夏目漱石のレビュー一覧
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文章の流れを追うのが難しい短編集ではあるが(夢十夜は読みやすい)漱石先生の豊かな語彙が遺憾無く発揮され読んでて気持ちの良くなる短編集。夢十夜の第一夜、第六夜は高校の時に課題でやったなと懐かしく思った。第六夜の「大自在の妙境に達している」というセリフどんだけ生きてても絞り出せる気がしない。132ページの行列は読んでてニヤニヤしてしまうほど微笑ましい描写で大好き。思い出すことなどでは修善寺の大患での漱石先生の日記のようなもので修善寺の出来事を詳しく知りたかった自分には大変興味深かった。吐血して危篤状態となったことの意味を深く考察した漱石先生の文章がとても切実で身に染みる。特に5章19章が大好き。漱石先生が大病にかかりそれをいかに文学に活かせるか深く考察しており、大変面白い。19章が本当に好き。漱石先生の人間観、社会観が垣間見える。ラストの「願わくは善良な人間になりないと考えた。」の文章を読んだ時は頭が晴れるような快感に襲われた。
漱石先生の文章心がざわついてる時に読むとスッキリする。 -
Posted by ブクログ
随分前に『三四郎』を読んで、漱石ふつうにおもしろいなと思っていたのですが、前期三部作の2作目にあたるこちらを読むのにだいぶかかりました。
『三四郎』はラストが少し物悲しさもありますが、全体的に青春小説風ですがすがしさがありましたが、こちらは最初から全体的に詰んでいるというか、代助自体は最初は悠々自適としていますが、明らかにそう長くは続かないだろうという不安感が、読者の方にも共有していて、この不発弾、いつか爆発するんだろうという緊張感がただよっていて、読みごたえがありました。
また、『三四郎』や『こころ』にも表れていましたが、時代が物質的文化へシフトしていくときに、時代は変わるけど、さて人のこころもそう簡単に変えることができるのだろうかという疑問が、この作品にも表れていたように思います。 -
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古本屋で目に入ったので何十年か振りに返しまし
た。
あの「智に働けば・・・」で始まる草枕です。
一人の画家のモノローグが主な内容になりますが、
このモノローグの語彙力は尋常じゃないです。
広辞苑で調べても載っていない言葉が次々と繰り
出されて、自分の見た事象や考えを表現していて
明治の知識人の凄みを感じます。
手に取った本は新潮文庫昭和61年2月25日82刷
あり、単価は何と200円です。
消費税なんて存在しておらず、バーコードもあり
ません。
たった200円程度で最高峰の文学に触れることが
できる国なんて他にあるのか?
これはすごいことだと皆、思うべきです。 -
Posted by ブクログ
小説なんか本を開いたところをいい加減に読んでいるのが楽しいという主人公の青年画家に「筋を読まなけりゃ何を読むんです。筋の外に何か読むものがありますか」と、山里の温泉宿で出会ったわけありな宿の娘の那美が返すのだが、本作はその那美の台詞に応えるように、筋以上に素晴らしい「画」がたくさん出てくる。宿での中庭越しに、少しだけ空いた障子の隙間に、一人つかっている湯船の湯煙越しに、主人公がとらえる那美の姿。人が誰も入ってこないような森の奥の池の椿の大群生、那美の兄の家から眺める蜜柑畑の広がり、出征する那美の従兄弟を停車場に送るまでの舟からの通り過ぎゆく眺め。それらが画題を切り取るように画家の目を通して描写される。文中、画の対象がないその場の空気のようなものを描きたいと主人公が言う場面があって、それは漱石自らの創作上のテーマのようにも感じたが、漱石がタルコフスキーや溝口や小津の映画を知ったら、画や詩だけでは表現できなかった方法の答えになったかも。いやむしろサイエンス・サルのような制作会社のアニメ作品こそ草枕の世界を最もうまく描けるかも知れないなぁなんて思った。百花繚乱のような漢語の修飾、床屋問答みたいなゆるい会話だけのような場面の、西洋近代文学のアンチテーゼのような表現の創出や、ラスト近くの近代文明主義の批判などの舌鋒の強さに、現代の世界各国のミュージシャンや映像クリエイターがやっているように、当時の文化の第一線であったろう文学者たちもお互いにバチバチやってたんだろうなぁと思ったりしたのだった。