あらすじ
「こゝろ」は後期三部作の終曲であるばかりでなく、漱石文学の絶頂をなす作品。自我の奥深くに巣くっているエゴイズムは、ここでぎりぎりのところまで押しつめられる。誠実ゆえに自己否定の試みを、自殺にまで追いつめなければならなかった漱石は、そこから「則天去私」という人生観にたどりつく。大正3年作。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
こういう人は多いと思いますが、初めて読んだのは高校の国語の教科書ででした。先生とわたしの関係から始まり、謎めいた先生の行動、それを探ろうとするわたし、そしてそれだけで1つの話が完結するような先生の遺書。先生に隠された謎を追うところは、まるで推理小説の謎解きのように先へ先へと読み進めてしまいます。ミステリは殺人事件だけでなく、身近な人のこころの中にも潜んでいるのでしょう。これまで何度も読み返し、その度に新たな気付きがある、私のバイブルです。
Posted by ブクログ
この傑作が400円足らずで売っていて、高校・大学の時に読んでから久しく経った今、もう一度本書を買って読んでみた。何度読んでも味わい深い小説である。
自分の上位互換である分身(K)を迂闊にも隣に置き、Kに対する模倣と嫉妬から対象(お嬢さん)を欲しがり、手に入れたはしたがKへの嫉妬を媒介とする愛であったため、K亡き今、お嬢さんへの愛情も薄れてしまった。最終的には主人公も自殺の道を選ぶのである。
解説にもあるが、漱石の文章構成は元々建築志望だっただけあり、非常に読みやすく、滑らかに読めてしまう。また、ルネ・ジラールは優れた小説には模倣の欲望が描かれていると言う。『こころ』はまさに模倣の欲望がもたらす情動と破滅を簡潔かつ明瞭に描いている。私の人生にとって最も重要な小説の一つである。
Posted by ブクログ
夏目漱石の作品を初めて読んだ。明治に生きた漱石が普段どういう行動し、何を考え、どう感じていたか知りたかった故に非常に興味深く読ませてもらった。恋の三角関係、友人が自死した後の自分の人生。漱石も現代の私たちと変わらない感じ方をしていた事に驚いた。他人に言えない苦しみ、よく分かる。全てを無くしてでも自分の思いを他人に吐露する事の大切さを学んだ。時代が違っても人間が考える事は差異がないんだと思った。なんかウジウジしている自分でもそれが自分のあるがままならそれでいいんだ。恥ずかしがる事はないんだと思った。
Posted by ブクログ
高校生のころ教科書で一部を読んだきり読んだことなかったが今まで損してたと思うくらい考えさせられる1冊だった。
教科書には載ってない、大人になった先生やお嬢さんの姿、先生が人を信用しなくなった瞬間や先生が恋に落ちた瞬間などを知ることができて、やっと点と点が線で結ばれたような気持ちになった。
こころはよく「ドロドロした恋愛」として書かれることが多い。確かにドロドロはしているが先生もKも純粋な気持ちでお嬢さんを見ていた。純粋すぎるが故に悲劇を生んでしまったように見える。ただただ誰かにとられたくなかった。それだけの気持ちが多くの人を傷つけることになる運命をたどる。恋愛している自分を客観的に見て苦しんでいる人にぜひ読んで欲しい一冊である。
Posted by ブクログ
『こころ』は、明治という時代を背景に、人間の弱さや孤独、信念との向き合い方を静かに、けれど鋭く描いた作品だった。
最初は正直、難解で古い文学というイメージを持っていたけれど、文章は驚くほど読みやすく、すんなり物語に入っていけた。特に、三部構成のうち第三部——先生の長い手紙からなる最終章に入ってからは、ぐいぐいと引き込まれ、一気に読み終えた。
物語全体に漂う「なぜ先生は人付き合いを避けるのか」「なぜ過去を語らないのか」といった違和感。それらが最後に明かされたとき、ようやく先生の沈黙の重さがわかり、静かに心に残るものがあった。
先生の人物像には共感しきれない部分も多かった。働かずに暮らせる環境にありながら、自ら行動を起こすことは少なく、孤独や人間不信に囚われているようにも見える。そんな先生とは対照的に描かれているのがKだった。
Kは、独立心が強く、理想を追い求める人物だった。けれど、その真面目さと不器用さゆえに、周囲との関係や自分の感情に追い詰められていく。特に「精神的に向上心のないものは、ばかだ」という彼自身の言葉が、あとになって彼を苦しめるあたりに、人間の矛盾と弱さが凝縮されているように思えた。
たしかに、友人に裏切られたという事実や、その後の孤独は、Kを深く傷つけたかもしれない。でも、それ以上に大きかったのは、「信念に反する感情を抱いてしまった自分」を許せなかったことなのだと思う。
100年以上前の物語にもかかわらず、登場人物たちの葛藤や感情は、現代を生きる私たちにも通じる。そう気づいたとき、この作品の普遍性を実感した。
「古典はちょっと…」と思っている人にこそ、読んでみてほしい。静かに、でも確実に、心を揺さぶられる作品だった。
Posted by ブクログ
吾輩は猫であるより読みやすかった。
何か秘密を持ってる先生と出会う主人公。
奥さんでさえ知らない秘密とは…
私は結局父の死に目に立ち会えたのかが気になる。
先生の遺書は少し長くてちょっとダレたかな…
乃木大将が明治天皇が亡くなったときに妻と殉職してるのを知り今の時代じゃありえないことだなって思った。
最初にあらすじがあるけどこれは読まない方がいいです。ほとんど内容書いてあってネタバレになります。
Posted by ブクログ
オーディブルで。
高校生ぶりに再読。
歳を重ね、Kの自殺から先生の自殺までの機微が分かるようになった。そりゃ、結婚生活も楽しくないし、死ぬしかないでしょう。精神的に向上心のないやつは馬鹿だし、策略で勝っても、人間として負けたのだ。
Posted by ブクログ
先生が自分の遺書の中で表現しているその時の感情だったり頭の中の考え全てが、人間がその時に出す感情、考えの模範解答みたいな人だったから、先生の感情に対して共感しながら読み進めてました笑
流石教科書に載るだけあって考えさせられるシーンが多いです。面白かった(*^^*)
Posted by ブクログ
夏目漱石を初めて読んだのはたしか高校生の頃。
学校で習うような人物がなかなかの生々しい恋愛ものを書いていることに衝撃を受け、『思ってた以上にゲスかった』という感想だけしか残っていませんでした。
それがこころだと思っていたけど、ちがうな。
坊ちゃんだったのか⁈もう30年以上昔なので、あの時読んだ物語が一体なんだったのか思い出せない。
そして30年以上ぶりに目にした漱石先生の物語。
上中下に編まれていて、中の終盤あたりから読書スピードも加速。
先生からの手紙がこんなにも長いのかと思いつつも、タイトルが『こころ』というわけはここにあるのか⁈と思ったり。
こんなにも横文字の少ない日本語で編まれた物語を読んで、新鮮だった。
読後もこの物語のことを考えてしまうような読後感。
ほかの作品も読もうと思います。
Posted by ブクログ
先生は確かに罪を犯したけど、それ自体大した罪ではないと思う。男女の恋を巡ってよくあること。むしろ奥さんとお嬢さんの家に入る前のkはすでに死への願望があり、お嬢さんへの想いがそれを延長させていたに過ぎない。先生に罪があるとすれば、親友だったならkが死ぬ前にお嬢さんの存在がkにとって恋心以上のものに膨れ上がっていたことに気がつくべきだった点にあるだろうと思う。
ただそう冷静に物事を見ることができなくさせるのが恋愛というもので、だからこそ、「恋は罪悪」なんでしょうか。
Posted by ブクログ
高校の教科書でやった部分しか読んだことがなく、いつかちゃんと読みたいと思っていた。まず文章の読みやすさにびっくり。夏目漱石、文章うまい!構成も効いている。「私」と一緒になってはやる気持ちで先生の遺書を読んだ。教科書で読んだときは、恋なんかで死ぬなよ、と思ったりしたのだが、すべてを読んでようやくKや先生が死んだ理由が理解できた。
人間は罪深いから、せめて自分で自分が嫌にならないように努力したほうがいいね。
Posted by ブクログ
読み終わった。
恋に対する善悪と、誰からも理解されない孤独な寂しさが人生の結末に導いてしまう。
何も知らされず、理解できずに先立たれてしまった妻は心の穴が空いた状態になるんだろう。頼りになる相手も全て失ってしまった。
遺書の後ページを捲ったら注釈で驚いた。
まさか、これで終了なのか、と。
遺書を受け取った後、私が何か行動を起こすのではないかと予感していたのだが、遺書で全て終わってしまった。
この後はどうなるのか読み手の想像に任せられるが、こういった終わりからも良し…!
恋に苦悩したから死んだのではなく、誰からも理解されない寂しさ、それを口に出せずに押しつぶされてしまった先生とKは、結局似たもの同士だったわけで…。
苦悩の心情がよく描かれてて読んでて面白かった。
読むの本当に疲れたけど…!
Posted by ブクログ
人物の内面の描写が物凄く丁寧に書かれている。物語としてはさほど大きな展開がある訳では無いが、人の心の移り変わりや感情の起伏をこんなにも言葉で細かく表現できるのかと感嘆してしまう。
私は先生との出会いから、なぜそこまで先生に惹かれていったのか…父の死を目前にしても…そのあたりは謎のままだったなと。
人の醜いこころの移り変わりや後悔の念、苦しい感情が読み手の心にもひしひしと伝わりどっぷりとその世界観に浸されてしまった。
Posted by ブクログ
夏目漱石、やっぱり文豪だと再認識。若い頃に読んだけれど、分かったような気になって、とにかく夏目漱石を読んだという事実に満足した記憶がある。
歳を経て読んだ所で、分かったような気がしているのは変わらない。だけど、先生の年齢になって(いや越したのかな)、先生の苦しさに真実味は増したのかもしれない。
今となっては、先生も語る私も明治の人。月が綺麗ですね、で愛を表現する人たち。だけど、恋する気持ちは変わらない。嫉妬するのも、勝手に妄想して猜疑心でいっぱいになるのも、言えばいいのに言えないことも、令和の今も変わらない。所々で時代を感じるものの、心理描写は古き良き時代、というだけでは終われない。
100年経っても読めるのは、先生や私の気持ちに共感したり、感情移入できるから。それにしても、働かずに何十年も過ごせる環境があったことに驚く。それだけ、格差社会だったということか。とにかく、面白く読めた。だが、理解したとはまだ言えないから4つ星にした。
Posted by ブクログ
学生の時に読んだと思うがおぼろげな記憶しかなく、再読。すごく堅い小説のイメージだったけど内容はわかりやすい小説で、時代の違いが堅く感じられたのか。遺書で終わったのが衝撃を残したかな。夏目漱石先生の名作を星4つでは申し訳ない気もしたり、自分の教養のなさを感じたり、、。芸術性を培いたい。
Posted by ブクログ
読むのは何回目かだが、後半になるにつれ盛り上がりやはりおもしろい。
先生は何度も引き返せる場面があったように感じた。
Kが最初にお嬢さんへの気持ちを打ち開けた時、Kと散歩しながら気持ちが高まっているのを伝えられた時、奥さんにお嬢さんをくださいと言った後、奥さんからなぜKに話してないのか聞かれた後など自分の気持ちをKに伝えるタイミングは結構あったのではないかな。でも、1回 タイミングがずれると ますます 言いづらくなるもんなんだよね…。
また今回は先生の妻の気持ちになって考えてしまった。無邪気で屈折したところのない妻がもし先生の身にあったことを知ってしまったらその心を汚してしまうと先生は思って話せなかったんだと思うけれど、妻の立場からしたら話してもらって一緒に悩んだ方がよっぽどいいと思ってしまう。言わなかったのは先生の思いやりではなく、やはり自己保身に思えるなぁ。
心に残ったセリフ
「悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているんですか。そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ。平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に 悪人に変わるんだから恐ろしいのです。だから油断ができないんです」
Posted by ブクログ
★4。
すごいサクサク読めて面白かったなー。淡々と進むけどぐいぐい読んじゃった。ラストがスパッて終わっちゃうのも良い。うん。好きな感じでした。
Posted by ブクログ
高校時代にKとの部分だけ読んだことがあり、改めて全て読みました。
どんな人でも恋愛のこととなると、我先にと気が急ったり、愚かになったり、悩んだり、弱くなったり..
時代や環境は違えど、恋愛に対する人の行動みたいなものはそう変わらないのだなと思いながら、面白く読み進めれました。
Posted by ブクログ
純文学は芥川と太宰はよく読んでいたが、夏目漱石は有名作品すら知らなかったため、まず初めにこころを手に取ってみた。
一人称で書かれている男がこの物語の主人公ではなく、先生と呼ばれている男がメインの話となっている。
この先生、読めば読むほど自己中心的な人間で、まず人を信用しない理由として信頼していた叔父に裏切られたことがトラウマになったと言っているが、幼く無知であった自分が財産全てを叔父に託していたことが原因でもあるし、友人を死なせた理由もあまりに身勝手。
下宿先にkを招く前に、奥さんは少なからず予感して止めたいたにも関わらず強引に呼び込み、挙げ句下宿先の娘を好きになったと告白したkに焦って、今まで娘に対してはっきりした態度を取らなかった先生が急に奥さんに直接結婚の許可をもらい、kからしたら寝耳に水状態。しかも先生本人からじゃなく奥さんから世間話で軽くその事実を聞かせれたkのショックや想像に絶する。
終いにはそんな他人からしたらどうでもよい話を勿体ぶって主人公になかなか話さなかったのに、主人公の父親が危篤状態のときに分厚い手紙で送りつけて主人公の心を掻き乱している点含め、最初から最後まで自己中心的な人間という感想…。
金や恋が絡むと綺麗事では済まないところが人間らしく、そのどろどろとした生々しさを描いているところにこの小説の本質があるとは思うのだが、どうにもこの先生が私には受け付けられませんでした。
Posted by ブクログ
終盤、先生の手紙のあたりから一気に読み終えた
ついつい気になり合間合間に
夏目漱石は名前しか知らなかったので初めて読んだ本でもあったけど、昔の言葉がおもしろい
なんか、乙女なのかな
Posted by ブクログ
「私はきわめて高尚な愛の理論家だったのです。同時にもっとも迂遠な愛の実際家だったのです。」という有名な一文がある。
この一文は、一文だけで読む方が、小説のまま読むよりも趣深い。
なぜならこの小説の文脈からして、この「愛」は愛でも何でもなく、ただ「社会が要請するので妻を娶りたい」という衝動に性欲の毛が生えたようなものであって、現代的に言って「高校生の初恋」ぐらいの重さしかないからだ。
むしろ小説を通して、いかに「私」がお嬢さんのことを愛していないかをページを尽くして説明してくれた。
「こころ」は現代の感覚からすると、「私とお嬢さんの恋愛」を描いた小説でも、「私とお嬢さんとKの三角関係」を描いた小説でもない。
「私とKの恋愛関係」を描いた小説である。
女性が軽蔑されていた時代において、男性は、性以外の愛情の全てを男性に注ぐしかなかった。そういう社会的背景であり、実際にそれが行われた。恋愛にプラトニック性を求める現代社会の恋愛そのものが、同性の間で行われていたことになる。
「こころ」においても、「私」はお嬢さんよりKのことを愛していたのが火を見るよりも明らかだ。「私」はKが登場してから作品が終わるまで、終始一貫して、猛烈な勢いでKを理解しようと試みている。死後ですら、「私」がKを理解しようとする勢いが収まらず、強まってすらいる。
一方で「私」がお嬢さんを理解しようとしたことはない。お嬢さんが妻になってからでさえ、お嬢さんに自分を理解してほしいと思うことはあっても、自分がお嬢さんを理解しようと試みた様子はなかった。
まずそもそも、「私」がお嬢さんに惹かれた理由は、その辺にいて美人だったからに過ぎない。「女」「妻」という物品として、お手頃だったから惹かれたに過ぎない。
結婚を申し込む段になっても、本人の意向なんて確認していない。それは確かにウブだったからだが、【自分がウブであることを言い訳にできるくらい、本人の心には関心がなかったから】である。
「他人を知りたい、理解したい」と思い、そのために不断の努力をすることが愛なのだから、「私」はお嬢さんよりも圧倒的にKのことを愛していたと言えるだろう。
「私」が死ぬまでお嬢さんを全く愛していなかったことについては、Kの死後の動きを見ればよくわかると思う。夫がプラプラして無気力な状態なのに、その理由を知らされずに何年も過ごしていて、妻が本当に幸せだったと思っているなら頭がおめでたすぎる。
「私と妻とはけっして不幸ではありません、幸福でした」ってお前が言うなよ。お前何も奥さんと話してないだろ。
「私」は本当に関心しちゃうぐらいお嬢さんの心に興味ない。この小説の題名の「こころ」にはお嬢さんの心は含まれてない。「自分と、愛するKのこころ」だ。
多分お嬢さんはKと結婚した方が幸せだったと思う。
作中、お嬢さんがKに「また難しいことを考えている」と言う場面があることから、Kは結構お嬢さんに心の内を吐露していると見られる。
彼の方でもお嬢さんをじっくり知るうちに「女はそう軽蔑すべきものではない」と言うまでに至ってきた。しかも彼はそれを「縫針だの琴だの生花だのを、まるで眼中に置いていない」状態で達成したんだから、「私」よりもお嬢さんの人間性に迫っていた可能性が高いのではないか。
Kの方が結婚を申し込むのが早ければ、多分お嬢さんは「私」が勝手に認識しているよりもずっと幸せになったと思う。
順番が狂ったおかげで、お嬢さんは今「下宿していた2人の書生のうち1人が家で自殺し、もう1人と結婚したけど無気力な結婚生活で塞ぎ込まれた挙句自殺された女」だからね。
心中察して余りある。
Posted by ブクログ
教科書以外で初めて読んだ
存外長い話だった
K登場までこんなにも話があったのか
国語の授業ではひたすらにKが言及したところの「覚悟」とはいかようなものであったかを説かれたように記憶しているが、全編通して読むと先生自身はあまりそこに引っかかっていないあたり、いかにも恋愛による盲目さを表しているように感じられた
Posted by ブクログ
ドラマ「舟を編む」を見て、辞書編集者が言うんです。「あの遺書長すぎだよな!」と。「こころ」って小学生くらいに教科書に掲載されていたような気がするんだけども、今はどうなんでしょう。
先生の遺書以外のところを知らなかったので、新鮮に読めました。夏目漱石の名作なんだろうけど…
これが好きな人はどんな感想なんだろう?というところが気になります。私はやっぱり「遺書長い…」という感想になりました(すみません)。
以下は気になった文の引用です。
「「いまに私の家の方へは足が向かなくなります」先生はこう言って寂しい笑い方をした。」
「しかし……しかし君、恋は罪悪ですよ。わかっていますか」
「よくころりと死ぬ人があるじゃありませんか。自然に。それからあっと思う間に死ぬ人もあるでしょう。不自然な暴力で」
「平城はみんな善人なんです、少なくともみんなふつうの人間なんです。それが、いざというまぎわに、急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。だから油断ができないんです」
「ひとの時間と手数に気の毒という観念をまるでもっていない田舎者を憎らしく思った。」
「私は人間をはかないものに観じた。人間のどうすることもできない持って生まれた軽薄を、はかないものに観じた。」
「先生の多くはまだ私にわかっていなかった。(略)要するに先生は私にとって薄暗かった。」
「叔父にだまされた私は、これからさきどんな事があっても、人にはだまされまいと決心したのです。」
「ぜひお嬢さんを専有したいという強烈な一念に動かされている私には、どうしてもそれが当然以上に見えたのです。」
「私はKをむりに引っ張ってきた主意が立たなくなるだけです。私にはそれができないのです。」
「奥には人がいます。私の自然はすぐそこで食い留められてしまったのです。そうして悲しいことに永久に復活しなかったのです。」
「私の自然が平生の私を出し抜いてふらふらと懺悔の口を開かしたのです。」
「私の胸はその悲しさのために、どのくらいくつろいだかしれません。苦痛と恐怖でぐいと握り締められた私の心に、一滴の潤いを与えてくれたものは、その時の悲しさでした。」
「ひとに愛想を尽かした私は、自分にも愛想を尽かして動けなくなったのです。」
Posted by ブクログ
読むの大変だったけど面白かった。
正直言うと少しBL展開があるって聞いて下心ありきで買いましたすみません。でも全然そんなことなく,先生と私(上中の語り手)のせつない空気の漂う関係性が良かったなって思う。
Kと先生の関係もBL要素ないし何故これがBLだと言われているのか不思議。
下の話の,お嬢さんを奪って幼なじみのKが自殺してしまうけど遺書には先生への恨みや当てつけ的なものが一切書かれてなくて,先生はやり場のない感情がずっと残り続けたまま生きてきて最後に自殺する…という展開がすごく良かった。好きな人を取られるのではないかと一人で焦って,自分のしたことで大切な人を死なせて…。先生もKが死ぬなんて思わんかったよな。お嬢さんはずっと隣におるけんKのこと思い出してしまうだろうし,人にも打ち明けれんけんずっと苦しかったんかなって思った。最後に私に打ち明けれて少し楽になれたあとに自殺したんかな。
Posted by ブクログ
高校の時に授業で取り扱い、ふと読みたくなった。
こころを読んで過ごす夏は、この作品が描かれた雰囲気を想起できてワクワクする。
それだけでなく、自分が高校生だった頃も思い出せる。
Posted by ブクログ
ひたすら語り口調で人の心情の動きが緻密に描かれており、終始暗雲の雰囲気だが、すらすらと頭の中に入ってくるのは、上中下という物語の構成が面白く、そして流れるような文章によるものなのだろうか。
話しは共感できなくはない。心の動きがそのようになるのも良く分かる。でも、最初から最後まで私、先生、そしてKの視野が狭いように感じてしまうし、あまりに生真面目に思い詰めすぎに感じる。
時代の影響なのだろうか。当時の方たちはそれほど高尚だったのだろうか。
読みながら、誰も悪くないよ、人間ってそんなもんだよと言ってあげたくなった。