【感想・ネタバレ】こゝろのレビュー

あらすじ

「こゝろ」は後期三部作の終曲であるばかりでなく、漱石文学の絶頂をなす作品。自我の奥深くに巣くっているエゴイズムは、ここでぎりぎりのところまで押しつめられる。誠実ゆえに自己否定の試みを、自殺にまで追いつめなければならなかった漱石は、そこから「則天去私」という人生観にたどりつく。大正3年作。(C)KAMAWANU CO.,LTD.All Rights Reserved

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Posted by ブクログ

ネタバレ

先生は最後、死を選んだ。自殺念願を持つ第三者が亡くなってたという訃報を聞いて、先生は生きた35年と、自殺であればどちらが苦しいのか考えたさきに自殺という選択肢をとった。
罪の意識を持つ先生は、より苦しい選択肢をとったのか、楽な選択肢をとったのか。これまでの人間らしい先生の性格を見ると、楽な選択肢をとった結果なような気もする。

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2026年07月27日

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ネタバレ

「あなたはまじめですか」

 この問いが深く残る作品である以上、読者にもそれ相応の態度が必要になる作品だと思う。

 親族に裏切られ、なのに親友を裏切ってしまった先生と、文字に起こせばそう目新しいものでもないものに感じられるのに心理の生々しいリアリティに引き込まれてしまった。

 裏切りを憎みながら自分も裏切ってしまった先生、狡猾に立ち回りKを殺してしまったのにも関わらず妻に告白し楽になることはできない先生、心理についてありありと分析できるのに肝心のKや妻の気持ちは分からなかった青春時代の先生。

 醜さと高潔さを抱え、自分の矛盾に悩みながら孤独に生き続けた先生には、とても大きな魅力があると思った。

 めっちゃ面白かったです!
 

 

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2026年07月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何から書けばいいだろうか。

高校生のときに初読し、心を鷲掴みにされたという記憶だけが強く残っている1冊だった。
10年振りに再読した。

当時は主人公を身近に感じなかったし、初読の時はある意味ミステリみたいな感覚で、先生のいう悲劇や隠しているものはなんだろうと思って夢中で読み進めていたかもしれない。
今回は大筋はだいたい知っていたのもあるが、主人公により感情移入した。
これは私が恋を知ったからかもしれない。

主人公が若くて、先生に対して色々期待し、思ったより反応が薄くてがっかりするのは非常に親近感が湧いた。
先生は「私」が恋の心で動いてきていると言っていて、ある種の片想いを先生にしていたと言えるだろう。

先生の思想や言葉選びに、「私」と同じように恋をした。
「恋は罪悪ですよ」
「(子供がいないのは)天罰だからさ」
「(奥さんと自分は)幸福な一対の人間であるべきはず」
「未来の侮辱を受けないために、今の尊厳を退けたい。今よりいっそう寂しい未来の私を我慢する代わりに、寂しい今の私を我慢したい」
先生の過去に射し込む黒い影を覗かせるような言葉選びには胸がギュッとしたし、繊細なこころの動きの表現の仕方が本当に素晴らしいなと感じた。

前に読んだ時は先生の過去が気になりすぎて、主人公と家族のことは正直どうでもいいなと思って読んでいた。
今大人になって見ると、病床の父の姿に胸が締め付けられた。主人公の胸のざわめきと、長い手紙から先生の過去なんてどうでもいい、知りたいのは安否だけと思いながらただページをはぐっていく部分が読んでいて自分自身とものすごくシンクロして、先生から電報が来たところや手紙が届いたシーンで嫌な汗がどっと出て一度本を置いてしまった。

そして先生と遺書へ。
なんて人間らしくて、暗くて、切ない話なんだろうか。

「こころ」とは色んな意味があるように思う。
先生と瀕死の父の間に揺れ動く「私」のこころ、
奥さんやお嬢さんを疑う先生のこころ、
精神的に向上心のないものはばかだと言いながらそれと矛盾する恋心を前に弱い人間だと気がつくKのこころ、
またお嬢さんへの崇高な愛、それによるKへの嫉妬心や不義理のこころ。

奥さんやお嬢さんの行動に猜疑心を持ちながら、本音ではお嬢さんだけは信じたい、Kへ打ち明けたい気持ちがありながら時期を逃しどちらへも動けない、など2つの感情により押さえつけられる描写が非常に多いと感じた。自分で人や行動に意味付けをして悩むものの実際の行動にまでは繋げる勇気もない、といった葛藤の描き方が素晴らしかった。人の「こころ」の繊細さ、一元的でないものの描写だろうか。

Kの遺書の封を切るシーンと、「私」が先生の遺書を開けるシーンが重なって見えた。
「私」が先生の立場であればどうしただろうか。
若くまじめである「私」なら、先生の過去を知りたいと言った純粋さや勢いで、Kに真正面から向き合うことができたのだろうか。

Kから恋心をどう思うか聞かれた際に精神的に向上心のないものはばかだ、と言って痛い矛盾を突いたところや、Kの遺書を見てまず出た感想が助かった、だったのが、先生自身が恨んでいた、いざというまぎわに急に悪人に変わる叔父と重なり、人間らしいなと思った。人間の醜さが、人間を嫌う理由となり、自分を含め全てを信用できない厭世的な考えに繋がっていた。

先生はKに対して、君は人間らしすぎるほど人間らしい。なのに口ではそうでないように振る舞う。
と言っていた。
Kは人間らしい欲望や感情は道のためには不要と考え、そういった彼からすれば「低俗」であるものから離れた場所を目指していた。
でも本当は欲望や孤独も持っている。そこに気がつかずにただ己に鞭打って道を進んでいた。

ああ、Kは私みたいだ。
ただ愛されたかった、寂しかった、なんて気が付かないんだ。私は、今まで積み重ねてきたことは皆がやっているのと同じだからそんなの努力に入らないと本気で思っていた。どこか自分が達観しているように思い込んでいた――強い自分でありたい、そうあるはずだと思い込んでいた。
いざ自分の奥底にあるただ単なる「寂しい」「愛されたい」といった感情に気がつくと、自分の矛盾に気恥ずかしくなった。自分もただの弱い人間だった。自分の弱さを無意識のうちに隠すために強くあろうと振る舞っていたんだ。そう気がついた時に涙が溢れて止まらなかったことを思い出した。

そう思うとKの切ない恋心の自白や「精神的に向上心のないものはばかだ」と先生から痛い矛盾を突かれた時の憔悴した様子「ぼくはばかだ」が、私のこころの中に入り込んでくる気がした。この時のKは、紛れもなく私自身だった。

誰しもが先生のような、Kのような、「私」のような、先生の叔父のような、弱いこころを持っている。先生に関しては、壁を打ち破る少しの勇気があれば違った結末が待っていたかもしれない。

先生は最期に、勇気を出して「私」を信用し、自分の心臓を文字通り断ち割って全てをさらけ出した。最期にはそう出来たのだなと思った。

「こころ」は私にとって大切な1冊には変わりないが、私の自己理解という観点から「大切」がまた変わった意味を持ち始めたように思う。

初読は過去をあばいていくミステリのような感覚。
今回の途中までは、言葉選びや三角関係、嫉妬心の描き方の美しさ。
読後、Kの生き方と自分の今までの自己批判を重ね合わせた。

Kの出てくるまではキュンと恋する乙女のような心持ちで読んでいたが、だんだんそれがなくなり、嫉妬心や恋心の表現に心酔すると同時に共感し、読後は私の人生のものの見方に重ねるようになった。

今回の再読で、この物語への気持ちが憧憬から、私自身への手紙というところまで降りてきた。

私にとって「こころ」とは、私が弱い人間であることを許してくれる1冊であった。
私も、「私」も、先生も、Kも、皆そうだから。

何度でも読み返したい、私の人生の1冊である。

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2026年06月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ずっとちゃんと読んでみたいなと思っていたのが、ようやく果たせた。
昔授業でやった部分は、本当に終盤のクライマックスに近いところだったのね。

要約してしまえば、事件そのものはとても単純なのだけれど、そこに至るまでとその後の人間の心の動きがものすごく丁寧に描かれている。
だからこそ、読者はギュッと心を掴まれ、ドキドキしながら読み進めずにはいられない。

何も知らない第三者の目線を通して、事件後の暗い影に覆われた先生の人生が少しずつ垣間見えていき、最後に遺書によってその真実が明らかになるという構成も素晴らしい。

あぁ、とにかく、悲しい。
先生は本来真面目で思いやりのある人だったし、その部分は事件後も失われてはいないと思う。
どんな人間も、私欲や傲慢さを多少なりとももっていたりする。
それは人間らしさでもあるけれど、そのエゴのせいで人の命が失われることもあるんだ…。

友人と同じ人を好きになってしまうのは悪いことじゃない。
先生は、正直に自分もお嬢さんが好きだと伝えて、正々堂々と戦えばよかった。(でも、それができなかった気持ちもすごくわかる)
なんなら、最初に自分はお嬢さんが好きだから手を出すなとか、そもそもリスクを避けるなら友人を下宿に連れてこなければよかった。
奥さんが気を遣って止めてくれてたのにね。
(そして娘さん下さいの前に本人に告白しろよ。時代柄?)
でも、それは終わったあとで言っても仕方ないこと。
1番の原因は、引っ込みがつかなくなったプライドだ。
悪意があったわけじゃないからこそ辛い。

妻に本当のことを話してしまえば、自分は少し楽になる。
でも、彼女にも多少の「私のせいで」という罪悪感を背負わせないために、墓場に持っていくと決めたのは愛だと思う。
こんな事件がなければ、幸せな夫婦になれたのに。
1番大切な人に本当のことを言えないなんて、なんという苦しい人生だろう。
罪を背負って生きるとは地獄だ。

だけど、「私」がいてくれたことで、先生も最後に少しだけ救われた気がする。
自分の過去を知らずに、こんな暮らしをしている自分のことを純粋に慕ってくれる人間がいるって、本当はすごく嬉しかったと思う。
死の前に、全てを吐き出せる相手が現れてくれてよかった。

実際に死ぬところは書かれてないから、間一髪間に合ったと勝手に想像することもできる。
そんな終わり方にしてくれた夏目漱石、優しい。

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2026年06月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

やりきれない、ひたすらやりきれない。

最初は、妻のことを気遣い、Kへの罪悪感を消化するのであれば、毎月の墓参りを続けつつ、Kの分まで長生きして妻を幸福にするのが筋では?と読みながら感じていた。
しかしどうも先生の語り口をみるに、Kを自殺させるに至った罪の自覚よりも、そうしてしまった自分の未熟さや浅はかさを恨んでいたり、Kの呪縛から解放されたいように思える。それならば最期に自分でケリをつけるという結論に至っても不思議ではないなと。

オカルトな解釈をしてみると、Kの幽霊が先生に取り憑いたのでは、という解釈もできる。特に、295ページの「私の胸には〜」から始まる、先生の行動を強制したり、縛りつけるような"影"の描写にそれを感じた。と思うと切ない怪談としても読める。唯一、妻ごと連れて行かなかったのが幸いかな。

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2026年05月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

学生時代に教科書で少しだけ読んだ作品、いつか読もうと思い続けて十数年経ちましたがやっと読むことができました。
「精神的に向上心のないものは、ばかだ」
過去にKが語った言葉は、恋心に悩む今のKにとってはあまりにも残酷な言葉だと感じました。さらにそれを今になって引っ張り出し、念を押すように語った先生の行動はあまりに卑怯な手と言わざるおえませんでした。しかし、人というのは、いざという時には、先生や先生を裏切った叔父さんのように、打算的で邪な考えをもって行動してしまう生き物でもあるということを、私たちも心の片隅に覚えておくべきことなのかもしれません。

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2025年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

授業で取り上げられた部分はほんの一部で、手紙がめちゃくちゃ長いと聞いていたので、確かめたくなって読んだ。たしかにめちゃくちゃ長かった〜〜!でも読みやすくてずんずん読めた。
不思議な先生の過去が次々と明らかになりまるでミステリーみたいで、しかも先生のずるさも明らかになって、人間って...と思わされる。流石にずるすぎやしないか。でもあんなに嫌悪していた叔父と同じだと気づく場面はぐさっと来て、誰しも同じ側面があるんだと突きつけられているよう。
唐突に終わってしまったのが残念。これから妻は大丈夫なんだろうか。そして私はお父さん放ってきちゃって本当に後悔しないのか...
ぶっちゃけ、なんでこんなに名作として人気があるのかまではわからなかったなぁ。まだまだ私の人生経験が足りないのかもしれない。

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2026年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読むの大変だったけど面白かった。
正直言うと少しBL展開があるって聞いて下心ありきで買いましたすみません。でも全然そんなことなく,先生と私(上中の語り手)のせつない空気の漂う関係性が良かったなって思う。
Kと先生の関係もBL要素ないし何故これがBLだと言われているのか不思議。

下の話の,先生はやり場のない感情がずっと残り続けたまま生きてきて最後に自殺する…という展開がすごく良かった。好きな人を取られるのではないかと一人で焦って,自分のしたことで大切な人を死なせて…。親族に裏切られて腹を立ててるのに,自分は友人を欺いて裏切ってしまう…先生の気持ち想像するとみぞおちあたりが苦しくなる。遺書見つけたとき,真っ先に読んで自分のことが書かれてないと安心する部分も人間の醜さが生々しく書かれていてゾッとした。

国語の授業で「こころ」を学んだ。Kは恋が叶わないなら自殺する覚悟があったというのに驚いた。先生とお嬢さんが結婚すると知る前から自殺するつもりだった,しかもその覚悟は先生の一言で決まってしまったという…。私は読んでいてKの「覚悟」はお嬢さんを諦める覚悟か,先生と同じお嬢さんに気持ちを伝える覚悟かのどちらかだと思っていたので,読みが浅かったと反省しました…。国語の先生のようにこんなに物語を理解できたらもっと読書が楽しいんだろうな。

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2025年08月17日

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