夏目漱石のレビュー一覧
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ネタバレ小学生の時に、かなり大ざっぱな児童むけリライト版『坊っちゃん』を読んだことはあるが、オリジナルの通読は今回が初めて。読後の感想を一言で述べると「面白い。が、いいのか、これ?」。
あらすじ紹介には「正義感に燃える若い教師の奮闘の日々」と書いてある。『金八先生』みたいな熱血教師ものかと早合点しそうになるが、だまされてはいけない。『坊っちゃん』は語り口こそ軽妙だが、のちに『こころ』という作品で人間の孤独についてげんなりするほど粘着質に書いた、あの夏目漱石の作品である。ハートフルストーリーを求めて読むと肩すかしをくらう。
第一に、主人公の〈おれ〉は理想に燃えて教師になったのではなく、たまたま恩師に -
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ネタバレ人間の何の変哲も無い営みを、猫の視点から、風刺めいて面白おかしく描写しているところが斬新でした。
登場人物たちが個性豊かで、すごく活き活きしています。漱石先生は生前、かなり風変わりな人だったそうなので、漱石先生の分身であるキャラクターたちがとても個性的なのは理解できました。特に主人公の友人である迷亭は強烈でした。
高等遊民であり自由人な登場人物達のとりとめのない会話がとにかく面白く、その様子が脳裏に描かれましたし、文章も読み応えがありました。
作中では、唐突に会話が始まったり、色んなシーンがめぐりめぐり出てきて、純文学だけどエンターテイメント性に富んでいて、飽きさせない作品でした。
作中に -
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漱石への興味は、私の場合、まず明治に確立されて今なおそのまま名文と感じられる文体です。これは主語動詞がかっちりした英語に堪能だったこと、新聞小説としてのひきしまった章だてをとっていたことなどの影響なのでしょうか。
自伝的な「道草」も、「片付かない日常」を描きながらも、やはり読ませるなあと感心します。
幼少時は里子にだされた、ロンドン留学をへて帰国その後はー、経歴では短く語られる間の事情を本人は書き残しています。
ぎりぎりの線で折り合いをつけていかなくてはならない親戚や縁者、反りの会わない妻。目指すところがあるのにという気持ちが「道草」の題名ににじみます。
しかし奥さんは、結構近代的で似 -
購入済み
現代にも通じる
これが1906年に発表されたものかと目を疑いたくなるほどの洗練された文章ということにまず驚かされる。
そして、約8万文字という短さも、当時付録として発表されたことからも頷ける。
しかし、内容は何回読んでも新しい発見があるほどの洗練された文章や構成。独特の軽妙な文章のリズムは「って」という促音の多い表現からと、現代のテキスト解析技術によって明らかにされている。
そう思うと「俺」よりも先に亡くなった清は、私達を見てどう思うだろうか。
答えが見つからないまま、また今日も読みふけってしまう。 -
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漱石前期三部作の第二作。
自他共に認める、高等遊民である主人公代助の親友の妻を愛してしまうことによって、実社会に落とし入れられていくまでを描く、漱石による愛の物語。
まず、代助が高等遊民を自称名乗るに当たり、それに合わせて描かれる高等遊民らしい描写に圧倒されるだろう。
特に漱石の他作品(特に初期作品)を読んだことがある人なら、彼の幅の広さを感ぜられる。
漱石自身が持つ百面相とも言える、作品毎の表情の変化は、それだけで読むに値するのかもしれない。
漱石は文学論上半自然主義派の余裕派に分類される作家であるが、この「それから」内では余裕を感じつつも、自然主義的要素が所々に見ることができる。(あく