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Posted by ブクログ
表紙のあるものが、新潮とこれしか見当たらなかったが、私が読んだものは岩波であったように思う。
私はこの作家の書くものがなべて好きだ。
胃弱で、おそらく心痛から意を痛めたと推察される彼は、おそらくあの時代を集約した「近代人」のはしであり、それを文筆と言う形で表に現した数少ない人物の一人だった。
或いは、江戸を引きずり、或いは日本を否定し、或いは困惑のうちに影響を整理しきれず、西洋と日本を周知した上で、自己分析までをなして見せ、東洋を失わなかった彼の、その視線の鋭さと優しさに時折感嘆する。
私は彼の著作が好きだ。
彼の書くものは、ひかりもやみも含めて、とてもやさしい。
Posted by ブクログ
古本屋で1983年出版のこちらを発見し手に取ってみた。
私の中の夏目漱石といえば写真のイメージのみで、はっきりとこの作品読んだといえるものはない。
中でもこちらはエッセイで新聞に掲載されたものだそう。
読み始めて、驚いた。
いくら現代語訳されたものとはいえ、1933年ごろに書かれたとは思えないくらいスラスラと読める。単純に面白い。
堅苦しい難しい言葉の羅列など一切なく、夏目漱石の過去の思い出、部屋に出入りした人とのやりとりなど回顧録の形を取っている。読んでいて夏目漱石の人柄がプラスになった。気難しく繊細なイメージだったが、気の利く(というより効かせすぎる?)、優しいおじいちゃん、と言った感じ。
大作家先生にこの絵を評価して、とかあげたお茶返せ、とか、しまいにはお茶はいいから金かえせ、とか大迷惑厚顔無恥のような人はいつの時代もいるものね。結果一生残る本に登場できたんだから良かったのかも?
他の作品も読んでみよう。
Posted by ブクログ
つまり、エッセイ集だと思えば良いのではないでしょうか。
夏目漱石というと、なんだか恐れ多いんですけれど。
僕はこの人の文章は、そこはかとなく乾いたユーモア、好きなんです。
面倒くさい人だなあ、とは思います。面倒くさいインテリのオッサン。
内容は、作家の日常ってやつですかね。
「こんな変な客が来たんだよね」
「実は僕の幼少時代にこんなことがあって」
「私の母親っていうのはこういう女性でして」
「俺、ちょっと変わってて。こんなことしちゃうんだよね」
というようなことを書き綴っているわけです。
僕は、なるほどナルホドと、肩もこらず読みやすく面白かったです。
時代風俗固有名詞、無論こと明治時代のことどものなんです。なんですけど、読みやすい。
それは、結局はヒトのお話だからでしょうね。
「こんな人のこんな無礼に怒った」
「こんな可哀想な人がいた」
「母って自分を愛していたんだろうか」
「友達と再会、いやあ、互いにオッサンになったもんだ」
「こんな犬、こんな猫を飼っていてね」
みたいなことなんです。
だから、一見、とりとめもない。
とりとめもないようでいて、実はちゃんと計算して書かれている。
タレントさんの「今日はこんなカレー食べた!うまかった!テレビ局なう」みたいなブログではないですから。
ちゃんと読み物になっている。
ただ、話題が自分のことである。自分のことだから事実である。ジジツであるからには、そんなに大したことはない。大したことはないから、気軽に読める。
具体的には。
●雑誌の記者なんかに写真を撮られる時に、笑ってくれって言われるのがどうにもイヤなんだよなあ。
という冒頭編から、漱石さんらしさ炸裂。
つまりは面倒くさいインテリなんです(笑)。
面倒くさいインテリが、なるたけ誠実に、なるたけ褒められて生きていきたいなあ、という。
●講演をしたけど、出席した人が「さっぱり面白くなかった」と言っていた。と、聞いて落ち込んだ。と、どこかに書いたら、別の人から「面白かったですよ」と慰めてもらった。
この講演話なんか、なんだか面倒な人柄が彷彿として、ほとんど落語のマクラ話みたいな爆笑モノ。
一方で、夏目漱石さんは結構、不幸な生まれ育ちなんですね。
養子に出されたり、両親のことを祖父母と言われて育ったり。
そんな生い立ちや、生家のこと。
まだまだ江戸時代の香りが残る江戸の暮らし。
そして複雑で面倒な家族に育ったんだから、まあ、面倒な男になってもしょうがないか…という若干の重さ。
ただ、それをまったくもって「俺ってかわいそうでしょ」という臭みを抜いて語り切る筆力技術は、やっぱりすごいなあ、と。
そして、僕にとっては白眉は
「他人に対する自分の態度について」みたいな内容の一章。
これはもう、とにかく人間関係っていうやつの泥沼の深み、他人と自分との距離感、さみしさ、救い、面倒さみたいなものを、
これまた実に淡々と語りつくしています。
夏目漱石さんの後期の小説を読んだことがある人なら、
「ああ、この人こんなこと考えてるから、あんな小説かけるんだよなあ」という。
でもそれも、実に面白い。
僕はどこかしらか、ユーモアを感じます。
好きなんですよねえ。漱石さん。
「極めてあやふやな自分の直覚というものを主位において、他人を判断したくなる。そうして私の直覚が当たったか当たらないか、要するに客観的事実によって、それを確かめる機会をもたない事が多い」
「私は凡ての人間を、毎日毎日、恥をかくために生まれてきたものだとさえ考える」
「今の私は馬鹿で人に騙されるか、あるいは疑い深くて人を容れることが出来ないか、この両方だけしかないような気がする。不安で、不透明で、不愉快に充ちている」
いやあ、面倒くさいオッサンですね。
これがユーモアがなかったら、読まないだろうなあ…僕も。
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