夏目漱石のレビュー一覧
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ネタバレ読むの大変だったけど面白かった。
正直言うと少しBL展開があるって聞いて下心ありきで買いましたすみません。でも全然そんなことなく,先生と私(上中の語り手)のせつない空気の漂う関係性が良かったなって思う。
Kと先生の関係もBL要素ないし何故これがBLだと言われているのか不思議。
下の話の,先生はやり場のない感情がずっと残り続けたまま生きてきて最後に自殺する…という展開がすごく良かった。好きな人を取られるのではないかと一人で焦って,自分のしたことで大切な人を死なせて…。親族に裏切られて腹を立ててるのに,自分は友人を欺いて裏切ってしまう…先生の気持ち想像するとみぞおちあたりが苦しくなる。遺書見つけたとき,真っ先に読んで自分のことが書かれてないと安心する部分も人間の醜さが生々しく書かれていてゾッとした。
国語の授業で「こころ」を学んだ。Kは恋が叶わないなら自殺する覚悟があったというのに驚いた。先生とお嬢さんが結婚すると知る前から自殺するつもりだった,しかもその覚悟は先生の一言で決まってしまったという…。私は読んでいてKの「覚悟」はお嬢さんを諦める覚悟か,先生と同じお嬢さんに気持ちを伝える覚悟かのどちらかだと思っていたので,読みが浅かったと反省しました…。国語の先生のようにこんなに物語を理解できたらもっと読書が楽しいんだろうな。 -
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十代のはじめに読んだが、最近の新聞コラムでこの本に触れるものがいくつか目についたので、本棚の新潮社版日本文学全集第5巻所収のものを読んでみた。
どうやら、この小説は高校の現代文教科書に収録されているようだ。
全文収録は無理だろうから、どの部分を切り取って何をどう教えるのか、いささか興味深い。
多分小学生高学年の頃に読んだような気もするが、全くもって記憶がないので、こんな小説だったんだというのが正直な印象だ。
前半上・中は主人公の身の上話で「先生」という高等遊民との交友、後半下がその「先生」と友人Kとの女を巡る三角関係話。
教科書では後半を中心に収録しているのだろうか。
後半で延々と続く「先生」の独白的長文の手紙は青臭い御託を並べてはいるが、煎じ詰めれば男の嫉妬は女の嫉妬よりもタチが悪いということ、それに気づいたことへの深い悔悟を描いている。
加えて明治天皇の死、それにつながる乃木の殉死とかがあって、時代の空気として自殺のハードルが低かったのかという気もする。 -
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夏目漱石 前3部作の中間に位置する作品。
不倫、というテーマが大きいような気もしましたが、自分としてはこの作品に現代に通ずるようなニート像が見えたような気がしました。
まず、「働いたら負け」という考え方です。代助は職にもつかず、実家の父から定期的に生活費を貰いながら日々を過ごしていて、それが理に適った正しい生き方だと考えていて、今仕事でバリバリ働こうとしている友人・平岡にはそういう面では良くない印象を抱いている。代助の働いていない引け目など感じていないあたりがまさに30歳頃の開き直ったニート感が出ていると思いました。
そして「そこまで器用じゃない感」も社会に出ていないゆえ漂っていると思いました。代助は友人平岡の妻であり、自身の旧友でもある三千代に思いを寄せるようになり、三千代への思いを貫くか、家族から何度も進められる縁談に気乗りはしないが乗るか、少し悩みます。結局縁談を受け入れることは無いのですが、どうせ三千代との関わりは自分が既婚か独身かに依らず罪なので、表向きは親族の望む縁談を受け入れて、三千代との関わりは密かに続けていくということも選択としては出来たはずなのに(最低ですが…)そうしない、それを考えもしなかったのは代助もニートなりに正義感や倫理観が備わっているのか、それともただただ考えが及ばなかったのか、どちらにしてもマイペースニートっぽさがあるなと思いました。
最後に、「働き始めようとすると急に苦しくなる様子」です。物語のラスト、父親にも三千代との関係が知られた代助は、もう生活費の援助を受けることも出来ないと思い、働き口を探しに街へ出ます。そうすると序盤中盤では描写されなかった気温の暑さの描写が増えます。『代助は暑い中を駆けないばかりに、急ぎ足に歩いた。日は代助の頭の上から真直に射下ろした。乾いた埃が、火の粉のように彼の素足を包んだ。彼はじりじりと焦げる心持がした。』 働かず悠々自適に歩いてた町も、いざ働くという使命を背負って歩くととても暑く、苦しい環境だと感じるのもどこかニートの心情を言い当てている気がして、夏目漱石はやはりすごいなと、実は漱石もニート時代があったのかな?と思いました。 -
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ネタバレ総題の漢字よし。
収集箱じゃつまらない、蒐集函なのだ。
カバーイラストも素敵。
新潮文庫nexというレーベルで、ヤングアダルトにこの作品たちを差し出した編集部、GJ!
■坂口安吾 桜の森の満開の下
既読を再読。
■芥川龍之介 影 ★
初読。
芥川といいえばドッペルゲンガーなのでそういうことかと中盤で思わせておいて、ラストなんと映画だった? 夢だった? というオチ!
しかもそれすら真実かどうか不明な放り出し方。凄い。
しかし、「歯車」でも感じたことだが、狂気に飲み込まれそうな感覚を、それでも作品化「しちゃえる」ことが、逆に悲劇だったのかもしれないと考えたりもした。
■江戸川乱歩 芋虫
既読を再読。
■泉鏡花 浮舟 ★
初読。
少年士官、袂の懐中時計が消えたと思いきや、遭遇した赤ん坊が持っている。
赤ん坊は落ちないよう橋に赤い帯で結ばれている。
という、それだけの話。
それだけなのに、耽美で禍々しい予感だけが、際立つ。
■折口信夫 身毒丸
初読。中公文庫で読み切れなかったのだ。
で、実際読んでみても、あまり文意が読み取れず。
俊徳丸伝説をもとにした謡曲や説教はもとより知らず。
中上健次や三島由紀夫文脈で名前を聞いたことがあるくらい。
wikipediaに、
>折口信夫は俊徳丸伝説から仏教的・教義的な要素を取り払い、近世芸能の原始的なかたちを再現することを意図して短編小説「身毒丸」を書いた(大正6年発表)。「身毒丸」は「しんとく丸」にこの字を当てはめたもので、主人公は先祖伝来の病を持つ田楽師の息子として描かれている。折口信夫は「しんとく丸は『俊徳丸』と表記されることが多いが、もともとは『身毒丸』と表記されていたのだろう」と語っている。
とあるが。
なんとなくホモホモしい雰囲気で、いいといえばいいのだが。
■小栗虫太郎 白蟻 ★
初読。
面白……かったかどうかはわからないが、なんだか凄みのある文章だった。
というのも、人里から隔絶された家族は全員狂って、野生に返っていると思いきや、実際は明朗な滝人という女。
明朗というか、小栗式衒学を織り交ぜる形で、木の根っこに対して延々語りかける、その絵面はもう狂人。
しかも子供はフリークスで、足元の草むらをザザザーッと這い進む、それを殺人の道具にしちゃう、という、もうドウカシトル話。
その背後には、夫が入れ替わっているのでは!? という疑念があるわけだが、その犯行理由が凡庸に思えるくらい、クルットル設定で、あー確かに「黒死館殺人事件」でもワケワカランが勢いは凄まじかったなと思い出した。
■谷崎潤一郎 刺青
既読を再読。
■夢野久作 瓶詰地獄
既読を再読。
■太宰治 駈込み訴え
既読を再読。
耽美幻想という函に入れられることで、別の見え方。
■夏目漱石 夢十夜
既読を再読。 -
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坊ちゃんの痛快さや、こころの男心のナイーブさを味わった上でこれを読むと、話の飛躍さにビックリする。
育ての親から金をせびられ、それで終わりかと思うと知人を名乗る者たちまでもが金を恵んでくれと擦り寄ってくる。
まるで乞食のようだ。
完全なフィクションではなく、夏目漱石の実体験に基づいているとすれば、彼はなんと複雑な人達のいる環境で育ってきたのだろうか。
養子として迎え入れた子供が大きくなると、育ててあげたと恩着せがましい態度をとる養父母たちに嫌悪感を抱く。
人を変えて金をふんだくろうと策略する養父がいちばん嫌いだが、細君が病んだことに腹を立て、自分本位に振る舞う主人公にも嫌気がさした。
あれが嫌これが嫌と言いたい放題なわりに、自分の欠点を細君から指摘されると腹を立てる。
立派なのは口だけで、じゃあ有言実行しようと動くかというとそうではない。
それに、養父から手切れ金として100円渡すところも、あっけなく渡してしまうから呆れてしまった。
だからつけ込まれるんだぞ!と、思わず怒号が口から出そうになってしまった。
が、物語として成立されるために脚色を加えているなら見事なものだ。
いつの時代にも、他人の金に目をつけて寄ってくる奴はいるんだな。
夏目漱石の違う一面を知れた気がした。
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漱石がこれまでにあったことや考えたことを、つらつらと書き綴るエッセイです。
講演の謝礼の話は、拗らせていますねぇ。言わんとしているとはわからなくはないですが、本当に面倒くさい。こうして本で読む分には楽しいですが、実際相手にすると疲れるでしょうね。
岩崎弥太郎の話も面白かった。不愉快だといいながらも、どことなく友情を感じるんですよね。実際に所はどうなのかは分かりませんが。
ヘクトーや飼い猫の話は、漱石のツンデレ加減が笑えます。「文鳥」でもそうなんですが、動物に対してすら素直に心を開けないところが、ある意味かわいらしさを感じます。
「道草」を陰とすると、「硝子戸の中」が陽のような感じを受けました。自分の拗らせ具合を自虐的に書いていますので、一見暗くなりそうな話題も多いですが、不思議と楽しく読めました。 -
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ネタバレ耽美とは何なのか未だ理解できていないが、収録作から思うに愛憎、背徳、情念、倒錯、フェティシズム、幻想、狂気etcが入り混じったものか。そこにタナトス≒死への衝動が加味された、名だたる文豪らによる10編。
「桜の森の満開の下」(坂口安吾)や「瓶詰地獄」(夢野久作)は本書のコンセプトをまさに体現している作品か。作家のフェチ全開「刺青」(谷崎潤一郎)、美しくニューロティックな幻想「夢十夜」(夏目漱石)、サスペンスからの意外な結末「影」(芥川龍之介)もそこに沿ったものかと。
"美"という点では泉鏡花の「浮舟」、折口信夫「身毒丸」なのだろうが、個人的には独特の文体含め作品世界にハマれず味わいきれなかったのが正直なところ。「芋虫」は愛憎や倒錯という点ではそうかもしれないが、乱歩の"耽美"な作品というなら「人でなしの恋」辺りでもよかったのでは。
上州の山間に住む逼塞した一家。落盤事故からの生還後変貌した夫に疑念を抱く妻の執念がやがて……という「白蟻」(小栗虫太郎)は異彩を放つ一編。終始陰鬱な情景描写、狂気を帯びた女性の独白と晦渋で読み辛い地の文が続き(一体何を読まされてるんだ……)という思いを抱えたまま一家の運命を見届けることになる。何となくだが平田弘史氏の画が非常にマッチしそうな気がする。ただし異形の息子だけは日野日出志風かも。
裏切者の代名詞として歴史に名を残す男の訴え「駆込み訴え」(太宰治)。ラストに男が名乗るが大半の読者は前半部で彼、そして"あの人"が誰なのか気付くだろう。敬愛を募らせた余りの独占欲からの憎悪。2000年前の裏切りの真相は最早知るべくもないが、収録作中で"愛憎"を明確に最も描いているのはこれかもしれない。
レーベルはライトノベル、YA向け中心の新潮文庫nexではあるが、「桜の森の満開の下」「芋虫」「瓶詰地獄」ら有名作品と共に「影」「白蟻」「駆込み訴え」などややマイナー?な作品も収録する凝った構成。10代のそれも早い内にこんなのを読んだらその後の人格形成に影響が出そうな気がしないでもない、が。 -
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「明暗」の題名は(意)。漱石が小説執筆中に芥川龍之介と久木正雄に示した漢詩のなかの語「禅家で用ひる熟字」と説明された「明暗双々」の解釈を中心に論議されてきた。たとえば小宮豊隆はいわゆる「則天去私」と結びつけて、「私の世界」とそれを超越した「天の世界」と明・暗と考え、禅語との関りに消極的な荒正人は、登場人物各自の立場や状況に応じた価値観の「明と暗の交錯」に題意を求めている。昼の世界と夜の世界、日常と非日常、現実と異界など、明と暗を分つ説は従来ささまざまだが、人間関係・因果関係に視覚的問題も加えて、見える(と思っている)ものと見えないものとの別を措定することも可能だろう。諸説それぞれに異同はあっても「其話を己は聞きたくないのだ。然し又非常に聞きたいのだ」39頁などの「Aであるとともに非Aでもある」という文型の頻出が示すように、矛盾対立する価値観の並立とそのたえざる反転が、小説世界を形成するについては、近年ほぼ共通の理念に達しつつある。なおこの小説は漱石の死によって未完に終わった。
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「夢十夜」
もう何度も読んでいるけれど、やはり第三夜の印象は強い。
この気味の悪さ、リアルな夜の手触り。
自分もその静けさに包まれているかのように感じる。
第六夜もよく覚えている作品。
子どものときに読んで、いや、木に埋もれているわけではないだろう、と、笑った記憶がある。
なんとなくただよう気味の悪さの裏に、人間の感情や情念がちらちら見えて、正しく夢のかけらを集めたかのような作品群だと思う。
「文鳥」
美しい文鳥と、それに対する心の動き・流れが、水のように流れ込んでくる、そんな文章だった。
文鳥を死なせてしまったときの彼の心が、そのしんとした行間からあふれてくる。
「あふれる」という表現では、しっくりこない。
行間そのものが、心の塊だ、というか。
「こう思った」などという描写などより、うんとはっきりとその心情が伝わってくる。
すごいな、漱石。
「永日小品」
「下宿」と「過去の匂い」は、アグニスは義理の姉弟同士の子ども、ということか。
様々な作品が収められている。
まるで夢の話のようなものから、英国留学の経験を踏まえたもの、日常の風景を切り取ったようなものまで。
漱石の視線の流れを感じるような気持で読み進めた。
1999.6.23
以前どこかで「夢十夜」の第三夜を読んで、とても印象に残った。漱石の作品は、古臭くない。そして品がある。暗さもあると思う。太宰が泥棒をあつかった小説を書いていたが、漱石の「永日小品」の「泥棒」とはだいぶ様子が違う。漱石の描く人物の目はいつだってすごく落ち着いている。この落ち着きが品を生んでいるのかもしれない。そういえば、村上春樹も落ち着いた文を書く人だ。こういうのが、好きだ。