夏目漱石のレビュー一覧
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地の文が文語調で現代人には少々読みにくい。それでもものすごい美文だと思うが、なぜそう思うかは説明しにくい(笑)
解説によると漱石は本作の文章を書くにあたり、何度も「文選」を読んだらしいが、たとえ私が「文選」を読んでも、私にはとてもこんな文章は書けない(当たり前か)
お話自体は今でもありそうな結婚をめぐる三角四角関係を描いており、テーマ自体は全く古びてはいない。小野みたいな男はゴロゴロいると思うし、藤野とその母みたいな親子もいそうである。私自身は藤野の腹違いの兄の甲野に惹かれる。何のなく似ているところがあるような気がする。
今でも感情移入して読めるのは、いい小説は古くならないという証左であ -
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1915年 朝日新聞連載 随筆39回
漱石後期、胃潰瘍大病後、持病を抱えての執筆。
書斎に籠り、硝子戸の中から、世の中を見る。
時折、硝子戸の中に、訪問者がある。
漱石の身近な出来事を綴っている。
死に対する随筆も幾つかあり、後期の死生観を表現しているのだと思うが、私が好きだったものは、漱石が、楽しそうだった以下の2項ですね。
9・10
友人O(太田達人)が、上京して久しぶりに会った楽しそうなひとときの話。漱石の少ない友人の一人で、教師。なかなか、人を誉めない漱石が、人格も頭脳も素直に認めている。
34
頼まれて高等学校等で、生徒達の利益になるように意識して講演をする。それでも、わからな -
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漱石初期の短編集
【倫敦塔】1905年
留学中の倫敦塔観光記
英国の歴史を塔の中に感じ、戯曲「リチャード3世」・絵画「ジェーングレー」などからの発想を ブラックファンタジー的に随所に表現。観光後、現在イギリス人(当時の)に現実に戻される。興醒めして(たぶん)もう二度と行かないとか言う。
観光記でも普通には書きません。
【カーライル博物館】1905年
留学中のカーライル博物館訪問記 備考によると、味の素の発明者・池田菊苗さんと訪問しているらしい。まだ、海外渡航は珍しいから、外国で会うと仲良くなるのかしら。
たぶん、漱石はカーライル大好きに思える。見学中の表現は、案内のおばさんをあんぱんみた -
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齢30ともなろうに一向に定職に就かず、財を成した父親からの援助で遊戯三昧の主人公・代助は、貧乏にあえぐ友人の平岡&三千代の夫婦と3年ぶりに再会してからというもの、その生活苦に同情して金を渡したりなどもしている。
息子の将来を憂いた父が縁談をすすめるも、代助はまったく煮え切らない。なんと三千代のことを好きでいる自分に気がついてしまったのである。
という、代助へのツッコミどころ満載の小説。
本の帯に印字された本文抜粋"ひとの妻を愛する権利が君にあるのか"って、もっと深淵を覗き込んだ末にでたセリフなのかと思ってたけど、そのまんまの意味だったね。不倫からの略奪、いやあんた無職ですやん!?
高等遊民( -
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1910年 漱石前期三部作
主人公宗助は、かつて友人であった男の妻を奪い、その妻と二人、世間を転々としながら、二人ひっそりと暮らしていた。
二人は、多くを希望せず、穏やかに、仲睦まじくしている様子が、描かれていく。
貧しい、子供ができない(亡くなってしまったり)、社会との繋がりが乏しいなど、二人の生活が、寂しさを伴うものであることが影をおとす。
宗助達は、妻の元夫と再会しそうになり、心乱れる。その乱れを、鎌倉で参禅することで、取り直そうとするが、悟りを得ぬまま帰宅する。
結局、友人とは、すれ違いに終わるが、その怯えは、生涯続くのであろう。
こちらは、日常生活が多少、動きがあるので、読みや -
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赤毛のアンの作中劇の原作(アーサー王伝説をもとにしたテニスンの詩「ランスロットとエレーン」)を美しい日本語で読みたくて手にとった。
テニスンの「ランスロットとエレーン」は長編詩だが、漱石の「薤露行」は小説であり、きれいな文語調で綴られている。中世の騎士物語なので文語体がよくあっていた。さすが漱石といったところだった。
他の短編も、明治の東京の人の生活が垣間見え、とても面白かった。描写も巧みでユーモアに富んでおり、肖像がお札に印刷されるだけのことはあると思った。
アーサー王伝説は日本でも大人気で、ゲームやアニメなど、あらゆるファンタジーものの礎になっている。一方、海外で知られた日本の伝説が何 -
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ネタバレ新潮文庫で読み、ちくま文庫全集で読み、これで三度目。
ちくま文庫でいえば第2巻(初期)と第10巻(小品)を並べ直したようなセレクト。
■鬼哭寺の一夜 ……新体詩。女人幻想。
■水底の感 ……藤村操「女子」(!)について。
■夢十夜 ……まあいつもの。
■永日小品(抄) ……蛇/猫の墓/暖かい夢/印象/モナリサ/火事/霧/声/心 ……二度読んだあと、ポッドキャストやCDやで何度聞いても、憶えられず、そのうち眠ってしまうのが、こちら。このままの付き合い方を続けたいとも思う。
■一夜 ……確かに「だからどうした」という感想。とはいえ「草枕」の萌芽があるとも感じる。「猫」や奥泉光の諸作でも度々感じる -
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漱石の文学は一面的に読むものではない、この小説でも多面的に考えさせられる。
このことがひどく気になった。
主人公「健三」は大勢のきょうだいの末っ子で生まれてすぐ養子に出され、それが「健三」の精神的放浪になり、行き場所を失うのにつながり、本人が悩むとはなんてことだろう。
昔は家名を残すために養子縁組が多かっただろうし、子どもがない夫婦が寂しさのためもらい子しただろうが、「健三」の養子先は将来めんどうを(働いて)みてもらうがためもらったのだ。それでは子どもが道具ではないか。
養家先の不都合で9歳ぐらいの時に実家へ帰されたけれど、籍は養家先に20歳過ぎまであり、吝嗇な養父、養母の後難を恐れ、 -
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夏なので幻想怪奇系積読消化するぞのじかんです。
これは最近買った本だからそんなに積読じゃないけど、積む予定だったから読めてよかった。
幻想怪奇かとゆーとそこまでではなかったけど、「琴のそら音」とか面白かった。
「薤露行」は、わたしはアーサー王伝説をぜんぜん知らんので、Wikipediaとかで調べながら読んでたよ。擬古文しんどかったけど、話に合った文体やとおもた。
あと、夏目漱石てやっぱり「人というのはこういうものだから」ていうのを描写するのがものすごくうまいというか、今まで意識してなかったようなそういうのを分かりやすく言語化してスーンと納得させてくれるよね。 -
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ネタバレ主人公敬太郎は、大学を出ても定職に就かず、ふらふらしている。
しかし人生にどこか浪漫を求めており、波乱万丈な生活を送る友人森本の昔話に憧れている。
いくつかの章に分かれているこの作品は、主に敬太郎の周りの人の語りによって進んでいる。
特に市蔵と千代子の幼なじみ同士の恋愛話はかなり現代っぽいのめり込める内容だった。
お互い素直になれない、少しひねくれた性格で、でもあえて素直になるのも今更何か違う…というもどかしい気持ちになる。
市蔵の、自分自身のことについて考えすぎてしまう性格はその出生の秘密からきている、という展開はかなり気の毒で苦しい気持ちになった。