谷川俊太郎のレビュー一覧
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思い出したのは、学生時代どこかで聞いた言葉「科学で説明できないことを考えるのが文系の役割である。」
文系理系を区別することが今や適切かどうかということはさておき、理系の方が社会に役立つという考えを高校ではよく聞いた。科学の発展によって世界のあらゆることが解明されてきた。生活は便利になり、もので溢れ、街は豊かになった。数十年前まで治せなかった病が治せるようになった。全て科学の賜物である。
だが一方で、争いは続いている。貧富の差も広がり、分断が起きている。寛容さが無くなり、平気で人を傷つける言葉を吐く人もいる。武器やSNSなど、科学がその一因になっている。
ビッグバンによって宇宙ができてもしばらくそこには無意味しかなかった。無機物が生まれ、有機物が生まれ、人間が生まれたことによって、言葉が生まれて、初めてこの世界に意味が生まれた。言葉、そして意味は途方もない年月によって生まれた奇跡だと思う。
人間によって生まれた争いなのだから、人間がそれを終わらせられるはず。暴力で解決することは、野蛮であり、ここまで積み上げてきたものをぶち壊す、人間の退化だ。言葉こそがそれを鎮める力を持っているはずだと信じたい。
また詩を書きたいと思った。少し前までは詩を書いたり、絵を描いたり、音楽を作ったりするのは、それを職業にしている人たちの専売特許だと勝手に思いこんでいた。少し前に歌詞を書いて、曲を作ったとき、とてつもなく没頭し、何にも代え難い心地よさを味わった。内にあるものを表現することは、誰にでも門戸が開かれており、自由な遊び場だ。
言葉を扱う生き物として谷川俊太郎の詩をこれからも味わいたい。 -
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本書は、詩人・谷川俊太郎氏が茨木のり子の膨大な作品群から精選して編んだ一冊である。
彼女の作品には、昭和という時代を凛として生き抜いた「すがすがしい格好良さ」が満ちている。鋭利で歯切れの良い言葉もあれば、静謐で素直な言葉もあり、それらが真っ直ぐに心に染みてくる。
私は、彼女の詩には「経験」が深く染み込んでいると感じた。だからこそ、今の自分に強く響く一篇もあれば、まだ遠く感じられる作品もある。
きっと私自身の経験が重なり、茨木さんの歩みに近づいたとき、これまでとは違う響きで届く言葉があるのだろう。その日を楽しみに、これからも折に触れてページをめくっていきたい。 -
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“戦後日本を代表する”といっていい2人の詩人(大岡信、谷川俊太郎 ともに当時40代)による“対話”。1975年の2月から3月にかけて、3回行われた対話を活字にしたもの。
コップについて書いた二人の詩を比べるくだり(p.115~128)は面白い。“きちんと物が見えるように書く”のが谷川の詩、“はじめは物を見ているように書きだしても、決して物自体には到達しない”のが大岡の詩。
そして、その前にあるくだり(p.105~108)。外国詩の翻訳・輸入における失敗(“日本語ではとうてい詩として成立しないようなものをそのまま日本語にして、これが詩ですといった傾きがある”(p.105)や、マザー・グースの唄(口承童謡)の視点の欠落や、諺・極り文句といった俗な言葉を圧殺してきた“一種の個性絶対主義”(p.107)など)は、なんと50年以上前に、詩人の口から指摘されている事柄だったのか、と驚く。
「“個性絶対主義”は、50年経っても相変わらずな気がするなあ…」 -
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命の根源から響く「ありがとう」の連鎖
作品名:『ありがとう』
文:谷川 俊太郎
絵:いがらし みちこ
出版社:講談社
初版発行日:2005年9月27日
【レビュー本文】
日本を代表する詩人・谷川俊太郎さんのシンプルながらも奥深い言葉に、いがらしみちこさんの繊細で温かみのある絵が寄り添う、心に深く染み入る一冊です。
物語は空、地、海、そして自分自身へと「ありがとう」が次々に連鎖していきます。単なる日常の挨拶としての言葉ではなく、自分を取り巻く万物が互いに響き合い、私たちがこの世界に生かされていることそのものを祝福するような、深い肯定感に満ちています。
対象年齢は3歳・4歳からとなっていますが、大人にとっても、当たり前の日常や自分という存在が愛おしく感じられるような、穏やかで温かな余韻をくれる作品です。命のつながりを再確認したいとき、大切な方への贈り物としても最適だと感じました。 -
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ユング心理学者・河合隼雄と詩人・谷川俊太郎の対談。どちらもその道の第一人者だけあり、非常に高い次元の会話がなされている様子。何のことやらと思いながらただページを捲るだけでもそれなりに楽しい。
一方で、肝心のユング心理学についての「講義」は禅問答のようでさっぱり。
カウンセリングの実際についてかなり詳しく述べていたが、分析家は何もしないのが一番いいとか極力意見を述べないようにするとかで、結局何をする仕事なのかちっとも分からなかった。
万事こんな具合で、読む前よりも余計に分からなくなったような気すらするわけだが、不思議なことにこの本を読んでからというもの、朝起きてその日に見た夢を覚えているようになった。
単純に、夢に関する本を読んだことで意識が夢に向いたということなのかも知れないがなかなか興味深い。ひとまず自己流に分析してみるつもりだ。 -
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ネタバレ「行き先は未定です」と聞いたとき、どんな気持ちでしょうか?期待か、それとも、少し不安になるでしょうか。言葉の受け取り方は、そのときの心の状態や、未来に対する考え方によって変わりますが、未来を「可能性」として捉えたとき、「未定」は自由で希望に満ちた言葉になります。でも、先が見えないことに不安を感じやすいときには、「未定」は落ち着かない、心細い状態を表すものにもなります。「未定」という言葉が希望にも不安にもなるのは、読み手自身の「心の地図」が関係していると思います。
谷川俊太郎さんの作品はやさしさと同時に、どこか「しんどさ」を感じることがあります。偉大な詩人であると分かってはいますが、同時に苦手な詩人になることがあります。それは、時に彼の詩が沈黙や死、孤独といった深いテーマを、静かに、でも確かに浮かび上がらせるからです。ある評論で、谷川さんの詩には「言葉の意味から滲み出すものを沈黙に探る」姿勢があると語られています。読む人は、ただ言葉を追うだけでなく、自分の内面と向き合うことになる。その時間が、少し苦しくもあり、でもどこか心に残ると思えてなりません。この詩集のタイトルを聞いたとき、やっぱり谷川さんらしいタイトルだと思えました。
少し話がそれますが、一部収録の詩集『二十億光年の孤独』は、宇宙の広がりと人間の孤独を重ね合わせるような作品です。勝手なイメージですが中島敦の『山月記』や梶井基次郎の『檸檬』、太宰治の『人間失格』など、孤独や葛藤を描いた文学にも同時に惹かれるような気がします。これらの作品に共通するのは、「孤独を静かに、美しく描く」という点です。登場人物の姿を通して、自分自身の心の奥にある感情と向き合っているのかなと思うことがあります。
さて、この詩集の構成は、「いきる」「はなす」「あいする」「きく」「つながる」「しぬ」という章で、人生の旅を詩でたどるような流れになっています。晩年の谷川さんは、「生きることはわかったような気がするんだけど/死ぬっていうのはどういう感じなのかな」と語りました。この言葉には、死を恐れるのではなく、未知のものとして静かに受け入れようとする姿勢が感じられます。
また、谷川さんは「沈黙は私にとって切実な主題です」とも語ります。詩は、ただ言葉を並べるものではなく、人の奥深くにある静けさとつながるもの。晩年の作品では、意味よりも「響き」や「気配」を大切にし、読む人が自由に感じ取れるような余白を持った言葉を目指していたようです。同時に、詩と音楽の関係にも深い関心を持っていました。「詩はなくても生きていけるけれど、音楽はなくちゃ生きていけない」と語り、音楽を生きるうえで欠かせないものと捉えていました。朗読とピアノを組み合わせた作品『聴くと聞こえる』では、言葉が“話される音”として自然に響いていました。「いい音楽には、自分がない。そういう言葉を書けたらいいな」という言葉には、自己を消して、ただ響きとして存在する詩への憧れが込められています。詩や音楽は、意味を押しつけるのではなく、聴く人・読む人の心にそっと寄り添うものです。
詩集を読んだ後、タイトル「行き先は未定です」は改めて心に静かに問いかけてきます。未来が決まっていないことを、恐れるのではなく、受け入れてみる。そこに、谷川さんの詩が教えてくれる、やわらかくて深いまなざしがあるように思います。寂しさはありますが、新しい旅路への白地図を示してくれたような気がします。 -
Posted by ブクログ
BSテレ東の「あの本、読みました?」の中で、谷川俊太郎さんの特集が取り上げられているのを見て、本作を手に取った。
本作の中で、谷川さんの語る、中島さんの楽曲「うらみ・ます」への考察はとても興味深い。この曲を聴いたことのある人ならば、谷川さんと一緒にその深みへと嵌ってしまう感覚になるだろう。
中島さんの詞と、谷川さんの詩を、交互に声に出して読んでみると実に気持ちがいい。言葉のもつ力が直接身体に伝わってくる。中島さんの方はメロディが浮かんでくるものがあるのは当然だが、谷川さんの方もなんだか歌のように聴こえてくるから不思議だ。
二人の42年前の対談では、お互いに独特な世界観を持っているからか、話があまり噛み合っていないように感じたが、そこから42年後の今は、二人とも何やらもういい歳になって、特に「魂」の話で意気投合するのが微笑ましかった。
何かを無条件に受け入れることはすごく大事。諦めるとは「明らむ」。何かを明らかにすること。何かを諦めることで世界がより正確に見える…という谷川さんの言葉が胸に残る。