夏目漱石のレビュー一覧

  • 夢十夜 他二篇

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    「こんな夢を見たんだ」と話を切り出すことがある長男から借りた「小品」と呼ばれる短編集。気軽に読めるが内容は濃く、漱石の人となりを感じる。『夢十夜』はちょっと不気味。特に「第七夜」はホントの夢に出てきそう。一転、『文鳥』は微笑ましく展開するが、最後はちょと複雑。『永日小品』はブログ的なのりで漱石を味わえる。長男の“切り出し”は『夢十夜』の影響なのかな。

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    2019年07月14日
  • 行人(新潮文庫)

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    学問だけを生きがいとしている一郎は、妻に理解されないばかりでなく、両親や親族からも敬遠されている。孤独に苦しみながらも、我を棄てることができない彼は、妻を愛しながらも、妻を信じることができず、弟・二郎に対する妻の愛情を疑い、弟に自分の妻とひと晩よそで泊まってくれとまで頼む……。「他の心」をつかめなくなった人間の寂寞とした姿を追究して『こころ』につながる作品。

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    2019年06月26日
  • 道草(新潮文庫)

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    ネタバレ

    義理の父親が現われて、手切れ金を渡すまでを描く小説だと思っていた。もちろん、主要な軸にはなっているが、むしろ健三をとりまく親類連中との金銭関係が広く綴られている。健三は、彼らに必ずしも好意的ではない。特に妻との関係、会話は冷えたもので、却ってユーモラスなぐらいである。
    漱石の自伝的小説ということから、かなり事実に近いのだろうと思いながら読むと、面白い。

    当時は国民年金がないから、年を取るまでに財産を作り上げるか、誰かから援助を貰うしかなかったのだろうか。

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    2019年05月19日
  • 硝子戸の中(新潮文庫)

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    夏目漱石は読みにくいと、勝手に決めていたところがあった。私には彼の思想についての理解はほとんどないに等しいが、本作品はエッセイとしてみると、とてもフランクで漱石を身近に感じられる素朴さがあった。
    身体の調子が思わしくなく、随所に死を意識するような文章が出てくるが、あまり堅苦しくなく、ユーモラスに軽いタッチで触れているので読みやすかった。

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    2019年02月05日
  • 明暗(新潮文庫)

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    夏目漱石の小説は、どこか馴染めないところがある。上流階級のエリートで、男性中心という世界観が自分とは縁遠いという感じを起こさせるからだ。ただ、本作はお延という女性の心情を事細かに描写していて、感情移入できる感じがあった。天真爛漫な清子の域には、とても達せそうもない。

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    2019年01月19日
  • 吾輩は猫である

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    超有名な作品 学生の頃に読んだ。超有名な作品だが、最初の1文しか印象に残っていない。
    猫の心情を綴る視点は、作品が発表された当時は革新的だったのだろう。

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    2025年12月09日
  • 彼岸過迄

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    夏目漱石の後期三部作1作目。
    後期三部作は本作「彼岸過迄」、「行人」、そして「こころ」です。

    本作はいくつかの短編が集まってできており、それぞれの短編は別の時期に別の雑誌に収録されました。
    各短編は一続きとはなっておらず主人公も異なりますが、物語としては一貫しており、全く別の作品というわけではありません。
    序文に夏目漱石は「個々の短篇を重ねた末に、その個々の短篇が相合して一長篇を構成するように仕組んだら、新聞小説として存外面白く読まれはしないだろうか」と述べており、本作はその思惑を元に作られています。
    各短編は主人公が異なりますが、基本的には主人公は「田川敬太郎」という青年で、他処から話を聞

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    2019年01月03日
  • 彼岸過迄(新潮文庫)

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    娶る気もないくせに嫉妬をする市蔵に千代子が卑怯だと伝えるシーンがやはり印象に残る。
    でも彼の考え方は割と現代的で分からんくもないが…最後は希望と捉えたいところ。
    しかしこの作品、夏目作品としては結構新鮮なつくりだった。
    これで後期3部作も残り1つ‼︎
    買っとこ。

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    2018年11月25日
  • 二百十日・野分(新潮文庫)

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    阿蘇に旅した“豆腐屋主義”の権化圭さんと同行者の碌さんの会話を通して、金持が幅をきかす卑俗な世相を痛烈に批判し、非人情の世界から人情の世界への転機を示す『二百十日』。その理想主義のために中学教師の生活に失敗し、東京で文筆家としての苦難の道を歩む白井道也と、大学で同窓の高柳と中野の三人の考え方・生き方を描き、『二百十日』の思想をさらに深化・発展させた『野分』。『二百十日』が幾分のんきで好きですが。

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    2018年11月20日
  • 虞美人草

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    夏目漱石が教職を辞して職業作家として執筆した第一作目の作品。
    漱石は教職の傍らに発表した作品、「吾輩は猫である」、「坊ちゃん」、「草枕」、「野分」ですでに文名が大いに上がっており、大学の講義ノートを作ることが苦痛であることを漏らしていた時期、白仁三郎(後の坂元雪鳥)の仲介から朝日新聞社に入社しました。
    当時の新聞社は今で言うベンチャー企業のようなもので、不惑を過ぎた数えで41歳の漱石には、その転職は冒険だったと思います。
    また、部数も影響力も今と比較してそれほどないとはいえ、多くの人に目が留まる新聞紙上での連載であること、新聞社から異例の待遇を持って受け入れられていることから、漱石の緊張は想像

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    2018年11月17日
  • 草枕

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    夏目漱石の代表作の一つです。
    冒頭の一文、「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」と、「吾輩は猫である」の脱稿から約2週間ほどで完成させたということで有名な作品。
    夏目漱石の初期の作品の一つで、本作発表時はまだ職業作家ではなく、夏目漱石は教職の傍ら執筆活動を行っていました。
    氏の初期の名作と名高く、エンタメ色の強かった全2作(「吾輩は猫である」、「坊っちゃん」)と違い、芸術に対する考え、存在意義や、西洋文化と日本の世の中のあり方に関する考えが滔々と論じられており、比較的読みにくい作品となっています。

    人の世に

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    2018年10月22日
  • 夢十夜 他二篇

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    なんとも不思議な世界観の見せてくれる作品。短編だが味わい深い。持っていた漱石の印象とは少し異なる。

    後半の2作は、作者の日常を描いている。文鳥に対しては、
    飼ったからには面倒を見てほしいと思った。死なせたのは下女のせいにせずに。この作品によらず、所々少し冷酷な点が垣間見えるが、それがまたリアルなのかもしれない。

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    2018年10月20日
  • 倫敦塔・幻影の盾 他五篇

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    文体も主題もそれぞれ違う短編集の中でも、一際鮮やかかつ濃い存在感を放つのはやはり表題作?の一つである倫敦塔。過去の風景がまるで今現在見聞きしているかのように描かれる様は、その内容の凄惨さと相まってより艶やかに、湿り気のある感を読者に抱かせる。決して読みやすくはなかったけれど、過去の空想を現在形の文章で表す手法は面白かった。幻影の盾、一夜、薤露行は文体が読み慣れないせいかそもそも意味がよく分からなかったし、カーライル博物館、琴のそら音、趣味の遺伝は、漱石の小説としては少し物足りない感じが、、、でも現代の小説でもそんなの腐るほどあるよなあ。この全体的に薄暗い短編集を、吾輩は猫である、坊ちゃんと同時

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    2018年10月17日
  • 坊っちゃん

    ネタバレ 購入済み

    キチガイ、下等、田舎者・・・。

    学生時代にとりあえず有名な小説だからと読んだ。ただ。その時の記憶は「読んだ」こと以外ない。内容も感想も記憶が曖昧で、読了したかどうかすら定かでなかった。
    一方で。漱石は学生時代に読むのと漱石と同じ年代になってから読むのとでは感想が変わってくるという評論家の話も頭の片隅にずっとあって。。。たまたま鬼のように暇な時間が出来た&今やスマホで&&タダで読める!とうい時代になったので再度じっくり読んでみた。
    読んでみて記憶にあったのは冒頭の数ページで。ある意味新鮮に楽しめた。
    どこが新鮮だったかというと。タイトルにあるとおり。とにかくやたら「気違い」「~だから田舎者は下等である」「教養がないから仕

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    2018年09月01日
  • 道草(漱石コレクション)

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    私小説と言われているようですが、夏目漱石本人がモデルと思しき健三がひたすら親戚面々から金を無心される話です。えーなにこれー!
    いい加減にしろと呆れながらも何だかんだ都合をつけてやる健三に、私も妻・お住と同じように苛立ちが募ってしまいました。
    漱石って夢十夜とか三四郎の美彌子とか、儚く透けてみえるような幻想的な女性を描いてるイメージが強くありましたが、お住は地に足の着いた芯のある女性。
    当時はまだまだ亭主関白な夫に三歩下がって付き従う妻、という夫婦観だったのでしょうが、夫にお小言もぶつけるし、気に入らないことがあればガンガン言い返して諍いを物ともしない強さが素敵でした。
    「単に夫という名前がでて

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    2022年02月22日
  • 明暗(新潮文庫)

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    夏目漱石の最後の大作、そして未完の作品。漱石の小説の特徴でもある、登場人物の心理描写がかなり詳しく描かれている。また漱石お得意の、仕事をしないでふらふらしている人も出てくる。
    明治時代の、若く結婚半年の夫婦と取り巻く家族や友人の物語。未完なのでテーマは想像するしかないが、夫婦であってもお互いを理解しあい、信頼しあうのは簡単ではないということだろうか。
    夫の津田は、延子との結婚の前に付き合っていた女性がいたが、その女性が突然他の人と結婚をしたため、津田もすぐに延子と結婚した。延子は夫の自分に対する愛情に自信が持てず、持ち前の勘の鋭さでその女性の存在に気が付く。津田は手術後の療養の名目で温泉に行く

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    2018年07月02日
  • 彼岸過迄(新潮文庫)

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    昔読んで「面白かったなー」という記憶があるけれど、どんな話だったかあまり思い出せない。蛸が出てくる?
    ヘビのステッキが重要な小道具だった気がする。
    もう一度読み返したい

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    2019年10月10日
  • 虞美人草(新潮文庫)

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    小野は学問に優れた男で、東京帝大の銀時計を授与されるほどだが
    性格は優柔不断で、人の意見や雰囲気に流されるばかりだった

    宗近は呑気でいいかげんな性格のために、軽く扱われがちだ
    しかしその実、有言実行の男でもある

    甲野はいつも深刻な顔で超然ぶっており、周囲の反感を集めるが
    それは財産を独占しようとする母親への、愛と不信に引き裂かれてのこと

    藤尾は甲野の妹、美人で、才気走ってて、高慢
    クレオパトラに自らを重ね、男を意のまま支配することを愛情と信じる

    糸子は宗近の妹で、家庭的な女
    詩情を解さないとして、藤尾からひそかに軽蔑されているが、気にしない

    小夜子は小野の恩師の娘にあたり、暗黙のうち

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    2018年05月29日
  • 坑夫(新潮文庫)

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    漱石ファンからは支持されていると帯にあった。特に余韻もなく、普通に起伏なく盛り上がらず終わるので、それがいいという向きにはいいのかもしれない。それが故にあまり後まで残らないと感じた。

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    2018年05月03日
  • 三四郎

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    大学進学のために上京してきた三四郎が、構内の池のほとりでひとめぼれした女性との顛末と、その周囲の人々との学生生活を描いた青春小説。
    美禰子という女性の知性的でミステリアスで、落ち着いた魅力に三四郎のみならず私まで惹かれてしまった。魔性感を感じさせない魔性の女だ。三四郎の気持ちにも気づいていたのは言うまでもなく、なんなら美禰子も三四郎のこと好きだったんだと思うけど、ああいう将来を選んだのは何故なのか。ストレイ・シープ。なんたる思わせぶりで危うげなことか。ヘリオトロープの瓶。四丁目の夕暮。ストレイ・シープ。
    偉大なる暗闇とか、哲学の煙とか、ほかにも印象的な言葉がいくつかでてくる。
    全体的に遅々とし

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    2018年03月18日