夏目漱石のレビュー一覧

  • 行人(新潮文庫)

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    漱石の考えていることがわかりやすく、小説という形で示されている。小説としては、ややわかりやすすぎるかもしれない。それでも、最後までおもしろく飽きさせずに読ませる。しかもきっちりまとまっている。やはり漱石はすごい。

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    2020年03月23日
  • 道草(新潮文庫)

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    人間関係の描写が生々しく実にリアル。面白い。妻とのやりとりはすれ違いはあるものの、漱石さんの優しさを感じられる場面もあり、ホッとする。

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    2020年03月18日
  • 三四郎

    購入済み

    好き

    三四郎の心情に共感できたため面白かった。切ない失恋の模様が心に刺さった。何気ない日常を過ごしていながら、確実に人は昨日とは違う自分になっていると思った。あと、普段見聞きしない言葉が使われているから、たくさん調べて良い勉強になった。

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    2020年03月18日
  • 文鳥・夢十夜(新潮文庫)

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    ネタバレ

    短編小説と随想のあいだくらいのものだったり、
    日記調のものだったりする小さな作品を小品というそうですが、
    夏目漱石のそんな小品を集めた本です。

    もともと、昨年の三月に観たのですが、
    Eテレ『100分de名著 夏目漱石スペシャル』にて扱われた『夢十夜』に、
    理屈を超えたところで、なにか強く惹かれるものがあり、
    これを目当てで本書を手に入れて、今回やっと、読んだのでした。
    309ページの分量のなか『夢十夜』はたかだか30ページそこそこ。
    読み終えてしまうと、
    そのあとの200ページ超にまったく期待をしていなかったため、
    すこし放っておいたくらいなのですが、
    続きを読みだすとすごくおもしろい。
    どんな小さな作品でも、夏目漱石をみくびるものではないな、と
    恐れ入った次第です。

    なんていうか、夏目漱石って人はエリートで文豪というイメージですから、
    強い意志で文学をやり抜いた人で、明治ならではの頑固者でもあったのではないか、
    なんて勝手に思ってしまうのですが、そうじゃないんですよね。
    文学をやり抜いたことはすごいことですけども、
    漱石自身もそうであるとしながら、
    人間一般っていうものの柔弱な部分を見つめ、
    愚かな部分を秘密にせず、露わにすることをよしとしている。
    明治時代ならではだなあ、と現代人には受けとめられるような、
    男尊女卑の浸透した生活の描写であっても、
    出来うる限りのフラットさで女性を描いているふうであるので、
    描かれている人間の差別意識だとか階級意識が透けて見えてくる。
    「素直に、ストレートに」というような姿勢が
    漱石のベースにはあるなあと読み受けました。

    イギリス留学時のいっときについての小品もありますし、
    猫(吾輩は猫であるのモデルですね)が死んだときの小品もあります。
    その他、明治の頃の情緒、生活感などを感じることができます。

    そんなところで驚くのが、
    当時の思想や哲学に、現代に十分使えそうなものがあることでした。
    漱石くらいのエリートですから、
    洋書をたくさん読んでいます。
    舶来品として、西洋で出版されてからそれほど長いタイムラグもなく
    漱石たち文化人や学生たちは吸収していたのかもしれない。
    ……まあ、わかりませんが。

    たとえば、こんなのがあります。
    血を吐いて長く静養した43歳前後のころに書きとめた
    『思い出す事など』という小品集での23章目にあたるところなんですが、
    ____

    余は好意の干からびた社会に存在する自分を甚だぎこちなく感じた。
    ____

    から始まっていく洞察であり思想であるところが、
    僕にとっては非常に共感するものだったのです。
    「義務」と「好意」についての話なんです。
    ____

    人が自分に対して相応の義務を尽くしてくれるのは無論有難い。
    けれども義務とは仕事に忠実なる意味で、
    人間を相手に取った言葉でも何でもない。
    従って義務の結果に浴する自分は、
    有難いと思いながらも、
    義務を果たした先方に向って、感謝の念を起し悪(にく)い
    それが好意となると、
    相手の所作が一挙一動悉く自分を目的にして働いてくるので、
    活物(いきもの)の自分にその一挙一動が悉く応える。
    其処に互を繋ぐ暖かい糸があって、
    器械的な世を頼もしく思わせる。
    電車に乗って一区を瞬く間に走るよりも、
    人の脊に負われて浅瀬を越した方が情けが深い。
    ____

    このあとにも続いていくのですが、
    仕事でもなんでも義務でやっていたら干からびてくる、
    半分でも好意が混じっていたらあたたかい、と漱石は言うんです。
    僕もこの事について同じように考えていたことがあって、
    それはモース『贈与論』を解説する本に触発されたものでした。
    そのあたりは、本ブログの記事としてもいくつか残っています。

    『贈与論』は漱石の死後8,9年後の出版ですし、
    その後いつ邦訳されたかはわからないですが、
    「干からびた社会」という気付きに繋がる時代の空気みたいなものが、
    たぶん1900年前後の何十年間かに世界的にあったのかもしれない。
    日本では平成の終わり頃から、
    同時多発的にこれが再発生してきているように、僕には見受けられる。

    僕はたとえばトレーサビリティにも人の温かみ、
    つまりその人の体温や影を受け手が感じるようになればいいのに、
    と考えていたのだけれど、
    実はそれって比較的近い年代である近代からの温故知新的なのですね。
    この、「人を想う」的生活って、
    コモディティ化(一般化)したらいいのにと思っています。

    なんでそんな「人を想う」ようなライフスタイルがいいの? と問われれば、
    そのほうがみんな生きやすくなるから、と答えます。
    「一般」だとか、「ふつう」だとか、そういった人たちの生きやすさ。
    なので基本的に、
    抜き身の刀を手に世界に出て「えいやぁ!」と戦うような人のための思想ではありません。

    また、27章目でも、おもしろい思想が出てきます。
    オイッケンという学者の説を紹介しながら、漱石なりの解説をするところです。
    そこで扱われるのが、精神生活という言葉であり概念です。

    _____

    (略)オイッケンの所謂自由な精神生活とは、こんなものではなかろうか。
    ―――我々は普通衣食の為に働いている。衣食のための仕事は消極的である。
    換言すると、自分の好悪選択を許さない強制的の苦しみを含んでいる。
    そういう風に外から圧し付けられた仕事では精神生活とは名付けられない。
    苟しくも精神的に生活しようと思うなら、
    義務なき所に向かって自ら進む積極のものでなければならない。
    束縛によらずして、己れ一個の意志で自由に営む生活でなければならない。

    _____

    これを漱石はこのあと、実際は、精神生活の割合は、6:4だとか7:3だとか、
    そうやってみんな折り合いをつけているんじゃないのか、
    と現実の所に着地させています。
    先ほどと同じように、この思想に関しても、
    僕は他律性、自律性という言葉から連想していろいろ思索し、
    本ブログにもその形跡が多数、記事として残っていますし、
    6:4だとか7:3のところは、
    2000年くらいから流行った「自分探し」というものの
    ひとつの形があるのではと考えていました。
    つまり、自分探しとは、自分と社会の綱引きをやって、
    「どうやら6:4のポジションが自分には一番ストレスがない」
    と見つけることでもあったんじゃないか、というものです。
    (そういう種類の自分探しもあったのでは、という話です。)

    ともあれ、「いや~、漱石と同じことを考えていた」と驚くのですが、
    僕の頭が明治のころの時代の思想にしっくりきているあたりがちょっと可笑しい……。
    それも、僕の何年もかけた思索が、
    この小品集『思い出す事など』のなかにすっぽりはいる程度だというのには
    泣き笑いしてしまうなあという感じですね。
    漱石はいろいろと作品を残したので、それらに点在しているならまだ好いですが、
    ひとつところに収まっているのが、まあ、偶然の重なりみたいでもあって、
    不思議な感じもします。

    というように、
    いつも通りですけども、
    僕自身に寄せて読んで考えて、読後のその感想を書いてみました。
    まだいろいろ感じる部分、考える部分はありましたが、
    ちょっと絞って書いていくと、そこに頭が集中してしまって、
    書かなかったことが雲のように散ってしまい残らないものです。

    世間的にこの作品がどれくらいの評価なのかはわかりませんが、
    僕にはとてもおもしろく、好きな作品でした。

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    2025年07月20日
  • 吾輩は猫である

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    若い時に何度か読んだのでエピソードそのものはだいたい覚えているのだが、言い回しとか例えとか、文のスピード感などといったディテールが面白く、味わい深い。
    また、この最近の岩波文庫版はとても読みやすい。漢字の開きも、雰囲気を壊さない程度にとどめてあるし、読みの難しいものにはほぼ必ずルビがふってある。注も多めかつ簡潔で気になったものだけちょっと見て理解して先に進める。
    昔、新潮文庫で読んでいて億劫になって挫折してしまったことがあったのだが、問題はこの読みやすさ、だったと思う。新潮文庫の、漢字はほぼ開かず原文どおりという方針はとてもいいのだが、字が小さく行間がつまっていて圧迫感があって読んで入り込むまでに時間がかかるのと、注がちょっと少な目で気になった言葉がわからないとそこでつっかえてしまって途中で止めがち、ということが問題だったのではないかと今にして思う。新潮文庫さん、ぜひ漢字はそのままにして、読みやすいスタイルと注の充実した新版へのリニューアルをお願いします!

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    2020年02月19日
  • 坊っちゃん 9

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    不器用だが正義感のある坊ちゃん。自分の考えにブレがなく、行動も起こすのはすばらしい。腹黒い上司と裏表のない一匹狼の対立は、いつの時代も一緒。古さを感じない名作と思う。

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    2020年02月01日
  • リライトノベル 坊っちゃん

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    リライトノベルってジャンルは初めて読んだけれど、こういう試みは面白い。とても読みやすいので、小中学生くらいのYA対象年齢者なら、普段本を読まない人でも楽しめるんじゃないかな。こういう本をとっかかりにして原作に進んだりするなら、めっけもんて感じですね。YA対象年齢じゃないけれど、他のリライトノベルも読んでみたい。っていまのところ『邪宗門』くらいかな。とりあえずそこから。

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    2020年02月01日
  • 夢十夜

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    漫画・近藤ようこ、原作・夏目漱石『夢十夜』岩波現代文庫。

    言わずと知れた夏目漱石の傑作小説を近藤ようこが忠実に漫画化した作品である。あの岩波からこのような作品が刊行されるとは明らかに時代が変わったな。

    原作は何度か読んでいるのだが、何と言っても第三夜が一番印象に残る。少しずつ迫りくる背中の恐怖は怪談話の定石であるのだが、漱石の筆は、読者の頭の中にこの恐怖をも映像として映し出す。また、この作品を忠実に漫画化した近藤ようこも全く情け容赦無く、背中の恐怖の正体を画いてみせるものだから堪らない。見事だ。

    こうして漫画でじっくり読んでみると、漱石のこの作品は現代で言うところのイヤミスではなかろうかと考えたりもする。

    岩波現代文庫オリジナルの描き下ろし作品『第十一夜』を収録。

    本体価格780円
    ★★★★★

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    2024年04月15日
  • 坊っちゃん

    購入済み

    いま読んでも面白い作品でした

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    2020年01月07日
  • 硝子戸の中(新潮文庫)

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    漱石晩年に執筆された回顧談、追想、随想集とよべるもの。漱石の人生への鋭い洞察が随所にちりばめられる。以下、印象に残った箇所。

    不愉快に充ちた人生をとぼとぼ辿りつつある私は、自分の何時か一度到達しなければならない死という境地に就いて常に考えている。そうしてその死というものを生よりは楽なものだとばかり信じている。ある時はそれを人間として達しうる最上至高の状態だと思うこともある。
    「死は生よりも尊い」
    こういう言葉が近頃では絶えず私の胸を往来するようになった。
    p20

    私は凡ての人間を、毎日々々恥を掻く為に生れてきたものだとさえ考える事もあるのだから、変な字を他(ひと)に送ってやる位の所作は、敢えてしようと思えば、遣れないとも限らないのである。
    p30

    私は宅へ帰って机の前に坐って、人間の寿命は実に不思議なものだと考える。多病な私は何故生き残っているのだろうかと疑って見る。あの人はどういう訳で私より先に死んだのだろうかと思う。p.55

    この最後の一言(いちごん)で、私は今まで安く買い得たという満足の裏に、ぼんやり潜んでいた不快、-不善の行為からくる不快-を判然(はっきり)自覚し始めた。そうして一方では狡猾い私を怒ると共に、一方では二十五銭で売った先方を怒った。どうしてこの二つの怒りを同時に和らげたものだろう。私は苦い顔をしてしばらく黙っていた。p80

    極めてあやふやな自分の直覚というものを主位に置いて、他を判断したくなる。そうして私の直覚が果して当ったか当らないか、要するに客観的事実によって、それを確める機会を有たない事が多い。其所にまた私の疑いが始終靄のようにかかって、私の心を苦しめている。もし世の中に全知全能の神があるならば、私はその神の前に跪ずいて、私に毫髪の疑を挟(さしはさ)む余地もない程明かな直覚を与えて、私をこの苦悶から解脱せしめん事を祈る。でなければ、この不明な私の前に出てくる凡ての人を、玲瓏透徹な正直なものに変化して、私とその人との魂がぴたりと合うような幸福を授け給わん事を祈る。今の私は馬鹿で人に騙されるか、或は疑い深くて人を容れる事が出来ないか、この両方だけしかできない様な気がする。不安で、不透明で、不愉快に充ちている。もしそれが生涯つづくとするならば、人間とはどんなに不幸なものだろう。p84

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    2020年01月01日
  • 夢十夜 他二篇

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    こんな夢を見た・・・というフレーズで始まる不思議な話し。全体的にホラー要素が強かったように思える。夢というのはあいまいで、だからこそ面白く。その無軌道な進行が物語に奥行きを持たせ、さらに不思議な迷宮の中をさ迷うような感覚を再現するのだ。特に、3夜の子供を背負う父親の話しが好みだった。後半、いきなり百年前に盲人を殺した話しになるのが怖い。7夜の行先不明の船旅行の話しは、明治時代の人たちの時代背景をよく表していると思った。

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    2019年08月14日
  • 夢十夜 他二篇

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    こんな夢を見た。

    そこから始まる夢のお話を10話。

    夢のお話なので摩訶不思議。ここに何か意味やメッセージがあるのか、よくわからない世界です。

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    2019年02月07日
  • 硝子戸の中(新潮文庫)

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    漱石を、こんなに身近に感じたのは初めて。読んでよかった。もっと早く読めばよかったのかもしれないが、若い頃に読んでも、この随筆を面白くは感じなかったように思う。

    漱石が晩年、病気がちになってからの随筆。過去や懐かしい人を振りかえる内容が、とても多い。年齢を重ねた今だからこそ、漱石の寂しさもなんだか共感できて、しみじみ味わえる本のように思う。

    漱石を訪ねてきた読者や知人、学生にたいして、とても丁寧に誠実に接していたことがよくわかった。こういうまじめな誠実な人だったんだなあ。

    死にまつわる話題も多く、なんだか今にも世を去りそうな、儚げな随筆。しかしこのあと「道草」「明暗」を書いた、というのはちょっと驚いた。

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    2019年02月04日
  • 吾輩は猫である

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    この小説のはじめあたりで、吾輩が「言語道断」を「言語同断」と言っているのです。
    最初、誤植かと思いました。漱石ともあろう人が何故?
    やがて、ある時、腑に落ちました。
    これは猫が語っているのですよね、だから、これでいいのですね。

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    2019年01月28日
  • 三四郎

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    三読目
    読むたびごとに面白い
    題材の解釈とか小説意図を読み解こうと思っているかたがたは
    国語のテストでも作っているのだろうか
    ただこの文の芸を楽しむのみ
    また5年後くらいに読もう
    それにしてもこれが\420に対し本の値段と中身が比例するとしたら恐ろしいことに

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    2019年01月12日
  • 虞美人草(新潮文庫)

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    幾度と無く挫折してきた虞美人草。初めて読み切った感想は「私は大人になった」。少なくとも難しい言葉に惑わされることなく表現の意味するところと文脈を読み取れる程度には。漢文と日本文化の素養に溢れた流麗な言葉遣い素晴らしいですね。

    舞姫やこころと同じく、頭が良いけれど優柔不断な男が八方美人をして思いを断ち切るのを躊躇っているうちに、周りの人間が可哀想な思いをする(もしかしたら当時の人は高慢な女に降った罰に拍手喝采なのかもしれないが今は自立して美しく賢い藤尾の何が悪い)ので、小野を許すことはできないですが、女性に象徴される「文明」と「伝統」の間で揺れ動く文明人として小野くんは苦悩していたのでしょう(小野に憤慨しないだけでも大人になった)。
    男が3人、女が3人、それでも決してハッピーエンドにはならない、この結末は、皆が自分で考え始めたこの時代から始まる。それにしても18節の宗近と糸の立派さ!「真面目になれる」「お迎えに参りました」漱石の本でこんなに胸が熱くなるとは思わなかった。自由恋愛で先進的な男女のこの小説でも古い道義とか誠実さとかが勝つんだなぁ。良くも悪くも。
    「此処では喜劇ばかりが流行る」

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    2018年10月17日
  • 坊っちゃん

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    言わずと知れた夏目漱石の有名作。
    処女作「吾輩は猫である」が好評を得て、一般的にはその次に発表した小説です。
    無鉄砲で短気で喧嘩っ早く、両親から冷たくあしらわれて育った主人公は、唯一、下女の清にだけたいそう可愛がられ、清から「坊っちゃん」と呼ばれて育ったのですが、物理学校の卒業後、四国の中学校で数学教師として赴任することになる。
    赴任先の中学校で起きた騒動について、坊っちゃんが語り手として書かれたものになっています。

    学校を舞台とした教師が主人公の物語です。
    こういった舞台設定だと、通常生徒といざこざがあって、その後和解し、そして感動の展開なんかがありそうなものなのですが、本作はそういう話ではないです。
    坊っちゃんは生徒にからかわれた結果、職員会議で感情のままに罵倒し、そのまま和解せずに終わります。
    教師たちがメインの話になっているので、学園モノですがお涙頂戴とはいきません。
    ただし、ラストは勧善懲悪となっていて(善も若干やられてますが)、誤読感はスッキリとすると思います。
    あの学校のその後を考えると少し心配な気もしますが。

    文章は口語表現で、非常に読みやすいです。
    ストーリーが頭に入ってきやすく、小中学生でも普通に読める内容だと思います。
    実際に小中学生が読む場合は、子供が読むに不適切と思われる箇所もあるので、実際に読むとなると注意が必要と思います。
    坊っちゃんは青い鳥文庫などからも出ているので、子供向けにはそちらをおすすめします。
    どちらで読んだにせよ文章の軽快さと、また、他の多くの人がレビューで書いている通り純粋な面白さは損なわれないと思います。
    語り手がべらんめえな青年である故か、地の文がかなり特徴的です。
    文学小説らしからぬほどリズミカルで、本を読むときは情景を浮かべながら読むことが多いのですが、本作は情景から頭に浮かび上がってくるような感じで、かなり読みやすいです。
    わかりやすいのは、坊っちゃんの行動・言動が真っ直ぐで正直なためと、行動が逐一インパクトを与えるためかと思います。
    文学小説としては異色ですが、これなら読めるという人も多々いると思います。

    坊っちゃん以外のキャラクターも立っていて、読んでいて楽しかったです。
    坊っちゃんは赴任早々に他の教師陣に「山嵐」、「赤シャツ」、「野だいこ」、「うらなり」、「狸」などとあだ名をつけるのですが、彼らにもそれぞれのポジションがあり、活躍の場があったことがまた本作を名作たらしめる要因だと思います。
    今出版されたとしても普通に楽しんで読める良作だと思います。文学の入り口としてもおすすめです。

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    2018年10月09日
  • 彼岸過迄(新潮文庫)

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    【何気なき,由々しき事事】定職に就かず,何か心に面白きことはないかと日がな考えながら過ごす敬太郎。そんな男の元に現れては去っていく人々の語るところから,世の中を透かし見て得るに至った思いを著した小説作品です。著者は,日本近代を代表する作家の夏目漱石。

    いくつかのエピソードと言っても良い話が収められているのですが,自分が特に興味深く読んだのは「須永の話」。煎じ詰めれば男女の恋仲の話なのですが,須永という人物が女性に叶わぬ恋をしているのではなく,叶わない恋に苛まれている自分を恋しく思っているのではないかと穿って(?)読み取ってしまいました。

    〜要するに人世に対して彼の有する最近の知識感情は悉く鼓膜の働らきから来ている。森本に始まって松本に終る幾席からの長話は,最初広く薄く彼を動かしつつ漸々深く狭く彼を動かすに至って突如として已んだ。けれども彼は遂にその中に這入れなかったのである。其所が彼に物足らない所で,同時に彼の仕合せな所である。〜

    久しく手にとっていなかった間に小説の読み方が自分の中でずいぶんと変化しているような☆5つ

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    2018年09月17日
  • 倫敦塔・幻影の盾(新潮文庫)

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    初めて読んだのは19歳(遠い目)あの時に読んだ、幻想がちで胃痛(真似した訳でなく、高校時代から胃カメラ飲んでた正味の胃炎持ちだった)持ちの私が、勝手に漱石に親近感を感じて読んで読んで読みまくった中で、特に共感してしまった作品。まぁ、ウルトラ有名作家の有名作なので細かい説明はしませんが、イギリス留学中にロンドン塔に行った漱石の旅幻想妄想エッセイのようなもんです。冒頭からロンドン塔の見物は一度に限ると思うと言い切ってしまったのは、なんでなのかというのが読み進めば理解できる。やっぱり漱石ってヲトメだなぁ、、と思いますねぇ。

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    2018年09月12日
  • リライトノベル 坊っちゃん

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    夏目漱石の「坊っちゃん」をあまり意識しないほうがいいかも。これを読んでから、実際の「坊っちゃん」はどんな話か読んでもらいたい。
    周囲の視線を気にするお年頃の中学生。個性豊かな先生たちと過ごす学園生活。

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    2018年08月22日