あらすじ
学生の私が尊敬する「先生」には、どこか暗い影があった。自分も他人も信じられないと語り、どんなに親しくなっても心を開いてくれない。そして突然、私の元に「先生」から遺書が届く。そこには、「先生」から人生の全てを奪った事件が切々と綴られていた。親友と同じ人を好きになってしまったことから始まる、絶望的な悲劇が――。人間の本質を見据え、その真実の姿を描ききった、漱石の最高傑作。
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Posted by ブクログ
かなり久しぶりに読んでみた。
前に読んだのは、学生時代だったはず。
当時の私、ちゃんと読めていたのだろうか。
「私」が憧れ、慕っている先生のイメージが、上中下と読み進めるうちにどんどん変化してしった。
先生の弱さや淋しさが感じられてきた時、妙な親近感と虚無感を同時に覚えた。人のこころは難しい…
読むタイミングによって、感じることもすごく変わりそうな作品。
またいつか読んでみたいと思う。
Posted by ブクログ
学生時代に授業の課題として部分部分知っていたものの、今回初めて通して読むことが出来ました。
改めて、いろんな感じ方がある作品だと思いました。「先生」の言動に対する「私」の捉え方に、同意したり反論したりしながら、あっという間に読み切ってしまった感じです。
人のこころは当人にしか分かりようがない、に帰結するのかも
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一言でいえば、裏切りの連続って感じだった。まず上「先生と私」で主人公の一人称が「私」というだけでてっきり女性かと思っていたら男性で、そこでえっっっとなった。やたらと先生に執着心を持つから、同性愛的な話なのかと思えば、中「両親と私」の最後の方で先生が死ぬという急展開でまたも「えっっっ」となった。正直ねちねち些細なことを細かく描写する文体?に飽き飽きしていたが、この展開でやっと読み切ろうという気持ちになったのは印象的だ。
最後の下「先生と遺書」では、上と中の伏線回収のような感じだった。この手紙は先生から私宛に書かれたものだが、「私」に向けた「あなた」が次第に呼んでいる自分自身のことを指しているのではないかと思うくらい、先生の経験したこと、思いに同情させられた。親友の恋する人を奪ってしまった、親友を間接的に殺してしまった自分に後ろめたく思ってしまう感情は誰にでもよくあるのだなぁというのは、この本が今日まで名著とされていることからもよくわかる。。親友Kが亡くなった理由は直接的に書かれていないが、もし先生と同じような理由だとしたら、良いタイミングだと思ったのかなと、はたまた先生とお嬢さんの結婚とは別件で、Kのある種のストイックさがかえって自分で自分をあえて苦しめる、追い込んでしまったからなのか、と思ったり、いろいろな要因が考えられて頭がごちゃごちゃした。
そうなると、次に思ったのは、上で先生に惹きつけられる私を描写する必要性だ。なんとなく、先生に異常なくらい執着する私が、どことなく先生に似ているなとも思う。もしかしたら、そういう私に警告するために、遺書を書いたのかもしれない。
いずれにしろ、同じ出来事を視点を変えてもう一度読ませるという書き方が、読者を引き込ませる夏目漱石の策略だったのだと思う。ほかにも、先生としいたけを結びつけた理由とか、私が父と先生とを比較する描写とか、全部の主人公を振り返ってからもう一度題名の意味ってなんだろうとか、もっと詳細を考えてみたいなと思った。中学生のときに挫折した本書を、数年後に読み切ることができて、自分の成長を感じたと同時に、自分の中での「意味深」な部分を消化できずにいられてもやもやともしている。
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本を好きになったきっかけの一冊。
教科書にも載ってて授業で詳しくやってたからか内容を少し理解出来たような出来ないような。
それでも読む度に違う感想がでる。私の中で。
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高校の時に教科書で出会ってから数年おきに読み直してるけど歳をとるにつれて感じ方が全然変わってすごい
先生と同じくらいの歳になった頃にまた読んでみたい
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人間の罪や本質、今の時代にも通じる寂しや優しさが詰まった作品でした。Kの手紙のもっと早く死ぬべきだったのに、なぜ今まで生きてきたのだろうという言葉に泣きました。
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解説書いてる菊田均先生、初めの知識系はタメになったけど、後半は自分で問題提起したものにハッキリした答を出さず話があっちこっちADHDの思考回路みたいに飛び飛びで、そのくせ問題提起だけは山積みになっていって、謎だけ残された感あって後味めっちゃ悪かったし分かりづら
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夏目漱石の代表作。
高校の時に読んだことがあるけど、久しぶりに再読しました。
何者にも傷つけられたり、傷つけたり、裏切った事がない子供な僕と、
叔父によって財産を奪われ、友を裏切り、自分を見失った大人の先生
2人の関係によって、人と人の関わり方の難しさが伝わってきました。
Kの死によって先生が、お嬢様と結婚してもその背後では、Kが自殺したあの夜が、いつまでも残っていて、それが先生の人生に影を落としているんだと思いました。
それによって、妻を死ぬ気で愛することも出来ずに、僕とも良い関係を築いていけないのは悲しく思いました。
読んでいく中で、夏目漱石のこころと太宰治の人間失格を比較をしました。
夏目漱石の先生は、いっ時も他人のために幸せを願わなかった所は無かったと思います。
人間失格の主人公は、知り合った母と娘の幸せの姿を見て、2人がこれからも幸せになって欲しいと祈って去って行く所がありました。
二つの作品は、結末は同じ感じがしますが、その部分が違う所だと思いました。
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内容をほぼ忘れていたので再読。
私から見た「先生」はすごく魅力的だと感じたのに、「先生」の独白の後だと、「先生」に対しての感じ方が180度変わる。
ほんとに「先生」はお嬢さんの過去を穢したくなかつたから罪を告白しなかったのか?
普通に知られたくなかったんじゃないの?
学生の時の独白を読むと「先生」にたいしてかなり気弱な印象をうける。
そんな「先生」の判然としない態度に永く振り回されてきたお嬢さんが可哀想でならない。
Kがすごく切ない。
豪胆だからこそ折れるのは簡単だったのかなと。
人物の心象をくどく語っていないにも関わらず、心の有り様とか移り変わりを態度の描写や言葉使いで表現しているのはすごいと思った。
多く使用されていた暗喩表現が、かなり現実から遠いところから持ってきているのに「そこ!」ってところにストンって落ちてきて、気持ちよかった。
いい本ですね。
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色んな作家さんがバイブル的に評価される一冊。
当時の時代錯誤はありつつ、よりヒューマニズムを感じる(ヒューマニズムの意味はあまり分かってません)
表現などじっくり文章を読みたい時に再読しています。
単純にもろいおっさんの話しなのですが、文に浸かると表現したくなる不屈の文学作品。
Posted by ブクログ
まさに作中の人物のこころを覗くような本。一つ一つの感情が緻密に書かれていて、人間の不器用さ狡猾さ、弱さが自分にもこう言うところあるわーと重ねさせられる。
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改めて読んでもやっぱり感情の表現がすごい作品だと思った。
内容は私と先生が出会って一緒に行動するようになり、最後に私宛てに書いた先生の遺書によって先生の真意がわかるようになる物語。
学生の頃教科書で読んだ事があって再読。その時は一部分しか読んでなかったが今回全部読んでみて、先生の遺書は人間の本質は悪意があると認めながも私には利己的に生きてほしくないためこれを書いたのではと思った。理由としては作中に私が利己的な行動をとる事が節々にあり、それは遺書の中で先生が語った過去自身の恋心のためKの気持ちを邪魔もしくは無視してお嬢さんとの関係を進めた先生と少し重なるところがある。
その果てに罪悪感に悩まされ何もできなくなってしまったから先生は死ぬ間際、同じ何かを感じた私に自分と同じ末路を辿ってほしくないためにこの遺書を私に送ったんじゃないかなぁと思った。
もっと奥が深いと思うのでいつかもう一度読み直したい作品。
Posted by ブクログ
漱石の後期三部作の第三作。
書生の「私」は、鎌倉の海水浴場で出会った「先生」の不思議な人柄に強く惹かれ、先生のもとに通うようになる。
そして、「先生」が、恋人を得るため親友Kを裏切り、彼を自殺に追い込んだ過去は、先生の遺書によって「私」に明かされてゆく。
下宿先の一人の女性「お嬢さん」に恋をした、親友どうしの「先生」とK。
Kがその胸の内を先生に打ち明けたにもかかわらず、先生はそれを握りつぶし、お嬢さんに結婚を申し入れる。
親友に裏切られ、恋に敗れたKは失意のうちに自殺する。
以後、先生は、自分がKを死に追いやったと罪悪感に苛まれ続ける。
「私」の目に世捨て人のように見えた先生は、お嬢さんと結ばれたにもかかわらず、この暗い過去のため、「死人のようにして」暮らしていたのだった…。
主人公が交代しながらも一貫して自我の苦悩を捉え続けてきた三部作ですが、ここへきて主人公が自殺してしまうという事態に。
「私は淋しい人間です」と言って静寂のうちに暮らす先生はひたすらに孤独。
誰にも相談できないでいた先生が、唯一その内心を明かせたのは「はらの底から真面目な」書生の「私」だった。
抱えきれないほどの痛みに、人はどう向き合うのか。
漱石が対峙し続けた問いは、今なお読者に響く。
Posted by ブクログ
みんな賢いのに生きるの下手すぎて悲しいよ泣泣
自殺の理由って本当にいろいろなことが絡み合っていて、言えること言えないことたくさんあるし、そのトリガーだけを見てあれこれ言うのはまさに死人に口なしだよねと思う
多分先生も気付いてないだけでもっと他にも理由とか、心に積もっていた出来事がたくさんあったんじゃないか、それと同じように死を引き止める出来事だってあったんじゃないか(だから10年も死を引き延ばしていたんじゃないのか)と思う
人のこころって本当に複雑でわからないね
Posted by ブクログ
久しぶりに読んだ。読む度に感想が異なる本。今回の感想。
当時超エリートだったであろう人達が、実家の家族から切り離され「淋しさ」を拗らせて自殺していったとうストーリーで読んだ。人の本性、汚い部分がストレートに描かれていて好き。
Posted by ブクログ
以前に授業で読んだ印象と、今回読んだ印象は違った。例えば、三角関係よりも先生の「こころ」の内のドロドロとした感触が印象に残った。
「私の心臓を立ち割って、温かく流れる血潮を啜ろうとしたからです。~中略~私は今自分で自分の心臓を破って、その血をあなたの顔に浴びせかけようとしているのです。私の鼓動が停った時、あなたの胸に新しい命が宿る事ができるなら満足です。」149p
そして、明治と現代の空気感の違いも新鮮だった。西洋文化を取り入れることが「エリート」の条件で和風を少し見下した論調や家父長制に見られるジェンダー意識など当時を反映した作品を読む体験ができたのは一つの収穫だと思う。
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たまたま友人と同じ人を好きになることは決して珍しいことでもないと思うが、なぜこんな寂しい結末になってしまったのか。
先生は妻の心を汚すまいと、自殺したKとの詳細を胸に秘めたままいなくなってしまった。話せば良かったのに、と無粋な自分は思ってしまった。親しい周りの人が次々に死んでしまうことのほうが妻の心にはつらいだろうと思った。
先生は大学卒業後も、Kに対する罪悪感などから死んだように生きていた。そんな先生を慕った「私」に、遺書で赤裸々に過去を打ち明けたが、妻が生きている以上はそれを全て秘密にしておくよう言い残していったのはなかなか酷なことだと思った。
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上「先生と私」を読んでる時は当然遺書の内容は知らない状態で読んでいたので、単純に先生と私、その間にいる妻との話を読んでいるだけだったので何も気には留めなかった。
しかし先生の遺書の話になってから、叔父に裏切られたり、親友のKの自殺の話を見てガラリと最初の話の捉え方が変わってしまった。
こんなにも取り返しのつかないことってあるのだということを知った。
Posted by ブクログ
高校の時の現代文の教科書には後半のKの話の、特に大事な部分が載っていたので興味を持ったけれど
、最初からちゃんと読んでみると先生の過去がなかなか分からない感じにサスペンスのような要素もあって面白い。
吉永みち子の解説?には先生のことをインテリ症候群(?)のように書いてあって、確かにそんな気もするけど、先生のような境遇の人だとそうなっても仕方がないかもしれません。
「人間らしくて」私は好きです。
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夏目漱石の『こころ』は、太宰治の『人間失格』と共に累計発行部数を争っているらしい。『人間失格』は前に読んだけど、『こころ』は未読だった。日本で最も売れている作品がどんなものなのか、興味があった。
この作品は、「上 先生と私」、「中 両親と私」、「下 先生と遺書」の3部に分かれている。主人公の「私」と「先生」との関わりが、作品のほとんどを占めている。
「私」は夏の鎌倉で「先生」と知り合い、それから頻繁に「先生」の家に通うようになる。「私」はなぜこれほど「先生」に好意を持つようになったんだろう? 後からその辺りの理由が明らかになるのかと思ったけれども、特にそれらしいことは明らかにならないまま物語は終わる。その後に巻末の解説を読むと、「外国では『こころ』は同性愛の小説として読まれている」とあった。それを頭に入れて再読すると、「私」の行動は違ったように感じられる。鎌倉で「先生」と知り合った辺りは一目惚れしたように思えてくる。元々、偶然同じ時期に鎌倉の海に来ていただけの赤の他人だったのに、その後親密に会話ができる間柄になっている。そんな関係に持っていけた「私」の積極性は、恋愛感情から来るものだとしても違和感がない。作品を読む時の視点が変わると、感じ方も変わるという貴重な体験ができた。
この作品はそれほど長くもなく、登場人物も多くない、割とシンプルな構成になっていると思う。それなのに、読んでいると色んなことを思い起こさせる。それぞれの人物の関係性に注目して読むと、また新たな発見がありそうだ。
・「先生」と「私」の関係
・「両親」と「私」の関係
・「先生」と奥さんの関係
・「先生」とKの関係
「両親」と「私」の関係は、とても共感した。「私」と同じく地方から東京に出てきている人はわかってもらえるんじゃないかと思う。作中で『儒者の家に切支丹の臭いを持ち込むように』という表現がある。生まれ育った実家に帰ったのに、どうも調和しない。数日もいれば、早く東京に帰りたくなる。そういう感覚は明治の時代から変わらないんだな、と思った。
Posted by ブクログ
100年前でもここまでの感情を表現しつつ物語が書けるものかと感心。つくづく人間とは感情の生き物で美しい面も醜い面も持つ異質な生物であると考えさせられる
Posted by ブクログ
開始: 2023/11/1
終了: 2023/11/8
感想
もう少し人が弱いことを知っていれば。周りの人も自分と同じように煩悶し踠いていると気づけば。そうすれば先生も世間に顔向けしていたのに。
Posted by ブクログ
国語の教科書に載ってた印象があり、大人になってみてから読むとどのような感想を持つのだろうと思い読んだ。
読む前の印象に残っていたのは、先生とKとお嬢さんの三角関係の物語だと思っていたが、想像以上に重々しく哀愁的な作品だった。印象に残っていた話が登場するのが、三部の「先生と遺書」だったので、一部と二部の内容は飛ばしてもよいくらい薄く感じた。
先生の人柄が今で言う引きニートで、コミュ障であるゆえのもどかしさが生んだ悲劇だとも思ったが、時代的な側面を知ると少しは気持ちに寄り添えるのかもしれないと感じた。
遺書を受け取った「私」や妻が、この後、どのような行動をするのか考察してみたい。
解説を読んで、海外では同性愛の本として読まれていることには驚いた。