あらすじ
「こゝろ」は後期三部作の終曲であるばかりでなく、漱石文学の絶頂をなす作品。自我の奥深くに巣くっているエゴイズムは、ここでぎりぎりのところまで押しつめられる。誠実ゆえに自己否定の試みを、自殺にまで追いつめなければならなかった漱石は、そこから「則天去私」という人生観にたどりつく。大正3年作。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
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Posted by ブクログ
何から書けばいいだろうか。
高校生のときに初読し、心を鷲掴みにされたという記憶だけが強く残っている1冊だった。
10年振りに再読した。
当時は主人公を身近に感じなかったし、初読の時はある意味ミステリみたいな感覚で、先生のいう悲劇や隠しているものはなんだろうと思って夢中で読み進めていたかもしれない。
今回は大筋はだいたい知っていたのもあるが、主人公により感情移入した。
これは私が恋を知ったからかもしれない。
主人公が若くて、先生に対して色々期待し、思ったより反応が薄くてがっかりするのは非常に親近感が湧いた。
先生は「私」が恋の心で動いてきていると言っていて、ある種の片想いを先生にしていたと言えるだろう。
先生の思想や言葉選びに、「私」と同じように恋をした。
「恋は罪悪ですよ」
「(子供がいないのは)天罰だからさ」
「(奥さんと自分は)幸福な一対の人間であるべきはず」
「未来の侮辱を受けないために、今の尊厳を退けたい。今よりいっそう寂しい未来の私を我慢する代わりに、寂しい今の私を我慢したい」
先生の過去に射し込む黒い影を覗かせるような言葉選びには胸がギュッとしたし、繊細なこころの動きの表現の仕方が本当に素晴らしいなと感じた。
前に読んだ時は先生の過去が気になりすぎて、主人公と家族のことは正直どうでもいいなと思って読んでいた。
今大人になって見ると、病床の父の姿に胸が締め付けられた。主人公の胸のざわめきと、長い手紙から先生の過去なんてどうでもいい、知りたいのは安否だけと思いながらただページをはぐっていく部分が読んでいて自分自身とものすごくシンクロして、先生から電報が来たところや手紙が届いたシーンで嫌な汗がどっと出て一度本を置いてしまった。
そして先生と遺書へ。
なんて人間らしくて、暗くて、切ない話なんだろうか。
「こころ」とは色んな意味があるように思う。
先生と瀕死の父の間に揺れ動く「私」のこころ、
奥さんやお嬢さんを疑う先生のこころ、
精神的に向上心のないものはばかだと言いながらそれと矛盾する恋心を前に弱い人間だと気がつくKのこころ、
またお嬢さんへの崇高な愛、それによるKへの嫉妬心や不義理のこころ。
奥さんやお嬢さんを疑う一方でお嬢さんを信じて疑わない、Kへ打ち明けたい気持ちがありながら時期を逃しどちらへも動けない、など2つの感情により押さえつけられる描写が非常に多いと感じた。自分で人や行動に意味付けをして悩むものの実際の行動にまでは繋げる勇気もない、といった葛藤の描き方が素晴らしかった。人の「こころ」の繊細さ、一元的でないものの描写だろうか。
Kの遺書の封を切るシーンと、「私」が先生の遺書を開けるシーンが重なって見えた。
「私」が先生の立場であればどうしただろうか。
若くまじめである「私」なら、先生の過去を知りたいと言った純粋さや勢いで、Kに真正面から向き合うことができたのだろうか。
Kから恋心をどう思うか聞かれた際に精神的に向上心のないものはばかだ、と言って痛い矛盾を突いたところや、Kの遺書を見てまず出た感想が助かった、だったのが、先生自身が恨んでいた、いざというまぎわに急に悪人に変わる叔父と重なり、人間らしいなと思った。人間の醜さが、人間を嫌う理由となり、自分を含め全てを信用できない厭世的な考えに繋がっていた。
先生はKに対して、君は人間らしすぎるほど人間らしい。なのに口ではそうでないように振る舞う。
と言っていた。
Kは人間らしい欲望や感情は道のためには不要と考え、そういった彼からすれば「低俗」であるものから離れた場所を目指していた。
でも本当は欲望や孤独も持っている。そこに気がつかずにただ己に鞭打って道を進んでいた。
ああ、Kは私みたいだ。
ただ愛されたかった、寂しかった、なんて気が付かないんだ。私は、今まで積み重ねてきたことは皆がやっているのと同じだからそんなの努力に入らないと本気で思っていた。どこか自分が達観しているように思い込んでいた――強い自分でありたい、そうあるはずだと思い込んでいた。
いざ自分の奥底にあるただ単なる「寂しい」「愛されたい」といった感情に気がつくと、自分の矛盾に気恥ずかしくなった。自分もただの弱い人間だった。自分の弱さを無意識のうちに隠すために強くあろうと振る舞っていたんだ。そう気がついた時に涙が溢れて止まらなかったことを思い出した。
そう思うとKの切ない恋心の自白や「精神的に向上心のないものはばかだ」と先生から痛い矛盾を突かれた時の憔悴した様子「ぼくはばかだ」が、私のこころの中に入り込んでくる気がした。この時のKは、紛れもなく私自身だった。
誰しもが先生のような、Kのような、「私」のような、先生の叔父のような、弱いこころを持っている。先生に関しては、壁を打ち破る少しの勇気があれば違った結末が待っていたかもしれない。
先生は最期に、勇気を出して「私」を信用し、自分の心臓を文字通り断ち割って全てをさらけ出した。最期にはそう出来たのだなと思った。
「こころ」は私にとって大切な1冊には変わりないが、私の自己理解という観点から「大切」がまた変わった意味を持ち始めたように思う。
初読は過去をあばいていくミステリのような感覚。
今回の途中までは、言葉選びや三角関係、嫉妬心の描き方の美しさ。
読後、Kの生き方と自分の今までの自己批判を重ね合わせた。
Kの出てくるまではキュンと恋する乙女のような心持ちで読んでいたが、だんだんそれがなくなり、嫉妬心や恋心の表現に心酔すると同時に共感し、読後は私の人生のものの見方に重ねるようになった。
今回の再読で、この物語への気持ちが憧憬から、私自身への手紙というところまで降りてきた。
私にとって「こころ」とは、私が弱い人間であることを許してくれる1冊であった。
私も、「私」も、先生も、Kも、皆そうだから。
何度でも読み返したい、私の人生の1冊である。
Posted by ブクログ
日本文学の金字塔。
まるで、人のエゴそのものを覗いているようでした。人というのは、いつの時代も変わらない、変われないものだなと。また数年後、読み返したくなる時が来そうです。
Posted by ブクログ
解説を読むと、第3章だけでひとつの作品だったようだ。
この章だけで、作者の言いたいことは完結していると感じられるが、1章、2章が加わることによって、小説然とした作品に昇華されている。
張り巡らされた伏線回収というものではないが、1章での先生との会話での疑問が解けていく心地良さが感じられる。しかし文章自体はたいへん居心地が悪い。
この複雑な感情は、最近読んでいた小説では感じられない新鮮さだった。
今回、この作品は音読した。
現代では使わない言い回しや単語があるのは想定していたが、送りがながかなり独特で、何度も読み直した。
これは時代のものなのか、漱石独自のものなのか、本を読んできていない私には分からない。
黙読よりも、おそらく倍の時間はかかったが、時代の空気を感じられた気がするので、古い作品を読む時は今後も続けよう。
Posted by ブクログ
知らぬが吉とはこういうことか、Kも先生も真心があり人間だからこその拗れ方で、人間味というものを一番濃いかたちで感じました。
いつか読み返したくなる時が必ず来るな、という本です!
Posted by ブクログ
一言感想
「知らないってある種救い」
長文感想
今回で2回目の読破
前に読んだ時は第二章的なポジションの「両親と私」パートあんまおもんないなって思ってたけど今回は面白かった。その理由が2週目だからなのか、高2の時に比べて何かが成長したからなのかは正直わからない。
先生が私に過去を話す気になったのは先生と私の間に大きな出来事が起こっておらず、語弊を恐れずにいうならば私が先生のことを何も知らなかっただからなのではないかと思ったりした。
奥さんが、私が、Kが、知らない情報が先生を苦しめたり助けたり(?)してたなぁと思いました。
中学時代の友人に見せてる一面を高校時代の友人に見せたくないなとか、逆にこの話は高校時代の友人には話したいけど中学時代の友人には話したくないな、って出来事とかもあったりするので先生も似た心境だったのかはわからないけどそういうことなのかなって2026年の自分は解釈したいと思います
それはそうとしてめっちゃ分厚い遺書送るぐらいだから先生も私に対してなんかしらのクソデカ感情は抱いていたんだろうかなどと
Posted by ブクログ
★5.0
「私」と「先生」、そして先生の親友であるKを中心に、人間の心の奥にある孤独や罪悪感を描いた作品。友情と裏切り、愛とエゴ、そして近代という時代の中での人間の孤独を深く描いた小説。
高校の時教科書に載ってて面白かったから全部読んだ。
人間の複雑な気持ちの変化とか弱さ、孤独、罪の意識とか心の深淵を捉えていて、すごく好き。
昔の恋愛がどんなだったか分からないし、先生とKの恋愛に対する思いの深さは計り知れないけど、恋愛に関しは、行動したものがちだと思ってる。口で言ってたって意味ないんだよ先手必勝。
✍︎精神的に向上心のない者は、ばかだ。
#さとの本棚
Posted by ブクログ
初の長編文学でドキドキしてたけど、読み始めたら貪るように見てて、気付いたら終わってました。
先生の恋愛に対する感情が自分と似ていて個人的にとっても刺さりました。
学校で習ったよという方にも是非、全編読んでいただきたい作品です
Posted by ブクログ
夏目漱石の作品を今回初めての読みました。
だいぶ前に書かれた本なのに私や先生の心情がなんとなく理解出るのは人間の「こころ」は何年経ってもなかなか変わるものではないからだと漠然と思いました。これを期に夏目漱石の他の作品も読んでみようと思います!
Posted by ブクログ
高校の時に授業で初めて読んだ。その時の現代文の先生の教え方が上手で、こころに隠された細かい心理描写だったり、風景の表現の仕方の工夫だったりを教えて貰った時、ただ読書が好きで本を読んでいたけど、今まで私は表面的にしか物語を受け取ってなかったんだってショックを受けた覚えがある。
先生やKの些細な心の動きに、自分一人で読んでいたらきっと気がつけなかった。面白さに気づかせてくれたからあの時の授業には本当に感謝してる。
1番感動したのは、襖が先生とKの心の壁を表していたこと。襖の開閉がリンクしていることに感動したのを強く覚えている。
こころの単元が終わってすぐに本屋で文庫買った。授業では先生の遺書の部分しか扱わないけれど、「私」の部分を含め全部通して読んでこそ先生の人間性がより魅力的に映る。
そして、有名な作品が有名である理由を理解することの意味を感じた。
読書人生を変えたベスト3に必ず入る。
大学受験や教採受験の時に、面接待ちの時間に読むために持っていった、大事な節目の時に共にある本。
Posted by ブクログ
いや、これ、高校の時に後半部分だけ授業で扱って読んだけど、あんな中途半端な感じで始まって終わらせちゃダメでしょ、と読み終わってから思った。
死ぬまでに読んどいて良かったと、こころの底から思う。
Posted by ブクログ
読み終わってから、「主要人物10人未満!?」ってびっくりした。
前・中編では私目線だから先生の厭世的な部分、自分を語りたがらない部分は大人の魅力、ミステリアス、として肯定的に感じられた。
しかし!いざ後編で先生の遺書を読み進めると、それらの魅力はただの自己保身だったのが構成の旨みを上手く利用していて感服した。
大前提!Kも先生も、てかこの物語全体が、男尊女卑が酷い。そういう時代なんだろうけど、「Kははじめ女からも、私同様の知識と学問を要求していたらしいのです。」という文言にはイラっとしました。そういう時代だから仕方ないけどね。
Kの死因への向き合い方とか、自分の生への考え方とか見てると、先生もちゃんと成長してるのを見受けた。特にKの死因に対する思考はかなり感心。結局はKしか知らぬところとはいえ、失恋から始まり、理想との乖離、孤独に由来する思いつきとKに対する理解を深めようとするのを止めていない、というか止められなかったのが贖罪であり、また、成長なのかなと考えた。
個人的に先生を見直したのが、最後の一文。抜き出しになるけど、「妻が己の過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存しておいてやりたい」、これを愛と呼ばずしてなんと呼べば。たしかに自分きっかけで2人の人間が鼓動をやめたことを考えれば、そりゃあそうとも思う。しかし、死の淵に立った瞬間でさえも妻の余生を考えて言葉にして残すことはなかなか簡単なことではないと思う。Kの死後、妻への愛だけが、先生の取り柄です。
Posted by ブクログ
本当に本当に面白かった。推理小説を読んでいるような気分で、先生は一体何者なのか、どんな人生を歩んできたのか、読めば読むほど気になって仕方ない。先生の遺書では、共感できる部分がとても多かった反面、共感しにくい部分もやはりあって、自分ならどうするかを読みながら深く考えられた。こんなにも余韻がすごい小説は初めて。名作と言われる所以がやっと分かった
Posted by ブクログ
こういう人は多いと思いますが、初めて読んだのは高校の国語の教科書ででした。先生とわたしの関係から始まり、謎めいた先生の行動、それを探ろうとするわたし、そしてそれだけで1つの話が完結するような先生の遺書。先生に隠された謎を追うところは、まるで推理小説の謎解きのように先へ先へと読み進めてしまえます。ミステリは殺人事件だけでなく、身近な人のこころの中にも潜んでいるのでしょう。これまで何度も読み返し、その度に新たな気付きがある、私のバイブルです。
Posted by ブクログ
然し、…然し君、恋は罪悪ですよ。というのは、私のみならず読むこちら側にも先生はどんな人生を送ってきたのだろう、と思わせる一言。
遺書での先生には、人間らしい醜さが顕になってるいるけれど、人間誰しも持っている1面ではないだろうか。
明治の精神と共に死んだ先生。奥さんの気持ちが慮られる。「私」はこの後どうしたんだろうか。それもまた謎だ。
Posted by ブクログ
ずっとちゃんと読んでみたいなと思っていたのが、ようやく果たせた。
昔授業でやった部分は、本当に終盤のクライマックスに近いところだったのね。
要約してしまえば、事件そのものはとても単純なのだけれど、そこに至るまでとその後の人間の心の動きがものすごく丁寧に描かれている。
だからこそ、読者はギュッと心を掴まれ、ドキドキしながら読み進めずにはいられない。
何も知らない第三者の目線を通して、事件後の暗い影に覆われた先生の人生が少しずつ垣間見えていき、最後に遺書によってその真実が明らかになるという構成も素晴らしい。
あぁ、とにかく、悲しい。
先生は本来真面目で思いやりのある人だったし、その部分は事件後も失われてはいないと思う。
どんな人間も、私欲や傲慢さを多少なりとももっていたりする。
それは人間らしさでもあるけれど、そのエゴのせいで人の命が失われることもあるんだ…。
友人と同じ人を好きになってしまうのは悪いことじゃない。
先生は、正直に自分もお嬢さんが好きだと伝えて、正々堂々と戦えばよかった。(でも、それができなかった気持ちもすごくわかる)
なんなら、最初に自分はお嬢さんが好きだから手を出すなとか、そもそもリスクを避けるなら友人を下宿に連れてこなければよかった。
奥さんが気を遣って止めてくれてたのにね。
(そして娘さん下さいの前に本人に告白しろよ。時代柄?)
でも、それは終わったあとで言っても仕方ないこと。
1番の原因は、引っ込みがつかなくなったプライドだ。
悪意があったわけじゃないからこそ辛い。
妻に本当のことを話してしまえば、自分は少し楽になる。
でも、彼女にも多少の「私のせいで」という罪悪感を背負わせないために、墓場に持っていくと決めたのは愛だと思う。
こんな事件がなければ、幸せな夫婦になれたのに。
1番大切な人に本当のことを言えないなんて、なんという苦しい人生だろう。
罪を背負って生きるとは地獄だ。
だけど、「私」がいてくれたことで、先生も最後に少しだけ救われた気がする。
自分の過去を知らずに、こんな暮らしをしている自分のことを純粋に慕ってくれる人間がいるって、本当はすごく嬉しかったと思う。
死の前に、全てを吐き出せる相手が現れてくれてよかった。
実際に死ぬところは書かれてないから、間一髪間に合ったと勝手に想像することもできる。
そんな終わり方にしてくれた夏目漱石、優しい。
Posted by ブクログ
高校の教科書に「先生と遺書」だけ載っていて、ずっと読みたいと思っていた。
天皇が崩御したから大将も後を追うなんて今の時代じゃ考えられないけど、時代が違えば考え方も変わっていくものだし、Kと先生の理由も共感は出来なくてもそういう時代だったのかーと思った。
同じ時代同じ国に生きてても、理解できない気持ちなんて沢山あるんだし、そういうこともあるんだなぁって。
Posted by ブクログ
やりきれない、ひたすらやりきれない。
最初は、妻のことを気遣い、Kへの罪悪感を消化するのであれば、毎月の墓参りを続けつつ、Kの分まで長生きして妻を幸福にするのが筋では?と読みながら感じていた。
しかしどうも先生の語り口をみるに、Kを自殺させるに至った罪の自覚よりも、そうしてしまった自分の未熟さや浅はかさを恨んでいたり、Kの呪縛から解放されたいように思える。それならば最期に自分でケリをつけるという結論に至っても不思議ではないなと。
オカルトな解釈をしてみると、Kの幽霊が先生に取り憑いたのでは、という解釈もできる。特に、295ページの「私の胸には〜」から始まる、先生の行動を強制したり、縛りつけるような"影"の描写にそれを感じた。と思うと切ない怪談としても読める。唯一、妻ごと連れて行かなかったのが幸いかな。
Posted by ブクログ
夏目漱石「こころ」読み終わりました、結構文章が難しかったです
人間はずるい生き物という強い思いが伝わってきました。嘘をついたり、自分が得するために騙したりするけど、そうやって得たものに対して罪悪感で苦しむという、真理をついた物語でした。
読んでみて、太宰治より繊細では無く、大人っぽく落ち着いた文章でしたが、切なくて悲しい物語でした
Posted by ブクログ
高校の国語の教科書に載ってた作品。
今更ながら、初めてちゃんと読んだ…!
1節が短くて、意外と読みやすかった。
恋愛に関する愚かな行動は私ならしないけど、
先生の生死に関する考えは、今なら分かってしまう。
自分を含めた人間の原罪みたいなものを抱え込んで、
逃れられなくて、でも仕方なく生きている。
大事な人を傷つけたくはないから、
むやみに深い関わり合いになりたくない。
というかなれない。
恋愛や結婚は特に、覚悟がいること。
殉職ってこれまで理解できてなかったけど、
ただのきっかけでしかないのかな。
それまでずっと、死ぬ時機を待っていただけで。
私はこの手紙を受けて、どう生きていくのだろう。
奥さんは、何を思うのだろう。
Posted by ブクログ
日本で最も読まれている長編小説のひとつと評される、夏目漱石『こころ』。
1914年(大正3年)4月20日から8月11日まで、『朝日新聞』に「心―先生の遺書」として連載され、同年9月20日、岩波書店より漱石自身の装丁で刊行されています。
百年以上を経た現在も、世代を越えて繰り返し読まれている作品となっています。
小説は、
上「先生と私」
中「両親と私」
下「先生と遺書」
の三部から構成されています。
高校の国語教科書では、多くの場合、この「下」からの抜粋が用いられていたのではないでしょうか。
高校当時、小説の抜粋という読み方がどうにも許せない生意気な女子学生だった私は、
そのまま新潮文庫版『こころ』を買いに、同級生の家の本屋へ向いました。だって田舎だからそこしか無かったんだもん。
ロングベストセラーの要因のひとつに、教科書掲載があることは確かだと思います。
ただ、それだけで百年以上読み継がれるとは思えません。
加えて、この小説は再読率の高い作品なのではないかと感じています。
実際、私自身も何度か読み返している、珍しい小説の1作です。
物語としての強度、明治の作品とは思えない文章と文脈の運び。
それに加えて、この三部構成の緻密さが、読み終えた読者を再び冒頭へと戻します。
ラストに至って、先生と出会う場面「上」をもう一度確かめたくなる。
そうした読書のローテーションにはまりやすい構造も、『こころ』の人気の要因の一つではないでしょうか。
こうして何度か読み返すうちに、私はこの作品がしばしば評されるような「明治精神の終焉」を描いた小説なのか、少し疑問を抱くようになりました。明治天皇の崩御、乃木希典の殉死という時代的事件の直後に書かれ、小説内でもそれは数度言及されてはいます。
しかし、先生が死へと向かう精神のありようは、あくまで個人的なものとして描かれているように思えます。
森鷗外が乃木の殉死を強く評価し、短編まで書いたのに対し、夏目漱石はこの件について当時明確な意思表示をしていないようです。
その沈黙の代わりに、『こころ』では、Kの死と先生自身の決断を、徹底して個人の倫理として描く。それが、殉死そのものへの漱石なりの回答だったのではないか、と考えてみたりしましたが、どうでしょうか?
さて、先生と私の出会いは、鎌倉の海水浴場です。半裸中年男性である先生に、理由もなく惹かれていく。その視線を担うのが、この小説の語り部である「私」です。
このあたりは、夏目漱石の確信犯的な仕業とも思えます。
しかし、その意図的にも見える導入は、物語が進むにつれて、性愛ではなく、友情や信頼、尊敬といったホモソーシャルな関係性へと変換されていく。
森鷗外は、夏目漱石の『三四郎』に触発されて『青年』を書いたと言われています。
もしかすると、この鎌倉から始まる幾つかの場面もまた、当時発禁となった森鷗外の
『ヰタ・セクスアリス』への文学的返礼、あるいは、読者を引き込むための少しお茶目な大衆文学的導入だったのかもしれない。
少なくとも、そのこと自体は作品の到達点としては用意されていないように、私には感じられました。
『こころ』が描いているのは明治の終わりではなく、今もなお繰り返される「個人の倫理の行き詰まり」なのかもしれません。
だからこそ、この小説は、何度読んでも現在形で
読まれ続けるのではないのでしょうか。
Posted by ブクログ
中盤までの話は先生のキャラクターを引き立てるためにつくられたんだろうなってくらいに後半が濃い、主人公のその後がきになったりはするけど、それよりも先生の遺書の内容にどんどんのめり込んで見れた
呑気な意見だけど、行動の内容には時代背景やその人自身の性格などが大きく反映しているとはいえ、以前読んだ椿姫でも男がメンヘラ発揮してたところをみるに、どの時代でも同じような恋の苦悩があるのだと感じて人間の精神性のある種の共通項?のようなものを発見できて面白かった、例えば、先生は恋は罪悪と言っていたけど、いうなら若さは罪悪なんじゃない?なんて共通項もあるのかな?と
椿姫でも若さゆえに男が暴走するシーンが序盤に色濃く書かれていたし
こころでは、家の繋がりが強い時代で、家が最大の巨悪となっていた先生とKが長いものに巻かれず立ち向かうのが、若さゆえの反抗のようだと思えたし、その後4人での生活を過ごす中で起こる色恋沙汰と、それに先生が向き合い、Kへの嫉妬心から起こる一連の流れも若さがゆえに、自身の理性と感情が入り交じり、それを上手く収拾つけることが出来ないから怒った事なのかな、と考えていました
余談だけど、自分がKの立場にいたら、自殺する理由として正当なのは先生への復讐なのかな、なんてぼんやり考えました
Posted by ブクログ
まじでタイトル通りの本だった。人間の思考回路が細かく書かれていた。罪悪感について、時間経過による思考の変化がとっても納得できて面白かった。最後怒涛の結末すぎて忘れかけてたけど、主人公の父は大丈夫かちょっと気になる。そして、Kさんの心情については一切書かれていなかったけど、気持ちが想像できて、途中まじで心苦しすぎて読めない時あった〜
Posted by ブクログ
学生時代に教科書で少しだけ読んだ作品、いつか読もうと思い続けて十数年経ちましたがやっと読むことができました。
「精神的に向上心のないものは、ばかだ」
過去にKが語った言葉は、恋心に悩む今のKにとってはあまりにも残酷な言葉だと感じました。さらにそれを今になって引っ張り出し、念を押すように語った先生の行動はあまりに卑怯な手と言わざるおえませんでした。しかし、人というのは、いざという時には、先生や先生を裏切った叔父さんのように、打算的で邪な考えをもって行動してしまう生き物でもあるということを、私たちも心の片隅に覚えておくべきことなのかもしれません。
Posted by ブクログ
授業で取り上げられた部分はほんの一部で、手紙がめちゃくちゃ長いと聞いていたので、確かめたくなって読んだ。たしかにめちゃくちゃ長かった〜〜!でも読みやすくてずんずん読めた。
不思議な先生の過去が次々と明らかになりまるでミステリーみたいで、しかも先生のずるさも明らかになって、人間って...と思わされる。流石にずるすぎやしないか。でもあんなに嫌悪していた叔父と同じだと気づく場面はぐさっと来て、誰しも同じ側面があるんだと突きつけられているよう。
唐突に終わってしまったのが残念。これから妻は大丈夫なんだろうか。そして私はお父さん放ってきちゃって本当に後悔しないのか...
ぶっちゃけ、なんでこんなに名作として人気があるのかまではわからなかったなぁ。まだまだ私の人生経験が足りないのかもしれない。
Posted by ブクログ
純文学は芥川と太宰はよく読んでいたが、夏目漱石は有名作品すら知らなかったため、まず初めにこころを手に取ってみた。
一人称で書かれている男がこの物語の主人公ではなく、先生と呼ばれている男がメインの話となっている。
この先生、読めば読むほど自己中心的な人間で、まず人を信用しない理由として信頼していた叔父に裏切られたことがトラウマになったと言っているが、幼く無知であった自分が財産全てを叔父に託していたことが原因でもあるし、友人を死なせた理由もあまりに身勝手。
下宿先にkを招く前に、奥さんは少なからず予感して止めたいたにも関わらず強引に呼び込み、挙げ句下宿先の娘を好きになったと告白したkに焦って、今まで娘に対してはっきりした態度を取らなかった先生が急に奥さんに直接結婚の許可をもらい、kからしたら寝耳に水状態。しかも先生本人からじゃなく奥さんから世間話で軽くその事実を聞かせれたkのショックや想像に絶する。
終いにはそんな他人からしたらどうでもよい話を勿体ぶって主人公になかなか話さなかったのに、主人公の父親が危篤状態のときに分厚い手紙で送りつけて主人公の心を掻き乱している点含め、最初から最後まで自己中心的な人間という感想…。
金や恋が絡むと綺麗事では済まないところが人間らしく、そのどろどろとした生々しさを描いているところにこの小説の本質があるとは思うのだが、どうにもこの先生が私には受け付けられませんでした。
Posted by ブクログ
終盤、先生の手紙のあたりから一気に読み終えた
ついつい気になり合間合間に
夏目漱石は名前しか知らなかったので初めて読んだ本でもあったけど、昔の言葉がおもしろい
なんか、乙女なのかな
Posted by ブクログ
読むの大変だったけど面白かった。
正直言うと少しBL展開があるって聞いて下心ありきで買いましたすみません。でも全然そんなことなく,先生と私(上中の語り手)のせつない空気の漂う関係性が良かったなって思う。
Kと先生の関係もBL要素ないし何故これがBLだと言われているのか不思議。
下の話の,先生はやり場のない感情がずっと残り続けたまま生きてきて最後に自殺する…という展開がすごく良かった。好きな人を取られるのではないかと一人で焦って,自分のしたことで大切な人を死なせて…。親族に裏切られて腹を立ててるのに,自分は友人を欺いて裏切ってしまう…先生の気持ち想像するとみぞおちあたりが苦しくなる。遺書見つけたとき,真っ先に読んで自分のことが書かれてないと安心する部分も人間の醜さが生々しく書かれていてゾッとした。
国語の授業で「こころ」を学んだ。Kは恋が叶わないなら自殺する覚悟があったというのに驚いた。先生とお嬢さんが結婚すると知る前から自殺するつもりだった,しかもその覚悟は先生の一言で決まってしまったという…。私は読んでいてKの「覚悟」はお嬢さんを諦める覚悟か,先生と同じお嬢さんに気持ちを伝える覚悟かのどちらかだと思っていたので,読みが浅かったと反省しました…。国語の先生のようにこんなに物語を理解できたらもっと読書が楽しいんだろうな。