あらすじ
『吾輩は猫である』を1905年に発表し、文壇に登場してから絶筆となった1916年の『明暗』まで、10年余りの作家活動で人生を深く考察した夏目漱石。その読み手として著名な直木賞作家・出久根達郎氏が、「漱石の作品のすべてが人生を論じている」として選んだ随筆、講演、書簡などから、人間と人生を凝視した警句と人生訓を読み取る。(講談社学術文庫) ※この電子書籍の底本である、講談社学術文庫の原本は、2001年4月に講談社より講談社文芸文庫として刊行されました。『漱石人生論集』は、講談社学術文庫を底本とし電子化した電子書籍のほかに、講談社文芸文庫を底本とし電子化した電子書籍も配信中です。電子書籍の講談社文芸文庫版には、電子書籍の講談社学術文庫版に収録されている「解説」(出久根達郎)が収録されていません。
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Posted by ブクログ
夏目漱石の人生哲学がわかる文章を集めた本。
夏目漱石、やっぱり好きだ。すっごく優しい人なんだと思う。人を差別しない。差別したり、意思を尊重しない勝手な人に怒る。客観的に物事を見れるすごい人なんだと改めて思った。先生として多くの人に慕われてたのはそんな理由なんだと勝手に思った。夏目先生のお言葉、心に刻んで生きていきます!
Posted by ブクログ
夏目漱石の小説が好きなので為人を知りたく読んでみたわけですが、誰かに当てた手紙、講演内容、どこかの誌面へ寄せた文書などバラエティに富んでいます。
人生論集というだけあり、漱石の人生論を垣間見ることができる良書です。
まず。愚見数則は、教訓集のようなもの。
人として基本的なことだとを語っているわけですが、全てできているかというと微妙だなぁと我を振り返り反省したり、そうだよなぁと赤線を引いたり。
人を屈せんと欲せば、先ず自ら屈せよ
などは成功すればするほど高飛車になっていくであろうものなのに、漱石自身が語っているのが素晴らしいと思います。
また、私の個人主義は現代の多様性の話に通ずるもの。
読書会で読みたいくらいです。
学習院の入学式の祝辞で話した全文なのですが、まずは学習院に入る時点で君たちは権力者側だよと語る。
これは、上野千鶴子さんの東大のスピーチを思い出しました。
そして、自分の力で道を切り拓けと。
自分で見つけた自分の個性を大事に。
しかし、他人を引き摺り込むな、他人の個性も尊重せよ。
そんなことを言っています。
自分の価値観だけで相手を勘定し、判断するのはなんと危険なことかと感じます。
その上、相手を変えようとするなんてもってのほか。
ただ、組織に入ると案外普通にこういうことが罷り通るんですよね。
自分は管理職コースなので、この思想は忘れずに生きていきたいです。
Posted by ブクログ
この本では、漱石が書いた手紙や随筆の中から題名の「人生論」に見合った部分が選別されて年代順に並べられている。
手紙はそれぞれ全文を載せているようだが、随筆『硝子戸の中』や『思い出す事など』については一部分だけを載せている。おそらく漱石の「人生論」が表れている箇所だけを編集者なりに抜粋しているのだろう。
通して読んでみて、幾つかの有名な小説を読んだだけでは中々見えてこない漱石の内なる様々な思想・意志が明確に伝わってきた。そしてその心の熱さに驚き、感動した。励まされた。漱石がこんなに熱い男だとは知らなかった。
『吾輩は猫である』、『坊っちゃん』、『明暗』などの作品名こそ人口に膾炙しているが、漱石が一体どんな思いを込めようとしたのかは作品を読んだだけでは中々判然としない。しかしこの本を読むと漱石の各作品への思いを知ることができる。その上でもう一度作品を読んだらきっと様々な発見ができるに違いない。私も早速『坊っちゃん』を再読したい気分である。
一方で、特に書簡の章で強く感じられるのだが、この本は注釈が少ない。なぜ漱石はこの手紙でこの人物(例えばイブセン)の名を挙げたのか、或いは森田草平や和辻哲郎らへの書簡は一体何に対する返事なのか、などの説明が全く無い。そのため漱石がここで何を言いたがっているのか深く理解することが時折できなくなる。その書簡・随筆が書かれた背景についての注や固有名詞についての注を入れるなど、もう少し読者の理解をサポートする要素があっても良いだろう。
この本の欠点はその辺りと言えるが、なまじっか注釈ばかりあってもかえって読みにくいかもしれない。注がほぼ無いから220ページほどの薄さで収まっているわけである。この薄さで漱石の「人生」に対しての驚くほど熱い思い・意志が充分感じ取れるという点だけで大きな意義がある。
そう考えればこの本は、「夏目漱石という名前は知っていて作品もいくつか読んだことがある」ぐらいの人がより一層漱石に関心を寄せることができる再導入書と言っても良いだろう。
ポケットの中に常に入れておきたい。少ないページの中に漱石の心が凝縮された良書。