夏目漱石のレビュー一覧
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ネタバレ終盤に、代助が堪らず三千代に会いに行く場面の「静けさ」が、どこか異様で印象的でした。読みながらふと、もしかして、三千代はすでに急死していて、代助が彼女の死後に平岡に弁明しているとしたら、平岡の激しい怒りにも納得がいくなと思いました。ただの不倫に対する怒りではなく、「死者に向けて今さら何を言っているんだ」というような、どうしようもない悔しさや虚しさがあるのではと。ラストは読者の私たちに未来の考察を委ねてきたので、独自の文学的な考察しちゃいました。(『門』がこちらの作品の続編説があるというのは、存じております)
しっかし、うちの旦那じゃないけど、告白するのおっそ!(高校時代、私が好きだった時に他の -
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この一冊がオムニバス。しかも「夢十夜」「永日小品」「思い出す事など」はそれぞれ10、24、33の独立した小品からなる。それゆえ、どこからでも、どれからでも読み出せる代わりに、一品一品を味わいながら読むと、とても数日では済まない(すなわち、時間をかけて楽しめる)。
なかでも「永日小品」には、唸るような小品が多い。たとえば「猫の墓」。飼っていた老猫が死にゆくさま、漱石自身ではどうにもならぬこと、まわりのみなが無関心なさま、しかし亡くなった途端に関心が向き、その死を悼む、それが感動的なまでに書かれている。「クレイグ先生」は、ロンドン時代に個人教授をしてもらった老先生の思い出。そのアパートの様子、先生 -
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夏目漱石が学習院大学で講演した内容をまとめた本。漱石自身が悩み抜いた人生について、わかりやすく伝えている。自分に刺さる部分が多い。
教師に向いてないのに教師の職に就いて、心の中は不本意なことをしているとなんだか煮え切らない気持ちでいっぱいなところも、悩んで書物を読み漁るところも自分と重なる。
結局、漱石はこうした懊悩を経て、自己本位の4文字を手にし、自分で概念を作り上げる必要があることを認識し、ここに目指すべきところがあったと自覚していく。
自分も今まさに悩み抜いているのであるが、漱石のように自己の道を切り開いていけるのかと考えさせられた。数年後の自分と比較して、答え合わせをしたい。 -
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50歳を過ぎて遅ればせながら読み始めた夏目漱石の読んだこと無くてもタイトルは知っていた本書。
アガサ・クリスティのタイトルが好きな私には『坊っちゃん』というタイトルに興味を惹かれなかったという阿呆みたいな理由で未読でしたけど、なんとなく想像していた内容であろうはずもなく、主人公は、なんて危なっかしい思考回路でそれでいて憎めない主人公なんだ。読み始めたら止まらない人物描写の嵐。私のような単純な人間は、やっぱり清が好きになるし、赤シャツと野田に怒りと憎しみを感じるし、山嵐には、ごめんって思う。そんな風に感情移入を余儀なくされるのである。
きっと、数多の素晴らしい感想が生まれたであろう名著に未熟な読 -
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文章の流れを追うのが難しい短編集ではあるが(夢十夜は読みやすい)漱石先生の豊かな語彙が遺憾無く発揮され読んでて気持ちの良くなる短編集。夢十夜の第一夜、第六夜は高校の時に課題でやったなと懐かしく思った。第六夜の「大自在の妙境に達している」というセリフどんだけ生きてても絞り出せる気がしない。132ページの行列は読んでてニヤニヤしてしまうほど微笑ましい描写で大好き。思い出すことなどでは修善寺の大患での漱石先生の日記のようなもので修善寺の出来事を詳しく知りたかった自分には大変興味深かった。吐血して危篤状態となったことの意味を深く考察した漱石先生の文章がとても切実で身に染みる。特に5章19章が大好き。漱
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随分前に『三四郎』を読んで、漱石ふつうにおもしろいなと思っていたのですが、前期三部作の2作目にあたるこちらを読むのにだいぶかかりました。
『三四郎』はラストが少し物悲しさもありますが、全体的に青春小説風ですがすがしさがありましたが、こちらは最初から全体的に詰んでいるというか、代助自体は最初は悠々自適としていますが、明らかにそう長くは続かないだろうという不安感が、読者の方にも共有していて、この不発弾、いつか爆発するんだろうという緊張感がただよっていて、読みごたえがありました。
また、『三四郎』や『こころ』にも表れていましたが、時代が物質的文化へシフトしていくときに、時代は変わるけど、さて人のここ -
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ネタバレ「恋は罪悪ですよ、よござんすか。そうして神聖なものですよ」
「自由と独立と己れとに充ちた現代に生れた我々は、その犠牲としてみんなにこの淋しみを味わわなくてはならないでしょう」
自由と独立の明治の時代、その裏で人々は孤独でもあった。私も先生もKも奥さんもお嬢さんも家族を失い孤独な身であった。
Kの自殺は、単なる失恋でもなく、といって現実と理想の衝突というだけでもなく、人間の孤独を感じたからではないだろうか。先生が叔父に謀られていたと気づいた時と同じように。
傷ついた本人が最もその寂しさを理解しているはずなのに、それでも先生はKを裏切ってしまった。そこで先生は「自分もあの叔父と同じ人間で