あらすじ
「こゝろ」は後期三部作の終曲であるばかりでなく、漱石文学の絶頂をなす作品。自我の奥深くに巣くっているエゴイズムは、ここでぎりぎりのところまで押しつめられる。誠実ゆえに自己否定の試みを、自殺にまで追いつめなければならなかった漱石は、そこから「則天去私」という人生観にたどりつく。大正3年作。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
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いや、これ、高校の時に後半部分だけ授業で扱って読んだけど、あんな中途半端な感じで始まって終わらせちゃダメでしょ、と読み終わってから思った。
死ぬまでに読んどいて良かったと、こころの底から思う。
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読み終わってから、「主要人物10人未満!?」ってびっくりした。
前・中編では私目線だから先生の厭世的な部分、自分を語りたがらない部分は大人の魅力、ミステリアス、として肯定的に感じられた。
しかし!いざ後編で先生の遺書を読み進めると、それらの魅力はただの自己保身だったのが構成の旨みを上手く利用していて感服した。
大前提!Kも先生も、てかこの物語全体が、男尊女卑が酷い。そういう時代なんだろうけど、「Kははじめ女からも、私同様の知識と学問を要求していたらしいのです。」という文言にはイラっとしました。そういう時代だから仕方ないけどね。
Kの死因への向き合い方とか、自分の生への考え方とか見てると、先生もちゃんと成長してるのを見受けた。特にKの死因に対する思考はかなり感心。結局はKしか知らぬところとはいえ、失恋から始まり、理想との乖離、孤独に由来する思いつきとKに対する理解を深めようとするのを止めていない、というか止められなかったのが贖罪であり、また、成長なのかなと考えた。
個人的に先生を見直したのが、最後の一文。抜き出しになるけど、「妻が己の過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存しておいてやりたい」、これを愛と呼ばずしてなんと呼べば。たしかに自分きっかけで2人の人間が鼓動をやめたことを考えれば、そりゃあそうとも思う。しかし、死の淵に立った瞬間でさえも妻の余生を考えて言葉にして残すことはなかなか簡単なことではないと思う。Kの死後、妻への愛だけが、先生の取り柄です。
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本当に本当に面白かった。推理小説を読んでいるような気分で、先生は一体何者なのか、どんな人生を歩んできたのか、読めば読むほど気になって仕方ない。先生の遺書では、共感できる部分がとても多かった反面、共感しにくい部分もやはりあって、自分ならどうするかを読みながら深く考えられた。こんなにも余韻がすごい小説は初めて。名作と言われる所以がやっと分かった
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こういう人は多いと思いますが、初めて読んだのは高校の国語の教科書ででした。先生とわたしの関係から始まり、謎めいた先生の行動、それを探ろうとするわたし、そしてそれだけで1つの話が完結するような先生の遺書。先生に隠された謎を追うところは、まるで推理小説の謎解きのように先へ先へと読み進めてしまえます。ミステリは殺人事件だけでなく、身近な人のこころの中にも潜んでいるのでしょう。これまで何度も読み返し、その度に新たな気付きがある、私のバイブルです。
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この傑作が400円足らずで売っていて、高校・大学の時に読んでから久しく経った今、もう一度本書を買って読んでみた。何度読んでも味わい深い小説である。
自分の上位互換である分身(K)を迂闊にも隣に置き、Kに対する模倣と嫉妬から対象(お嬢さん)を欲しがり、手に入れたはしたがKへの嫉妬を媒介とする愛であったため、K亡き今、お嬢さんへの愛情も薄れてしまった。最終的には主人公も自殺の道を選ぶのである。
解説にもあるが、漱石の文章構成は元々建築志望だっただけあり、非常に読みやすく、滑らかに読めてしまう。また、ルネ・ジラールは優れた小説には模倣の欲望が描かれていると言う。『こころ』はまさに模倣の欲望がもたらす情動と破滅を簡潔かつ明瞭に描いている。私の人生にとって最も重要な小説の一つである。
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夏目漱石の作品を初めて読んだ。明治に生きた漱石が普段どういう行動し、何を考え、どう感じていたか知りたかった故に非常に興味深く読ませてもらった。恋の三角関係、友人が自死した後の自分の人生。漱石も現代の私たちと変わらない感じ方をしていた事に驚いた。他人に言えない苦しみ、よく分かる。全てを無くしてでも自分の思いを他人に吐露する事の大切さを学んだ。時代が違っても人間が考える事は差異がないんだと思った。なんかウジウジしている自分でもそれが自分のあるがままならそれでいいんだ。恥ずかしがる事はないんだと思った。
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高校生のころ教科書で一部を読んだきり読んだことなかったが今まで損してたと思うくらい考えさせられる1冊だった。
教科書には載ってない、大人になった先生やお嬢さんの姿、先生が人を信用しなくなった瞬間や先生が恋に落ちた瞬間などを知ることができて、やっと点と点が線で結ばれたような気持ちになった。
こころはよく「ドロドロした恋愛」として書かれることが多い。確かにドロドロはしているが先生もKも純粋な気持ちでお嬢さんを見ていた。純粋すぎるが故に悲劇を生んでしまったように見える。ただただ誰かにとられたくなかった。それだけの気持ちが多くの人を傷つけることになる運命をたどる。恋愛している自分を客観的に見て苦しんでいる人にぜひ読んで欲しい一冊である。
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然し、…然し君、恋は罪悪ですよ。というのは、私のみならず読むこちら側にも先生はどんな人生を送ってきたのだろう、と思わせる一言。
遺書での先生には、人間らしい醜さが顕になってるいるけれど、人間誰しも持っている1面ではないだろうか。
明治の精神と共に死んだ先生。奥さんの気持ちが慮られる。「私」はこの後どうしたんだろうか。それもまた謎だ。
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日本で最も読まれている長編小説のひとつと評される、夏目漱石『こころ』。
1914年(大正3年)4月20日から8月11日まで、『朝日新聞』に「心―先生の遺書」として連載され、同年9月20日、岩波書店より漱石自身の装丁で刊行されています。
百年以上を経た現在も、世代を越えて繰り返し読まれている作品となっています。
小説は、
上「先生と私」
中「両親と私」
下「先生と遺書」
の三部から構成されています。
高校の国語教科書では、多くの場合、この「下」からの抜粋が用いられていたのではないでしょうか。
高校当時、小説の抜粋という読み方がどうにも許せない生意気な女子学生だった私は、
そのまま新潮文庫版『こころ』を買いに、同級生の家の本屋へ向いました。だって田舎だからそこしか無かったんだもん。
ロングベストセラーの要因のひとつに、教科書掲載があることは確かだと思います。
ただ、それだけで百年以上読み継がれるとは思えません。
加えて、この小説は再読率の高い作品なのではないかと感じています。
実際、私自身も何度か読み返している、珍しい小説の1作です。
物語としての強度、明治の作品とは思えない文章と文脈の運び。
それに加えて、この三部構成の緻密さが、読み終えた読者を再び冒頭へと戻します。
ラストに至って、先生と出会う場面「上」をもう一度確かめたくなる。
そうした読書のローテーションにはまりやすい構造も、『こころ』の人気の要因の一つではないでしょうか。
こうして何度か読み返すうちに、私はこの作品がしばしば評されるような「明治精神の終焉」を描いた小説なのか、少し疑問を抱くようになりました。明治天皇の崩御、乃木希典の殉死という時代的事件の直後に書かれ、小説内でもそれは数度言及されてはいます。
しかし、先生が死へと向かう精神のありようは、あくまで個人的なものとして描かれているように思えます。
森鷗外が乃木の殉死を強く評価し、短編まで書いたのに対し、夏目漱石はこの件について当時明確な意思表示をしていないようです。
その沈黙の代わりに、『こころ』では、Kの死と先生自身の決断を、徹底して個人の倫理として描く。それが、殉死そのものへの漱石なりの回答だったのではないか、と考えてみたりしましたが、どうでしょうか?
さて、先生と私の出会いは、鎌倉の海水浴場です。半裸中年男性である先生に、理由もなく惹かれていく。その視線を担うのが、この小説の語り部である「私」です。
このあたりは、夏目漱石の確信犯的な仕業とも思えます。
しかし、その意図的にも見える導入は、物語が進むにつれて、性愛ではなく、友情や信頼、尊敬といったホモソーシャルな関係性へと変換されていく。
森鷗外は、夏目漱石の『三四郎』に触発されて『青年』を書いたと言われています。
もしかすると、この鎌倉から始まる幾つかの場面もまた、当時発禁となった森鷗外の
『ヰタ・セクスアリス』への文学的返礼、あるいは、読者を引き込むための少しお茶目な大衆文学的導入だったのかもしれない。
少なくとも、そのこと自体は作品の到達点としては用意されていないように、私には感じられました。
『こころ』が描いているのは明治の終わりではなく、今もなお繰り返される「個人の倫理の行き詰まり」なのかもしれません。
だからこそ、この小説は、何度読んでも現在形で
読まれ続けるのではないのでしょうか。
Posted by ブクログ
中盤までの話は先生のキャラクターを引き立てるためにつくられたんだろうなってくらいに後半が濃い、主人公のその後がきになったりはするけど、それよりも先生の遺書の内容にどんどんのめり込んで見れた
呑気な意見だけど、行動の内容には時代背景やその人自身の性格などが大きく反映しているとはいえ、以前読んだ椿姫でも男がメンヘラ発揮してたところをみるに、どの時代でも同じような恋の苦悩があるのだと感じて人間の精神性のある種の共通項?のようなものを発見できて面白かった、例えば、先生は恋は罪悪と言っていたけど、いうなら若さは罪悪なんじゃない?なんて共通項もあるのかな?と
椿姫でも若さゆえに男が暴走するシーンが序盤に色濃く書かれていたし
こころでは、家の繋がりが強い時代で、家が最大の巨悪となっていた先生とKが長いものに巻かれず立ち向かうのが、若さゆえの反抗のようだと思えたし、その後4人での生活を過ごす中で起こる色恋沙汰と、それに先生が向き合い、Kへの嫉妬心から起こる一連の流れも若さがゆえに、自身の理性と感情が入り交じり、それを上手く収拾つけることが出来ないから怒った事なのかな、と考えていました
余談だけど、自分がKの立場にいたら、自殺する理由として正当なのは先生への復讐なのかな、なんてぼんやり考えました
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まじでタイトル通りの本だった。人間の思考回路が細かく書かれていた。罪悪感について、時間経過による思考の変化がとっても納得できて面白かった。最後怒涛の結末すぎて忘れかけてたけど、主人公の父は大丈夫かちょっと気になる。そして、Kさんの心情については一切書かれていなかったけど、気持ちが想像できて、途中まじで心苦しすぎて読めない時あった〜
Posted by ブクログ
学生時代に教科書で少しだけ読んだ作品、いつか読もうと思い続けて十数年経ちましたがやっと読むことができました。
「精神的に向上心のないものは、ばかだ」
過去にKが語った言葉は、恋心に悩む今のKにとってはあまりにも残酷な言葉だと感じました。さらにそれを今になって引っ張り出し、念を押すように語った先生の行動はあまりに卑怯な手と言わざるおえませんでした。しかし、人というのは、いざという時には、先生や先生を裏切った叔父さんのように、打算的で邪な考えをもって行動してしまう生き物でもあるということは、私たちも心の片隅に覚えておくべきことなのかもしれません。
Posted by ブクログ
吾輩は猫であるより読みやすかった。
何か秘密を持ってる先生と出会う主人公。
奥さんでさえ知らない秘密とは…
私は結局父の死に目に立ち会えたのかが気になる。
先生の遺書は少し長くてちょっとダレたかな…
乃木大将が明治天皇が亡くなったときに妻と殉職してるのを知り今の時代じゃありえないことだなって思った。
最初にあらすじがあるけどこれは読まない方がいいです。ほとんど内容書いてあってネタバレになります。
Posted by ブクログ
オーディブルで。
高校生ぶりに再読。
歳を重ね、Kの自殺から先生の自殺までの機微が分かるようになった。そりゃ、結婚生活も楽しくないし、死ぬしかないでしょう。精神的に向上心のないやつは馬鹿だし、策略で勝っても、人間として負けたのだ。
Posted by ブクログ
先生が自分の遺書の中で表現しているその時の感情だったり頭の中の考え全てが、人間がその時に出す感情、考えの模範解答みたいな人だったから、先生の感情に対して共感しながら読み進めてました笑
流石教科書に載るだけあって考えさせられるシーンが多いです。面白かった(*^^*)
Posted by ブクログ
夏目漱石を初めて読んだのはたしか高校生の頃。
学校で習うような人物がなかなかの生々しい恋愛ものを書いていることに衝撃を受け、『思ってた以上にゲスかった』という感想だけしか残っていませんでした。
それがこころだと思っていたけど、ちがうな。
坊ちゃんだったのか⁈もう30年以上昔なので、あの時読んだ物語が一体なんだったのか思い出せない。
そして30年以上ぶりに目にした漱石先生の物語。
上中下に編まれていて、中の終盤あたりから読書スピードも加速。
先生からの手紙がこんなにも長いのかと思いつつも、タイトルが『こころ』というわけはここにあるのか⁈と思ったり。
こんなにも横文字の少ない日本語で編まれた物語を読んで、新鮮だった。
読後もこの物語のことを考えてしまうような読後感。
ほかの作品も読もうと思います。
Posted by ブクログ
先生は確かに罪を犯したけど、それ自体大した罪ではないと思う。男女の恋を巡ってよくあること。むしろ奥さんとお嬢さんの家に入る前のkはすでに死への願望があり、お嬢さんへの想いがそれを延長させていたに過ぎない。先生に罪があるとすれば、親友だったならkが死ぬ前にお嬢さんの存在がkにとって恋心以上のものに膨れ上がっていたことに気がつくべきだった点にあるだろうと思う。
ただそう冷静に物事を見ることができなくさせるのが恋愛というもので、だからこそ、「恋は罪悪」なんでしょうか。
Posted by ブクログ
高校の教科書でやった部分しか読んだことがなく、いつかちゃんと読みたいと思っていた。まず文章の読みやすさにびっくり。夏目漱石、文章うまい!構成も効いている。「私」と一緒になってはやる気持ちで先生の遺書を読んだ。教科書で読んだときは、恋なんかで死ぬなよ、と思ったりしたのだが、すべてを読んでようやくKや先生が死んだ理由が理解できた。
人間は罪深いから、せめて自分で自分が嫌にならないように努力したほうがいいね。
Posted by ブクログ
読み終わった。
恋に対する善悪と、誰からも理解されない孤独な寂しさが人生の結末に導いてしまう。
何も知らされず、理解できずに先立たれてしまった妻は心の穴が空いた状態になるんだろう。頼りになる相手も全て失ってしまった。
遺書の後ページを捲ったら注釈で驚いた。
まさか、これで終了なのか、と。
遺書を受け取った後、私が何か行動を起こすのではないかと予感していたのだが、遺書で全て終わってしまった。
この後はどうなるのか読み手の想像に任せられるが、こういった終わりからも良し…!
恋に苦悩したから死んだのではなく、誰からも理解されない寂しさ、それを口に出せずに押しつぶされてしまった先生とKは、結局似たもの同士だったわけで…。
苦悩の心情がよく描かれてて読んでて面白かった。
読むの本当に疲れたけど…!
Posted by ブクログ
人物の内面の描写が物凄く丁寧に書かれている。物語としてはさほど大きな展開がある訳では無いが、人の心の移り変わりや感情の起伏をこんなにも言葉で細かく表現できるのかと感嘆してしまう。
私は先生との出会いから、なぜそこまで先生に惹かれていったのか…父の死を目前にしても…そのあたりは謎のままだったなと。
人の醜いこころの移り変わりや後悔の念、苦しい感情が読み手の心にもひしひしと伝わりどっぷりとその世界観に浸されてしまった。
Posted by ブクログ
純文学は芥川と太宰はよく読んでいたが、夏目漱石は有名作品すら知らなかったため、まず初めにこころを手に取ってみた。
一人称で書かれている男がこの物語の主人公ではなく、先生と呼ばれている男がメインの話となっている。
この先生、読めば読むほど自己中心的な人間で、まず人を信用しない理由として信頼していた叔父に裏切られたことがトラウマになったと言っているが、幼く無知であった自分が財産全てを叔父に託していたことが原因でもあるし、友人を死なせた理由もあまりに身勝手。
下宿先にkを招く前に、奥さんは少なからず予感して止めたいたにも関わらず強引に呼び込み、挙げ句下宿先の娘を好きになったと告白したkに焦って、今まで娘に対してはっきりした態度を取らなかった先生が急に奥さんに直接結婚の許可をもらい、kからしたら寝耳に水状態。しかも先生本人からじゃなく奥さんから世間話で軽くその事実を聞かせれたkのショックや想像に絶する。
終いにはそんな他人からしたらどうでもよい話を勿体ぶって主人公になかなか話さなかったのに、主人公の父親が危篤状態のときに分厚い手紙で送りつけて主人公の心を掻き乱している点含め、最初から最後まで自己中心的な人間という感想…。
金や恋が絡むと綺麗事では済まないところが人間らしく、そのどろどろとした生々しさを描いているところにこの小説の本質があるとは思うのだが、どうにもこの先生が私には受け付けられませんでした。
Posted by ブクログ
終盤、先生の手紙のあたりから一気に読み終えた
ついつい気になり合間合間に
夏目漱石は名前しか知らなかったので初めて読んだ本でもあったけど、昔の言葉がおもしろい
なんか、乙女なのかな
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「私はきわめて高尚な愛の理論家だったのです。同時にもっとも迂遠な愛の実際家だったのです。」という有名な一文がある。
この一文は、一文だけで読む方が、小説のまま読むよりも趣深い。
なぜならこの小説の文脈からして、この「愛」は愛でも何でもなく、ただ「社会が要請するので妻を娶りたい」という衝動に性欲の毛が生えたようなものであって、現代的に言って「高校生の初恋」ぐらいの重さしかないからだ。
むしろ小説を通して、いかに「私」がお嬢さんのことを愛していないかをページを尽くして説明してくれた。
「こころ」は現代の感覚からすると、「私とお嬢さんの恋愛」を描いた小説でも、「私とお嬢さんとKの三角関係」を描いた小説でもない。
「私とKの恋愛関係」を描いた小説である。
女性が軽蔑されていた時代において、男性は、性以外の愛情の全てを男性に注ぐしかなかった。そういう社会的背景であり、実際にそれが行われた。恋愛にプラトニック性を求める現代社会の恋愛そのものが、同性の間で行われていたことになる。
「こころ」においても、「私」はお嬢さんよりKのことを愛していたのが火を見るよりも明らかだ。「私」はKが登場してから作品が終わるまで、終始一貫して、猛烈な勢いでKを理解しようと試みている。死後ですら、「私」がKを理解しようとする勢いが収まらず、強まってすらいる。
一方で「私」がお嬢さんを理解しようとしたことはない。お嬢さんが妻になってからでさえ、お嬢さんに自分を理解してほしいと思うことはあっても、自分がお嬢さんを理解しようと試みた様子はなかった。
まずそもそも、「私」がお嬢さんに惹かれた理由は、その辺にいて美人だったからに過ぎない。「女」「妻」という物品として、お手頃だったから惹かれたに過ぎない。
結婚を申し込む段になっても、本人の意向なんて確認していない。それは確かにウブだったからだが、【自分がウブであることを言い訳にできるくらい、本人の心には関心がなかったから】である。
「他人を知りたい、理解したい」と思い、そのために不断の努力をすることが愛なのだから、「私」はお嬢さんよりも圧倒的にKのことを愛していたと言えるだろう。
「私」が死ぬまでお嬢さんを全く愛していなかったことについては、Kの死後の動きを見ればよくわかると思う。夫がプラプラして無気力な状態なのに、その理由を知らされずに何年も過ごしていて、妻が本当に幸せだったと思っているなら頭がおめでたすぎる。
「私と妻とはけっして不幸ではありません、幸福でした」ってお前が言うなよ。お前何も奥さんと話してないだろ。
「私」は本当に関心しちゃうぐらいお嬢さんの心に興味ない。この小説の題名の「こころ」にはお嬢さんの心は含まれてない。「自分と、愛するKのこころ」だ。
多分お嬢さんはKと結婚した方が幸せだったと思う。
作中、お嬢さんがKに「また難しいことを考えている」と言う場面があることから、Kは結構お嬢さんに心の内を吐露していると見られる。
彼の方でもお嬢さんをじっくり知るうちに「女はそう軽蔑すべきものではない」と言うまでに至ってきた。しかも彼はそれを「縫針だの琴だの生花だのを、まるで眼中に置いていない」状態で達成したんだから、「私」よりもお嬢さんの人間性に迫っていた可能性が高いのではないか。
Kの方が結婚を申し込むのが早ければ、多分お嬢さんは「私」が勝手に認識しているよりもずっと幸せになったと思う。
順番が狂ったおかげで、お嬢さんは今「下宿していた2人の書生のうち1人が家で自殺し、もう1人と結婚したけど無気力な結婚生活で塞ぎ込まれた挙句自殺された女」だからね。
心中察して余りある。
Posted by ブクログ
教科書以外で初めて読んだ
存外長い話だった
K登場までこんなにも話があったのか
国語の授業ではひたすらにKが言及したところの「覚悟」とはいかようなものであったかを説かれたように記憶しているが、全編通して読むと先生自身はあまりそこに引っかかっていないあたり、いかにも恋愛による盲目さを表しているように感じられた
Posted by ブクログ
ドラマ「舟を編む」を見て、辞書編集者が言うんです。「あの遺書長すぎだよな!」と。「こころ」って小学生くらいに教科書に掲載されていたような気がするんだけども、今はどうなんでしょう。
先生の遺書以外のところを知らなかったので、新鮮に読めました。夏目漱石の名作なんだろうけど…
これが好きな人はどんな感想なんだろう?というところが気になります。私はやっぱり「遺書長い…」という感想になりました(すみません)。
以下は気になった文の引用です。
「「いまに私の家の方へは足が向かなくなります」先生はこう言って寂しい笑い方をした。」
「しかし……しかし君、恋は罪悪ですよ。わかっていますか」
「よくころりと死ぬ人があるじゃありませんか。自然に。それからあっと思う間に死ぬ人もあるでしょう。不自然な暴力で」
「平城はみんな善人なんです、少なくともみんなふつうの人間なんです。それが、いざというまぎわに、急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。だから油断ができないんです」
「ひとの時間と手数に気の毒という観念をまるでもっていない田舎者を憎らしく思った。」
「私は人間をはかないものに観じた。人間のどうすることもできない持って生まれた軽薄を、はかないものに観じた。」
「先生の多くはまだ私にわかっていなかった。(略)要するに先生は私にとって薄暗かった。」
「叔父にだまされた私は、これからさきどんな事があっても、人にはだまされまいと決心したのです。」
「ぜひお嬢さんを専有したいという強烈な一念に動かされている私には、どうしてもそれが当然以上に見えたのです。」
「私はKをむりに引っ張ってきた主意が立たなくなるだけです。私にはそれができないのです。」
「奥には人がいます。私の自然はすぐそこで食い留められてしまったのです。そうして悲しいことに永久に復活しなかったのです。」
「私の自然が平生の私を出し抜いてふらふらと懺悔の口を開かしたのです。」
「私の胸はその悲しさのために、どのくらいくつろいだかしれません。苦痛と恐怖でぐいと握り締められた私の心に、一滴の潤いを与えてくれたものは、その時の悲しさでした。」
「ひとに愛想を尽かした私は、自分にも愛想を尽かして動けなくなったのです。」
Posted by ブクログ
読むの大変だったけど面白かった。
正直言うと少しBL展開があるって聞いて下心ありきで買いましたすみません。でも全然そんなことなく,先生と私(上中の語り手)のせつない空気の漂う関係性が良かったなって思う。
Kと先生の関係もBL要素ないし何故これがBLだと言われているのか不思議。
下の話の,お嬢さんを奪って幼なじみのKが自殺してしまうけど遺書には先生への恨みや当てつけ的なものが一切書かれてなくて,先生はやり場のない感情がずっと残り続けたまま生きてきて最後に自殺する…という展開がすごく良かった。好きな人を取られるのではないかと一人で焦って,自分のしたことで大切な人を死なせて…。先生もKが死ぬなんて思わんかったよな。お嬢さんはずっと隣におるけんKのこと思い出してしまうだろうし,人にも打ち明けれんけんずっと苦しかったんかなって思った。最後に私に打ち明けれて少し楽になれたあとに自殺したんかな。