夏目漱石のレビュー一覧

  • 二百十日・野分(新潮文庫)

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    阿蘇に旅した“豆腐屋主義”の権化圭さんと同行者の碌さんの会話を通して、金持が幅をきかす卑俗な世相を痛烈に批判し、非人情の世界から人情の世界への転機を示す『二百十日』。その理想主義のために中学教師の生活に失敗し、東京で文筆家としての苦難の道を歩む白井道也と、大学で同窓の高柳と中野の三人の考え方・生き方を描き、『二百十日』の思想をさらに深化・発展させた『野分』。『二百十日』が幾分のんきで好きですが。

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    2018年11月20日
  • 虞美人草

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    夏目漱石が教職を辞して職業作家として執筆した第一作目の作品。
    漱石は教職の傍らに発表した作品、「吾輩は猫である」、「坊ちゃん」、「草枕」、「野分」ですでに文名が大いに上がっており、大学の講義ノートを作ることが苦痛であることを漏らしていた時期、白仁三郎(後の坂元雪鳥)の仲介から朝日新聞社に入社しました。
    当時の新聞社は今で言うベンチャー企業のようなもので、不惑を過ぎた数えで41歳の漱石には、その転職は冒険だったと思います。
    また、部数も影響力も今と比較してそれほどないとはいえ、多くの人に目が留まる新聞紙上での連載であること、新聞社から異例の待遇を持って受け入れられていることから、漱石の緊張は想像

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    2018年11月17日
  • 草枕

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    夏目漱石の代表作の一つです。
    冒頭の一文、「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」と、「吾輩は猫である」の脱稿から約2週間ほどで完成させたということで有名な作品。
    夏目漱石の初期の作品の一つで、本作発表時はまだ職業作家ではなく、夏目漱石は教職の傍ら執筆活動を行っていました。
    氏の初期の名作と名高く、エンタメ色の強かった全2作(「吾輩は猫である」、「坊っちゃん」)と違い、芸術に対する考え、存在意義や、西洋文化と日本の世の中のあり方に関する考えが滔々と論じられており、比較的読みにくい作品となっています。

    人の世に

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    2018年10月22日
  • 夢十夜 他二篇

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    なんとも不思議な世界観の見せてくれる作品。短編だが味わい深い。持っていた漱石の印象とは少し異なる。

    後半の2作は、作者の日常を描いている。文鳥に対しては、
    飼ったからには面倒を見てほしいと思った。死なせたのは下女のせいにせずに。この作品によらず、所々少し冷酷な点が垣間見えるが、それがまたリアルなのかもしれない。

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    2018年10月20日
  • 倫敦塔・幻影の盾 他五篇

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    文体も主題もそれぞれ違う短編集の中でも、一際鮮やかかつ濃い存在感を放つのはやはり表題作?の一つである倫敦塔。過去の風景がまるで今現在見聞きしているかのように描かれる様は、その内容の凄惨さと相まってより艶やかに、湿り気のある感を読者に抱かせる。決して読みやすくはなかったけれど、過去の空想を現在形の文章で表す手法は面白かった。幻影の盾、一夜、薤露行は文体が読み慣れないせいかそもそも意味がよく分からなかったし、カーライル博物館、琴のそら音、趣味の遺伝は、漱石の小説としては少し物足りない感じが、、、でも現代の小説でもそんなの腐るほどあるよなあ。この全体的に薄暗い短編集を、吾輩は猫である、坊ちゃんと同時

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    2018年10月17日
  • 坊っちゃん

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    キチガイ、下等、田舎者・・・。

    学生時代にとりあえず有名な小説だからと読んだ。ただ。その時の記憶は「読んだ」こと以外ない。内容も感想も記憶が曖昧で、読了したかどうかすら定かでなかった。
    一方で。漱石は学生時代に読むのと漱石と同じ年代になってから読むのとでは感想が変わってくるという評論家の話も頭の片隅にずっとあって。。。たまたま鬼のように暇な時間が出来た&今やスマホで&&タダで読める!とうい時代になったので再度じっくり読んでみた。
    読んでみて記憶にあったのは冒頭の数ページで。ある意味新鮮に楽しめた。
    どこが新鮮だったかというと。タイトルにあるとおり。とにかくやたら「気違い」「~だから田舎者は下等である」「教養がないから仕

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    2018年09月01日
  • 道草(漱石コレクション)

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    私小説と言われているようですが、夏目漱石本人がモデルと思しき健三がひたすら親戚面々から金を無心される話です。えーなにこれー!
    いい加減にしろと呆れながらも何だかんだ都合をつけてやる健三に、私も妻・お住と同じように苛立ちが募ってしまいました。
    漱石って夢十夜とか三四郎の美彌子とか、儚く透けてみえるような幻想的な女性を描いてるイメージが強くありましたが、お住は地に足の着いた芯のある女性。
    当時はまだまだ亭主関白な夫に三歩下がって付き従う妻、という夫婦観だったのでしょうが、夫にお小言もぶつけるし、気に入らないことがあればガンガン言い返して諍いを物ともしない強さが素敵でした。
    「単に夫という名前がでて

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    2022年02月22日
  • 明暗(新潮文庫)

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    夏目漱石の最後の大作、そして未完の作品。漱石の小説の特徴でもある、登場人物の心理描写がかなり詳しく描かれている。また漱石お得意の、仕事をしないでふらふらしている人も出てくる。
    明治時代の、若く結婚半年の夫婦と取り巻く家族や友人の物語。未完なのでテーマは想像するしかないが、夫婦であってもお互いを理解しあい、信頼しあうのは簡単ではないということだろうか。
    夫の津田は、延子との結婚の前に付き合っていた女性がいたが、その女性が突然他の人と結婚をしたため、津田もすぐに延子と結婚した。延子は夫の自分に対する愛情に自信が持てず、持ち前の勘の鋭さでその女性の存在に気が付く。津田は手術後の療養の名目で温泉に行く

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    2018年07月02日
  • 彼岸過迄(新潮文庫)

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    昔読んで「面白かったなー」という記憶があるけれど、どんな話だったかあまり思い出せない。蛸が出てくる?
    ヘビのステッキが重要な小道具だった気がする。
    もう一度読み返したい

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    2019年10月10日
  • 虞美人草(新潮文庫)

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    小野は学問に優れた男で、東京帝大の銀時計を授与されるほどだが
    性格は優柔不断で、人の意見や雰囲気に流されるばかりだった

    宗近は呑気でいいかげんな性格のために、軽く扱われがちだ
    しかしその実、有言実行の男でもある

    甲野はいつも深刻な顔で超然ぶっており、周囲の反感を集めるが
    それは財産を独占しようとする母親への、愛と不信に引き裂かれてのこと

    藤尾は甲野の妹、美人で、才気走ってて、高慢
    クレオパトラに自らを重ね、男を意のまま支配することを愛情と信じる

    糸子は宗近の妹で、家庭的な女
    詩情を解さないとして、藤尾からひそかに軽蔑されているが、気にしない

    小夜子は小野の恩師の娘にあたり、暗黙のうち

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    2018年05月29日
  • 坑夫(新潮文庫)

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    漱石ファンからは支持されていると帯にあった。特に余韻もなく、普通に起伏なく盛り上がらず終わるので、それがいいという向きにはいいのかもしれない。それが故にあまり後まで残らないと感じた。

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    2018年05月03日
  • 三四郎

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    大学進学のために上京してきた三四郎が、構内の池のほとりでひとめぼれした女性との顛末と、その周囲の人々との学生生活を描いた青春小説。
    美禰子という女性の知性的でミステリアスで、落ち着いた魅力に三四郎のみならず私まで惹かれてしまった。魔性感を感じさせない魔性の女だ。三四郎の気持ちにも気づいていたのは言うまでもなく、なんなら美禰子も三四郎のこと好きだったんだと思うけど、ああいう将来を選んだのは何故なのか。ストレイ・シープ。なんたる思わせぶりで危うげなことか。ヘリオトロープの瓶。四丁目の夕暮。ストレイ・シープ。
    偉大なる暗闇とか、哲学の煙とか、ほかにも印象的な言葉がいくつかでてくる。
    全体的に遅々とし

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    2018年03月18日
  • それから(まんがで読破)

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    まんがで読破を読破するシリーズ。
    「それから」は学生の頃に読んだことがあるけれど、三部作なんて明治のダメ人間が許されぬ愛に走る話ばかりだから、ごっちゃになっていて細かいところまでは覚えていなかった。
    無理に再読する必要はないですね。

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    2018年03月15日
  • マンガで読む名作 三四郎

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    原作に忠実。
    それにしても、目を伏せて意味ありげな言葉、それも聖書的な、を呟いて去る女って、いやーねー。

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    2018年03月12日
  • 虞美人草(新潮文庫)

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    ネタバレ

    跡継ぎ問題、結婚問題、それぞれに色んな思惑があり、それぞれの主観を聞くと分からなくもないなと思える言い分ばかりだが、人間関係のすれ違いが続くのは読んでいて苦しくなった。
    知っている者が知らない者を馬鹿にする世の中は淋しい。
    藤尾の情念にあてられたようなところがあるが、屈辱と怒りで理性を失いつつある女の静かな凄みを、怖いもの知らずでもっと読んでみたい。藤尾が、屈辱の場面や台詞を繰り返し思い出して怒りを増幅させていくところなんかは、自分の中からも感情が沸々としてくるようだった。
    そういう時代なのだから仕方ないとは思いつつも、結婚の自由さが無く、男達に決められていくのがどうも腑に落ちなかった。すべて

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    2018年03月09日
  • 彼岸過迄(新潮文庫)

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    彼岸って言っても今どきいつ頃のことだか良く分からんし、むしろ島なのか?丸太は持ったのか?って感じになるし、彼岸島迄?って思う人もいるしいないしで、まぁでも吸血鬼は出てこない平和な話だった。
    でもっていつもの昔の文学に出てくる、ぶつぶつと面倒くさい事ばっかり言って何もしないニートがぶつぶつ言ってるわけなんだけども、そんなぶつぶつ言ってるだけなのに、女の子がしっかりついてくるという、またこれか!って言わずにはいられない展開。そしてその展開がどうなったのか分からないまま終わってしまうという、このモヤモヤをどうしてくれようか。
    あと鎌倉在住者として、鎌倉近辺がめっさ田舎というか、スラム漁師村的に語られ

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    2017年12月22日
  • 坊っちゃん

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    松山旅行の前に

    松山旅行に行く2日前に思い立って読んでみました。『坊ちゃん』の登場人物が観光名所の至る所に居たので、知らないで行くよりも楽しさが倍増しました。

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    2017年11月18日
  • 虞美人草(新潮文庫)

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    捻くれてはいたけど、藤尾は小野に一途な様に見えたし、このラストはちょっと気の毒に感じた。宗近の「天地の前に自分が嚴存しているという観念は、真面目になってはじめて得られる自覚だ。」は至言

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    2017年10月14日
  • 道草(新潮文庫)

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    ダラダラと長い坂道を登るように怠い、その癖良い展望も望めない。「門」と違って脱世間的ですらない。生々しい人間関係とお金に縛られながら苦悩する夫婦の物語。
    道草を読むと、漱石が奥さんに対して相当な独りよがりの態度を取っていたことがわかる。その態度に共感してしまったのも、読んでいて何となく辛かった原因だったのかもしれない。
    本作品に限らず、漱石の小説は現代文の問題で棒線が引いてあって「このときの登場人物の心情を述べよ」なんていう問題が付きそうな文章があると、すぐ次の文章で漱石先生が勝手に答えを解説しだすような部分が多々ある。想像力を働かせたい読者には余計なお世話かもしれないが、自分には寧ろこれくら

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    2017年10月14日
  • 彼岸過迄(新潮文庫)

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    ネタバレ

    印象に残っているのは宵子の死の場面。漂う線香の煙が見えるようだった。骨を拾う時の、もうこれは人じゃないという感じがリアルで、市蔵の言葉があまりに冷淡で少し気になる。
    読み進めていくうちに市蔵に対するイメージが変わり、次第に共感を覚えるようになっていった。空虚な努力に疲れていた、という一文が刺さった。

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    2017年10月09日