケッチのように細々と描かれていて、少し退屈な部分もあるのだが、「こころ」はかなりドラマチックな作風。
「先生」というキャラクターのミステリアスさ、見え隠れする過去の謎、「先生」、「御嬢さん」、「K」という3人のスリリングな関係、そして後期三部作共通のテーマである「嫉妬」が暴発した結果もたらされる悲劇という、お話としての面白さ。
さらには、異性を好きになることの苦しさ、最愛の妻にさえ言えない -
Posted by ブクログ
未完だと知ってはいたけど、ここで終わるんだ!と、黄色いレンガの道が途切れてしまってポツンと取り残されるドロシー(そんなシーンあったかどうか覚えてないが)みたいに呆然としてしまった。それはとりもなおさず、ここまでの道のりがとても面白かったからで、主に津田とおのぶという主人公夫婦がひたすらごねごねと心中を吐露するかたちで、二人と彼らを取り巻く人物たちの一日一日の様子が語られていくだけなのだが、こういうの好きである。
細かくいろんなところで思うところはあったが、妹の見舞いの顛末のところで、「このひとめんどくさい!」とそこまででいちばん心が跳ね、そしたらその直後に夫婦関係にも微妙な変化が訪れたのが -
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夏目漱石ってこういう語り口の人なんだ。
前半の1/2くらい講演を引き受けることになったけど延期が続いた経緯をぐだぐだ言い訳してる感じが面白い。
個人主義は自分でツルハシを持って文学を掘り進めた話、外国のカタカナ語をありがたがっていないで自分で考えることの勧め、他方で他人の自由も尊重しなければいけないことなど、いずれも今にも通じる話である。自分が右を向いていても、左を向いている人に強要しない。
権力を持つものはその義務を果たさなければならないし、金力を持つものはその責任を意識なければならないという。
個人主義は国家主義と対立するものではなく、自然と相対的になるものだが、国家主義の道徳など一段低い -
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吾輩は猫であるの次に読んだので、ストーリーがある分読み進めるのが早かった。
遊民の代助の内面が丁寧に描かれており、代助は分析力があり聡明な設定だが、辛い過去に忘却という蓋をしていたり、三千代を思う気持ちが止められなくなったり、最後は頭の中が赤で埋め尽くされるなど、彼の言う自然には逆らえないものだと思った。
私は漱石の、場面をガラリと変える描写が好きで、特に三千代への思いを初めて具体的に示した、馬鈴薯と金剛石の描写と、激しい雨の中、部屋中を百合の花の香りで満たして三千代に告白するシーンが好きだ。後者のシーンは、本当に百合の香りがしてくるようだった。
夢十夜とそれからを読んで、百合の花やその香