夏目漱石のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読んだのは青空文庫だ。意外に長編だが、筋がある訳でもないのでどこで終わっても良いし、どこまでも続けられる。
当時はどう受け取られたのか知らないが、ユーモア小説であって文学という固さはない。これを崇め奉って文学研究が重ねられているのが不思議。そもそも何故残っているのかも分からない。もっと売れていたものもあったやに聞くが、歴史の篩というのも気まぐれだと思う。いや、面白いんですけどね。
明治の苦悩と現代の苦悩は真っ直ぐに繋がっていて、解決されないままむしろ複雑化して今に至るので、古典に直接答えを求めても無駄ですね。どの時代もその当時には今こそが時代の転換点だと感じるものなのだろう。 -
Posted by ブクログ
“山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角人の世は住みにくい。”
『草枕』の冒頭、受験勉強で暗記したので、今でも覚えています。しかし、
その先をこれまで読もうとしませんでした。情けないこと、この上なしです。
とにかく、今回読めて良かったです。芸術的感性が文章全体にあふれ出ていました。多彩な漢語が散りばめられていて、湯水のごとく出てくるようでした。東洋の神秘を感じました。
1人の青年画家が、絵を描くために温泉場にやってきて、那美さんという女性に出会います。2人はいい関係になるのかなと期待していたのですが・・・
色々な人との世間話や絵画の世界、木蓮の花の描写、書や硯の話に興味がわきました。
読んでいる途中で、ストーリーの面白さというより、画家の混沌とした頭の中をのぞいていく感じでいいのかなあと思いました。
小説の終わり方が印象的でした。芸術の神様降臨!!って感じです。
最後に、この小説の内容と直接関係ないのですが、次の一文に引きつけられました。
“丹青は画架に向って塗抹せんでも五彩の絢爛は自ずから心眼映る。”
意味→絵の具をことさらキャンバスに塗って画を描かないでも、美しい色彩はおのずと心の目に浮かんでくる。
心眼=心の目
トルストイしかり、サン=テグジュペリしかり、そして漱石しかり。偉大な3人の書物に“心の目”の記述あり。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ健三は学問によりいち早く「近代」を吸収したが、個人主義の目をもって故郷を眺めたとき、それは「家族」という名の伝統的価値観によって彼を縛るしがらみでしかなかった。また教員という職業から高給取りとみられていた彼は、かつての養家島田を筆頭に親族一同から常に金銭的援助を求められていた。しかし健三の家にも資産がないばかりか家計は火の車なのである。家族や慣習とったしがらみに悩まされ、また金策に苦労する中で健三は妻御住との夫婦関係も悪化させてゆく。二人の関係が冷えるほど、御住は当てつけの如く産まれたばかりの子どもの世話に傾倒する。しかしそんな妻を健三は冷ややかに見てしまう。「家族」というコミュニティが解体されていく時代において、いつかは自分も妻も自立した子どもに見放される運命にあるからである。それは奇しくも自分が今まさに島田を見捨てようとしているのと同じように。最終的に、健三は島田の執拗な金銭の無心に対して手切れ金という形で決着をつけるが、それによりこれまでのしがらみが片付いたとは到底思えないのであった。
「家族」という伝統的価値観から抜け出しきれない健三の葛藤が描かれているが、そこからの脱却を試みた先にあるのは、「お金」に象徴される近代的価値観による新たなしがらみであるという皮肉を感じる作品であった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ健三は学問によりいち早く「近代」を吸収したが、個人主義の目をもって故郷を眺めたとき、それは「家族」という名の伝統的価値観によって彼を縛るしがらみでしかなかった。また教員という職業から高給取りとみられていた彼は、かつての養家島田を筆頭に親族一同から常に金銭的援助を求められていた。しかし健三の家にも資産がないばかりか家計は火の車なのである。家族や慣習とったしがらみに悩まされ、また金策に苦労する中で健三は妻御住との夫婦関係も悪化させてゆく。二人の関係が冷えるほど、御住は当てつけの如く産まれたばかりの子どもの世話に傾倒する。しかしそんな妻を健三は冷ややかに見てしまう。「家族」というコミュニティが解体されていく時代において、いつかは自分も妻も自立した子どもに見放される運命にあるからである。それは奇しくも自分が今まさに島田を見捨てようとしているのと同じように。最終的に、健三は島田の執拗な金銭の無心に対して手切れ金という形で決着をつけるが、それによりこれまでのしがらみが片付いたとは到底思えないのであった。
「家族」という伝統的価値観から抜け出しきれない健三の葛藤が描かれているが、そこからの脱却を試みた先にあるのは、「お金」に象徴される近代的価値観による新たなしがらみであるという皮肉を感じる作品であった。 -
Posted by ブクログ
娯楽というよりは勉強だった。
これは夏目漱石の「小品(しょうひん)」が七編入っていて、そもそも小品って何?ってところから私は分からなかった。
最初は小品の意味も分からず読んでいて、これは何?小説?それとも漱石のセッセイ?とどんどん分からなくなったので、解説を一旦読んでみると、何となく分かった。
小品は日本特有とも言えるジャンルで、小説でもなく、感想でもなく、短編小説と随筆の間のような、曖昧な領域なのだとか。
面白い。
でもそれで少しこの文体とかになっとく。
最後まで読んだけど、ちょっと難しい(不慣れな)ところもあって、全部を全部堪能できた訳ではいけど、最初の「文鳥」はとんでもなく良かった!!
家で飼っていたセキセイインコのてれちゃんが懐かしくなり、涙してしまった。
これは鳥飼った人にしか分からない事なのか、そうでなくても感動するものなのか。
とにかく私には強いインパクトを残して、とても短い小品なのに、すごい!さすが文豪!と感激。
その次は、「夢十夜」内の「第一夜」がものすごく綺麗だった。美しかった。
あとは「永日小品」内の「モナリザ」の雰囲気も独特で好きだったし、
「思い出すこと」の中のドストエフスキーの生死と漱石自身の生死を比べるところも面白かった。
最後の小品の「手紙」は比較的読みやすく、楽しめた。最後どうなったのかすごく気になる!!
ちょっと読むのが大変だったときもあるけど、とりあえず1番は、「文鳥」を読めたことだけでも嬉しい!てれちゃん、うちに来てくれてありがとう〜!!いつも精一杯可愛がってるあげられなくてごめんね〜(涙)
-
Posted by ブクログ
要約としては、「国家主義」の理念が大変盛んで、国家の利益のために生きることが強調されていた時代において、漱石は「個性こそ発展させるべきである」という”個人主義”の立場を主張する。
学習院でのこの講演の流れとしては、まず松山中学校から第五高等学校(現熊本大学)の教師時代、その後、ロンドン留学・・・と彼が歩んだ人生を振り返る形で話は進む。
その中で今の世は「他人本位」に生きる人が多いが、「自己本位」で生きてきたことを語る。そして若い人たちも自己本位に生きる道を勧める。
後半は、権力と金力とともに得られる自由(他人の自由を尊重すべき)、そして権力と金力を持つ人間として果たすべき義務について語る。
自己本位とは、「自らに依り、主体的に頭を使って考え、自らの道を行き、目標を成すこと」と漱石は考えた。つまり思索の原点を”自己”を出発点せよ、ということ。
大学時代から教師、そして自己本位という言葉を得るまで、漱石が終始抱えていたのは「漠然とした焦り」である。漱石は留学の期間中、当時有名な作品をことごとく読もうとしようと決心する。ところが1年後、読み終えた本のあまりに少なかったことに驚く。さらに、漱石は幼少期から親しんできた漢文の文学と、現在彼が習得している英語の文学との間に大きな違いがあることに深い苦悩を感じる。
漱石はロンドン時代にとうとう「自己本位」という概念を手にする。
この時漱石は初めて文学とはどんなものであるか、その概念を根本的に自力で作り上げるより他に、自分を救う途はないのだと悟った。そこで漱石は自分で「文学論」を創る。